164 / 164
愛の守護りは君にこそ
40-5
しおりを挟む
~40-5~
「旅行、ですか」
遅めの昼食と共に与えられた提案を復唱する。
「唐突ですね、仲間外れを喰らって臍を曲げられましたか?」
「まぁそんな所だ、何処か希望は無いか?」
問い掛けと共に差し出されたフォークから肉を奪い取りながら思案する。
ニースでのバカンスは満足も大満足、あれを超える旅程はそうも有るまいから希望を問われても正直困ってしまう。抑々今回の旅行にはスポンサーが居ない。先々を考えれば出費は抑えたい筈だろうに…
「金の心配はいらんぞ?」
表情を読んだらしいあの人が先を打つように言った。確かに口止め料として渡されたらしい封筒はバカンスがあと二月は続けられそうな程度の厚みを持っていた。とは言え、移住先での虎の子とするには如何せん頼りない程度とも見えるのだ。
「抑々、国内の観光地ですら殆ど行った事がないのですよね」
そう言えばと浮かんだ独白が不意に口を突いた。
「あぁ、それもそうか…であれば、いや、うん」
「なんですか、急に歯切れの悪い」
「…『俺の里帰りに付き合う』なんてのは、どうかと思ったんだ」
出し掛けた案を引っ込められるのは気分が悪いと悪態を吐くと漸く口を開いた。悪くない、いや寧ろ写真で飽きるほど眺めた観光地などよりも余程魅力的なプランに思える。
「良いではないですか、伴侶として御親族にご挨拶も必要でしょうし」
「そう言い出すだろうと思ったから慌てて引っ込めたんだよ…」
聞けば家出同然に飛び出した手前折り合いが悪いらしい。
「であれば無理にとは申しませんけれど…それでも、貴方が育った場所を見るだけでも興味が有ります」
「…そう目を輝かされると弱いな」
自覚はないけれどどうやら相当に期待に満ちた目で見つめていたらしい。観念したあの人は困った様に眉を下げながら笑った。
「旅行、ですか」
遅めの昼食と共に与えられた提案を復唱する。
「唐突ですね、仲間外れを喰らって臍を曲げられましたか?」
「まぁそんな所だ、何処か希望は無いか?」
問い掛けと共に差し出されたフォークから肉を奪い取りながら思案する。
ニースでのバカンスは満足も大満足、あれを超える旅程はそうも有るまいから希望を問われても正直困ってしまう。抑々今回の旅行にはスポンサーが居ない。先々を考えれば出費は抑えたい筈だろうに…
「金の心配はいらんぞ?」
表情を読んだらしいあの人が先を打つように言った。確かに口止め料として渡されたらしい封筒はバカンスがあと二月は続けられそうな程度の厚みを持っていた。とは言え、移住先での虎の子とするには如何せん頼りない程度とも見えるのだ。
「抑々、国内の観光地ですら殆ど行った事がないのですよね」
そう言えばと浮かんだ独白が不意に口を突いた。
「あぁ、それもそうか…であれば、いや、うん」
「なんですか、急に歯切れの悪い」
「…『俺の里帰りに付き合う』なんてのは、どうかと思ったんだ」
出し掛けた案を引っ込められるのは気分が悪いと悪態を吐くと漸く口を開いた。悪くない、いや寧ろ写真で飽きるほど眺めた観光地などよりも余程魅力的なプランに思える。
「良いではないですか、伴侶として御親族にご挨拶も必要でしょうし」
「そう言い出すだろうと思ったから慌てて引っ込めたんだよ…」
聞けば家出同然に飛び出した手前折り合いが悪いらしい。
「であれば無理にとは申しませんけれど…それでも、貴方が育った場所を見るだけでも興味が有ります」
「…そう目を輝かされると弱いな」
自覚はないけれどどうやら相当に期待に満ちた目で見つめていたらしい。観念したあの人は困った様に眉を下げながら笑った。
0
お気に入りに追加
4
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
親友だと思ってた完璧幼馴染に執着されて監禁される平凡男子俺
toki
BL
エリート執着美形×平凡リーマン(幼馴染)
※監禁、無理矢理の要素があります。また、軽度ですが性的描写があります。
pixivでも同タイトルで投稿しています。
https://www.pixiv.net/users/3179376
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!
https://www.pixiv.net/artworks/98346398
組長様のお嫁さん
ヨモギ丸
BL
いい所出身の外に憧れを抱くオメガのお坊ちゃん 雨宮 優 は家出をする。
持ち物に強めの薬を持っていたのだが、うっかりバックごと全ロスしてしまった。
公園のベンチで死にかけていた優を助けたのはたまたまお散歩していた世界規模の組を締め上げる組長 一ノ瀬 拓真
猫を飼う感覚で優を飼うことにした拓真だったが、だんだんその感情が恋愛感情に変化していく。
『へ?拓真さん俺でいいの?』
悪役ですが、死にたくないので死ぬ気で頑張ります!!!
モツシャケ太郎
BL
両親から虐待される毎日。そんな中で偶然、街中で見かけた乙女ゲーム「蜂蜜色の恋を貴方に」にドハマリしてしまう。
弟と妹の高校の学費を払うため、ブラック企業に務める一方、ゲームをする。──実に充実した生活だ。
だが、そんなある日、両親の暴力から弟妹を庇い死んでしまう。
死んでしまった……そう、死んだ、はずだった。しかし、目覚めるとそこは、知らない場所。えぇ!?ここどこだよ!?!?
ん????ちょっと待て!ここってもしかして「蜂蜜色の恋を貴方に」の世界じゃねえか!
しかも俺、最悪の結末を辿る「カワイソス令息!?」
乙女ゲームの悪役に世界に転生した主人公が、死にたくなくて必死に頑張るお話です。(題名そのまんまやないかい!)
主人公大好き愛してる系美丈夫
×
不憫跳ね除ける浮世離れ系美人
攻めがなっっっかなか出てこないけど、ちゃんと後から出てきます( ͡ ͜ ͡ )
※中世ヨーロッパに全く詳しくない人が中世ヨーロッパを書いています。
なんでも許せる人がご覧下さい。
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
記憶喪失の君と…
R(アール)
BL
陽は湊と恋人だった。
ひねくれて誰からも愛されないような陽を湊だけが可愛いと、好きだと言ってくれた。
順風満帆な生活を送っているなか、湊が記憶喪失になり、陽のことだけを忘れてしまって…!
ハッピーエンド保証
冷酷な少年に成り代わってしまった俺の話
岩永みやび
BL
気が付いたら異世界にいた主人公。それもユリスという大公家の三男に成り代わっていた。しかもユリスは「ヴィアンの氷の花」と呼ばれるほど冷酷な美少年らしい。本来のユリスがあれこれやらかしていたせいで周囲とはなんだかギクシャク。なんで俺が尻拭いをしないといけないんだ!
知識・記憶一切なしの成り代わり主人公が手探り異世界生活を送ることに。
突然性格が豹変したユリスに戸惑う周囲を翻弄しつつ異世界ライフを楽しむお話です。
※基本ほのぼの路線です。不定期更新。冒頭から少しですが流血表現あります。苦手な方はご注意下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる