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28:教育係
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クライブが皇太子教育を受けるのだから、俺は皇太子妃教育を受けないといけない。
けれども俺は勉強漬けの後、夜中のテンションみたいにハイになる。その感覚が好きだなので皇太子妃教育を苦には感じていない。
俺は週の半分は城へ泊まるので、その日に教育を受けていた。
「バトラル、頑張ってね。私も、皇太子教育が終わればすぐに迎えに行くから。そうしたら、一緒に稽古をしよう。先に終わっても、1人で始めてはダメだよ」
「うん」
クライブは頷く俺を疑わしげに見ながらも、結局時間が来て皇太子教育に向かっていった。
俺もいつもの皇太子妃教育の部屋に向かい、授業を受け始めた。
「……良いですか?」
「え?」
今日から俺の教育担当になったという男が、俺を呆れ顔で見下ろした。
前回までの教育係は女性だったのだが、妊娠により休暇を取ると言うことで目の前の男に変わったらしいのだ。ジョーダン・ギルバー侯爵。若くして宰相補佐を任せられるほどに出来る男らしい。
細い銀フレームのメガネをかけクールな印象があるが、髪の毛は緩いパーマがかかった明るいブラウンを左半分だけかき上げたスタイルで、柔らかさも感じる。だがその柔らかさの下にはきっと仄暗い感情があるに違いない。敬語であるがゆえに、背徳感が増す隠れ執着監禁系とみた。顔が整った男は俺的にはお呼びではないが、妄想をしてしまうのは仕方がない。
ゲームでは彼の5つ年下で俺と同じ年齢の彼の弟が攻略対象だったが、その弟とは接触したことはないし、コリンの言っていた“皇太子殿下からもバイロン先生からも嫌われるように動いて、さらに他の人からも好かれる事のないように行動する”という目標にも影響はなさそうだ。
そんなことを考えていると、頭上から大きなため息が降ってきた。
「バトラル様。あなたはただでさえ週に半分しか城に来られないのですから、来られた時には真面目に勉強してもらわないと困りますよ。前任者からのバトラル様の成績を確認しました。確かに進みは早いですが、それならさらに他のことを勉強する時間に当てて、詰め込んでいただかないと。正直言って、ご成婚なさるまでの間、寝る時間を惜しんで勉強しても良いくらいですよ」
「え……?」
す、す、スパルタァ。え? 寝る時間を惜しんでだって……? 彼は最高じゃないですか。
それにジョーダンのブラウンの瞳は、俺を蔑むように見下ろしている。つまり、最初から嫌われているっぽいのだ。
この世界に来てからほとんどこんな目で見られたことはないので、俺は最高に興奮した。
その調子で言葉責めをしながら俺に勉強を教えてくれたら、最高に捗ると思う……何がとは言わないが。
「え? とはなんですか。はぁ……。殿下もダッシュライド公爵閣下も、甘やかしすぎなんですよ。では、先ほどのバトラル様が惚けていた間の部分をもう一度だけ言いますので、今度はしっかりと聞き逃さないようにしてくださいよ」
「はい」
「まず。そろそろ房事の教育も始めようということです」
「……房事って、あの?」
「あの、が何を指しているかは分かりませんが、子供を作るために必要な行為のことです。さらに、オメガであるバトラル様にとっては、ヒートと呼ばれる期間を乗り越えるための行為にもなります」
ゲーム中にもヒートというのはあった。
発情期のことらしいが、現段階で俺にはまだ来ていないためどんな感覚なのか、かなり気になるところだ。
「恥ずかしがっていても、どの道学ばなければならないのですから、今度こそちゃんと聞いていてください」
「はい」
「バトラル様は、現在皇太子殿下とご婚約をされておりますが、この国にオメガで生まれた以上、複数の夫を持つことは義務でございます。皇太子殿下とのご成婚が成されたあと、王子がお生まれになられれば、当然、次の夫を迎え、その者の子供を生むのです」
「……はい」
ああ。それは都合よく子を産む家畜扱いされているようで、最高に興奮するな。
この世界に少なめの女性も共にそういう扱いをされているのなら、可哀想だと思うが、女性が少ないとは言ってもオメガと比べるとベータ女性の数が圧倒的に多いので、ベータ女性に関しては一夫一妻制らしい。ベータ女性と結婚する夫の方も、浮気する相手もほとんどいない状況なので、円満な家庭を築けて、その結果子も増えると言う、良い循環なのだそうだ。
「かつて、女性と男性が半分半分の時代がありました。その頃のアルファは、オメガを独占したがる本能があったそうです。ですが、少しずつ、少しずつ世界から女性の数が減り、それに伴い、アルファ男性はオメガや女性を独占しようとする本能が減ったのです」
「なるほど」
「そして、現在ではオメガ男性の妻はシェアするものという本能に変異しました」
「シェア……」
「はい」
妻はシェアするもの。え、エロ。
とても魅力的ではあるが、結局誰も俺のドマゾ心を満たしてくれそうではないんだよな。
最高にエロい常識を教えてもらったけれども、シェアされたとて、ドロドロ甘々セックスはごめんだ。
やっぱり何度考えても断罪ルートが確実に良い。
俺が今日の授業で学んだことで、一番重要に感じたのはその1つだけだった。
けれども俺は勉強漬けの後、夜中のテンションみたいにハイになる。その感覚が好きだなので皇太子妃教育を苦には感じていない。
俺は週の半分は城へ泊まるので、その日に教育を受けていた。
「バトラル、頑張ってね。私も、皇太子教育が終わればすぐに迎えに行くから。そうしたら、一緒に稽古をしよう。先に終わっても、1人で始めてはダメだよ」
「うん」
クライブは頷く俺を疑わしげに見ながらも、結局時間が来て皇太子教育に向かっていった。
俺もいつもの皇太子妃教育の部屋に向かい、授業を受け始めた。
「……良いですか?」
「え?」
今日から俺の教育担当になったという男が、俺を呆れ顔で見下ろした。
前回までの教育係は女性だったのだが、妊娠により休暇を取ると言うことで目の前の男に変わったらしいのだ。ジョーダン・ギルバー侯爵。若くして宰相補佐を任せられるほどに出来る男らしい。
細い銀フレームのメガネをかけクールな印象があるが、髪の毛は緩いパーマがかかった明るいブラウンを左半分だけかき上げたスタイルで、柔らかさも感じる。だがその柔らかさの下にはきっと仄暗い感情があるに違いない。敬語であるがゆえに、背徳感が増す隠れ執着監禁系とみた。顔が整った男は俺的にはお呼びではないが、妄想をしてしまうのは仕方がない。
ゲームでは彼の5つ年下で俺と同じ年齢の彼の弟が攻略対象だったが、その弟とは接触したことはないし、コリンの言っていた“皇太子殿下からもバイロン先生からも嫌われるように動いて、さらに他の人からも好かれる事のないように行動する”という目標にも影響はなさそうだ。
そんなことを考えていると、頭上から大きなため息が降ってきた。
「バトラル様。あなたはただでさえ週に半分しか城に来られないのですから、来られた時には真面目に勉強してもらわないと困りますよ。前任者からのバトラル様の成績を確認しました。確かに進みは早いですが、それならさらに他のことを勉強する時間に当てて、詰め込んでいただかないと。正直言って、ご成婚なさるまでの間、寝る時間を惜しんで勉強しても良いくらいですよ」
「え……?」
す、す、スパルタァ。え? 寝る時間を惜しんでだって……? 彼は最高じゃないですか。
それにジョーダンのブラウンの瞳は、俺を蔑むように見下ろしている。つまり、最初から嫌われているっぽいのだ。
この世界に来てからほとんどこんな目で見られたことはないので、俺は最高に興奮した。
その調子で言葉責めをしながら俺に勉強を教えてくれたら、最高に捗ると思う……何がとは言わないが。
「え? とはなんですか。はぁ……。殿下もダッシュライド公爵閣下も、甘やかしすぎなんですよ。では、先ほどのバトラル様が惚けていた間の部分をもう一度だけ言いますので、今度はしっかりと聞き逃さないようにしてくださいよ」
「はい」
「まず。そろそろ房事の教育も始めようということです」
「……房事って、あの?」
「あの、が何を指しているかは分かりませんが、子供を作るために必要な行為のことです。さらに、オメガであるバトラル様にとっては、ヒートと呼ばれる期間を乗り越えるための行為にもなります」
ゲーム中にもヒートというのはあった。
発情期のことらしいが、現段階で俺にはまだ来ていないためどんな感覚なのか、かなり気になるところだ。
「恥ずかしがっていても、どの道学ばなければならないのですから、今度こそちゃんと聞いていてください」
「はい」
「バトラル様は、現在皇太子殿下とご婚約をされておりますが、この国にオメガで生まれた以上、複数の夫を持つことは義務でございます。皇太子殿下とのご成婚が成されたあと、王子がお生まれになられれば、当然、次の夫を迎え、その者の子供を生むのです」
「……はい」
ああ。それは都合よく子を産む家畜扱いされているようで、最高に興奮するな。
この世界に少なめの女性も共にそういう扱いをされているのなら、可哀想だと思うが、女性が少ないとは言ってもオメガと比べるとベータ女性の数が圧倒的に多いので、ベータ女性に関しては一夫一妻制らしい。ベータ女性と結婚する夫の方も、浮気する相手もほとんどいない状況なので、円満な家庭を築けて、その結果子も増えると言う、良い循環なのだそうだ。
「かつて、女性と男性が半分半分の時代がありました。その頃のアルファは、オメガを独占したがる本能があったそうです。ですが、少しずつ、少しずつ世界から女性の数が減り、それに伴い、アルファ男性はオメガや女性を独占しようとする本能が減ったのです」
「なるほど」
「そして、現在ではオメガ男性の妻はシェアするものという本能に変異しました」
「シェア……」
「はい」
妻はシェアするもの。え、エロ。
とても魅力的ではあるが、結局誰も俺のドマゾ心を満たしてくれそうではないんだよな。
最高にエロい常識を教えてもらったけれども、シェアされたとて、ドロドロ甘々セックスはごめんだ。
やっぱり何度考えても断罪ルートが確実に良い。
俺が今日の授業で学んだことで、一番重要に感じたのはその1つだけだった。
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