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17章:注がれる愛が重すぎる

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 髪を優しく撫でる感覚がして、夜のまどろみの中、目を開ける。
 すると、先輩が愛おしそうな目で私を見ていた。

「ん……私、寝てました?」
「うん、少しね」

「先輩は……寝てなかったんですか? ちゃんと寝ないと……」

 続けようとした瞬間、唇が合わさる。

「……んんっ!」
 
 そのまま何度もキスをされて、するりと舌が入り込むと、全部を奪うように口の中を舐めつくされた。起きがけにそんなことをされると、熱に浮かされて、頭がおかしくなりそうになる。
 慌てて先輩の胸を押しても、先輩はやめてくれなくて、そのまま唇を首すじに落とした。

「ちょ、待って! 待って! もう散々しましたよね⁉ 覚えてないんですか⁉」

 まさか、とは思うもののそんなことを聞いてみる。
 先輩はクスリと笑うと、

「うん、ちゃんと覚えてる。みゆとしたことは全部覚えてるよ。みゆの身体のことも全部」
「それはそれで……いやぁ!」

 泣きそうになった、いや、泣いた私の涙を舐めとって、先輩は楽しそうに笑う。


「みゆ、眠る前に『ずっと一緒にいたい』って言ったの覚えてる?」


 そう言われて私は混乱した。
 やっぱあれは夢じゃなくて、本当に言ってたんだ……。先輩、どう思ったんだろう。そんなことが気になった。するとその考えに返事をするように、

「みゆがそう言ってくれて、俺はすごく嬉しかったんだ」
「先輩……」


 目が合うと、また二人笑う。今、すごく心が温かい気がする……。


 すると先輩は、私を抱きしめ、

「だからね、もう一度愛させて」
と耳元でささやいた。

「もう一度って!」


(先輩が嬉しく思ってくれたのは良かったけど、ぜったい一度ですまないパターンのやつ!)


「いや、そもそも『だから』って話繋がってました⁉ ……きゃぅっ!」

 混乱する私を知ってか知らずか、次は耳に唇を這わされ、勝手に体が熱くなる。
 あれだけ先輩に愛されきった身体は、先輩のキスだけで反応するようになっていた。

その事実に気づいて、恥ずかしさに目を瞑る。なのに先輩は、

「みゆ、ちゃんと目を開けて俺を見て」

 激しいキスの嵐の合間、私の頬を撫でた。
 その暖かな感触に思わず目を開けると、先輩はまっすぐ私を見ている。


「みゆ愛してる。俺もみゆとずっと一緒にいたい」


 その言葉に、先輩のまっすぐな瞳に、胸がドキドキと極限まで鳴り響く。

(どうしよう。目の前の人が愛しくて、苦しい)


 また唇が合わさる。肌に触れる先輩の熱を持つ手に、余計に反応した。


―――私だってまた抱き合いたい、もっと近くで先輩を感じたいんだ。


 そんなことを思いだした私に、先輩はまだ足りないと言うように、何度も先輩の身体を覚えさせて……

「みゆ、愛してる」

 夜の合間、何度もささやかれる先輩の声が、自分に溶け込んでいく感覚がした。


 次に目を覚ました時はもうすっかり明るくなっていた。
 隣に先輩がいなくて、不安できょろきょろすると、スマホをもって先輩が戻ってくる。

「さっきね、みゆのお父さんから電話あった。無事、容疑者が捕まったって」
「そっか、よかった……」

 容疑者が捕まったのには安心したけど、全然よくなかった。
 だって、先輩と一緒にいられるのも、これまでってことだから。


―――どうしよう。離れたくない。

 そんな思いが身体を駆け巡って、泣きそうになる。


 すると、先輩は私の前に来ると、真剣な顔で、小さな箱を私に差し出した。
 そしてそれを開けると、

「みゆ。俺と結婚してほしい」

とはっきり告げる。
 中には見たことのある指輪が光っていた。


―――これ、最初に先輩が渡してきた指輪。


 私、今、これを『重い』だなんて思ってない。

「……っ」

 それを見ていると、勝手に涙があふれてくる。この指輪で、嬉しくて泣くなんて考えてもなかった。

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