1 / 36
本編
プロローグ『解雇』
しおりを挟む
『SP-Security Princess-』
今までの人生でこんなにも手が震えたことは一度もない。
『辞令 長瀬真守は本日をもって解雇とする』
凜々しい雰囲気の女店長から渡された紙には、俺・長瀬真守の名前がはっきりと書いてあったのだ。
「どうして、突然クビにさせられなければならないのですか。初めてのことで戸惑ったことは多々ありましたが、俺は一生懸命やってきたつもりです」
解雇という突然の辞令に俺は納得できるはずがなかった。右手で紙を握り潰す。
「それに、解雇するなら、どうして俺にちゃんと給料をくれたのですか」
「君はその給料を貰うに相応しい仕事をしていたからだよ」
「なおさら納得できません!」
ひさしぶりに声を荒げた。女性に対してはこれが初めてかもしれない。
ただ、俺のそんな態度に呆れてしまったのか、女店長は露骨にため息をついた。
「……君は高校に通うべき。確かに最初の頃はミスもあった。ただ、新人なのだからミスもあって当然のことだ。君は飲み込みが早くて器用な人間だ。仕事へ真摯に取り組む姿勢は評価しているよ」
「何を言うかと思えば――」
「ただ、君は本当にお金に困っているわけじゃないでしょ。君が頼めば保護者になってくれる親戚がいるのは分かっている。ここで働かないと君は死ぬ運命しかないのか?」
「そういうわけではありませんが……」
そうは言ってみるものの、何も反論できない自分がいる。女店長の言ったことは正しいから。
「それなら、さっさとここから出て行ってくれない? 昨日渡した給料は君がちゃんと働いた分の貰うべき報酬。返せなんて言わないから。ほら、さっさと出なさい。さもなければ、客としても出禁にするよ」
早く追い出したいのか、女店長は鋭い目つきで俺を見ながらそう言った。
どんな理由であれ、突然解雇させられることは納得できないけれど、俺は女店長に対してぐうの音も出なかった。女店長の言うとおり、すぐに書店を後にした。
こうして、俺は中学校を卒業してから1ヶ月も経たずに、無職となってしまったのであった。
今までの人生でこんなにも手が震えたことは一度もない。
『辞令 長瀬真守は本日をもって解雇とする』
凜々しい雰囲気の女店長から渡された紙には、俺・長瀬真守の名前がはっきりと書いてあったのだ。
「どうして、突然クビにさせられなければならないのですか。初めてのことで戸惑ったことは多々ありましたが、俺は一生懸命やってきたつもりです」
解雇という突然の辞令に俺は納得できるはずがなかった。右手で紙を握り潰す。
「それに、解雇するなら、どうして俺にちゃんと給料をくれたのですか」
「君はその給料を貰うに相応しい仕事をしていたからだよ」
「なおさら納得できません!」
ひさしぶりに声を荒げた。女性に対してはこれが初めてかもしれない。
ただ、俺のそんな態度に呆れてしまったのか、女店長は露骨にため息をついた。
「……君は高校に通うべき。確かに最初の頃はミスもあった。ただ、新人なのだからミスもあって当然のことだ。君は飲み込みが早くて器用な人間だ。仕事へ真摯に取り組む姿勢は評価しているよ」
「何を言うかと思えば――」
「ただ、君は本当にお金に困っているわけじゃないでしょ。君が頼めば保護者になってくれる親戚がいるのは分かっている。ここで働かないと君は死ぬ運命しかないのか?」
「そういうわけではありませんが……」
そうは言ってみるものの、何も反論できない自分がいる。女店長の言ったことは正しいから。
「それなら、さっさとここから出て行ってくれない? 昨日渡した給料は君がちゃんと働いた分の貰うべき報酬。返せなんて言わないから。ほら、さっさと出なさい。さもなければ、客としても出禁にするよ」
早く追い出したいのか、女店長は鋭い目つきで俺を見ながらそう言った。
どんな理由であれ、突然解雇させられることは納得できないけれど、俺は女店長に対してぐうの音も出なかった。女店長の言うとおり、すぐに書店を後にした。
こうして、俺は中学校を卒業してから1ヶ月も経たずに、無職となってしまったのであった。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
冴えない俺と美少女な彼女たちとの関係、複雑につき――― ~助けた小学生の姉たちはどうやらシスコンで、いつの間にかハーレム形成してました~
メディカルト
恋愛
「え……あの小学生のお姉さん……たち?」
俺、九十九恋は特筆して何か言えることもない普通の男子高校生だ。
学校からの帰り道、俺はスーパーの近くで泣く小学生の女の子を見つける。
その女の子は転んでしまったのか、怪我していた様子だったのですぐに応急処置を施したが、実は学校で有名な初風姉妹の末っ子とは知らずに―――。
少女への親切心がきっかけで始まる、コメディ系ハーレムストーリー。
……どうやら彼は鈍感なようです。
――――――――――――――――――――――――――――――
【作者より】
九十九恋の『恋』が、恋愛の『恋』と間違える可能性があるので、彼のことを指すときは『レン』と表記しています。
また、R15は保険です。
毎朝20時投稿!
【3月14日 更新再開 詳細は近況ボードで】
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる