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5 サバイバル訓練 

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ゆらゆらと揺れる感覚で目を開けると俺はいつもの目線より高いところにいた。
それにエドガー隊長の匂いがする。
ああ、もしかして元の世界に戻ってこれたのだろうか。

「って、ええ!? エドガー隊長!?」
「……うるさいな。それに俺は隊長ではない」
「あ、あ、えっと。エドガー教官、とりあえず降ろしてください。俺自分で歩けます」

そう言って名残惜しくもエドガーの背中から降りようとしたけど、エドガーが俺の足をギュッとして離さないので諦めて背中におさまった。

お互いに無言で、早朝の静けさの中にエドガーの足音だけが響いていた。
エドガー隊長は俺が自分の妹を殺した犯人かもしれないって思ってるんだよな。
それなのに倒れた訓練兵をこうやって運ぶところは、やっぱエドガー隊長なんだよな。

「……俺は、教官失格だな」

隊長がぽつりとそんなことを呟いた。

「え?」
「訓練兵が倒れることも考慮しなければいけなかった」
「あっ、いえ、俺が勝手について走っていただけなのに、むしろすみません」
「……君が謝ることじゃない。それに俺は君への態度も悪いだろう。私情を挟むべき立場ではないのに、すまなかった」
「それは……。理由は噂で聞いてます。俺みたいな容姿の平民って他にいないし俺のこと疑っても仕方ないと思いますから。それに俺、俺がやってないってはっきり否定できないんです」
「なに?」
「すみません。俺はやってないと思いたいですけど、昔の記憶が曖昧で。俺の入学が1年遅れたのは事故で怪我をしたかららしいんですが、そのことも覚えていないんですよ」
「そうだとしても、やってないと言えばいいだろう。君の記憶が曖昧なことなど俺には分からないのだから」
「エドガー教官に嘘は付きたくないんですよ。大好きだから」
「……そうか」

エドガー隊長はいつものように『俺は好きじゃない』とは言わなかった。
それが何だか嬉しかった。
しばらくして保健室に連れて行かれてベットに下ろされた。

「午前中はここで休んでいるといい」
「え、いえ! すぐ戻ります!」
「だめだ。お前は走り込みの他に素振りやら筋トレやらで休息をとっていないだろう」
「え……知っていらしたんですか」

隊長は俺のその言葉には答えずに、苦い顔をして俺から離れた。

「午後からは休まず訓練に出るように」
「はい……あの、ありがとうございました」
「……ああ」

午前中はエドガー隊長の言いつけ通り、保健室にいた。
だが、もう体は何とも無かったので筋トレをして午後から訓練に出た。

グラウンドに出ると、他のクラスの生徒も並んでいていつもよりかなり人数が多い。

『これより、1学年サバイバル訓練を行う!!』

メガホンを持った学年主任の教官が叫んだ。

ーーサバイバル?
ーー聞いてねぇよな

周りの生徒は口々に困惑の声を出している。

『私語を慎め! 準備して行っては意味がない! これは抜き打ちサバイバル訓練だ。現地に到着次第2週間のサバイバルを予定している!! 行きたくないものは行かなくていい! 荷物をまとめて家に帰れ!!』

私語をしていた生徒たちは一斉に口を閉じた。

『今回の訓練で成績の良かったものは2年間の訓練期間終了後、好きな隊への希望を受け付ける!!』

前の世界の時もあったがここまで早くは無かった。
だが、成績優秀者の褒美は前回と同じだ。
俺は俄然やる気が出てきた。
この世界でもエドガー隊長が隊長になるのかは分からないが、もしもの時、その隊に入る権利はとっておきたい。

そうして、1学年の生徒全員で無人島へ向けて出発した。
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