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Fragrance 8-タビノカオリ-
第64話『また、あなたと。』
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直人さんと彩花さん、相良さん、晴実さんと紬さんは部屋を出ていった。もちろん、そのときはみんな明るい笑みを浮かべていた。
午後10時半過ぎ。
お兄ちゃんと奈央ちゃんも隣の部屋に戻り、1501号室の部屋には私と絢ちゃんの2人だけになった。これが本来の状況なんだけれど、こうなるのはおよそ2日ぶりなので何だか緊張してしまう。どんな言葉を掛ければ正解なのかな。よく分からない。
絢ちゃんのことを見ると、彼女も同じことを考えているのか……私のことをちらちらと見ながらぎごちない笑みを浮かべている。
こういう空気になっちゃうのも、やっぱり……入れ替わっているときに、私は直人さんと、絢ちゃんは彩花さんと色々なことをしていたから……だよね。
直人さんが言ったようにお互い様なのだと割り切ればいいのかもしれないけれど。部屋を去るときの表情からして、直人さんと彩花さんはきっともう普段と変わりなく接することができていると思う。
「……ようやくいつもの時間が戻ってきたんだね、遥香」
沈黙を破ったのは絢ちゃんのそんな一言だった。
「2日近く、姿は遥香なのに、心は違う女の子だった。それなのに、私は……見た目が遥香で、遥香の声で好きだと言われたから、目の前にいた女の子のことが好きになっちゃったんだ。本当に……ごめんなさい」
絢ちゃんはそう言って、目に涙を浮かべさせながら私に向かって深く頭を下げる。
「謝らなきゃいけないのは私の方だよ。彩花さんの体の影響があったとはいえ、私は……隣にいた直人さんのことが好きになっていた。直人さんのことしか見えなかった時間が合ったのは事実だよ。私の方こそ……ごめんなさい」
私も絢ちゃんに向かって深く頭を下げる。
ただ、私達はお互いに謝ったけれど、悪いのは直人さんや彩花さん、もちろん絢ちゃんではない。入れ替わっても、絢ちゃんのことが一番好きだという気持ちが揺らいでしまった私のせいだ。
「遥香、顔をあげてくれるかな」
そんな絢ちゃんの言葉の直後、私の両肩に温かな感触が。
顔を上げると、絢ちゃんが私の両肩を優しく掴んでくれていた。そして、絢ちゃんは私のことを優しく見つめている。
「……直人さんの言うとおりだね。これは……お互い様だよ。お互いに悪いと思ったことについて謝った。遥香は許してくれなくてもいい。ただ、私は……許すよ。遥香がここに帰ってきてくれたから」
「絢ちゃん……」
「入れ替わったことで、私達が積み上げてきたものが幾らか崩れてしまったかもしれない。それは二度と戻らないかもしれない。でも、これからまた一緒に過ごして、長い時間を掛けていけば、よりいいものを一緒に築き上げることができるかもしれない。上手く言えなくてごめん」
「ううん」
すると、絢ちゃんは一つ大きく深呼吸をし、真剣な表情となり、
「私は遥香のことが好きだ。また遥香と恋人として付き合っていきたい。遥香とずっと一緒にいたい。私にもう一度……そのチャンスをくれないかな」
私への気持ちを素直な言葉で伝えてくれた。
何だか、初めて告白されたときのようなドキドキがあって、絢ちゃんと付き合い始めてから感じ続けている温かさがあって。
絢ちゃんの今の言葉に対する返事は……最初から決まっている。
「……これが最後だと思うよ、私は」
「えっ?」
「……だって、ずっと絢ちゃんと一緒にいたいもん。絢ちゃんの言うとおり、今までのような私達には戻れないかもしれないけれど、今まで以上の私達にはなれるかもしれない。ううん、絶対になれるよ」
「遥香……」
「私のことを……また、絢ちゃんの彼女にしてください」
「……もちろんだよ」
絢ちゃんは涙を流しながらも笑顔になり、私のことをぎゅっと抱きしめてきた。そのときに感じる絢ちゃんの温もりや匂いはちょっと懐かしくて。でも、ずっと味わっていたいもので。もう離したくないと強く思い、私も絢ちゃんのことを抱きしめる。
「遥香……」
「……やっぱり、この感じいいね。絢ちゃんのことが大好き。一番好きだよ。その気持ちは絶対に揺るがないよ」
「……私もようやく遥香のことを抱きしめることができたって思ったよ。心と体があって初めて、坂井遥香っていう女の子のことを抱きしめているんだって思えたよ」
「……うん」
そして、絢ちゃんの顔を見ると、絢ちゃんと目が合って……自然と笑みがこぼれる。そうだよ、この感じ……これがいつもの私達、なんだよね。今まで当たり前に見てきて、感じてきたものの有り難さを入れ替わりによって知ることができた。
「ねえ、遥香」
「うん? なあに?」
「……キスしたい。凄くしたい」
「……私も同じこと思ってた。だから、絢ちゃんから……キスして」
「分かった」
絢ちゃんは私にキスをしてくる。絢ちゃんの唇の柔らかさと温かさ。そして、甘さ。2日前までは当たり前に感じていたものが、とても久しぶりのように感じられて。でも、凄くいいなって思えて。
今、絢ちゃんはどんな表情をしているんだろう。
唇を離して、絢ちゃんの表情を見ると絢ちゃんは私のことを優しい笑みを浮かべながら見ていた。
「ずっと……側にいてね、遥香」
「もちろんだよ、絢ちゃん」
「……イチャイチャしよっか」
「……うん!」
もう、絢ちゃんとは離れたくないから。
そして、私は絢ちゃんと一緒に部屋のお風呂に入った。髪と体を洗いあって、一緒に湯船に浸かって。ベッドでイチャイチャして。
ようやく絢ちゃんの隣に戻ってくることができたんだ。また、一緒にいられるんだ。嬉しさや愛おしさでいっぱいになったのであった。
午後10時半過ぎ。
お兄ちゃんと奈央ちゃんも隣の部屋に戻り、1501号室の部屋には私と絢ちゃんの2人だけになった。これが本来の状況なんだけれど、こうなるのはおよそ2日ぶりなので何だか緊張してしまう。どんな言葉を掛ければ正解なのかな。よく分からない。
絢ちゃんのことを見ると、彼女も同じことを考えているのか……私のことをちらちらと見ながらぎごちない笑みを浮かべている。
こういう空気になっちゃうのも、やっぱり……入れ替わっているときに、私は直人さんと、絢ちゃんは彩花さんと色々なことをしていたから……だよね。
直人さんが言ったようにお互い様なのだと割り切ればいいのかもしれないけれど。部屋を去るときの表情からして、直人さんと彩花さんはきっともう普段と変わりなく接することができていると思う。
「……ようやくいつもの時間が戻ってきたんだね、遥香」
沈黙を破ったのは絢ちゃんのそんな一言だった。
「2日近く、姿は遥香なのに、心は違う女の子だった。それなのに、私は……見た目が遥香で、遥香の声で好きだと言われたから、目の前にいた女の子のことが好きになっちゃったんだ。本当に……ごめんなさい」
絢ちゃんはそう言って、目に涙を浮かべさせながら私に向かって深く頭を下げる。
「謝らなきゃいけないのは私の方だよ。彩花さんの体の影響があったとはいえ、私は……隣にいた直人さんのことが好きになっていた。直人さんのことしか見えなかった時間が合ったのは事実だよ。私の方こそ……ごめんなさい」
私も絢ちゃんに向かって深く頭を下げる。
ただ、私達はお互いに謝ったけれど、悪いのは直人さんや彩花さん、もちろん絢ちゃんではない。入れ替わっても、絢ちゃんのことが一番好きだという気持ちが揺らいでしまった私のせいだ。
「遥香、顔をあげてくれるかな」
そんな絢ちゃんの言葉の直後、私の両肩に温かな感触が。
顔を上げると、絢ちゃんが私の両肩を優しく掴んでくれていた。そして、絢ちゃんは私のことを優しく見つめている。
「……直人さんの言うとおりだね。これは……お互い様だよ。お互いに悪いと思ったことについて謝った。遥香は許してくれなくてもいい。ただ、私は……許すよ。遥香がここに帰ってきてくれたから」
「絢ちゃん……」
「入れ替わったことで、私達が積み上げてきたものが幾らか崩れてしまったかもしれない。それは二度と戻らないかもしれない。でも、これからまた一緒に過ごして、長い時間を掛けていけば、よりいいものを一緒に築き上げることができるかもしれない。上手く言えなくてごめん」
「ううん」
すると、絢ちゃんは一つ大きく深呼吸をし、真剣な表情となり、
「私は遥香のことが好きだ。また遥香と恋人として付き合っていきたい。遥香とずっと一緒にいたい。私にもう一度……そのチャンスをくれないかな」
私への気持ちを素直な言葉で伝えてくれた。
何だか、初めて告白されたときのようなドキドキがあって、絢ちゃんと付き合い始めてから感じ続けている温かさがあって。
絢ちゃんの今の言葉に対する返事は……最初から決まっている。
「……これが最後だと思うよ、私は」
「えっ?」
「……だって、ずっと絢ちゃんと一緒にいたいもん。絢ちゃんの言うとおり、今までのような私達には戻れないかもしれないけれど、今まで以上の私達にはなれるかもしれない。ううん、絶対になれるよ」
「遥香……」
「私のことを……また、絢ちゃんの彼女にしてください」
「……もちろんだよ」
絢ちゃんは涙を流しながらも笑顔になり、私のことをぎゅっと抱きしめてきた。そのときに感じる絢ちゃんの温もりや匂いはちょっと懐かしくて。でも、ずっと味わっていたいもので。もう離したくないと強く思い、私も絢ちゃんのことを抱きしめる。
「遥香……」
「……やっぱり、この感じいいね。絢ちゃんのことが大好き。一番好きだよ。その気持ちは絶対に揺るがないよ」
「……私もようやく遥香のことを抱きしめることができたって思ったよ。心と体があって初めて、坂井遥香っていう女の子のことを抱きしめているんだって思えたよ」
「……うん」
そして、絢ちゃんの顔を見ると、絢ちゃんと目が合って……自然と笑みがこぼれる。そうだよ、この感じ……これがいつもの私達、なんだよね。今まで当たり前に見てきて、感じてきたものの有り難さを入れ替わりによって知ることができた。
「ねえ、遥香」
「うん? なあに?」
「……キスしたい。凄くしたい」
「……私も同じこと思ってた。だから、絢ちゃんから……キスして」
「分かった」
絢ちゃんは私にキスをしてくる。絢ちゃんの唇の柔らかさと温かさ。そして、甘さ。2日前までは当たり前に感じていたものが、とても久しぶりのように感じられて。でも、凄くいいなって思えて。
今、絢ちゃんはどんな表情をしているんだろう。
唇を離して、絢ちゃんの表情を見ると絢ちゃんは私のことを優しい笑みを浮かべながら見ていた。
「ずっと……側にいてね、遥香」
「もちろんだよ、絢ちゃん」
「……イチャイチャしよっか」
「……うん!」
もう、絢ちゃんとは離れたくないから。
そして、私は絢ちゃんと一緒に部屋のお風呂に入った。髪と体を洗いあって、一緒に湯船に浸かって。ベッドでイチャイチャして。
ようやく絢ちゃんの隣に戻ってくることができたんだ。また、一緒にいられるんだ。嬉しさや愛おしさでいっぱいになったのであった。
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