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40:救出※

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「な……なんだこれは」

俺が必死に助けを願っている途中、突然、ジョーダンが怯え出した。
青い顔をして目を開き、ガタガタと震えている。

「ひ……ぃ」

ジョーダンが怯え始めたと同時に、馬車もスーッと停車して、御者がいるであろう位置からも怯えたような呻き声が聞こえてきた。

「なぜ……こちらの位置は気づかれないはず……ま……まさか……」

ジョーダンは俺を信じんられないものを見る目で見てそう呟いた。
何に怯えているのか分からないが、ジョーダンとは逆に俺は何かとても温かいものに包まれているような感覚で、心地が良くなっていた。体の中の血液がポカポカと熱を持って身体中を巡っているような、不思議な心地よさだ。

そうしているうちに、遠くの方から馬の蹄の音が聞こえてきた。

「ぅ……ぁ、早く、早くこの場所を、離れなけれ、ば……」

もう敬語など取り繕っている余裕はないのか、ジョーダンが焦ったようにそう言ってガタガタと震える手で馬車の鍵を開けようとしている。
俺の体のポカポカは、次第に心地よさを通り越して暑くなっていき呼吸も荒くなってきていた。早く馬車の扉を開けて、外の心地の良い夜風を浴びたい。

やっとガチャリと鍵が開いたとき、馬の蹄の音はすぐそこまで迫っていた。
ドクリと心臓が跳ねる。
なぜだか扉が開いた瞬間、体の熱さはさらに強まり、えもいわれぬ良い香りが馬車内を満たした。花束のような、はたまた上品な白檀のような。それは、まだヒートを迎えていないけれど、クライブとバイロンの匂いなのだと本能で分かった。

やっぱり、助けに来てくれたんだ。

「ひ」

ジョーダンが転がり出ようとした扉の外には、バイロンが恐ろしい顔で待ち構えていた。

「だ、ダッシュライド侯爵閣下……っ」

バイロンは馬車の中の俺を一瞥してわずかに目を見開き、一層表情を険しくした。

「ジョーダン・ギルバー侯爵殿。バトラル・アール伯爵令息誘拐及び、国家反逆罪で拘束する」
「な……な……」
「バトラル・アール伯爵令息は皇太子殿下の婚約者、ひいては皇帝妃になられるお方だ。その上、西の国と内通していたという証拠も上がっている。その罪は貴殿1人の命で済むと思わぬ方が良い」

冷静で冷酷。冷たいその声音に、ジョーダンは何も言葉を返すことができないようだった。

「覚悟はできていると思うけど……バトラルに手を出したのだから、楽には死なせないよ」

ジョーダンの後ろから、クライブの冷たい声が響いた。

「ぁ……、そ、そんな、そんなつもりじゃ」
「そんなつもりじゃなかったなんて言い訳、通じるわけないだろう」

バイロンの手によってガチガチに拘束されたジョーダンが馬車から下ろされ、その代わりにクライブとバイロンが馬車の中に入ってきた。

「……大丈夫、か」
「ぅ……ぁ……ぅ」

バイロンの心配げな問いかけに大丈夫とありがとうを言いたいが、言葉を発することは叶わなかった。
バイロンの手によって拘束と猿轡を取られても、薬は抜けておらずさらには先ほどからの体の熱で、頭すらまともに働かない。

「バトラル……」

クライブの熱を持った声が俺の名を呼んだ。
それからは抑えきれないというように、力の入らない俺の体を抱き上げた。

「……バトラル、バトラル……。ヒートが、来たんだな……」

ぐったりとクライブに身を任せている俺をクライブは自分の膝に対面で座らせて抱き寄せた。

「バトラル……甘い匂いだ……バトラル……」
「っ……!?」

クライブの息は荒く、俺の顎を掴んで唇が合わさり、すぐに舌が入り込んできた。
ニュル、ニュル、と口の中で暴れ回るクライブの舌に息も絶え絶えになりながらついていく。一瞬口が離れた瞬間に、俺は思いっきり息を吸った。けれど、それが整わぬうちから、今度は横からバイロンが俺の後頭部に手を回し、深く口づけをしてきた。俺の口の中に蜂蜜でも塗ってあってそれを味わっているのではないかというほどに、口の中をくまなく犯され、脳天がゾリゾリとした快感で埋め尽くされていく。俺が口をバイロンに犯され始めると、クライブは今度は反対側の首筋を舐めて始めた。

「ん……ぁ……」
「バトラル……」
「バトラル」

ピチュ、クチュと口を犯す卑猥な音が馬車の中に響いた。
クライブもバイロンも、熱に浮かされたように蕩けるような瞳で俺を見ていて、俺も俺で、体の熱が治らない。ああ、これが、ヒートというやつで、2人とも俺のヒートに当てられたラットという状態なのだと、どこか頭の片隅の冷静な部分でそう思った。

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