43 / 65
21章:ほのかな期待
21-3
しおりを挟む家に入ると、修はまだ帰ってきてなかった。
コートを脱いで手を洗い、エアコンをつける。
そして少ししてソファに座ると、
「興味の出たことってなんだ……」
そう呟いて、スマホを手に取った。
数秒のち、私はスマホのインターネットの検索窓に、思いついた文字を入力する。
怪しそうなサイトが並ぶその中の、どこかで聞いた書籍サイトをクリックする。
(漫画の試し読み……)
「……ふぁっ!」
開いて、すぐ閉じた。
でも、結局また開いた。そしてまじまじと画面を見つめる。
「みんな本当にこんなことしてたの……。嘘でしょっ⁉」
酔っているせいか、また頭がくらりとする。
その時、
「何してるんだ?」
「ふぉっ!」
後ろから声をかけられて、変な声を発するとともにスマホが飛んだ。あわててそれを取って、咄嗟に自分の後ろに隠す。
(み、見られてないわよね……⁉)
「いや、その、なんでもない。おかえりなさい!」
修は私の顔を見ると顔を近づけてくる。
近い修の顔と、先程の画面も相まって、心臓が激しく脈打つのを感じていた。
「顔赤いな。お酒も飲んできた?」
「あ、うん。今日理学部に用事があって……芦屋先生と」
「芦屋か」
修はため息をつくと、続ける。「もしかして何か変なことでも吹き込まれた?」
「まさかっ」
(どういう意味よっ! 全く外れてるわけではないところが恐ろしい!)
「ふぅん」
「なによっ!」
叫んで修を睨むが、コレは自分に後ろ暗いところがあるからだ。もう完全に逆ギレだ。
早くスマホの画面を消さないと……!
焦りながらそう思っていると、突然強く抱きしめられた。
「ひゃぅっ⁉︎」
変な声が口から飛び出る。
「その声、今はちょっときついかも……寝不足だから余計……」
「ふぁっ、ご、ごめっ、変な声でて……」
「なんで謝るんだ」
「だってこんな声っ、変だからっ。も、聞かないでぇっ」
もう、いろいろとだめだ。
先程の画面が頭を回る。修にも見られたくない。
抱きしめるのも即刻やめていただきたい。心臓が口から出る……。
泣きながら懇願すると、修は怒ったように頭を掻いた。
「ったく。これ、何の修行だよ……」
「な、なに」
私が身を引こうとすると、修は私の腕を持ち、つめよってくる。
「キスさせろ」
「えっ⁉」
(ど、どういうこと⁉ しかも命令形って……)
思わず修を見つめると、修は真剣な目で私を射抜く。
「いいな」
低く、有無を言わさない言葉で縛られると、私の全身は熱くなった。
ーーーなんで今、そんな強い口調で言うのよ……。断れなくなる。
「ふぁ、ふぁいっ……んっ」
頷いたと同時、唇が重なる。
それから何度も啄むようにキスされて、目を瞑ると、そのまま舌が口内を這いまわった。
「んんっ……!」
久しぶりの濃いキスに頭がクラクラする。後頭部を持たれ、何度も舌を這わせられ、うっとりした目をした修と目が合うと、自分の視界が霞んだ。
「かわいい。くるみ」
「んっ……」
またドキリとして、そのうち舌を自分から絡ませていた。
頭から指の先までドキドキしてる……。これは、なんだろう。
もっと、修とキスしたくて。
知りたくて……もっともっと修の近くにいたくなって。
ーーーこのまま、修になら食べられても……。
そう思った時、修はそっと私から唇を離す。
私はそれが名残惜しくて、そのままぼんやりした目で修の唇を追っていた。
修は私の頬を優しく撫でると、立ち上がって、シャワー浴びてくる、と言った。
私はその後姿を見ながら考える。
ーーーあのままキスが続いていたらどうしてたんだろう……。
やけに顔が熱い。心臓の音も落ち着く気配すら見せない。
どうしたらいいのかわからなくなって、私は自分の頭をガシガシ掻いていた。
1
お気に入りに追加
208
あなたにおすすめの小説
隠れオタクの女子社員は若社長に溺愛される
永久保セツナ
恋愛
【最終話まで毎日20時更新】
「少女趣味」ならぬ「少年趣味」(プラモデルやカードゲームなど男性的な趣味)を隠して暮らしていた女子社員・能登原こずえは、ある日勤めている会社のイケメン若社長・藤井スバルに趣味がバレてしまう。
しかしそこから二人は意気投合し、やがて恋愛関係に発展する――?
肝心のターゲット層である女性に理解できるか分からない異色の女性向け恋愛小説!
誘惑の延長線上、君を囲う。
桜井 響華
恋愛
私と貴方の間には
"恋"も"愛"も存在しない。
高校の同級生が上司となって
私の前に現れただけの話。
.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚
Иatural+ 企画開発部部長
日下部 郁弥(30)
×
転職したてのエリアマネージャー
佐藤 琴葉(30)
.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚
偶然にもバーカウンターで泥酔寸前の
貴方を見つけて…
高校時代の面影がない私は…
弱っていそうな貴方を誘惑した。
:
:
♡o。+..:*
:
「本当は大好きだった……」
───そんな気持ちを隠したままに
欲に溺れ、お互いの隙間を埋める。
【誘惑の延長線上、君を囲う。】
ヤリたい男ヤラない女〜デキちゃった編
タニマリ
恋愛
野獣のような男と付き合い始めてから早5年。そんな彼からプロポーズをされ同棲生活を始めた。
私の仕事が忙しくて結婚式と入籍は保留になっていたのだが……
予定にはなかった大問題が起こってしまった。
本作品はシリーズの第二弾の作品ですが、この作品だけでもお読み頂けます。
15分あれば読めると思います。
この作品の続編あります♪
『ヤリたい男ヤラない女〜デキちゃった編』
十年越しの溺愛は、指先に甘い星を降らす
和泉杏咲
恋愛
私は、もうすぐ結婚をする。
職場で知り合った上司とのスピード婚。
ワケアリなので結婚式はナシ。
けれど、指輪だけは買おうと2人で決めた。
物が手に入りさえすれば、どこでもよかったのに。
どうして私達は、あの店に入ってしまったのだろう。
その店の名前は「Bella stella(ベラ ステラ)」
春の空色の壁の小さなお店にいたのは、私がずっと忘れられない人だった。
「君が、そんな結婚をするなんて、俺がこのまま許せると思う?」
お願い。
今、そんなことを言わないで。
決心が鈍ってしまうから。
私の人生は、あの人に捧げると決めてしまったのだから。
⌒*。*゚*⌒*゚*。*⌒*。*゚*⌒* ゚*。*⌒*。*゚
東雲美空(28) 会社員 × 如月理玖(28) 有名ジュエリー作家
⌒*。*゚*⌒*゚*。*⌒*。*゚*⌒* ゚*。*⌒*。*゚
貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈
玖羽 望月
恋愛
朝木 与織子(あさぎ よりこ) 22歳
大学を卒業し、やっと憧れの都会での生活が始まった!と思いきや、突然降って湧いたお見合い話。
でも、これはただのお見合いではないらしい。
初出はエブリスタ様にて。
また番外編を追加する予定です。
シリーズ作品「恋をするのに理由はいらない」公開中です。
表紙は、「かんたん表紙メーカー」様https://sscard.monokakitools.net/covermaker.htmlで作成しました。
好きな男子と付き合えるなら罰ゲームの嘘告白だって嬉しいです。なのにネタばらしどころか、遠恋なんて嫌だ、結婚してくれと泣かれて困惑しています。
石河 翠
恋愛
ずっと好きだったクラスメイトに告白された、高校2年生の山本めぐみ。罰ゲームによる嘘告白だったが、それを承知の上で、彼女は告白にOKを出した。好きなひとと付き合えるなら、嘘告白でも幸せだと考えたからだ。
すぐにフラれて笑いものにされると思っていたが、失恋するどころか大切にされる毎日。ところがある日、めぐみが海外に引っ越すと勘違いした相手が、別れたくない、どうか結婚してくれと突然泣きついてきて……。
なんだかんだ今の関係を最大限楽しんでいる、意外と図太いヒロインと、くそ真面目なせいで盛大に空振りしてしまっている残念イケメンなヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりhimawariinさまの作品をお借りしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる