肉便器エンド!? それって最高じゃん

いちみやりょう

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8:お茶会のお誘い

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「バトラルっ、大丈夫だったのか? 池に飛び込んだと聞いたがどこかぶつけたか? 殿下から何もされていないか?」
「父上、んん……だ、い、じょうぶです」

父親からバスタオルで包まれて、ソフトに、それでいて的確に水滴を拭われながら俺は何とか返事をした。殿下から何かされていないかの確認は、俺にしか聞こえないくらいの小さな声で確認されたけど、それでも、俺の横で侍従に拭われている皇太子は俺たちをジト目で見ている。
父親とこんな風な接し方をしているのは、流石に恥ずかしいことだろう。

(あー、しまったなぁ。羞恥プレイとか視姦ははまだ未開発なんだよな。ドMの俺としたことが……)

表向きは無表情を貫いていたが胸の奥でぼやいていた。

「先ほど陛下から打診があってね。バトラルも殿下から聞かされたかな。婚約のこと」
「はい」
「バトラルは、今日は様子を見てくるだけのつもりだったと思うけど、ちゃんと会って話してみて殿下と結婚しても良いと思ったか?」

父親の真剣な顔に、俺も真剣な目で見て返した。

「はい」
「そうか。ならば陛下とは様々な書類を交わさなければならないな。急いで家に帰って書類を作成しなければ」
「父上?」
「バトラル、大丈夫。私がちゃんと契約を作り込むから」
「え? はぁ。ありがとうございます? うわぁっ」

父親は、俺を抱き上げて皇太子に向かい膝をつけ、頭を下げた。

「それでは殿下、御前を失礼いたします」
「……ああ」

そうして、俺は父親に抱き上げられたまま伯爵家の馬車に乗せられて屋敷に帰宅した。

婚約をしたとしても、貴族学園に入学するまでの間、慣例的に2人でのお茶会が月1くらいで行われるだけで、皇太子との触れ合いはないはずだ。そうした冷遇もあってバトラルは拗らせていき、ヒロインの暗殺未遂を犯すのだから。皇太子のことを好きなわけではないが、放置されるのならば、俺としてはそれを放置プレイとして楽しむだけだ。

「さてさて……ぬへへ」

窓の外に見える伯爵家で雇っている騎士たちの鍛錬の様子を見ながら、妄想を楽しんでいるとトントンとノック音が聞こえた。

「はい、どうぞ」
「失礼します。バトラル坊ちゃん。皇太子殿下からお手紙が届いております」
「ありがとう」

届けてくれたのは、執事長のロータルだ。黒髪を後ろに撫でつけ、銀フレームのメガネをつけた冷たい瞳の男だ。バトラルになった初日に父親から呼ばれていることを伝えたのもロータルだ。おそらくロータルはドSだろう。いや、俺の妄想の中でロータルはドSで決定している。この冷たい表情の男に『まだまだイケるでしょう? 逃げないでください。これはあなたへのお仕置きですよ』などと言われて、調教される妄想は、皇太子の婚約者決めのお茶会以降何度も何度もした。

「読まれないのですか?」
「あー、読むよ」

妄想に浸る俺を訝しげに見つめるロータルに応え、皇族のいかつい蝋印のついた手紙の封を開けた。

「あー」
「どのような内容だったのですか?」
「またお茶をしたいって。あれから1ヶ月も経っていないのにもう3度目だよ」

そう。婚約者を決めるあのお茶会から1ヶ月も経たないうちに、2人きりのお茶会をすでに2回も行っている。

「バトラル坊ちゃんが皇太子殿下に大切にされているようで、私は嬉しゅうございます」
「うん……ありがとう」

俺のドSなロータルの妄想とは裏腹に、ロータルはその冷たい眼差しを緩め俺に微笑みかけた。
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