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本編
第21話『Dress』
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お花見パーティーに桜さんが同行をすることをお嬢様に伝えると、招待されている俺がいいならかまわないと意外にも許可をいただくことができた。それでも、桜さんと一緒だからか、お嬢様は依然として浮かない表情を見せていた。
お花見パーティーは午後6時から始まる予定。
なので、日差しも茜色になり始めた午後5時半過ぎになると、お嬢様は自分の部屋でパーティー用のドレスに着替え始めた。お嬢様曰く、正装でも学生なので制服でいいそうだが、九条家の令嬢として昔からこういう場には専用のドレスを着るらしい。
俺、くるみさん、桜さんは今の服装のまま参加することになった。くるみさん曰く、桜さんに似合うドレスがあるそうだけれど、桜さんはCherryのことを考えてスーツ姿のまま参加するとのこと。
俺は桜さんと一緒にドレス姿のお嬢様が来るのを待っている。
「桜さんのドレス姿って想像できませんね」
「……それって、私にはそういう服が似合わないってこと?」
「どうしてそうなるんですか。ただ、今のスーツ姿のイメージが凄く強いんですよ」
今日になるまで、桜さんとは警察署以外では会ったことがないからなぁ。スーツ姿以外の彼女しか見たことがない。それに、よく似合っているし。
桜さんは意地悪そうな笑みを浮かべる。
「何だ? 私のドレス姿を見たかったのかな?」
「ええ、とても見たかったです」
俺が普通にそう返答すると、意地悪そうな桜さんの笑みが消え、頬を赤くする。
「……まあ、Cherryのことさえなければ着ても良かったかな」
「そうですか。じゃあ、いつか見せてくださいね」
桜さんのドレス姿はこれからの楽しみの一つにしておこう。桜さんの結婚式まで見られないような気もするけど。それもいつになるのであろうか。
「お待たせ」
お嬢様の声がしたのでドアの方を向くと、そこには黒いドレス姿のお嬢様が立っていた。さすがは財閥の令嬢だけあって、こういうものを着こなしている感じがする。
「素敵ですね。よく似合っていますよ、お嬢様」
「あ、ありがとう、真守」
お嬢様は嬉しそうにはにかんだ。パーティーがもうすぐだから楽しみになってきているのかな。学校を出てからずっと怯えていたから、こういう表情を見ることができて嬉しく思う。
「そんなにじっくり見ないでよ。恥ずかしいじゃない」
「お嬢様が雅やかでしたので、思わず視線が釘付けになってしまいました」
「……そう」
お嬢様は頬を赤くしてもじもじしている。
「真守君の言う通り、よく似合っているね。さすがは九条家の令嬢だ、こういうものを着こなしている感じがするよ」
「……ありがとうございます」
桜さんが声を発した途端、さっきまでのお嬢様の柔らかい表情が消えてしまう。やっぱり、桜さんに警戒心を持ってしまっているようだ。
「すまないね、私も一緒に行くことになって」
「……別にいいですよ。さっきも言った通り、招待された真守が一緒に行ってもいいと言っているんですから」
「……そうかい」
招待された俺の存在を強調しているところから見て、お嬢様と桜さんの間にはかなり距離が生じてしまっているようだ。今夜のお花見パーティーを通して、この溝が埋まっていくのだろうか。
「さあ、そろそろ行きましょう」
俺のやるべきことはお嬢様のことをCherryから守ることだ。Cherryは英語で桜のことも指すからな。何か仕掛けてくる可能性はありそうだ。
俺達4人は、くるみさんの運転するリムジンで潤井さんのお屋敷に向かうのであった。
お花見パーティーは午後6時から始まる予定。
なので、日差しも茜色になり始めた午後5時半過ぎになると、お嬢様は自分の部屋でパーティー用のドレスに着替え始めた。お嬢様曰く、正装でも学生なので制服でいいそうだが、九条家の令嬢として昔からこういう場には専用のドレスを着るらしい。
俺、くるみさん、桜さんは今の服装のまま参加することになった。くるみさん曰く、桜さんに似合うドレスがあるそうだけれど、桜さんはCherryのことを考えてスーツ姿のまま参加するとのこと。
俺は桜さんと一緒にドレス姿のお嬢様が来るのを待っている。
「桜さんのドレス姿って想像できませんね」
「……それって、私にはそういう服が似合わないってこと?」
「どうしてそうなるんですか。ただ、今のスーツ姿のイメージが凄く強いんですよ」
今日になるまで、桜さんとは警察署以外では会ったことがないからなぁ。スーツ姿以外の彼女しか見たことがない。それに、よく似合っているし。
桜さんは意地悪そうな笑みを浮かべる。
「何だ? 私のドレス姿を見たかったのかな?」
「ええ、とても見たかったです」
俺が普通にそう返答すると、意地悪そうな桜さんの笑みが消え、頬を赤くする。
「……まあ、Cherryのことさえなければ着ても良かったかな」
「そうですか。じゃあ、いつか見せてくださいね」
桜さんのドレス姿はこれからの楽しみの一つにしておこう。桜さんの結婚式まで見られないような気もするけど。それもいつになるのであろうか。
「お待たせ」
お嬢様の声がしたのでドアの方を向くと、そこには黒いドレス姿のお嬢様が立っていた。さすがは財閥の令嬢だけあって、こういうものを着こなしている感じがする。
「素敵ですね。よく似合っていますよ、お嬢様」
「あ、ありがとう、真守」
お嬢様は嬉しそうにはにかんだ。パーティーがもうすぐだから楽しみになってきているのかな。学校を出てからずっと怯えていたから、こういう表情を見ることができて嬉しく思う。
「そんなにじっくり見ないでよ。恥ずかしいじゃない」
「お嬢様が雅やかでしたので、思わず視線が釘付けになってしまいました」
「……そう」
お嬢様は頬を赤くしてもじもじしている。
「真守君の言う通り、よく似合っているね。さすがは九条家の令嬢だ、こういうものを着こなしている感じがするよ」
「……ありがとうございます」
桜さんが声を発した途端、さっきまでのお嬢様の柔らかい表情が消えてしまう。やっぱり、桜さんに警戒心を持ってしまっているようだ。
「すまないね、私も一緒に行くことになって」
「……別にいいですよ。さっきも言った通り、招待された真守が一緒に行ってもいいと言っているんですから」
「……そうかい」
招待された俺の存在を強調しているところから見て、お嬢様と桜さんの間にはかなり距離が生じてしまっているようだ。今夜のお花見パーティーを通して、この溝が埋まっていくのだろうか。
「さあ、そろそろ行きましょう」
俺のやるべきことはお嬢様のことをCherryから守ることだ。Cherryは英語で桜のことも指すからな。何か仕掛けてくる可能性はありそうだ。
俺達4人は、くるみさんの運転するリムジンで潤井さんのお屋敷に向かうのであった。
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