霧開けて、明暗

小島秋人

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九月の彼

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  九月の彼

 早秋よりも残暑と言う言葉の相応しい陽気の頃、焦がした肌の色味も抜け切らぬ少年の私と対比するように青白い彼だった。

 出会いを語るより先に当時の自身に就いてを簡潔に説明しておくと、週末毎に遊戯場に繰り出す非行振りを示していた。自発的な放蕩ではない。博打に出掛ける父が外出の口実を欲して連れ出しては一枚の紙幣を握らせて其処に置き去りにしていたのだ。結果を考えれば恨み言どころか感謝が湧いても良いのだろうが、大人として倣おうとはお世辞にも言えぬ話だ。

 遊戯場で同じ年頃の子供が一人きりに遊ぶ姿を見掛ける機会は少ない、女子ともなれば尚更の事。一言一句迄覚えている訳ではないが、腕前を褒めて近付いた事は記憶に残っている。彼の側も同様の物珍しさで受け入れてくれた様で、打ち解けるのは存外に容易だった。尤も、憚りに付いて来た事で彼を男と知れる迄は其れから更に三、四日を要したが。

 与えられた小遣いを使い切らずとも時間が潰せると言う利点も手伝って彼との会話に割く時間は徐々に増え、何時しか其れ自体が遊戯場に向かう目的に変わっていた。週末毎の通いが日々の物に変わったのも、そう間を置かぬ内の事だった筈だ。

 出会った時から好意が有ったか迄は記憶の範疇に無い。後年に再会を果たした折斯様な話題になったが、彼からしてそんな感情を明確に意識したのは「抱かれてからだ」と言ってのけて居たのだからある意味で似合いだったのだろう。

 見て呉れの良さに思う所が有ったのは確かだ。先ず以て話し掛けた切っ掛けがそうだった。人に彼を紹介した際にも第一に其れを褒められていた所を見ると贔屓目でなく彼は美しかったのだろう。直接に口に出して伝えた機会がどの程度有ったかは記憶に無い。今にして思えば、随分と目を肥やされてしまったものだ。

 数年を経ても、出会った当初の印象から大きな差異は無かった。「第二次性徴を何処に忘れたんだ」と揶揄した事は、今でも悔み切れない。成長障害が腎不全の一般症状に

 タイム、ちょっと無理
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