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続編
第46話『誕生日の夜は初めての夜-後編-』
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部屋に戻ると、氷織はベッドで横になりながらスマホを弄っていた。自分のベッドで寝間着姿の恋人がゆっくりしている光景……いいな。
「明斗さん、おかえりなさい。お言葉に甘えて、ベッドでゆっくりしています。ふかふかですし、明斗さんの匂いもしますから気持ちいいです」
「それは良かった」
「あと、思ったよりも早めのお帰りでしたね。お風呂にはあまり長く入らないタイプですか?」
「……な、夏本番の時期以外は長く入ることが多いんだけどな。今日は結構早く体が温まったから」
「そうだったんですね」
ふふっ、氷織は楽しそうに笑う。
氷織にお願いして、ベッドでゆっくりしている今の姿をスマホで撮らせてもらった。その後に氷織が俺の近くにやってきて、寝間着姿のツーショット写真も。ツーショットの方はLIMEで氷織に送った。
氷織からのお願いもあり、ドライヤーで俺の髪を乾かしてもらった。誰かに乾かしてもらうのもいいなぁ。
「これでOKですね」
「ありがとう、氷織」
「いえいえ。……さて。これから……何をしましょうか」
「何を……しようかなぁ」
お互いに風呂に入って、寝間着姿になった。この部屋で一緒に一夜を明かすから、これまでのお家デートとは雰囲気が全然違う。こういう状況だからこそ氷織としてみたいこともあって。ただ、それを考えると、湯船に浸かったとき以上に体が熱くなってきて。
どんなことをするにせよ、さっき姉貴が言っていたように……氷織と思い出深い時間にしたい。
「今日は明斗さんの誕生日なんですし……したいことを遠慮なく言ってくれていいんですよ?」
俺の隣から、氷織は甘い口調でそう言ってくれる。氷織の顔は頬中心に赤く色づいていて。初めて恋人の部屋に泊まるからドキドキしているのかも。
「ありがとう。ただ、今は俺にとっても氷織にとっても初めてのお泊まりなんだ。氷織もしたいことがあったら遠慮なく言ってね」
「あ、ありがとうございますっ」
小さく頭を下げると、氷織は俺のことをチラチラと見てくる。初めての状況なので、こういう仕草もとても可愛らしく見える。
少しの間、無言の時間が続いた後、
「……では、抱きしめ合ってキスしてみたいです。お互いに寝間着姿になったのはこれが初めてですから、どんな感覚か知りたいです」
「なるほど。俺も……その感覚を知りたいな。分かった」
俺はその場で両脚と両手を広げる。
氷織は俺の両脚の間に入ってきて、俺のことをぎゅっと抱きしめてくる。水着のときほどではないけど、制服姿のときと比べて氷織の温もりや柔らかさは結構感じられて。あと、お風呂を上がってからそこまで時間が経っていないので、氷織からシャンプーとボディーソープの甘い匂いがはっきりと香り、鼻腔がくすぐられる。そんな中で、両手を氷織の背中に回した。
「お風呂上がりなのもあるでしょうが、普段よりも明斗さんの温もりや匂いを強く感じます」
「俺も同じようなことを思ったよ。この感覚もいいなって思う」
「私もです」
至近距離で見つめ合うと、氷織はニコッと笑い、キスしてくる。
普段から氷織の唇は柔らかいけど、入浴後だからかいつも以上に柔らかくて、ふっくらとしている。氷織の温もりが優しく伝わっていく。
氷織の唇の感覚を堪能していると、氷織が舌を絡ませてくる。
「んっ……」
と、氷織はたまに可愛らしい声を漏らして。
お互いに、誕生日パーティーの最後の方はチョコケーキとアイスティーを楽しんでいた。だから、氷織の口からそれらの匂いが香ってきて。
段々と氷織の舌の絡ませ方が激しくなってくる。気持ちが高ぶってきたのだろうか。
少しの間、舌を絡ませたキスをし、氷織の方から唇を離す。氷織の唇は湿っていて、呼吸もちょっと乱れている。それでも、俺を見つめながら笑みを見せていて。そんな彼女が妖艶に思えた。
「明斗さんの舌の感覚もありますが、チョコレートの甘い味と紅茶の香りもあって、激しく絡ませちゃいました」
「そうだったんだ。氷織の積極さもあって、凄くドキドキするキスだった」
「私もです」
えへへっ、と氷織は可愛らしく笑う。
こうして、氷織を抱きしめながら舌を絡ませるキスをすると、正式に付き合い始めた直後に、氷織のご家族に挨拶した後の2人きりの時間を思い出す。あのときは確か、お互いに首にキスし合ったんだよな。
氷織の顔から視線を下げていくと、首はもちろんのこと、寝間着から白くて綺麗なデコルテがチラリと見えていて。俺は吸い込まれるようにして、氷織のデコルテにキスした。
「あっ……」
俺の唇が触れた瞬間、氷織は可愛らしい声を漏らして、体をピクリと震わせる。そんな反応が可愛くて愛おしい。
「まさか、デコルテにキスされるとは思いませんでした」
「寝間着の隙間からチラッと見えたから」
「そうですか」
「……いきなりされて、嫌だった?」
「いいえ。ドキッとしましたけど、嫌な気持ちは全く」
「良かった。……寝間着姿の氷織を抱きしめて、キスしたら……もっと氷織を感じたくなったよ。氷織さえ良ければ……キスよりも先のことをしないか?」
氷織の目を見て、俺は彼女にそう言った。
今日のお泊まりが決まってから、誕生日の夜に氷織と2人きりになったら、キスよりも先の行為をしたいと考えることが何度もあって。いざ、そのときがやってきたら緊張してしまったけど。ただ、氷織提案のハグやキスをするうちに、したい欲が膨らみ、それに伴い言う勇気も出たのだ。
内容が内容なだけに、氷織の顔が見る見るうちに赤くなっていく。見開いた目から放たれる視線もちらつき始めて。
初めてのお泊まりで、ハグやキスをしていい雰囲気になっているけど、キスより先のことをしたいと言ったのはまずかったか?
「もちろん、氷織が嫌なら俺は――」
「嬉しいです」
「えっ?」
依然として顔が真っ赤だけど、氷織は視線を俺に向けて微笑んでくれる。
「正式に付き合い始めて、明斗さんとたくさんキスする中で、その先の行為をしたい想いが生まれました。そんな中、明斗さんのお誕生日が土曜日だと分かって。誕生日にお泊まりして、そのときにできるといいな……って思っていたんです。先週のプールデートで明斗さんの水着姿を見て、その想いが特に膨らみましたね」
「そうだったんだ。じゃあ、プールデートの帰りの電車の中で、今日の話をしたときには……」
俺がそう問いかけると、氷織はしっかりと首肯する。
「……それも一つの目当てで、お泊まりしたいとお願いしました。でも、実際に誕生日の夜が来ると緊張してしまって。まずは抱きしめたり、キスしたりして雰囲気を作ろうって思ったんです。ちなみに、普段、夜はナイトブラを付けることが多いですけど、今は……私のお気に入りで、明斗さんもいいなと思ってもらえそうな下着を付けていまして」
氷織は寝間着のシャツのボタンをいくつか外して、レース生地の青いブラジャーをチラッと見せてくる。いわゆる勝負下着というやつだろうか。
「……凄く似合ってるよ」
「ありがとうございます。……私もしたいと思っていたので、明斗さんから言ってもらえたのが嬉しいんです」
そう話すと、氷織はニッコリと笑ってキスしてくれる。
「明斗さん。キスより先のことをしましょう。最後まで……しましょう」
「……ありがとう」
自分の欲が氷織の欲と重なっていることがとても嬉しくて、俺は氷織のことをぎゅっと抱きしめ、キスをする。
「両親の寝室は1階にあるし、夜に2階へ上がってくることはほとんどないよ。姉貴も……誕生日の残りの時間は氷織と2人きりで過ごしてって言っていたから、部屋に入ってくることはないと思う。まだ酔いは残っているけど」
「そうですか。それなら……もう始めても大丈夫そうですね。ただ、隣は明実さんの部屋ですから、迷惑にならないように気をつけないと」
はにかみながらそう言う氷織。酔いは少し醒めてきているが、お風呂に入ったら姉貴はすぐに眠ると思う。ただ、姉貴の迷惑にならないようにするに越したことはないだろう。
「あと、その……できてしまわないように、明斗さんにつけてもらうものを持ってきましたよ。部活帰りに笠ヶ谷にある東友の薬局で買いまして」
「そ、そうなんだ。準備してきたんだね。俺も……お泊まりが決まった後、バイト帰りに萩窪にあるドラックストアで買ったよ。お泊まりのときに、俺も……したいなって思っていたから」
「そうでしたか。そういうことをしっかり考えて準備しているところも好きです。ちなみに、明斗さんはこういう経験って初めてですか?」
「……初めてです」
「そうですか。私も初めてです。なので、優しく……お願いしますね。上手くできるかは分かりませんが、よろしくお願いします」
「……こちらこそよろしくお願いします」
俺も敬語で挨拶をすると、氷織は嬉しそうに笑って俺にキスをしてきた。
それからは主にベッドの中で氷織と肌を重ね、たっぷり愛し合った。
これまで、氷織のことを美しいと思う瞬間は何度もあった。もちろん、一糸纏わぬ姿の氷織はとても美しくて。ただ、そんな姿を見たり、触れたりすると本能が刺激され、氷織のことをたくさん求めていった。氷織も一糸纏わぬ俺を見て俺を求めることは何度もあって。
肌を重ねる中で、数え切れないほどに氷織と「好き」と言い合ったり、唇を重ねたり、体にキスし合ったりした。そうしているときを中心に、氷織は可愛い笑顔をたくさん見せてくれて。そんな姿がたまらなく愛おしく、他の誰にも見せたくないと強く思った。
「とても素敵な時間でした。気持ち良かったですから、たくさんしましたね」
「そうだな。気持ち良かったのはもちろんだけど……しているときの氷織の顔や反応が可愛かったよ。より好きになった」
「ありがとうございます。嬉しいですけど、照れちゃいますね」
氷織は俺の左腕を抱きしめながらそう言うと、「えへへっ」と可愛らしく笑う。お互いに何も着ていないので、氷織の体が少し熱くなるのがすぐに分かる。
「明斗さんとは体の相性もいいと分かりました」
「俺も思ったよ。特に氷織が動いているときに」
「ふふっ。明斗さんと一つになれて、こんなに幸せな時間を過ごせるなんて。明斗さんの誕生日ですけど、私が明斗さんからプレゼントをもらった気分です。ありがとうございます」
「そう思えるほどに氷織とできて良かったよ。俺も氷織から誕生日プレゼントをもらった気分だ。一番いいプレゼントかもしれない」
「……もう、明斗さんったら。わ、私が誕生日プレゼントですよ……えへっ」
照れくさいのか、氷織は俺の肩に頭をスリスリしてくる。可愛いなぁ。あと、素肌なのでスリスリされるとくすぐったい。
氷織と最後までできたなんて。しかも、たくさん。夢じゃないかと思い、口の中を軽く噛むと……ちゃんと痛みを感じられた。
「このことを含めて、17歳の誕生日は忘れることのない最高の誕生日になったよ。そう思えるのは氷織のおかげだよ。ありがとう」
「いえいえ。……もう0時を過ぎて20日になっていますが言わせてください。明斗さん、17歳の誕生日おめでとうございます。生まれてくれてありがとうございます。来年も、再来年も……遥か未来での明斗さんの誕生日もお祝いしたいです。もちろん、一緒に過ごす中で」
「嬉しいな、ありがとう。俺は幸せ者だ。俺も来年も、再来年も……いつまでも氷織の誕生日を祝いたいし、一緒に過ごしたいって思ってるよ」
「ありがとうございます。来年以降の私の誕生日がより楽しみになりますね。約束ですよ」
氷織は嬉しそうに笑って言う。
氷織の目を見ながらしっかりと首肯すると、氷織は白い歯を見せながら笑い、俺にキスしてきた。肌を重ねている最中にもたくさんキスしたのに、氷織と唇と重なるとドキッとして、体に優しい温もりが広がっていく。
氷織から唇を離すと、目の前には氷織の優しい笑顔があった。
「では、そろそろ寝ましょうか。気づけば日を跨いでいましたが、大丈夫でしたか?」
「大丈夫だよ。明日はバイトあるけど、昼過ぎからだし」
「良かったです。では……おやすみなさい」
「おやすみ」
俺からおやすみのキスをして、氷織は俺の左腕を抱きしめながら目を瞑る。寝顔……凄く可愛いなぁ。天使だよ天使。あと、氷織の寝顔を見るのはこれが初めてかもしれない。
夕食を作ったり、ついさっきまで俺と肌を重ねたりしたからだろうか。程なくして気持ち良さそうな寝息が聞こえてくる。そのことで可愛さが増す。
「おやすみ、氷織」
氷織の頬にキスして、ベッドライトを消して俺も目を瞑る。俺も氷織と体を動かしていたから、程なくして眠りに落ちる。
氷織のおかげで、今までの中で最高の誕生日になったのであった。
「明斗さん、おかえりなさい。お言葉に甘えて、ベッドでゆっくりしています。ふかふかですし、明斗さんの匂いもしますから気持ちいいです」
「それは良かった」
「あと、思ったよりも早めのお帰りでしたね。お風呂にはあまり長く入らないタイプですか?」
「……な、夏本番の時期以外は長く入ることが多いんだけどな。今日は結構早く体が温まったから」
「そうだったんですね」
ふふっ、氷織は楽しそうに笑う。
氷織にお願いして、ベッドでゆっくりしている今の姿をスマホで撮らせてもらった。その後に氷織が俺の近くにやってきて、寝間着姿のツーショット写真も。ツーショットの方はLIMEで氷織に送った。
氷織からのお願いもあり、ドライヤーで俺の髪を乾かしてもらった。誰かに乾かしてもらうのもいいなぁ。
「これでOKですね」
「ありがとう、氷織」
「いえいえ。……さて。これから……何をしましょうか」
「何を……しようかなぁ」
お互いに風呂に入って、寝間着姿になった。この部屋で一緒に一夜を明かすから、これまでのお家デートとは雰囲気が全然違う。こういう状況だからこそ氷織としてみたいこともあって。ただ、それを考えると、湯船に浸かったとき以上に体が熱くなってきて。
どんなことをするにせよ、さっき姉貴が言っていたように……氷織と思い出深い時間にしたい。
「今日は明斗さんの誕生日なんですし……したいことを遠慮なく言ってくれていいんですよ?」
俺の隣から、氷織は甘い口調でそう言ってくれる。氷織の顔は頬中心に赤く色づいていて。初めて恋人の部屋に泊まるからドキドキしているのかも。
「ありがとう。ただ、今は俺にとっても氷織にとっても初めてのお泊まりなんだ。氷織もしたいことがあったら遠慮なく言ってね」
「あ、ありがとうございますっ」
小さく頭を下げると、氷織は俺のことをチラチラと見てくる。初めての状況なので、こういう仕草もとても可愛らしく見える。
少しの間、無言の時間が続いた後、
「……では、抱きしめ合ってキスしてみたいです。お互いに寝間着姿になったのはこれが初めてですから、どんな感覚か知りたいです」
「なるほど。俺も……その感覚を知りたいな。分かった」
俺はその場で両脚と両手を広げる。
氷織は俺の両脚の間に入ってきて、俺のことをぎゅっと抱きしめてくる。水着のときほどではないけど、制服姿のときと比べて氷織の温もりや柔らかさは結構感じられて。あと、お風呂を上がってからそこまで時間が経っていないので、氷織からシャンプーとボディーソープの甘い匂いがはっきりと香り、鼻腔がくすぐられる。そんな中で、両手を氷織の背中に回した。
「お風呂上がりなのもあるでしょうが、普段よりも明斗さんの温もりや匂いを強く感じます」
「俺も同じようなことを思ったよ。この感覚もいいなって思う」
「私もです」
至近距離で見つめ合うと、氷織はニコッと笑い、キスしてくる。
普段から氷織の唇は柔らかいけど、入浴後だからかいつも以上に柔らかくて、ふっくらとしている。氷織の温もりが優しく伝わっていく。
氷織の唇の感覚を堪能していると、氷織が舌を絡ませてくる。
「んっ……」
と、氷織はたまに可愛らしい声を漏らして。
お互いに、誕生日パーティーの最後の方はチョコケーキとアイスティーを楽しんでいた。だから、氷織の口からそれらの匂いが香ってきて。
段々と氷織の舌の絡ませ方が激しくなってくる。気持ちが高ぶってきたのだろうか。
少しの間、舌を絡ませたキスをし、氷織の方から唇を離す。氷織の唇は湿っていて、呼吸もちょっと乱れている。それでも、俺を見つめながら笑みを見せていて。そんな彼女が妖艶に思えた。
「明斗さんの舌の感覚もありますが、チョコレートの甘い味と紅茶の香りもあって、激しく絡ませちゃいました」
「そうだったんだ。氷織の積極さもあって、凄くドキドキするキスだった」
「私もです」
えへへっ、と氷織は可愛らしく笑う。
こうして、氷織を抱きしめながら舌を絡ませるキスをすると、正式に付き合い始めた直後に、氷織のご家族に挨拶した後の2人きりの時間を思い出す。あのときは確か、お互いに首にキスし合ったんだよな。
氷織の顔から視線を下げていくと、首はもちろんのこと、寝間着から白くて綺麗なデコルテがチラリと見えていて。俺は吸い込まれるようにして、氷織のデコルテにキスした。
「あっ……」
俺の唇が触れた瞬間、氷織は可愛らしい声を漏らして、体をピクリと震わせる。そんな反応が可愛くて愛おしい。
「まさか、デコルテにキスされるとは思いませんでした」
「寝間着の隙間からチラッと見えたから」
「そうですか」
「……いきなりされて、嫌だった?」
「いいえ。ドキッとしましたけど、嫌な気持ちは全く」
「良かった。……寝間着姿の氷織を抱きしめて、キスしたら……もっと氷織を感じたくなったよ。氷織さえ良ければ……キスよりも先のことをしないか?」
氷織の目を見て、俺は彼女にそう言った。
今日のお泊まりが決まってから、誕生日の夜に氷織と2人きりになったら、キスよりも先の行為をしたいと考えることが何度もあって。いざ、そのときがやってきたら緊張してしまったけど。ただ、氷織提案のハグやキスをするうちに、したい欲が膨らみ、それに伴い言う勇気も出たのだ。
内容が内容なだけに、氷織の顔が見る見るうちに赤くなっていく。見開いた目から放たれる視線もちらつき始めて。
初めてのお泊まりで、ハグやキスをしていい雰囲気になっているけど、キスより先のことをしたいと言ったのはまずかったか?
「もちろん、氷織が嫌なら俺は――」
「嬉しいです」
「えっ?」
依然として顔が真っ赤だけど、氷織は視線を俺に向けて微笑んでくれる。
「正式に付き合い始めて、明斗さんとたくさんキスする中で、その先の行為をしたい想いが生まれました。そんな中、明斗さんのお誕生日が土曜日だと分かって。誕生日にお泊まりして、そのときにできるといいな……って思っていたんです。先週のプールデートで明斗さんの水着姿を見て、その想いが特に膨らみましたね」
「そうだったんだ。じゃあ、プールデートの帰りの電車の中で、今日の話をしたときには……」
俺がそう問いかけると、氷織はしっかりと首肯する。
「……それも一つの目当てで、お泊まりしたいとお願いしました。でも、実際に誕生日の夜が来ると緊張してしまって。まずは抱きしめたり、キスしたりして雰囲気を作ろうって思ったんです。ちなみに、普段、夜はナイトブラを付けることが多いですけど、今は……私のお気に入りで、明斗さんもいいなと思ってもらえそうな下着を付けていまして」
氷織は寝間着のシャツのボタンをいくつか外して、レース生地の青いブラジャーをチラッと見せてくる。いわゆる勝負下着というやつだろうか。
「……凄く似合ってるよ」
「ありがとうございます。……私もしたいと思っていたので、明斗さんから言ってもらえたのが嬉しいんです」
そう話すと、氷織はニッコリと笑ってキスしてくれる。
「明斗さん。キスより先のことをしましょう。最後まで……しましょう」
「……ありがとう」
自分の欲が氷織の欲と重なっていることがとても嬉しくて、俺は氷織のことをぎゅっと抱きしめ、キスをする。
「両親の寝室は1階にあるし、夜に2階へ上がってくることはほとんどないよ。姉貴も……誕生日の残りの時間は氷織と2人きりで過ごしてって言っていたから、部屋に入ってくることはないと思う。まだ酔いは残っているけど」
「そうですか。それなら……もう始めても大丈夫そうですね。ただ、隣は明実さんの部屋ですから、迷惑にならないように気をつけないと」
はにかみながらそう言う氷織。酔いは少し醒めてきているが、お風呂に入ったら姉貴はすぐに眠ると思う。ただ、姉貴の迷惑にならないようにするに越したことはないだろう。
「あと、その……できてしまわないように、明斗さんにつけてもらうものを持ってきましたよ。部活帰りに笠ヶ谷にある東友の薬局で買いまして」
「そ、そうなんだ。準備してきたんだね。俺も……お泊まりが決まった後、バイト帰りに萩窪にあるドラックストアで買ったよ。お泊まりのときに、俺も……したいなって思っていたから」
「そうでしたか。そういうことをしっかり考えて準備しているところも好きです。ちなみに、明斗さんはこういう経験って初めてですか?」
「……初めてです」
「そうですか。私も初めてです。なので、優しく……お願いしますね。上手くできるかは分かりませんが、よろしくお願いします」
「……こちらこそよろしくお願いします」
俺も敬語で挨拶をすると、氷織は嬉しそうに笑って俺にキスをしてきた。
それからは主にベッドの中で氷織と肌を重ね、たっぷり愛し合った。
これまで、氷織のことを美しいと思う瞬間は何度もあった。もちろん、一糸纏わぬ姿の氷織はとても美しくて。ただ、そんな姿を見たり、触れたりすると本能が刺激され、氷織のことをたくさん求めていった。氷織も一糸纏わぬ俺を見て俺を求めることは何度もあって。
肌を重ねる中で、数え切れないほどに氷織と「好き」と言い合ったり、唇を重ねたり、体にキスし合ったりした。そうしているときを中心に、氷織は可愛い笑顔をたくさん見せてくれて。そんな姿がたまらなく愛おしく、他の誰にも見せたくないと強く思った。
「とても素敵な時間でした。気持ち良かったですから、たくさんしましたね」
「そうだな。気持ち良かったのはもちろんだけど……しているときの氷織の顔や反応が可愛かったよ。より好きになった」
「ありがとうございます。嬉しいですけど、照れちゃいますね」
氷織は俺の左腕を抱きしめながらそう言うと、「えへへっ」と可愛らしく笑う。お互いに何も着ていないので、氷織の体が少し熱くなるのがすぐに分かる。
「明斗さんとは体の相性もいいと分かりました」
「俺も思ったよ。特に氷織が動いているときに」
「ふふっ。明斗さんと一つになれて、こんなに幸せな時間を過ごせるなんて。明斗さんの誕生日ですけど、私が明斗さんからプレゼントをもらった気分です。ありがとうございます」
「そう思えるほどに氷織とできて良かったよ。俺も氷織から誕生日プレゼントをもらった気分だ。一番いいプレゼントかもしれない」
「……もう、明斗さんったら。わ、私が誕生日プレゼントですよ……えへっ」
照れくさいのか、氷織は俺の肩に頭をスリスリしてくる。可愛いなぁ。あと、素肌なのでスリスリされるとくすぐったい。
氷織と最後までできたなんて。しかも、たくさん。夢じゃないかと思い、口の中を軽く噛むと……ちゃんと痛みを感じられた。
「このことを含めて、17歳の誕生日は忘れることのない最高の誕生日になったよ。そう思えるのは氷織のおかげだよ。ありがとう」
「いえいえ。……もう0時を過ぎて20日になっていますが言わせてください。明斗さん、17歳の誕生日おめでとうございます。生まれてくれてありがとうございます。来年も、再来年も……遥か未来での明斗さんの誕生日もお祝いしたいです。もちろん、一緒に過ごす中で」
「嬉しいな、ありがとう。俺は幸せ者だ。俺も来年も、再来年も……いつまでも氷織の誕生日を祝いたいし、一緒に過ごしたいって思ってるよ」
「ありがとうございます。来年以降の私の誕生日がより楽しみになりますね。約束ですよ」
氷織は嬉しそうに笑って言う。
氷織の目を見ながらしっかりと首肯すると、氷織は白い歯を見せながら笑い、俺にキスしてきた。肌を重ねている最中にもたくさんキスしたのに、氷織と唇と重なるとドキッとして、体に優しい温もりが広がっていく。
氷織から唇を離すと、目の前には氷織の優しい笑顔があった。
「では、そろそろ寝ましょうか。気づけば日を跨いでいましたが、大丈夫でしたか?」
「大丈夫だよ。明日はバイトあるけど、昼過ぎからだし」
「良かったです。では……おやすみなさい」
「おやすみ」
俺からおやすみのキスをして、氷織は俺の左腕を抱きしめながら目を瞑る。寝顔……凄く可愛いなぁ。天使だよ天使。あと、氷織の寝顔を見るのはこれが初めてかもしれない。
夕食を作ったり、ついさっきまで俺と肌を重ねたりしたからだろうか。程なくして気持ち良さそうな寝息が聞こえてくる。そのことで可愛さが増す。
「おやすみ、氷織」
氷織の頬にキスして、ベッドライトを消して俺も目を瞑る。俺も氷織と体を動かしていたから、程なくして眠りに落ちる。
氷織のおかげで、今までの中で最高の誕生日になったのであった。
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