40 / 86
37:バイロンの欲望
しおりを挟む
「バトラルをどうして好きになったのか……か。そうだな……。歳が離れているのもあって最初はただ、弟か、むしろ息子のように思っていた。目を離せない、手のかかる可愛らしい年下の家族のような。だが、そうしてずっと見ていると実は芯が強く、優しい性格であることが分かってきて、無理をしすぎるところなどが心配になった」
「無理なんて」
「いや。バトラルは自分の体の限界を見極めるのが下手くそだろう。幼い頃は隠れて無理をしてよく倒れていた。その度に私や殿下がどれほど狼狽たか。そうやって自分を厳しすぎるほどに律するくせに、他人には甘い。いつか悪い大人に騙されて連れ去られてしまうのではないかと不安だった……」
自分の体の限界を見極めるのが下手くそというのは暴言のように感じたが、側から見たらそうなのだろう。だが実際は違う。俺は自分の限界を見極めた上で、それを突破するのが好きなのだ。
けれども、クライブやバイロンにいらぬ心配をかけていたことを言われれば、申し訳ない気持ちになった。
「でも、弟や息子のように思ってたなら、どうして、その」
どうして好きになったのかともう一度言うのがなぜだか恥ずかしくなって、言い淀むとそれがおかしかったのかバイロンが小さく笑った。
「弟や息子に向けないような欲望を持ってしまった。それに気がついた時、同時に、バトラルのことをそう言う意味で好きなのだと気がついた」
「弟や息子に向けないような欲望……?」
言葉を反芻し、その意味に考えついた時、俺は尻から胸にかけてギュンと何かが突き抜けた。
え、えっちすぎじゃないのか。俺のイメージしていたバイロンとはちょっと解釈違いで、けれども、その言葉のエロさに、ドキドキが止まらない。
それなのに、次のバイロンの言葉で一気に思考が停止した。
「……甘やかしたいんだ」
「え?」
「もちろん、弟などに向ける甘やかしたい願望ではない。手づから食事をさせたいし、トイレに行きたいのなら私がトイレまで運び世話をしたい。夜には膝の上で本を読み聞かせ、風呂も全て私が管理したい」
「…………へ?」
なんとも間抜けな声が出てしまったけれど、言われた言葉をもう一度思い返してみても、やっぱり「へ?」としか出てこない。
つまりどういうことだろう。
赤ちゃんプレイがしたいということだろうか。
その場合、赤ちゃん側をやりたいと思うのが一般的なように感じるが、そもそも赤ちゃんプレイ自体が一般的ではないような気がするので、やっぱりよく分からない。
いや、ちょっと待てよ。よくよく思い返してみれば、赤ちゃんプレイというよりも、介護と言う方が正しいのではないだろうか。
食事をさせてもらい、トイレも世話をされ、風呂も入れられる。まぁ、本を読み聞かせる部分は違うかもしれないが、字面的には圧倒的に介護の一言に尽きる。
「……やっぱり、気持ちが悪い、よな。忘れてくれ」
俺の態度が拒否に見えたのか、バイロンはシュンと肩を落とした。
「い、いや。そんなことないです。僕は」
人様の性癖をどうこう言えるような立場じゃないですから、なんて言えないよな。
「その。僕も同じようなものですから」
自分の言いたいことをマイルドに伝えると、バイロンはシュンとしていた目を輝かせた。
「バトラル……っ。そうだったのか。バトラルもそうだったのか! 良かった」
「え……いや」
「ありがとう。バトラル、番として受け入れてくれて。もしも、戦争が始まってしまっても、私が必ず守るから」
「……はい」
その後は、なんだか釈然としない気持ちで自宅に帰り、今日起こったあれこれを、頭から追い出すようにジョーダンから課された宿題に手をつけた。
「無理なんて」
「いや。バトラルは自分の体の限界を見極めるのが下手くそだろう。幼い頃は隠れて無理をしてよく倒れていた。その度に私や殿下がどれほど狼狽たか。そうやって自分を厳しすぎるほどに律するくせに、他人には甘い。いつか悪い大人に騙されて連れ去られてしまうのではないかと不安だった……」
自分の体の限界を見極めるのが下手くそというのは暴言のように感じたが、側から見たらそうなのだろう。だが実際は違う。俺は自分の限界を見極めた上で、それを突破するのが好きなのだ。
けれども、クライブやバイロンにいらぬ心配をかけていたことを言われれば、申し訳ない気持ちになった。
「でも、弟や息子のように思ってたなら、どうして、その」
どうして好きになったのかともう一度言うのがなぜだか恥ずかしくなって、言い淀むとそれがおかしかったのかバイロンが小さく笑った。
「弟や息子に向けないような欲望を持ってしまった。それに気がついた時、同時に、バトラルのことをそう言う意味で好きなのだと気がついた」
「弟や息子に向けないような欲望……?」
言葉を反芻し、その意味に考えついた時、俺は尻から胸にかけてギュンと何かが突き抜けた。
え、えっちすぎじゃないのか。俺のイメージしていたバイロンとはちょっと解釈違いで、けれども、その言葉のエロさに、ドキドキが止まらない。
それなのに、次のバイロンの言葉で一気に思考が停止した。
「……甘やかしたいんだ」
「え?」
「もちろん、弟などに向ける甘やかしたい願望ではない。手づから食事をさせたいし、トイレに行きたいのなら私がトイレまで運び世話をしたい。夜には膝の上で本を読み聞かせ、風呂も全て私が管理したい」
「…………へ?」
なんとも間抜けな声が出てしまったけれど、言われた言葉をもう一度思い返してみても、やっぱり「へ?」としか出てこない。
つまりどういうことだろう。
赤ちゃんプレイがしたいということだろうか。
その場合、赤ちゃん側をやりたいと思うのが一般的なように感じるが、そもそも赤ちゃんプレイ自体が一般的ではないような気がするので、やっぱりよく分からない。
いや、ちょっと待てよ。よくよく思い返してみれば、赤ちゃんプレイというよりも、介護と言う方が正しいのではないだろうか。
食事をさせてもらい、トイレも世話をされ、風呂も入れられる。まぁ、本を読み聞かせる部分は違うかもしれないが、字面的には圧倒的に介護の一言に尽きる。
「……やっぱり、気持ちが悪い、よな。忘れてくれ」
俺の態度が拒否に見えたのか、バイロンはシュンと肩を落とした。
「い、いや。そんなことないです。僕は」
人様の性癖をどうこう言えるような立場じゃないですから、なんて言えないよな。
「その。僕も同じようなものですから」
自分の言いたいことをマイルドに伝えると、バイロンはシュンとしていた目を輝かせた。
「バトラル……っ。そうだったのか。バトラルもそうだったのか! 良かった」
「え……いや」
「ありがとう。バトラル、番として受け入れてくれて。もしも、戦争が始まってしまっても、私が必ず守るから」
「……はい」
その後は、なんだか釈然としない気持ちで自宅に帰り、今日起こったあれこれを、頭から追い出すようにジョーダンから課された宿題に手をつけた。
115
お気に入りに追加
2,287
あなたにおすすめの小説
全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話
みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。
数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
実は俺、悪役なんだけど周りの人達から溺愛されている件について…
彩ノ華
BL
あのぅ、、おれ一応悪役なんですけど〜??
ひょんな事からこの世界に転生したオレは、自分が悪役だと思い出した。そんな俺は…!!ヒロイン(男)と攻略対象者達の恋愛を全力で応援します!断罪されない程度に悪役としての責務を全うします_。
みんなから嫌われるはずの悪役。
そ・れ・な・の・に…
どうしてみんなから構われるの?!溺愛されるの?!
もしもーし・・・ヒロインあっちだよ?!どうぞヒロインとイチャついちゃってくださいよぉ…(泣)
そんなオレの物語が今始まる___。
ちょっとアレなやつには✾←このマークを付けておきます。読む際にお気を付けください☺️
第12回BL小説大賞に参加中!
よろしくお願いします🙇♀️
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!
めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。
ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。
兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。
義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!?
このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。
※タイトル変更(2024/11/27)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる