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2学期編3
第27話『後夜祭』
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午後5時20分。
後夜祭の時間が近づいてきたので、俺は結衣、伊集院さん、福王寺先生、胡桃と一緒に会場である校庭へと向かう。
この時間だと、空はもう暗くなっている。今はクラスTシャツを着ているけど、なかなか涼しく感じられる。
校庭に行くと……夜間照明のおかげで明るくなっている。既に多くの生徒が集まっていて。また、朝礼台の近くではテントが設けられている。後夜祭の運営のテントだろうか。
また、校庭の中心部分には立派なやぐらがある。やぐらから少し離れたところに、やぐらを囲むようにして丸く白線が引かれている。
「杏樹先生。あのやぐらが、キャンプファイヤーをするためのものですか?」
「そうよ、結衣ちゃん。毎年、後夜祭では校庭の中心に建てられたやぐらを燃やすんだよ」
「そうなんですね! 立派ですし、火が点くのが楽しみです!」
「楽しみなのです!」
「楽しみだね!」
結衣と伊集院さんと胡桃はワクワクとした様子でそう言う。
「俺もキャンプファイヤー楽しみだな。一度もやったことないし」
「あたしも初めてだから楽しみだよ、ゆう君」
「そうか。まあ、胡桃と俺が卒業した中学では、結衣と伊集院さんが卒業した中学とは違って、林間学校の夜にキャンプファイヤーはやらなかったもんな」
「やらなかったよね。うちは天体観測だったよね」
「そうだった」
林間学校で泊まった合宿所は自然溢れる場所だったし、林間学校のあった日は晴れていたから、綺麗な星空を見られたことを覚えている。天体にはそこまで興味はないけど、綺麗な星空を見られて感動したっけ。
「おー、悠真達がいた」
クラスTシャツ姿の中野先輩が、同じTシャツを着る女子達と一緒に校庭にやってきた。空が暗くなっているので、みんなで「こんばんはー」と挨拶した。
一緒に来た女子達は中野先輩のクラスメイトでご友人だという。また、女子達は俺の弾き語りライブを見に来てくれていたそうで、俺に「弾き語り上手だったよ!」とか「高嶺さんに大好きだって言ったことにドキドキした」などと感想を言ってくれた。ステージからたくさんの人達が見えていたけど、こうやって感想を言ってもらえると本当にたくさんの人達が来てくれていたのだと実感する。
また、中野先輩は結衣と伊集院さんと同じ中学出身なので、結衣が先輩に中学時代の林間学校の夜について尋ねていた。すると、
「あたしの学年も、夜にキャンプファイヤーとフォークダンスやったなぁ」
と、中野先輩は懐かしそうに話していた。
結衣達と雑談に興じていると、文化祭実行委員長が朝礼台に上がるのが見えた。もうすぐ午後5時半なのかな。そう思って、スマホで時刻を確認すると……午後5時半と表示されていた。
「午後5時半になりました。みなさん、2日間の文化祭お疲れ様でした!」
実行委員長がそう挨拶する。
すると、会場にいる生徒達は拍手をして、「お疲れ様!」「楽しかった!」といった声が次々と聞こえてくる。俺達もそれに倣って拍手をしたり、「お疲れ様!」などと言ったりした。
「今年もいい文化祭になりましたね! これから後夜祭を始めます! それでは、みなさん……校庭の中心にあるやぐらにご注目ください。これからキャンプファイヤーの点火を行ないます。また、白線の内側には入らないようにしてください」
実行委員長の指示で、俺達は校庭の中心にあるやぐらの方を見る。やぐらの近くには生徒会長の女子生徒と男性教諭がいた。あと、やぐらを中心にして丸く描かれた白線は、火を点けるから内側に入れないためのラインだったのか。
「では、生徒会長! 点火をお願いします!」
「はいっ!」
生徒会長は元気良く返事をすると、着火ライターを使ってやぐらを点火。その火は少しずつ広がっていく。その様子を見てか、拍手の音が響いたり、「おおっ」という声が上がったりして。
やぐらに火がある程度広がったところで、校庭の夜間照明が消される。そのことで、校庭はキャンプファイヤーの火で照らされていく。暗くなってから校庭に来るのは初めてだし、暖色の光に照らされているから、どこか幻想的な感じがする。
「無事に点火しましたね! では、後夜祭を楽しんでください!」
そして、後夜祭が始まった。
「キャンプファイヤー凄いね、悠真君!」
「そうだな! やぐらが立派だから、炎が結構迫力あるな」
「そうだね、ゆう君。あと、炎がとても綺麗……」
「お二人の言うこと分かるのです。あたしも、中学の林間学校でのキャンプファイヤーのときにそう思ったのです」
「あんなに大きな炎を見ることはそうそうないもんね。あたしは中学の林間学校を含めてキャンプファイヤーは3回目だから、あたしにとってはイベントの夜って感じがする」
「毎年、後夜祭でキャンプファイヤーをするから、キャンプファイヤーを見ると文化祭が終わったんだなって先生は思うよ」
キャンプファイヤーで色々な感想が出るんだな。それが何だか面白く感じた。
「ねえ、みんな。写真撮ろうよ!」
「そうだな、結衣」
俺がそう言うと、伊集院さんや胡桃達も賛成した。
結衣のスマホを使って、キャンプファイヤーや、炎の灯りによって照らされたみんなを撮影した。その写真はLIMEで送ってもらった。
写真を取り終わってから程なくして、スピーカーから俺でも聴いたことのある曲が流れ始めた。
「これからしばらくの間、この曲を流します。キャンプファイヤーの周りなどで、是非、フォークダンスを楽しんでください!」
曲が始まった直後、文化祭実行委員長がそうアナウンスした。
フォークダンスをやることになったか。だから、結衣や伊集院さん達は喜んでいて。
あと、俺の観たアニメでも、この曲でフォークダンスをやっていたっけ。
「結衣は中学の林間学校では、この曲でフォークダンスをやったのか?」
「うん、そうだよ!」
「そうなんだ。じゃあ、さっそく振り付けを教えてもらってもいいか?」
「いいよ!」
結衣はとっても明るい笑顔でそう答えてくれた。
「姫奈ちゃん、あたしに教えてくれないかな? それで、姫奈ちゃんと一緒に踊りたいな」
「もちろんいいのですよ!」
「悠真と高嶺ちゃん、伊集院ちゃんと華頂ちゃんか。じゃあ、あたしと一緒に踊りますか? 杏樹先生」
「私はいいけど……お友達はいいの?」
「千佳ちゃんと杏樹先生が踊っているところを見てみたいです!」
「あたしも!」
などと、中野先輩の友人達は先輩と福王寺先生が一緒に踊っているところを見たいと所望する。先輩と先生は仲がいいし、先輩は可愛くて先生は綺麗だから踊る姿を見てみたいのかも。
「そういうことなら。分かったよ、千佳ちゃん」
福王寺先生は中野先輩の提案を受け入れた。
胡桃と伊集院さん、中野先輩と福王寺先生の組み合わせで踊るのか。
キャンプファイヤーの方を見ると、キャンプファイヤーの周りに引かれたラインに沿ってフォークダンスをするペアが何組も。カップルと思われるペアもいれば、友人同士と思われるペアなど様々だ。
また、中野先輩と福王寺先生は振り付けを覚えているのか、ラインが引かれているところへ繰り出した。
中野先輩と福王寺先生……楽しそうに踊っているな。あと、中野先輩よりも背が高かったり、スラックスを着たりしているから、先生がとてもかっこよく見える。
「千佳ちゃんと杏樹先生素敵です!」
「杏樹先生かっこいいですっ!」
中野先輩の友人達は先輩と福王寺先生が踊る姿を称賛していた。あと、先生がかっこいいと言う女子生徒が何人もいて。
俺は結衣から、胡桃は伊集院さんからそれぞれフォークダンスの振り付けを教わる。
結衣の教え方が分かりやすいおかげで、基本的な振り付けは難なく覚えられる。胡桃の方も順調そうだ。
一通り覚えたところで、俺達もラインに沿って踊っている列に加わる。
結衣に教わったばかりだし、たまに結衣が助言してくれるから、何とかフォークダンスを踊ることができている。
結衣と手を取り合っているし、時には体が触れることもあって。そして、何よりも……キャンプファイヤーの炎で照らされた結衣の楽しそうな笑顔が可愛いからドキッとする。
「フォークダンス楽しいね!」
「そうだな。結衣のおかげで何とか踊れてる」
「良かった。悠真君上手だよ!」
「ありがとう」
俺がお礼を言うと、結衣は俺にニコッと笑いかけてくれて。そんな結衣も可愛くてキュンとなる。
俺達の前で胡桃と伊集院さんも踊っているけど、2人も楽しそうだ。伊集院さんの教えもあって胡桃も踊れている。
「あと、暗い中で悠真君にフォークダンスの踊り方を手取り足取り教えて。踊るっていう共同作業をして。手を取って、体が触れることもあって。何だかえっちな気分になってくるね……」
結衣はそう言うと、恍惚とした笑顔で俺のことを見つめてくる。結衣らしい発想だから思わず「ははっ」と声に出して笑う。
「結衣らしいな。ただ、手を取っているし、たまに体が触れるから、結衣の気持ちは分かるかな。俺もドキッとするし」
素直に感想を言うと、結衣は楽しげな笑顔で「ふふっ、そっか」と言った。
「フォークダンスは初めてだけど、結衣のおかげで凄く楽しいぞ」
「そう言ってくれて嬉しいよ! 私もだよ!」
結衣は持ち前の明るい笑顔でそう言ってくれる。炎に照らされているのもあり、今の笑顔には特別感があって。
「高校最初の文化祭は結衣達のおかげでとても楽しかったよ。今までの学校のイベントで一番楽しかった。喫茶店で結衣と伊集院さんと福王寺先生と接客の仕事をして。友達や家族とかに接客できたし。結衣とデートして。喫茶店とスイーツ部の屋台で結衣達に接客されて。弾き語りライブをして。ライブのときには結衣に大好きだって言えたし。盛りだくさんだったから」
「本当に盛りだくさんだったね。私も悠真君達のおかげで文化祭がとても楽しかったよ! 私も一番楽しい学校のイベントになったよ」
結衣はニッコリとした笑顔でそう言ってくれた。そのことがとても嬉しくて。
結衣の可愛い笑顔を見ていると、文化祭での出来事を色々思い出すよ。楽しいことが盛りだくさんだった文化祭だったな。
「そうか。結衣がそう言ってくれて嬉しいよ」
「私もだよ、悠真君!」
そう言うと、結衣の笑顔はますます可愛いものになった。
また、この直後はお互いに体が少し近づく振り付けで。体が近づいた際に結衣が俺にキスしてきた。フォークダンスをしているから特別な感じがして。
この後しばらくは結衣と一緒にフォークダンスを踊った。
また、その後はダンス部によるアップテンポな曲をBGMにした演舞、合唱部による有名曲の歌唱などのパフォーマンスもあって盛り上がって。結衣達と一緒に後夜祭を楽しんだ。
後夜祭の時間が近づいてきたので、俺は結衣、伊集院さん、福王寺先生、胡桃と一緒に会場である校庭へと向かう。
この時間だと、空はもう暗くなっている。今はクラスTシャツを着ているけど、なかなか涼しく感じられる。
校庭に行くと……夜間照明のおかげで明るくなっている。既に多くの生徒が集まっていて。また、朝礼台の近くではテントが設けられている。後夜祭の運営のテントだろうか。
また、校庭の中心部分には立派なやぐらがある。やぐらから少し離れたところに、やぐらを囲むようにして丸く白線が引かれている。
「杏樹先生。あのやぐらが、キャンプファイヤーをするためのものですか?」
「そうよ、結衣ちゃん。毎年、後夜祭では校庭の中心に建てられたやぐらを燃やすんだよ」
「そうなんですね! 立派ですし、火が点くのが楽しみです!」
「楽しみなのです!」
「楽しみだね!」
結衣と伊集院さんと胡桃はワクワクとした様子でそう言う。
「俺もキャンプファイヤー楽しみだな。一度もやったことないし」
「あたしも初めてだから楽しみだよ、ゆう君」
「そうか。まあ、胡桃と俺が卒業した中学では、結衣と伊集院さんが卒業した中学とは違って、林間学校の夜にキャンプファイヤーはやらなかったもんな」
「やらなかったよね。うちは天体観測だったよね」
「そうだった」
林間学校で泊まった合宿所は自然溢れる場所だったし、林間学校のあった日は晴れていたから、綺麗な星空を見られたことを覚えている。天体にはそこまで興味はないけど、綺麗な星空を見られて感動したっけ。
「おー、悠真達がいた」
クラスTシャツ姿の中野先輩が、同じTシャツを着る女子達と一緒に校庭にやってきた。空が暗くなっているので、みんなで「こんばんはー」と挨拶した。
一緒に来た女子達は中野先輩のクラスメイトでご友人だという。また、女子達は俺の弾き語りライブを見に来てくれていたそうで、俺に「弾き語り上手だったよ!」とか「高嶺さんに大好きだって言ったことにドキドキした」などと感想を言ってくれた。ステージからたくさんの人達が見えていたけど、こうやって感想を言ってもらえると本当にたくさんの人達が来てくれていたのだと実感する。
また、中野先輩は結衣と伊集院さんと同じ中学出身なので、結衣が先輩に中学時代の林間学校の夜について尋ねていた。すると、
「あたしの学年も、夜にキャンプファイヤーとフォークダンスやったなぁ」
と、中野先輩は懐かしそうに話していた。
結衣達と雑談に興じていると、文化祭実行委員長が朝礼台に上がるのが見えた。もうすぐ午後5時半なのかな。そう思って、スマホで時刻を確認すると……午後5時半と表示されていた。
「午後5時半になりました。みなさん、2日間の文化祭お疲れ様でした!」
実行委員長がそう挨拶する。
すると、会場にいる生徒達は拍手をして、「お疲れ様!」「楽しかった!」といった声が次々と聞こえてくる。俺達もそれに倣って拍手をしたり、「お疲れ様!」などと言ったりした。
「今年もいい文化祭になりましたね! これから後夜祭を始めます! それでは、みなさん……校庭の中心にあるやぐらにご注目ください。これからキャンプファイヤーの点火を行ないます。また、白線の内側には入らないようにしてください」
実行委員長の指示で、俺達は校庭の中心にあるやぐらの方を見る。やぐらの近くには生徒会長の女子生徒と男性教諭がいた。あと、やぐらを中心にして丸く描かれた白線は、火を点けるから内側に入れないためのラインだったのか。
「では、生徒会長! 点火をお願いします!」
「はいっ!」
生徒会長は元気良く返事をすると、着火ライターを使ってやぐらを点火。その火は少しずつ広がっていく。その様子を見てか、拍手の音が響いたり、「おおっ」という声が上がったりして。
やぐらに火がある程度広がったところで、校庭の夜間照明が消される。そのことで、校庭はキャンプファイヤーの火で照らされていく。暗くなってから校庭に来るのは初めてだし、暖色の光に照らされているから、どこか幻想的な感じがする。
「無事に点火しましたね! では、後夜祭を楽しんでください!」
そして、後夜祭が始まった。
「キャンプファイヤー凄いね、悠真君!」
「そうだな! やぐらが立派だから、炎が結構迫力あるな」
「そうだね、ゆう君。あと、炎がとても綺麗……」
「お二人の言うこと分かるのです。あたしも、中学の林間学校でのキャンプファイヤーのときにそう思ったのです」
「あんなに大きな炎を見ることはそうそうないもんね。あたしは中学の林間学校を含めてキャンプファイヤーは3回目だから、あたしにとってはイベントの夜って感じがする」
「毎年、後夜祭でキャンプファイヤーをするから、キャンプファイヤーを見ると文化祭が終わったんだなって先生は思うよ」
キャンプファイヤーで色々な感想が出るんだな。それが何だか面白く感じた。
「ねえ、みんな。写真撮ろうよ!」
「そうだな、結衣」
俺がそう言うと、伊集院さんや胡桃達も賛成した。
結衣のスマホを使って、キャンプファイヤーや、炎の灯りによって照らされたみんなを撮影した。その写真はLIMEで送ってもらった。
写真を取り終わってから程なくして、スピーカーから俺でも聴いたことのある曲が流れ始めた。
「これからしばらくの間、この曲を流します。キャンプファイヤーの周りなどで、是非、フォークダンスを楽しんでください!」
曲が始まった直後、文化祭実行委員長がそうアナウンスした。
フォークダンスをやることになったか。だから、結衣や伊集院さん達は喜んでいて。
あと、俺の観たアニメでも、この曲でフォークダンスをやっていたっけ。
「結衣は中学の林間学校では、この曲でフォークダンスをやったのか?」
「うん、そうだよ!」
「そうなんだ。じゃあ、さっそく振り付けを教えてもらってもいいか?」
「いいよ!」
結衣はとっても明るい笑顔でそう答えてくれた。
「姫奈ちゃん、あたしに教えてくれないかな? それで、姫奈ちゃんと一緒に踊りたいな」
「もちろんいいのですよ!」
「悠真と高嶺ちゃん、伊集院ちゃんと華頂ちゃんか。じゃあ、あたしと一緒に踊りますか? 杏樹先生」
「私はいいけど……お友達はいいの?」
「千佳ちゃんと杏樹先生が踊っているところを見てみたいです!」
「あたしも!」
などと、中野先輩の友人達は先輩と福王寺先生が一緒に踊っているところを見たいと所望する。先輩と先生は仲がいいし、先輩は可愛くて先生は綺麗だから踊る姿を見てみたいのかも。
「そういうことなら。分かったよ、千佳ちゃん」
福王寺先生は中野先輩の提案を受け入れた。
胡桃と伊集院さん、中野先輩と福王寺先生の組み合わせで踊るのか。
キャンプファイヤーの方を見ると、キャンプファイヤーの周りに引かれたラインに沿ってフォークダンスをするペアが何組も。カップルと思われるペアもいれば、友人同士と思われるペアなど様々だ。
また、中野先輩と福王寺先生は振り付けを覚えているのか、ラインが引かれているところへ繰り出した。
中野先輩と福王寺先生……楽しそうに踊っているな。あと、中野先輩よりも背が高かったり、スラックスを着たりしているから、先生がとてもかっこよく見える。
「千佳ちゃんと杏樹先生素敵です!」
「杏樹先生かっこいいですっ!」
中野先輩の友人達は先輩と福王寺先生が踊る姿を称賛していた。あと、先生がかっこいいと言う女子生徒が何人もいて。
俺は結衣から、胡桃は伊集院さんからそれぞれフォークダンスの振り付けを教わる。
結衣の教え方が分かりやすいおかげで、基本的な振り付けは難なく覚えられる。胡桃の方も順調そうだ。
一通り覚えたところで、俺達もラインに沿って踊っている列に加わる。
結衣に教わったばかりだし、たまに結衣が助言してくれるから、何とかフォークダンスを踊ることができている。
結衣と手を取り合っているし、時には体が触れることもあって。そして、何よりも……キャンプファイヤーの炎で照らされた結衣の楽しそうな笑顔が可愛いからドキッとする。
「フォークダンス楽しいね!」
「そうだな。結衣のおかげで何とか踊れてる」
「良かった。悠真君上手だよ!」
「ありがとう」
俺がお礼を言うと、結衣は俺にニコッと笑いかけてくれて。そんな結衣も可愛くてキュンとなる。
俺達の前で胡桃と伊集院さんも踊っているけど、2人も楽しそうだ。伊集院さんの教えもあって胡桃も踊れている。
「あと、暗い中で悠真君にフォークダンスの踊り方を手取り足取り教えて。踊るっていう共同作業をして。手を取って、体が触れることもあって。何だかえっちな気分になってくるね……」
結衣はそう言うと、恍惚とした笑顔で俺のことを見つめてくる。結衣らしい発想だから思わず「ははっ」と声に出して笑う。
「結衣らしいな。ただ、手を取っているし、たまに体が触れるから、結衣の気持ちは分かるかな。俺もドキッとするし」
素直に感想を言うと、結衣は楽しげな笑顔で「ふふっ、そっか」と言った。
「フォークダンスは初めてだけど、結衣のおかげで凄く楽しいぞ」
「そう言ってくれて嬉しいよ! 私もだよ!」
結衣は持ち前の明るい笑顔でそう言ってくれる。炎に照らされているのもあり、今の笑顔には特別感があって。
「高校最初の文化祭は結衣達のおかげでとても楽しかったよ。今までの学校のイベントで一番楽しかった。喫茶店で結衣と伊集院さんと福王寺先生と接客の仕事をして。友達や家族とかに接客できたし。結衣とデートして。喫茶店とスイーツ部の屋台で結衣達に接客されて。弾き語りライブをして。ライブのときには結衣に大好きだって言えたし。盛りだくさんだったから」
「本当に盛りだくさんだったね。私も悠真君達のおかげで文化祭がとても楽しかったよ! 私も一番楽しい学校のイベントになったよ」
結衣はニッコリとした笑顔でそう言ってくれた。そのことがとても嬉しくて。
結衣の可愛い笑顔を見ていると、文化祭での出来事を色々思い出すよ。楽しいことが盛りだくさんだった文化祭だったな。
「そうか。結衣がそう言ってくれて嬉しいよ」
「私もだよ、悠真君!」
そう言うと、結衣の笑顔はますます可愛いものになった。
また、この直後はお互いに体が少し近づく振り付けで。体が近づいた際に結衣が俺にキスしてきた。フォークダンスをしているから特別な感じがして。
この後しばらくは結衣と一緒にフォークダンスを踊った。
また、その後はダンス部によるアップテンポな曲をBGMにした演舞、合唱部による有名曲の歌唱などのパフォーマンスもあって盛り上がって。結衣達と一緒に後夜祭を楽しんだ。
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