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第31話『Sakuya-後編-』
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明日香がお風呂に入って再び1人の時間になったので、僕は英語の受験勉強を再開する……けど、なかなか集中できないな。『girl』とか『love』とか『kiss』などという一部の単語にしか目が行かない。
「完全に意識してるな……」
――きっと、翼君の恋人になるのは明日香ちゃんか咲希ちゃんなんだよね。
鈴音さんからの告白を断った際、彼女からそう問われたので、多分そうだと思うと答えた。鈴音さんに告白されて、キスされたときに悲しげな2人の表情を思い浮かべたから。あのときは、単純に鈴音さんと付き合ったら2人がショックを受けそうだなと思っていた。
ただ、実際は当時から既に2人のことを特別な存在になっていたんだろう。いや、10年以上前からずっと。そのことを告白やキスなどを通してようやく自覚できたのだ。たぶん、咲希はそれを分かっていて、僕に考える時間をくれたんだと思う。
「考えをまとめて、いつか絶対に伝えないと」
咲希の立場を考えたら、なるべく早く伝えた方がいいだろう。ただ、焦って間違った答えを出すよりも、じっくりと考えて僕なりに納得できる答えを見つけよう。咲希に甘える形になっちゃうけれど。
そう決意すると、明日香や咲希のことばかり頭に思い浮かぶ。お淑やかでやんわりとした雰囲気の明日香に、元気で活発な咲希。タイプは違うけれど、2人とも魅力的な女の子であることは断言できる。
「全然勉強できないな。漫画でも読もう」
僕はベッドに横になって漫画を読むことに。
本棚から適当に選んだラブコメ漫画だけど、この作品のヒロイン達……どことなく明日香と咲希に似ている気がする。そういえば、今読んでいる部分のすぐ後に明日香に似ているヒロインが主人公とキスするシーンがあったような――。
「お風呂、先にいただいたよ」
「そ、そっか! 気持ち良かった?」
気付けば、桃色のネグリジェ姿の明日香が、お泊まりバッグを持って部屋に戻ってきていた。さっき、あんな形だけどキスしてしまったし、お泊まりバッグを持って部屋を出ていってしまったので、家に帰ったかもしれないと思ったけど。
「うん、気持ち良かったよ。どうしたの? 何かいつになく驚いている様子だけど」
「たまには気分転換もいいかなと思って漫画を読んでいたんだ。それに集中していたから驚いちゃっただけだよ」
「ふふっ、そっか。気分転換も必要だよね。私もお風呂に入って気分転換……できたような気がする」
恥ずかしそうにもじもじとしている明日香。どうやら、お風呂に入ったことでリラックスできたようだけど、そこから気分転換してしまったかもしれない。
「ねえ、つーちゃん。今日も一緒に寝てもいい……かな?」
「……いいよ、もちろん」
明日香の隣で眠ることができるかどうか心配だけど。
「ありがとう、つーちゃん」
「いつもの……ことだからね。僕もお風呂に入ってくるよ」
「うん、ごゆっくり」
柔らかな笑みで明日香に見送られながら、僕は部屋を後にする。
浴室に行くと明日香が出てからあまり時間が経っていないからか、ボディーソープの甘い匂いがしっかりと感じられた。明日香が泊まりに来たときはいつもそうだけど、今日は今までの中で一番はっきりと彼女の残り香があるような気がして。
髪と体を洗い、僕は肩まで湯船に浸かる。
「あぁ……気持ちいい」
夏でもお風呂は気持ちいいなぁ。今日の明日香の入浴時間は結構長かったので、きっとこうして体を伸ばして湯船にゆっくりと浸かっていたのだろう。
「部屋に戻ったら明日香がいるんだよな」
芽依と3人ならともかく、明日香と2人きりで勉強をできる自信がない。今日も学校の授業は自習時間や受験対策プリントをやるのがメインだったし、午後も咲希と勉強したし……今日はもういいのかな。
部屋に戻って明日香が勉強しているようだったら、僕も少しは勉強できそうな気がする。って、明日香次第で勉強する姿勢はよくないか。でも、もしかしたら――。
『ねえ、つーちゃん。受験には関係ないけど、今夜はベッドの上で一緒に……保健の勉強をしよう? 一度もやったことのない実技なんだけど……』
「……って、何を考えているんだ、僕は」
はあっ……と思わず大きなため息をついてしまう。中学生じゃないんだから。ただ、あの口づけの影響をモロに受けているんだな、僕。特別な存在であると自覚したけれど、不埒な妄想をしてはいけないな。
このまま湯船に浸かっていたら、変なことを考えてしまいのぼせるかもしれないので、僕はお風呂から出ることにした。
寝間着に着替えて部屋に戻ろうとするけど、自分の部屋に入るのにここまで緊張したことは今までに経験したことがない。
「よし……入るぞ」
覚悟を決めて部屋の中に入ると、明日香が1人で勉強をしていた。
「あっ、つーちゃん。お風呂気持ち良かった?」
「う、うん。明日香は……勉強?」
「そうだよ。今日の古文でやったプリントを復習しているの」
「そうだったんだ」
緊張する必要はなかったのかもしれないな。そして、明日香はさっきのキスを気にしていないのかな。
「あれ、ここの答えどうしてこうなるのかど忘れしちゃった。つーちゃん、教えてもらってもいいかな」
「うん、いいよ」
前は解けていても、何故かもう一度やると分からない問題ってあるよね。明日香の隣に座って、彼女が分からないと言っている問題について教えていく。
「それで、この答えになるんだ」
「ああ、そうだったね! 教えてくれてありがとう、つーちゃん」
「いえいえ」
すると、明日香はお風呂に入る前と同じように、頬を赤くして僕のことをチラチラと見てくる。
そういえば、今まで明日香に分からないところを教えていたから気にならなかったけど、明日香と体が触れてしまいそうなところに座っていたんだ、僕。
「ねえ、つーちゃん。さっき……足を滑らせてつーちゃんの上に倒れちゃったけど、どこかケガしちゃった?」
「倒れてきた衝撃で痛みはあったけど、今は大丈夫だよ」
「そっか……それなら良かった」
明日香はほっと胸を撫で下ろしている。あのときは鈍い音が響いたし、僕がケガをしたと思ったんだろうな。
「ねえ、つーちゃん。……キ、キスしてもいいかな?」
「えっ?」
「突然こんなことを言ってごめんね! ただ、その……さっきのキスは不可抗力というか、偶然が重なったというか。そんな形でも、つーちゃんとキスしたのは事実で。ただ、ファーストキスをつーちゃんとしっかりとしたくて。ごめん、わがままばかり言って……」
明日香、さっきキスしてしまったとき以上に顔が赤いぞ。ただ、明日香がキスしてもいいかって言うとは思わなかった。
「謝る必要はないよ。それに……明日香がキスしたいって言うなら、僕はかまわない。そう言うのはもちろん明日香だからだよ」
一生懸命になってお願いする明日香を見たら断れないし、それに……あのときの口づけの感覚も悪くなかった。事故のような形じゃなかったら、どんな風に感じられるのか知りたいと思ったから。
「ありがとう、つーちゃん。じゃあ……お言葉に甘えてキスさせてもらうね」
明日香は僕のことをそっと抱きしめてくる。浴室よりもずっとボディーソープの甘い匂いが感じられる。明日香の持つ匂いといい具合に混ざっていて、ドキドキもするけれど安心感もあって。
そして、明日香は僕にキスをしてきた。
明日香の唇はとても柔らかくて温かい。さっきまでアップルティーを飲んできたのか、林檎の甘い香りもしてきて。とても心地が良かった。
どのくらい明日香と口づけをしたのか分からない。ただ、ゆっくりと唇を離したときに僕だけに見せてくれる嬉しそうな笑みを見ると、こちらまで嬉しく優しい想いが広がっていった。
「ファーストキスがつーちゃんで良かった。でも、キスは……つーちゃんとしかするつもりはないよ。そのくらいにつーちゃんのことが好きだから……」
そんな想いを口にしたことで恥ずかしくなってしまったのか、顔を真っ赤にして僕の胸の中に頭を埋めた。明日香から強い熱と激しい鼓動が伝わってくる。
やっぱり、明日香も……咲希と同じく僕のことが好きなんだな。もちろん、そんな素振りや言動がこれまであったので、もしかしたら……とは思っていた。
ただ、今すぐに答えが出せそうにはなかったので、
「……ありがとう。今はその気持ちを大切に受け取っておくね」
「……うん」
僕は明日香のことをそっと抱きしめて頭を優しく撫でた。
それから少し時間が経った後、明日香がとても眠たくなったということで、いつもよりも早めだけれど一緒に寝ることにした。
好きだという気持ちを明かしたことで吹っ切れたのか、明日香はこれまで以上に僕に密着してきた。
「こうしていると、凄くほっとする。最近はさっちゃんと2人でいる時間が多いそうだし、部活中も2人が気になることもあって。私はつーちゃんのことが好きなんだなってつくづく思うよ。ただ、やっぱり……つーちゃんの顔が見えて、温もりや匂いを感じられる今みたいな時間が、つーちゃんを好きなんだって一番強く感じられるの」
「……そうか」
「あと、さっちゃんにはつーちゃんへの好意は伝えてあるよ。だから、私も待ってる。ただ……私を選んでくれると嬉しいな」
明日香は彼女らしい柔和な笑みをすぐ側で見せる。
学校で、常盤さんが明日香に僕のことでからかうことがあったけど、咲希はそういったことは全然しなかった。明日香の性格はもちろんのこと、僕への好意をしっかりと理解していたからだったんだ。そして、咲希は……明日香の存在もあるから、僕にいつでもいいから決断した内容をちゃんと伝えてほしいと約束したんじゃないかと思っている。
「もちろん、急かしているわけじゃないよ。ただ、決めたことをつーちゃんの口から話してほしいかな」
「……咲希にも同じようなことを言われたよ」
「そっか。さっちゃんはいつも放課後につーちゃんといるし、こういうときくらいはいいよね。……うん」
すると、明日香はより僕に密着してくる。部屋の中は涼しくしていたからか、明日香の温もりがとても癒やしになったのであった。
「完全に意識してるな……」
――きっと、翼君の恋人になるのは明日香ちゃんか咲希ちゃんなんだよね。
鈴音さんからの告白を断った際、彼女からそう問われたので、多分そうだと思うと答えた。鈴音さんに告白されて、キスされたときに悲しげな2人の表情を思い浮かべたから。あのときは、単純に鈴音さんと付き合ったら2人がショックを受けそうだなと思っていた。
ただ、実際は当時から既に2人のことを特別な存在になっていたんだろう。いや、10年以上前からずっと。そのことを告白やキスなどを通してようやく自覚できたのだ。たぶん、咲希はそれを分かっていて、僕に考える時間をくれたんだと思う。
「考えをまとめて、いつか絶対に伝えないと」
咲希の立場を考えたら、なるべく早く伝えた方がいいだろう。ただ、焦って間違った答えを出すよりも、じっくりと考えて僕なりに納得できる答えを見つけよう。咲希に甘える形になっちゃうけれど。
そう決意すると、明日香や咲希のことばかり頭に思い浮かぶ。お淑やかでやんわりとした雰囲気の明日香に、元気で活発な咲希。タイプは違うけれど、2人とも魅力的な女の子であることは断言できる。
「全然勉強できないな。漫画でも読もう」
僕はベッドに横になって漫画を読むことに。
本棚から適当に選んだラブコメ漫画だけど、この作品のヒロイン達……どことなく明日香と咲希に似ている気がする。そういえば、今読んでいる部分のすぐ後に明日香に似ているヒロインが主人公とキスするシーンがあったような――。
「お風呂、先にいただいたよ」
「そ、そっか! 気持ち良かった?」
気付けば、桃色のネグリジェ姿の明日香が、お泊まりバッグを持って部屋に戻ってきていた。さっき、あんな形だけどキスしてしまったし、お泊まりバッグを持って部屋を出ていってしまったので、家に帰ったかもしれないと思ったけど。
「うん、気持ち良かったよ。どうしたの? 何かいつになく驚いている様子だけど」
「たまには気分転換もいいかなと思って漫画を読んでいたんだ。それに集中していたから驚いちゃっただけだよ」
「ふふっ、そっか。気分転換も必要だよね。私もお風呂に入って気分転換……できたような気がする」
恥ずかしそうにもじもじとしている明日香。どうやら、お風呂に入ったことでリラックスできたようだけど、そこから気分転換してしまったかもしれない。
「ねえ、つーちゃん。今日も一緒に寝てもいい……かな?」
「……いいよ、もちろん」
明日香の隣で眠ることができるかどうか心配だけど。
「ありがとう、つーちゃん」
「いつもの……ことだからね。僕もお風呂に入ってくるよ」
「うん、ごゆっくり」
柔らかな笑みで明日香に見送られながら、僕は部屋を後にする。
浴室に行くと明日香が出てからあまり時間が経っていないからか、ボディーソープの甘い匂いがしっかりと感じられた。明日香が泊まりに来たときはいつもそうだけど、今日は今までの中で一番はっきりと彼女の残り香があるような気がして。
髪と体を洗い、僕は肩まで湯船に浸かる。
「あぁ……気持ちいい」
夏でもお風呂は気持ちいいなぁ。今日の明日香の入浴時間は結構長かったので、きっとこうして体を伸ばして湯船にゆっくりと浸かっていたのだろう。
「部屋に戻ったら明日香がいるんだよな」
芽依と3人ならともかく、明日香と2人きりで勉強をできる自信がない。今日も学校の授業は自習時間や受験対策プリントをやるのがメインだったし、午後も咲希と勉強したし……今日はもういいのかな。
部屋に戻って明日香が勉強しているようだったら、僕も少しは勉強できそうな気がする。って、明日香次第で勉強する姿勢はよくないか。でも、もしかしたら――。
『ねえ、つーちゃん。受験には関係ないけど、今夜はベッドの上で一緒に……保健の勉強をしよう? 一度もやったことのない実技なんだけど……』
「……って、何を考えているんだ、僕は」
はあっ……と思わず大きなため息をついてしまう。中学生じゃないんだから。ただ、あの口づけの影響をモロに受けているんだな、僕。特別な存在であると自覚したけれど、不埒な妄想をしてはいけないな。
このまま湯船に浸かっていたら、変なことを考えてしまいのぼせるかもしれないので、僕はお風呂から出ることにした。
寝間着に着替えて部屋に戻ろうとするけど、自分の部屋に入るのにここまで緊張したことは今までに経験したことがない。
「よし……入るぞ」
覚悟を決めて部屋の中に入ると、明日香が1人で勉強をしていた。
「あっ、つーちゃん。お風呂気持ち良かった?」
「う、うん。明日香は……勉強?」
「そうだよ。今日の古文でやったプリントを復習しているの」
「そうだったんだ」
緊張する必要はなかったのかもしれないな。そして、明日香はさっきのキスを気にしていないのかな。
「あれ、ここの答えどうしてこうなるのかど忘れしちゃった。つーちゃん、教えてもらってもいいかな」
「うん、いいよ」
前は解けていても、何故かもう一度やると分からない問題ってあるよね。明日香の隣に座って、彼女が分からないと言っている問題について教えていく。
「それで、この答えになるんだ」
「ああ、そうだったね! 教えてくれてありがとう、つーちゃん」
「いえいえ」
すると、明日香はお風呂に入る前と同じように、頬を赤くして僕のことをチラチラと見てくる。
そういえば、今まで明日香に分からないところを教えていたから気にならなかったけど、明日香と体が触れてしまいそうなところに座っていたんだ、僕。
「ねえ、つーちゃん。さっき……足を滑らせてつーちゃんの上に倒れちゃったけど、どこかケガしちゃった?」
「倒れてきた衝撃で痛みはあったけど、今は大丈夫だよ」
「そっか……それなら良かった」
明日香はほっと胸を撫で下ろしている。あのときは鈍い音が響いたし、僕がケガをしたと思ったんだろうな。
「ねえ、つーちゃん。……キ、キスしてもいいかな?」
「えっ?」
「突然こんなことを言ってごめんね! ただ、その……さっきのキスは不可抗力というか、偶然が重なったというか。そんな形でも、つーちゃんとキスしたのは事実で。ただ、ファーストキスをつーちゃんとしっかりとしたくて。ごめん、わがままばかり言って……」
明日香、さっきキスしてしまったとき以上に顔が赤いぞ。ただ、明日香がキスしてもいいかって言うとは思わなかった。
「謝る必要はないよ。それに……明日香がキスしたいって言うなら、僕はかまわない。そう言うのはもちろん明日香だからだよ」
一生懸命になってお願いする明日香を見たら断れないし、それに……あのときの口づけの感覚も悪くなかった。事故のような形じゃなかったら、どんな風に感じられるのか知りたいと思ったから。
「ありがとう、つーちゃん。じゃあ……お言葉に甘えてキスさせてもらうね」
明日香は僕のことをそっと抱きしめてくる。浴室よりもずっとボディーソープの甘い匂いが感じられる。明日香の持つ匂いといい具合に混ざっていて、ドキドキもするけれど安心感もあって。
そして、明日香は僕にキスをしてきた。
明日香の唇はとても柔らかくて温かい。さっきまでアップルティーを飲んできたのか、林檎の甘い香りもしてきて。とても心地が良かった。
どのくらい明日香と口づけをしたのか分からない。ただ、ゆっくりと唇を離したときに僕だけに見せてくれる嬉しそうな笑みを見ると、こちらまで嬉しく優しい想いが広がっていった。
「ファーストキスがつーちゃんで良かった。でも、キスは……つーちゃんとしかするつもりはないよ。そのくらいにつーちゃんのことが好きだから……」
そんな想いを口にしたことで恥ずかしくなってしまったのか、顔を真っ赤にして僕の胸の中に頭を埋めた。明日香から強い熱と激しい鼓動が伝わってくる。
やっぱり、明日香も……咲希と同じく僕のことが好きなんだな。もちろん、そんな素振りや言動がこれまであったので、もしかしたら……とは思っていた。
ただ、今すぐに答えが出せそうにはなかったので、
「……ありがとう。今はその気持ちを大切に受け取っておくね」
「……うん」
僕は明日香のことをそっと抱きしめて頭を優しく撫でた。
それから少し時間が経った後、明日香がとても眠たくなったということで、いつもよりも早めだけれど一緒に寝ることにした。
好きだという気持ちを明かしたことで吹っ切れたのか、明日香はこれまで以上に僕に密着してきた。
「こうしていると、凄くほっとする。最近はさっちゃんと2人でいる時間が多いそうだし、部活中も2人が気になることもあって。私はつーちゃんのことが好きなんだなってつくづく思うよ。ただ、やっぱり……つーちゃんの顔が見えて、温もりや匂いを感じられる今みたいな時間が、つーちゃんを好きなんだって一番強く感じられるの」
「……そうか」
「あと、さっちゃんにはつーちゃんへの好意は伝えてあるよ。だから、私も待ってる。ただ……私を選んでくれると嬉しいな」
明日香は彼女らしい柔和な笑みをすぐ側で見せる。
学校で、常盤さんが明日香に僕のことでからかうことがあったけど、咲希はそういったことは全然しなかった。明日香の性格はもちろんのこと、僕への好意をしっかりと理解していたからだったんだ。そして、咲希は……明日香の存在もあるから、僕にいつでもいいから決断した内容をちゃんと伝えてほしいと約束したんじゃないかと思っている。
「もちろん、急かしているわけじゃないよ。ただ、決めたことをつーちゃんの口から話してほしいかな」
「……咲希にも同じようなことを言われたよ」
「そっか。さっちゃんはいつも放課後につーちゃんといるし、こういうときくらいはいいよね。……うん」
すると、明日香はより僕に密着してくる。部屋の中は涼しくしていたからか、明日香の温もりがとても癒やしになったのであった。
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