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Fragrance 2-ウラヤミノカオリ-
第8話『独占欲』
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私は遥香のことを独占したかったんだ。
キスをしたとき、この上ない快感を得た。遥香と唇で触れ合えた喜び。そして、遥香の全てを自分のものにできた気がして。
「瑠璃ちゃん……」
「……原田さんに遥香のことを取られたような気がして嫌だったんだ。だから、あの写真を送ったんだよ」
「ということは、私と絢ちゃんが遊園地に行ったとき……」
「気付かれないように尾行していたんだよ」
そして、遥香に全て話した。
遥香が原田さんにクッキーを渡したところから、ずっと2人のことを見ていたこと。
遊園地に行った日の夜に最初の写真を届けたこと。何度も写真を送り続けたこと。
椿に告白されてモヤモヤとした気持ちになったこと。
遥香は真剣に私の話を聞いてくれた。こんな私の心に寄り添うように。
「……最低だよ、私。自分本位で平気で原田さんを傷つけたんだから……」
原田さんはもちろんのこと、目の前にいる遥香にも顔を見せられない。
「顔を上げてよ。……ね?」
私の耳元で遥香は囁くように言った。
それでも、私は断固として遥香に顔を見せようとしなかった。
理由は単純だ。遥香がどんな表情をして私を見ているのか。それが恐い。
「ごめん、遥香……」
私は俯きながらしきりにそう言って、泣き続けた。
悪いことをした人間には必ずその報いが返ってくる。惨めな思いをする。それは当たり前のように思えた。人を傷つけるなんていうことは最も愚かで惨めなことなのだから。
「瑠璃ちゃん」
私の名前を言うと、遥香は私のことを優しく抱きしめる。
遥香の温もりと匂いがとても嬉しくて、でも胸が苦しくなって……彼女の寝間着を濡らしてしまう。
「辛かったんだね」
その一言が胸に響いた。
「高校生になって、クラスが別になって。それで、絢ちゃんっていう恋人ができて。同じクラスの美咲ちゃんとはたくさん話しているのに、瑠璃ちゃんとは全然話すことができてなかった。寂しい想いをさせちゃってごめんね」
「ど、どうして遥香が謝るんだ。私がこんなことをしたのは、遥香を原田さんに奪われたって思い込んだだけで。それが嫌になって……」
「嘘をつくのが下手だね。瑠璃ちゃんは」
その声色で遥香が笑っていることが分かった。
ゆっくりと顔を上げて遥香の顔を見てみると、やんわりと微笑んでいた。
「瑠璃ちゃんの目を見たら、寂しそうなのはすぐに分かったよ」
「遥香……」
「本当は辛くても、何事もないように振る舞ってくれて。瑠璃ちゃんのそんな優しさに私は甘えちゃったんだと思う。別のクラスになって、話せる機会も大分減るけれど瑠璃ちゃんなら大丈夫だって。でも、今日……ひさしぶりに会ってすぐに思ったの。瑠璃ちゃんに辛い思いをさせちゃったって」
そう言って、遥香は一筋の涙を流した。
きっと、美咲も分かっていたのだろう。私の顔を見た瞬間に。そして、遥香の話をするときの私の表情を見て、原因が遥香にあることも分かった。だから、遥香の家に泊まることを勧めたんだ。
親友2人がこんなにも私の気持ちを察してくれて、思いやってくれていることをどうして私は今まで気付くことができなかったのだろう。本当に自分が情けない。
「……実はさ、最初の写真に書かれていたメッセージを見たとき、ちょっと懐かしい気持ちになったんだ」
「どういうこと?」
「最初の写真だけ、手書きでメッセージを書いていたでしょ。その文字を見て、どこかで見たような字だって思ったんだ。だから、危険に思うことはなかったの。当たり前だよね、瑠璃ちゃんが書いていたんだから」
そういえば、最初の写真だけは……すぐに送らないと気が済まなくて、手書きでメッセージを書いたんだよな。
「確かに、瑠璃ちゃんは絢ちゃんを傷つけるようなことをしたと思う。何度も送っているしすぐには許されないかもしれない。でも、瑠璃ちゃんは私へ正直に言ってくれた。だから、ちゃんと言えばきっと許してくれるよ」
「遥香……」
「明日、絢ちゃんに謝ろう。私もついてるから」
遥香の提案に対し、私はもちろん頷いた。
これまでの過ちを反省するために。自分のけじめをつけるために。そして、何よりも原田さんに直接自分の言葉で謝りたかった。
「じゃあ、今日はベッドの中でたくさん話して、一緒に寝よっか」
「……そうだね」
それからは、遥香の言う通り、ベッドの中でたっぷりとお話しして、遥香の横で眠りについた。
キスをしたとき、この上ない快感を得た。遥香と唇で触れ合えた喜び。そして、遥香の全てを自分のものにできた気がして。
「瑠璃ちゃん……」
「……原田さんに遥香のことを取られたような気がして嫌だったんだ。だから、あの写真を送ったんだよ」
「ということは、私と絢ちゃんが遊園地に行ったとき……」
「気付かれないように尾行していたんだよ」
そして、遥香に全て話した。
遥香が原田さんにクッキーを渡したところから、ずっと2人のことを見ていたこと。
遊園地に行った日の夜に最初の写真を届けたこと。何度も写真を送り続けたこと。
椿に告白されてモヤモヤとした気持ちになったこと。
遥香は真剣に私の話を聞いてくれた。こんな私の心に寄り添うように。
「……最低だよ、私。自分本位で平気で原田さんを傷つけたんだから……」
原田さんはもちろんのこと、目の前にいる遥香にも顔を見せられない。
「顔を上げてよ。……ね?」
私の耳元で遥香は囁くように言った。
それでも、私は断固として遥香に顔を見せようとしなかった。
理由は単純だ。遥香がどんな表情をして私を見ているのか。それが恐い。
「ごめん、遥香……」
私は俯きながらしきりにそう言って、泣き続けた。
悪いことをした人間には必ずその報いが返ってくる。惨めな思いをする。それは当たり前のように思えた。人を傷つけるなんていうことは最も愚かで惨めなことなのだから。
「瑠璃ちゃん」
私の名前を言うと、遥香は私のことを優しく抱きしめる。
遥香の温もりと匂いがとても嬉しくて、でも胸が苦しくなって……彼女の寝間着を濡らしてしまう。
「辛かったんだね」
その一言が胸に響いた。
「高校生になって、クラスが別になって。それで、絢ちゃんっていう恋人ができて。同じクラスの美咲ちゃんとはたくさん話しているのに、瑠璃ちゃんとは全然話すことができてなかった。寂しい想いをさせちゃってごめんね」
「ど、どうして遥香が謝るんだ。私がこんなことをしたのは、遥香を原田さんに奪われたって思い込んだだけで。それが嫌になって……」
「嘘をつくのが下手だね。瑠璃ちゃんは」
その声色で遥香が笑っていることが分かった。
ゆっくりと顔を上げて遥香の顔を見てみると、やんわりと微笑んでいた。
「瑠璃ちゃんの目を見たら、寂しそうなのはすぐに分かったよ」
「遥香……」
「本当は辛くても、何事もないように振る舞ってくれて。瑠璃ちゃんのそんな優しさに私は甘えちゃったんだと思う。別のクラスになって、話せる機会も大分減るけれど瑠璃ちゃんなら大丈夫だって。でも、今日……ひさしぶりに会ってすぐに思ったの。瑠璃ちゃんに辛い思いをさせちゃったって」
そう言って、遥香は一筋の涙を流した。
きっと、美咲も分かっていたのだろう。私の顔を見た瞬間に。そして、遥香の話をするときの私の表情を見て、原因が遥香にあることも分かった。だから、遥香の家に泊まることを勧めたんだ。
親友2人がこんなにも私の気持ちを察してくれて、思いやってくれていることをどうして私は今まで気付くことができなかったのだろう。本当に自分が情けない。
「……実はさ、最初の写真に書かれていたメッセージを見たとき、ちょっと懐かしい気持ちになったんだ」
「どういうこと?」
「最初の写真だけ、手書きでメッセージを書いていたでしょ。その文字を見て、どこかで見たような字だって思ったんだ。だから、危険に思うことはなかったの。当たり前だよね、瑠璃ちゃんが書いていたんだから」
そういえば、最初の写真だけは……すぐに送らないと気が済まなくて、手書きでメッセージを書いたんだよな。
「確かに、瑠璃ちゃんは絢ちゃんを傷つけるようなことをしたと思う。何度も送っているしすぐには許されないかもしれない。でも、瑠璃ちゃんは私へ正直に言ってくれた。だから、ちゃんと言えばきっと許してくれるよ」
「遥香……」
「明日、絢ちゃんに謝ろう。私もついてるから」
遥香の提案に対し、私はもちろん頷いた。
これまでの過ちを反省するために。自分のけじめをつけるために。そして、何よりも原田さんに直接自分の言葉で謝りたかった。
「じゃあ、今日はベッドの中でたくさん話して、一緒に寝よっか」
「……そうだね」
それからは、遥香の言う通り、ベッドの中でたっぷりとお話しして、遥香の横で眠りについた。
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