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18 死んだフリ作戦
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俺たちの作戦は、名付けて『死んだふり作戦』だ。
1割の兵で数時間の間、仮死状態にする薬を飲み、殺されたように見せかけ倒れておく。その後ろにも大量のわらで作った人形に軍服を着せて、まるで大量の死体があるように見せかけた。
敵には仮死状態の兵を確認させ、こちらの兵が圧倒的に少なくなっていると油断させる。
後ろから回り込ませた兵や死体に紛れ込ませた兵で、挟み撃ちにしてやっつけてしまおうという作戦で、当然そうそううまく行くとは思っていなかった。
だが、時間もなく、取れる手段も限られている今の状況では多くの犠牲が出る可能性のあるその作戦にすがらざるを得なかった。
実際に蓋を開けてみれば、もともと俺たちの倍の人数がいる敵は最初から油断していて、俺たちの兵がもっと減っていると信じきった敵兵をさらに油断させることができて、作戦は案外うまくいき、敵の6割の兵を削ることができた。
死体役に紛れる奇襲班に居た俺は死に物狂いで戦った。
敵は少しずつ撤退しながら戦い、俺たちは木の生い茂ったあたりまで進出し、戦いはそのまま森で続いた。
敵を6割減らした後はどれくら減らせているのかは分からないが、こちらが押しているはずなので下手に守りに入らず、攻めの姿勢を貫いた。
だが途中でユリスが足を負傷した。
それを守りながら戦うと、柔らかい土に足を取られるのもあり苦戦した。
「隊長! 僕は大丈夫だから進んでください!」
ユリスは何度もそう言った。
だが、見捨てられるはずもなかった。
「おい、こいつ隊長だぞ!」
「せめてこいつをやればただの撤退にはならないな」
階級章で判断したらしい敵兵2人は負傷したユリスを盾に俺を殺すつもりらしく、ユリスを生け捕りにしようと襲いかかった。
俺はそれの間に入り込み、奴らの腹に剣を差し込む。
俺も傷だらけの体でユリスを庇いながら戦うのはかなり難しく、腹と足に傷を負ってしまった。血をかなり失ってしまっているらしく歩く力もない。
目視できる範囲には敵も味方もいないが、俺を連れて動けばユリスまで死にかねない。
こんな決断はできればしたくなかったな。
俺は息をついてユリスを見た。
心配そうに俺を見つめるユリスに笑いかける。
「ユリス……隊長命令だ。撤退しろ……。敵もかなり戦力が減り、こんなところまで侵出できた。今回は、もう十分だろう」
「はい。では肩を貸しますので隊長も一緒に」
いつになく丁寧な口調のユリスに面白くなり、少し笑ってから首を振って見せた。
「俺は多分もう、無理だ。ユリスも負傷している。俺を連れて行けばお前が無事でいる確率は限りなく低いだろう」
「嫌だ。僕は隊長と一緒に」
泣きそうな顔で訴えてくるユリスに、俺はまた「隊長命令だ」と告げた。
「ユリス。俺の階級章、取ってくれるか」
もう力の入らない手では自分で取ることができず、ユリスに頼んだ。
俺の顔というよりも、階級章で判断していた敵は、この階級章さえなければ俺の死体になど見向きもしないだろう。
ユリスは小さくうなずいて、震える手で俺の階級章を外してくれた。
「それから、胸ポケットに、写真が入ってる。それを……、膝の上に置いて行ってくれ」
「……はい」
戦功を挙げて元気に帰るつもりだったんだけどな。
そして、教官の幸せそうな顔を見て、看取らせない生き方をできない俺と一緒にならない方が、教官の為だったんだと自分を納得させたかった。
「……隊長」
「もう行け。他の兵にも撤退だと伝えろ……。それがお前の役目だ」
「……はい」
涙まじりの声で返事をして、ユリスは俺の前から去っていった。
1割の兵で数時間の間、仮死状態にする薬を飲み、殺されたように見せかけ倒れておく。その後ろにも大量のわらで作った人形に軍服を着せて、まるで大量の死体があるように見せかけた。
敵には仮死状態の兵を確認させ、こちらの兵が圧倒的に少なくなっていると油断させる。
後ろから回り込ませた兵や死体に紛れ込ませた兵で、挟み撃ちにしてやっつけてしまおうという作戦で、当然そうそううまく行くとは思っていなかった。
だが、時間もなく、取れる手段も限られている今の状況では多くの犠牲が出る可能性のあるその作戦にすがらざるを得なかった。
実際に蓋を開けてみれば、もともと俺たちの倍の人数がいる敵は最初から油断していて、俺たちの兵がもっと減っていると信じきった敵兵をさらに油断させることができて、作戦は案外うまくいき、敵の6割の兵を削ることができた。
死体役に紛れる奇襲班に居た俺は死に物狂いで戦った。
敵は少しずつ撤退しながら戦い、俺たちは木の生い茂ったあたりまで進出し、戦いはそのまま森で続いた。
敵を6割減らした後はどれくら減らせているのかは分からないが、こちらが押しているはずなので下手に守りに入らず、攻めの姿勢を貫いた。
だが途中でユリスが足を負傷した。
それを守りながら戦うと、柔らかい土に足を取られるのもあり苦戦した。
「隊長! 僕は大丈夫だから進んでください!」
ユリスは何度もそう言った。
だが、見捨てられるはずもなかった。
「おい、こいつ隊長だぞ!」
「せめてこいつをやればただの撤退にはならないな」
階級章で判断したらしい敵兵2人は負傷したユリスを盾に俺を殺すつもりらしく、ユリスを生け捕りにしようと襲いかかった。
俺はそれの間に入り込み、奴らの腹に剣を差し込む。
俺も傷だらけの体でユリスを庇いながら戦うのはかなり難しく、腹と足に傷を負ってしまった。血をかなり失ってしまっているらしく歩く力もない。
目視できる範囲には敵も味方もいないが、俺を連れて動けばユリスまで死にかねない。
こんな決断はできればしたくなかったな。
俺は息をついてユリスを見た。
心配そうに俺を見つめるユリスに笑いかける。
「ユリス……隊長命令だ。撤退しろ……。敵もかなり戦力が減り、こんなところまで侵出できた。今回は、もう十分だろう」
「はい。では肩を貸しますので隊長も一緒に」
いつになく丁寧な口調のユリスに面白くなり、少し笑ってから首を振って見せた。
「俺は多分もう、無理だ。ユリスも負傷している。俺を連れて行けばお前が無事でいる確率は限りなく低いだろう」
「嫌だ。僕は隊長と一緒に」
泣きそうな顔で訴えてくるユリスに、俺はまた「隊長命令だ」と告げた。
「ユリス。俺の階級章、取ってくれるか」
もう力の入らない手では自分で取ることができず、ユリスに頼んだ。
俺の顔というよりも、階級章で判断していた敵は、この階級章さえなければ俺の死体になど見向きもしないだろう。
ユリスは小さくうなずいて、震える手で俺の階級章を外してくれた。
「それから、胸ポケットに、写真が入ってる。それを……、膝の上に置いて行ってくれ」
「……はい」
戦功を挙げて元気に帰るつもりだったんだけどな。
そして、教官の幸せそうな顔を見て、看取らせない生き方をできない俺と一緒にならない方が、教官の為だったんだと自分を納得させたかった。
「……隊長」
「もう行け。他の兵にも撤退だと伝えろ……。それがお前の役目だ」
「……はい」
涙まじりの声で返事をして、ユリスは俺の前から去っていった。
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