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8章:5年前②
8-2
しおりを挟む遅い夕飯を食べて、それから修はシャワーを浴びにバスルームに行って、私は自分の部屋ではなく、リビングで修が来るのを待っていた。
お風呂上がりの修から、同じシャンプーとボディソープの匂いがする。
私はそれが嬉しくてまた微笑む。
「まだもう少し本読みたいんだけど」
「私も隣にいていい?」
「いいよ」
修がそう言ってくれて、嬉しくて微笑む。
修がソファで医学書を読みだすと、私はその横で修にもたれかかった。
ただ、修はずっと真剣にそれを読んでて、私は30分もしないうちにそれがすごく寂しくなってしまって、修に抱き着いた。
「こうしてていい?」
「読みにくい」
「いいじゃん。……やっと掴んだんだから」
私は修の背に回した手に力を込めた。「修の事、小さい時からずっと好きだったんだから」
修の顔を見ると、そのまま修がキスをしてくれる。
唇が離れた時、なぜか恥ずかしくなって顔を下に向けた。
「くるみは自分からするときは照れない癖に、こっちからすると照れるんだな」
「し、しらないぃぃいいい……!」
修からされると、なんだかすごく恥ずかしいのはなんでだろう。
そんなの考えたことなかったけど、確かにそうなのだ。
修の顔をちらりと見ると、修は悪い顔で笑っていた。
なんだか、いじめっ子の顔してる……。
「な……なによ、その顔」
「ハハ、もっといじめたくなるな」
修はそう言うと、私の手首を軽くつかむ。
それから、顔をまた近づけてきた。
(やっぱり、なんだかすっごい恥ずかしい!)
「やっ」
私は思わず顔を背ける。
でも、結局顎も持たれて、そのままキスをされた。
「ふっ……んっ……!」
唇が触れたまま、そのまま長いキスが続く。
あったかくて、優しいキス。嬉しくて仕方ない。
最初は近所のお兄ちゃんだった。
いつのまにか、大好きな人になってた。
そんな修とのキスは嬉しい。
嬉しいけど……な、長い!
やっと修の唇が離れた時、私はぜーぜーと何度も吸って吐いて息をした。
「長いっ! 息できない!」
叫んで、いつのまにか出ていた涙をぬぐう。
「嬉しくて泣くなよ」
「苦しかったの!」
私が怒ると、修は楽しそうに笑った。
その顔も好きだな、なんて思っているのだから重症だ。
修が私の頬をそっと撫でる。
「じゃ、もうやめとくか?」
ちがうの。やめたくなんてない。
「もっとする」
もっと、もっと……ずっと。
―――こうしていたいって思ってるんだ。
私は今度は自分から口付け、
修の背中に腕を回し、その背をもう絶対に離さないというようにぎゅうっと掴んでいた。
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