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例えばこんな来世でも貴方は私を再び三度

17-5,16-5,17-6

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~17-5~

 「あぁ、そうだな…取り敢えず付いて来い」
 言われるが儘ソムリエの導きで辿り着いたのは地下のワインセラーだった。ワインセラー、と言えば如何にも其れらしいが実際は名ばかりの地下倉庫擬きだ。客層に合わせ上等が過ぎる酒類は扱わない、其れなりに見栄を張りながら手軽に楽しめる事を第一条件にワイン以外も豊富に取り揃えている。

 「酒にも造詣が有ると聞いた、今夜のワインリストを作って貰うぞ」 
 抑々俺はワインは専門外だ、とぼやきを漏らすソムリエから今宵のコースメニューを受け取った私は反論の隙も無くその場に置き去りにされる。能く能く話の先を取られる日だと思った。


~16-5~

 「…ワインの知識が無い人間がソムリエ?」
 如何聞いても矛盾しかない話に疑問を差し挟まざるを得なかった。

 「繰り返すが場末の売春宿だ、組員で酒の取り扱いに多少なり心得が有ったのが奴だっただけの事さ」
 くっくっと咽喉を鳴らして笑うあの人は心底楽しそうだ。再びつまらない感情が想起する前に話を進めさせた方が良いと思った。

 「斯く言う貴方は?突然に任されて大丈夫だったのですか?」


~17-6~

 若い身空で『昔取った杵柄』と言うのも面映ゆいが確かにその場に有る酒類からコースに最適な物を選び出す程度の知識は有った。食前酒はシェリーかシャンパンの手頃な所を、メインのレバーコンフィには力強いブルゴーニュがお奨め、食後にはポム・ド・イブか地元農家の自家製リモンチェッロ。

 「当ホテルでは気取り過ぎなくても構いませんしちょっとした贅沢をお楽しみ頂く事も出来ますよ」と、要は客に選択を委ねてしまうような無責任なチョイスではあったが大外しもしないリストが出来上がった。

 念の為休息から戻った料理長に承諾を取る。御大は大層不機嫌そうに
 「…良いだろう、酒の用意は任せてさっさと厨房に入れ」
 そう言って肉料理の担当を顎で指すと自分はソーシエの元に向かった。朝から一貫して変わらない態度を怪訝に思って居ると後ろから忍び寄ったソムリエが耳打ちしてくる。

 「猫の手も借りたかった厨房で猫被って雑用に落ち着いてたのが気に入らんのさ、まぁ精々仕事ぶりを見せて機嫌を取ってやることだ」
 意地悪く笑ったソムリエは頑張れよと付け加えて自身の仕事場へ向かう。どうやら言う通りにするより他は無い様だ。
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