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迅英さんの変化
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僕は迅英さんが起きるのを待った。
ラットになっていたから僕としたと分かったら後悔するかもしれない。
迅英さんが起きたときの反応を想像すると僕は怖かった。
でももしかしてこれが最後のチャンスかもしれないからと思って、僕は迅英さんの胸に身を寄せた。
あったかい。
心地いいなぁ。
迅英さんも僕と居て心地いいと思ってくれたらいいのにな。
しばらくして迅英さんが身じろいで起きそうになった。
僕はどんなことを言われてもいいように身構えた。
「ん、もう起きてたのか」
「あ……はい」
「おはよう」
「お、はようございます」
「……昨日は……悪かった」
迅英さんの辛そうな顔を見てズキっと心臓が大きく痛んだ。
やっぱり後悔してるんだ。
そりゃそうだろうけど。
「気になさらないでください。幸い、うなじは噛まれていませんので」
ニコリと笑ってそう告げると迅英さんは悲しそうな顔をした気がした。
「朝飯を、一緒に食べないか?」
「えっと、僕と……ですよね」
「いやか?」
「あ、いえ! 全然嫌じゃないです。ただその」
「なんだ」
「あ、いえ。その……今回は少しヒートが長めだったので朝食を食べるお金が、無くてですね」
「は?」
「いやだからその……、給料日の後にしていただけませんか?」
「家で食べないかと話しているんだが」
「それは分かっているんですが、家にある食材は今、迅英さんの分しか無くて」
「すまない……、何を言ってるか分からないんだが……、俺の食材しかなくて菜月くんはどうするつもりだったんだ?」
「今日まではバイトがお休みでしたのでいつも通り迅英さんの朝食を作ってからここに篭る予定だったので朝食は食べる予定はありませんでしたけど」
「……なぜ、俺が渡した食費で食事しない」
ワントーン下がったような迅英さんの声で僕は迅英さんを怒らせてしまったのだと悟った。
もしかしたら僕が普段から食費をごまかしていると思っているのかもしれない。
「あ、えっと、ちゃんと、渡された食費はあの、迅英さんの1ヶ月の食費に当てて、あのちゃんと、僕は使ってないです! あ、えっと、家計簿とレシートを取ってあります! ぼ、僕、1円も使ってないですから! 家計簿今すぐ持ってきます!!」
「いい」
「え」
「これからはもう少し多めに渡すから、菜月くんの分の食費もそこから出してくれ」
「や、そこまでしていただくわけには。僕は家賃も光熱費も出していただいているので」
「いいから……頼む」
いつになく真剣な眼差しの迅英さんに押されて僕はうなずいてしまった。
だけどなんで?
ラットで無理やりしてしまった責任を感じているのだろうか。
まぁ何にしてもあまりにも迅英さんに甘えすぎてしまっても申し訳ないので野菜の切れ端や肉の切れ端などをもらって後は貯金していずれ来る別れの時にお返ししようと思った。
だがその計画はうまくいかず、迅英さんが何かと僕を食事を誘うようになって少しでも僕の皿のおかずが少ないと自分の皿から僕の皿に移してくるようになった。
休みの日にどこかに出かけようと誘われることも多くなってその度に服やお菓子などをプレゼントされて、僕は擬似的に好きな人から愛されるってこんな感じなのかぁと幸せに浸ることができていた。
ラットになっていたから僕としたと分かったら後悔するかもしれない。
迅英さんが起きたときの反応を想像すると僕は怖かった。
でももしかしてこれが最後のチャンスかもしれないからと思って、僕は迅英さんの胸に身を寄せた。
あったかい。
心地いいなぁ。
迅英さんも僕と居て心地いいと思ってくれたらいいのにな。
しばらくして迅英さんが身じろいで起きそうになった。
僕はどんなことを言われてもいいように身構えた。
「ん、もう起きてたのか」
「あ……はい」
「おはよう」
「お、はようございます」
「……昨日は……悪かった」
迅英さんの辛そうな顔を見てズキっと心臓が大きく痛んだ。
やっぱり後悔してるんだ。
そりゃそうだろうけど。
「気になさらないでください。幸い、うなじは噛まれていませんので」
ニコリと笑ってそう告げると迅英さんは悲しそうな顔をした気がした。
「朝飯を、一緒に食べないか?」
「えっと、僕と……ですよね」
「いやか?」
「あ、いえ! 全然嫌じゃないです。ただその」
「なんだ」
「あ、いえ。その……今回は少しヒートが長めだったので朝食を食べるお金が、無くてですね」
「は?」
「いやだからその……、給料日の後にしていただけませんか?」
「家で食べないかと話しているんだが」
「それは分かっているんですが、家にある食材は今、迅英さんの分しか無くて」
「すまない……、何を言ってるか分からないんだが……、俺の食材しかなくて菜月くんはどうするつもりだったんだ?」
「今日まではバイトがお休みでしたのでいつも通り迅英さんの朝食を作ってからここに篭る予定だったので朝食は食べる予定はありませんでしたけど」
「……なぜ、俺が渡した食費で食事しない」
ワントーン下がったような迅英さんの声で僕は迅英さんを怒らせてしまったのだと悟った。
もしかしたら僕が普段から食費をごまかしていると思っているのかもしれない。
「あ、えっと、ちゃんと、渡された食費はあの、迅英さんの1ヶ月の食費に当てて、あのちゃんと、僕は使ってないです! あ、えっと、家計簿とレシートを取ってあります! ぼ、僕、1円も使ってないですから! 家計簿今すぐ持ってきます!!」
「いい」
「え」
「これからはもう少し多めに渡すから、菜月くんの分の食費もそこから出してくれ」
「や、そこまでしていただくわけには。僕は家賃も光熱費も出していただいているので」
「いいから……頼む」
いつになく真剣な眼差しの迅英さんに押されて僕はうなずいてしまった。
だけどなんで?
ラットで無理やりしてしまった責任を感じているのだろうか。
まぁ何にしてもあまりにも迅英さんに甘えすぎてしまっても申し訳ないので野菜の切れ端や肉の切れ端などをもらって後は貯金していずれ来る別れの時にお返ししようと思った。
だがその計画はうまくいかず、迅英さんが何かと僕を食事を誘うようになって少しでも僕の皿のおかずが少ないと自分の皿から僕の皿に移してくるようになった。
休みの日にどこかに出かけようと誘われることも多くなってその度に服やお菓子などをプレゼントされて、僕は擬似的に好きな人から愛されるってこんな感じなのかぁと幸せに浸ることができていた。
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