78 / 164
例えばこんな来世でも貴方は私を再び三度
17-5,16-5,17-6
しおりを挟む
~17-5~
「あぁ、そうだな…取り敢えず付いて来い」
言われるが儘ソムリエの導きで辿り着いたのは地下のワインセラーだった。ワインセラー、と言えば如何にも其れらしいが実際は名ばかりの地下倉庫擬きだ。客層に合わせ上等が過ぎる酒類は扱わない、其れなりに見栄を張りながら手軽に楽しめる事を第一条件にワイン以外も豊富に取り揃えている。
「酒にも造詣が有ると聞いた、今夜のワインリストを作って貰うぞ」
抑々俺はワインは専門外だ、とぼやきを漏らすソムリエから今宵のコースメニューを受け取った私は反論の隙も無くその場に置き去りにされる。能く能く話の先を取られる日だと思った。
~16-5~
「…ワインの知識が無い人間がソムリエ?」
如何聞いても矛盾しかない話に疑問を差し挟まざるを得なかった。
「繰り返すが場末の売春宿だ、組員で酒の取り扱いに多少なり心得が有ったのが奴だっただけの事さ」
くっくっと咽喉を鳴らして笑うあの人は心底楽しそうだ。再びつまらない感情が想起する前に話を進めさせた方が良いと思った。
「斯く言う貴方は?突然に任されて大丈夫だったのですか?」
~17-6~
若い身空で『昔取った杵柄』と言うのも面映ゆいが確かにその場に有る酒類からコースに最適な物を選び出す程度の知識は有った。食前酒はシェリーかシャンパンの手頃な所を、メインのレバーコンフィには力強いブルゴーニュがお奨め、食後にはポム・ド・イブか地元農家の自家製リモンチェッロ。
「当ホテルでは気取り過ぎなくても構いませんしちょっとした贅沢をお楽しみ頂く事も出来ますよ」と、要は客に選択を委ねてしまうような無責任なチョイスではあったが大外しもしないリストが出来上がった。
念の為休息から戻った料理長に承諾を取る。御大は大層不機嫌そうに
「…良いだろう、酒の用意は任せてさっさと厨房に入れ」
そう言って肉料理の担当を顎で指すと自分はソーシエの元に向かった。朝から一貫して変わらない態度を怪訝に思って居ると後ろから忍び寄ったソムリエが耳打ちしてくる。
「猫の手も借りたかった厨房で猫被って雑用に落ち着いてたのが気に入らんのさ、まぁ精々仕事ぶりを見せて機嫌を取ってやることだ」
意地悪く笑ったソムリエは頑張れよと付け加えて自身の仕事場へ向かう。どうやら言う通りにするより他は無い様だ。
「あぁ、そうだな…取り敢えず付いて来い」
言われるが儘ソムリエの導きで辿り着いたのは地下のワインセラーだった。ワインセラー、と言えば如何にも其れらしいが実際は名ばかりの地下倉庫擬きだ。客層に合わせ上等が過ぎる酒類は扱わない、其れなりに見栄を張りながら手軽に楽しめる事を第一条件にワイン以外も豊富に取り揃えている。
「酒にも造詣が有ると聞いた、今夜のワインリストを作って貰うぞ」
抑々俺はワインは専門外だ、とぼやきを漏らすソムリエから今宵のコースメニューを受け取った私は反論の隙も無くその場に置き去りにされる。能く能く話の先を取られる日だと思った。
~16-5~
「…ワインの知識が無い人間がソムリエ?」
如何聞いても矛盾しかない話に疑問を差し挟まざるを得なかった。
「繰り返すが場末の売春宿だ、組員で酒の取り扱いに多少なり心得が有ったのが奴だっただけの事さ」
くっくっと咽喉を鳴らして笑うあの人は心底楽しそうだ。再びつまらない感情が想起する前に話を進めさせた方が良いと思った。
「斯く言う貴方は?突然に任されて大丈夫だったのですか?」
~17-6~
若い身空で『昔取った杵柄』と言うのも面映ゆいが確かにその場に有る酒類からコースに最適な物を選び出す程度の知識は有った。食前酒はシェリーかシャンパンの手頃な所を、メインのレバーコンフィには力強いブルゴーニュがお奨め、食後にはポム・ド・イブか地元農家の自家製リモンチェッロ。
「当ホテルでは気取り過ぎなくても構いませんしちょっとした贅沢をお楽しみ頂く事も出来ますよ」と、要は客に選択を委ねてしまうような無責任なチョイスではあったが大外しもしないリストが出来上がった。
念の為休息から戻った料理長に承諾を取る。御大は大層不機嫌そうに
「…良いだろう、酒の用意は任せてさっさと厨房に入れ」
そう言って肉料理の担当を顎で指すと自分はソーシエの元に向かった。朝から一貫して変わらない態度を怪訝に思って居ると後ろから忍び寄ったソムリエが耳打ちしてくる。
「猫の手も借りたかった厨房で猫被って雑用に落ち着いてたのが気に入らんのさ、まぁ精々仕事ぶりを見せて機嫌を取ってやることだ」
意地悪く笑ったソムリエは頑張れよと付け加えて自身の仕事場へ向かう。どうやら言う通りにするより他は無い様だ。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
膀胱を虐められる男の子の話
煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ
男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話
膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
食事届いたけど配達員のほうを食べました
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
なぜ自転車に乗る人はピチピチのエロい服を着ているのか?
そう思っていたところに、食事を届けにきたデリバリー配達員の男子大学生がピチピチのサイクルウェアを着ていた。イケメンな上に筋肉質でエロかったので、追加料金を払って、メシではなく彼を食べることにした。
肌が白くて女の子みたいに綺麗な先輩。本当におしっこするのか気になり過ぎて…?
こじらせた処女
BL
槍本シュン(やりもとしゅん)の所属している部活、機器操作部は2つ上の先輩、白井瑞稀(しらいみずき)しか居ない。
自分より身長の高い大男のはずなのに、足の先まで綺麗な先輩。彼が近くに来ると、何故か落ち着かない槍本は、これが何なのか分からないでいた。
ある日の冬、大雪で帰れなくなった槍本は、一人暮らしをしている白井の家に泊まることになる。帰り道、おしっこしたいと呟く白井に、本当にトイレするのかと何故か疑問に思ってしまい…?
僕が玩具になった理由
Me-ya
BL
🈲R指定🈯
「俺のペットにしてやるよ」
眞司は僕を見下ろしながらそう言った。
🈲R指定🔞
※この作品はフィクションです。
実在の人物、団体等とは一切関係ありません。
※この小説は他の場所で書いていましたが、携帯が壊れてスマホに替えた時、小説を書いていた場所が分からなくなってしまいました😨
ので、ここで新しく書き直します…。
(他の場所でも、1カ所書いていますが…)
目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
愛などもう求めない
白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。
「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」
「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」
目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。
本当に自分を愛してくれる人と生きたい。
ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。
ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。
最後まで読んでいただけると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる