49 / 57
17章:注がれる愛が重すぎる
17-1
しおりを挟む髪を優しく撫でる感覚がして、夜のまどろみの中、目を開ける。
すると、先輩が愛おしそうな目で私を見ていた。
「ん……私、寝てました?」
「うん、少しね」
「先輩は……寝てなかったんですか? ちゃんと寝ないと……」
続けようとした瞬間、唇が合わさる。
「……んんっ!」
そのまま何度もキスをされて、するりと舌が入り込むと、全部を奪うように口の中を舐めつくされた。起きがけにそんなことをされると、熱に浮かされて、頭がおかしくなりそうになる。
慌てて先輩の胸を押しても、先輩はやめてくれなくて、そのまま唇を首すじに落とした。
「ちょ、待って! 待って! もう散々しましたよね⁉ 覚えてないんですか⁉」
まさか、とは思うもののそんなことを聞いてみる。
先輩はクスリと笑うと、
「うん、ちゃんと覚えてる。みゆとしたことは全部覚えてるよ。みゆの身体のことも全部」
「それはそれで……いやぁ!」
泣きそうになった、いや、泣いた私の涙を舐めとって、先輩は楽しそうに笑う。
「みゆ、眠る前に『ずっと一緒にいたい』って言ったの覚えてる?」
そう言われて私は混乱した。
やっぱあれは夢じゃなくて、本当に言ってたんだ……。先輩、どう思ったんだろう。そんなことが気になった。するとその考えに返事をするように、
「みゆがそう言ってくれて、俺はすごく嬉しかったんだ」
「先輩……」
目が合うと、また二人笑う。今、すごく心が温かい気がする……。
すると先輩は、私を抱きしめ、
「だからね、もう一度愛させて」
と耳元でささやいた。
「もう一度って!」
(先輩が嬉しく思ってくれたのは良かったけど、ぜったい一度ですまないパターンのやつ!)
「いや、そもそも『だから』って話繋がってました⁉ ……きゃぅっ!」
混乱する私を知ってか知らずか、次は耳に唇を這わされ、勝手に体が熱くなる。
あれだけ先輩に愛されきった身体は、先輩のキスだけで反応するようになっていた。
その事実に気づいて、恥ずかしさに目を瞑る。なのに先輩は、
「みゆ、ちゃんと目を開けて俺を見て」
激しいキスの嵐の合間、私の頬を撫でた。
その暖かな感触に思わず目を開けると、先輩はまっすぐ私を見ている。
「みゆ愛してる。俺もみゆとずっと一緒にいたい」
その言葉に、先輩のまっすぐな瞳に、胸がドキドキと極限まで鳴り響く。
(どうしよう。目の前の人が愛しくて、苦しい)
また唇が合わさる。肌に触れる先輩の熱を持つ手に、余計に反応した。
―――私だってまた抱き合いたい、もっと近くで先輩を感じたいんだ。
そんなことを思いだした私に、先輩はまだ足りないと言うように、何度も先輩の身体を覚えさせて……
「みゆ、愛してる」
夜の合間、何度もささやかれる先輩の声が、自分に溶け込んでいく感覚がした。
次に目を覚ました時はもうすっかり明るくなっていた。
隣に先輩がいなくて、不安できょろきょろすると、スマホをもって先輩が戻ってくる。
「さっきね、みゆのお父さんから電話あった。無事、容疑者が捕まったって」
「そっか、よかった……」
容疑者が捕まったのには安心したけど、全然よくなかった。
だって、先輩と一緒にいられるのも、これまでってことだから。
―――どうしよう。離れたくない。
そんな思いが身体を駆け巡って、泣きそうになる。
すると、先輩は私の前に来ると、真剣な顔で、小さな箱を私に差し出した。
そしてそれを開けると、
「みゆ。俺と結婚してほしい」
とはっきり告げる。
中には見たことのある指輪が光っていた。
―――これ、最初に先輩が渡してきた指輪。
私、今、これを『重い』だなんて思ってない。
「……っ」
それを見ていると、勝手に涙があふれてくる。この指輪で、嬉しくて泣くなんて考えてもなかった。
2
お気に入りに追加
293
あなたにおすすめの小説
溺婚
明日葉
恋愛
香月絢佳、37歳、独身。晩婚化が進んでいるとはいえ、さすがにもう、無理かなぁ、と残念には思うが焦る気にもならず。まあ、恋愛体質じゃないし、と。
以前階段落ちから助けてくれたイケメンに、馴染みの店で再会するものの、この状況では向こうの印象がよろしいはずもないしと期待もしなかったのだが。
イケメン、天羽疾矢はどうやら絢佳に惹かれてしまったようで。
「歳も歳だし、とりあえず試してみたら?こわいの?」と、挑発されればつい、売り言葉に買い言葉。
何がどうしてこうなった?
平凡に生きたい、でもま、老後に1人は嫌だなぁ、くらいに構えた恋愛偏差値最底辺の絢佳と、こう見えて仕事人間のイケメン疾矢。振り回しているのは果たしてどっちで、振り回されてるのは、果たしてどっち?
社長室の蜜月
ゆる
恋愛
内容紹介:
若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。
一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。
仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
誘惑の延長線上、君を囲う。
桜井 響華
恋愛
私と貴方の間には
"恋"も"愛"も存在しない。
高校の同級生が上司となって
私の前に現れただけの話。
.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚
Иatural+ 企画開発部部長
日下部 郁弥(30)
×
転職したてのエリアマネージャー
佐藤 琴葉(30)
.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚
偶然にもバーカウンターで泥酔寸前の
貴方を見つけて…
高校時代の面影がない私は…
弱っていそうな貴方を誘惑した。
:
:
♡o。+..:*
:
「本当は大好きだった……」
───そんな気持ちを隠したままに
欲に溺れ、お互いの隙間を埋める。
【誘惑の延長線上、君を囲う。】
同期に恋して
美希みなみ
恋愛
近藤 千夏 27歳 STI株式会社 国内営業部事務
高遠 涼真 27歳 STI株式会社 国内営業部
同期入社の2人。
千夏はもう何年も同期の涼真に片思いをしている。しかし今の仲の良い同期の関係を壊せずにいて。
平凡な千夏と、いつも女の子に囲まれている涼真。
千夏は同期の関係を壊せるの?
「甘い罠に溺れたら」の登場人物が少しだけでてきます。全くストーリには影響がないのでこちらのお話だけでも読んで頂けるとうれしいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる