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特別編-ラブラブ!サンシャイン!!-
プロローグ『引越祝い』
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特別編-ラブラブ!サンシャイン!!-
8月15日、月曜日。
美来と同棲するため、新居に引っ越してから3日目。
月曜日ということもあり、今日は引越しをしたことにより必要な手続きをするため、美来と一緒に市役所や警察署などに行った。午前中から動き回っていたけど、気付いたらもう午後6時過ぎになっていた。
「これで必要な手続きは終わりましたか?」
「うん、一通り終わったよ」
これで、公的にも美来と一緒に住んでいることになる。美来とは恋人であり、婚約者であり、同居人であり、保護者のようでもあり……色々と言えてしまうので、逆によく分からなくなってきたぞ。
「どうかしました? もしかして、どこかで忘れ物でも?」
「いや、そんなことはないよ。ただ、これからは美来と一緒に住むんだなぁと思って」
「ふふっ、そうですね」
美来は嬉しそうな笑みを見せてくれる。住民票の住所変更で、僕と美来が一緒に住んでいることの申請が終わってから、美来はずっと笑顔だ。
「まさか、あの日から10年経って、智也さんと一緒に同棲できるとは思いませんでした」
「……僕のことを8年近くも陰から見ていたし、こうなることはほぼ確実だったんじゃない?」
昨日、この10年間の美来の思い出話を聞いたけど、8年近く僕のことを見守ってくれていた。有紗さんは例外として、僕が他の女性と付き合いそうになったら、美来は上手くやり過ごしたんじゃないだろうか。
「そ、それはその……やり過ぎな部分があったことは認めますが、智也さんへの愛情の深さ故にしてしまったことです。今後は気を付けます。なので、智也さんも色々と気を付けてくださいね。あなたは素敵な人ですから。でも、信じていますよ」
「……もちろんだよ」
美来の笑顔、色々な意味で恐いな。もちろん、浮気や不倫なんてするつもりはないけど。勘違いされるようなことにならないよう気を付けないと。
「美来も気を付けなよ。美来はとても可愛いし、魅力的な女の子だから」
「……もぅ、智也さんったら。私は浮気や不倫なんてしませんよ! 智也さんは愛おしく大切な私の婚約者ですから。それに、智也さんはそんな私達の関係を形にしてくれたじゃないですか」
美来は右手の薬指にはめている指輪を見せてくれる。僕がプレゼントした婚約指輪、はめてくれているんだ。嬉しいな。もちろん、僕も今、右手の薬指に美来と同じ指輪をはめている。
あと、僕は美来が浮気や不倫をしないと信じている。むしろ、美来の場合は周りの人間から言い寄られるような気がして。
――プルルッ。
うん? 僕のスマートフォンが鳴っているな。
「……羽賀から電話だ」
「何かあったのでしょうか」
親友であっても警察官なので、電話が来るとドキッとするな。僕が逮捕された例の事件については、随分前に一段落したって言われたんだけど。
「もしもし」
『羽賀だ、今、大丈夫だろうか?』
「ああ。美来と一緒に外にいるけど、大丈夫だよ」
『そうか。夏休みと引越しの特別休暇で、君は休みなのか。満喫できているだろうか』
「できてるよ。今日一日で、引越ししたことで必要な手続きは一通り終わったから、これで来週の日曜日まではゆっくりできるよ」
有休を使わずに1週間以上も休むことができるので有り難いよ。去年も夏期休暇はあったけれど、有休はまだもらえていなかったのでこんなに長く休めなかった。
『なるほど、それは良かった。美来さんも夏休みだろう?』
「ああ。今はお盆の時期だから、部活の方もないよ」
『了解した。では、本題に入ろう。君に電話をしたのは、君と美来さんに旅行をプレゼントしようと思ったからだ』
「旅行をプレゼント?」
僕がそう言ったからか、美来は目を輝かせているぞ。以前から、引越しに関する用事が早く終わったら、どこかに行きたいと話してはいた。僕の夏休みも残り6日間もあるし、どこかに旅行してもいいかな。
『今週、同僚が奥様と2人で旅行に行く予定だったのだが、どうしても外せない用事が今日になって入ってしまったそうだ。元々、キャンペーンで当たったペアチケットで行くことになっているから、誰かに譲渡して代わりに楽しんでほしいと言っているのだ』
「そうなんだ。でも、その同僚さんは羽賀が誰かと行ってほしくて、その話をしたんじゃないのか? タダで泊まれるのは有り難い話だけど、それが僕と美来でいいのかな」
『大丈夫だ。親友とその恋人の引越しと同棲祝いにどうかと話したら、同僚もそれが一番いいと了承してくれた』
「……なるほどな」
そういうことを事前にしっかりと話しているところが、さすがは羽賀と言うべきか。
「僕はかまわないけど、美来に行きたいかどうか訊いてみてもいい?」
『ああ』
確認する必要もない気がするけれど、念のために美来に訊いてみるか。
「美来、今週、旅行に行けるかもしれないんだけど、行きたい?」
「行きたいです! 引越しと同棲記念に!」
外なのに大きな声で言っちゃって。本当に可愛いな。
「……分かった」
引越し記念に旅行に行くというのも不思議な感じではあるけど、せっかくの夏休みだ。行けるなら美来と一緒に旅行に行きたい。
「美来も行きたいそうだ、羽賀」
『大きな声だったので私にも聞こえていた』
「今、譲ってくれる人が側にいるならお礼が言いたいんだけど」
『分かった。……佐藤さん、氷室がお礼を言いたいそうです』
旅行のチケットを譲ってくれる人、佐藤さんって言うんだ。
『初めまして、佐藤です』
「氷室と申します。初めまして」
佐藤さん、とても渋くてかっこいい声をしている。僕や羽賀よりも年上のように思えるけれど、果たして羽賀の同僚なのか?
いや、羽賀はキャリア組で階級も警部なので、佐藤さんが同じ階級でノンキャリア組の方なら一回りや二回り上の可能性もあるか。
『妻と2人で水曜から2泊3日で旅行へ行こうと思ったのですが、どうしても外せない急用が入ってしまいまして。このままキャンセルするよりは、別の方に行っていただいた方がいいかと思いまして』
2泊3日の旅行か。ちょうどいいな。水曜日から金曜日という曜日もいいじゃないか。
「そうですか。譲っていただいてありがとうございます。付き合っている彼女と一緒に楽しみたいと思います」
『羽賀君からは引越祝いと聞いておりますが、氷室さんの場合は……日は経ちましたが釈放祝いということで』
「ああ、そうですか。ありがとうございます」
警察関係者だから、僕が誤認逮捕された件も知っているのか。以前ほどではないけど、逮捕されたときに大々的に報道された影響で、今でも僕のことを変な目つきで見てくる人がいるんだよなぁ。
『羽賀君にホテルの宿泊チケットを渡しておきますので、彼から受け取ってください』
「分かりました。ありがとうございます。楽しんできます」
羽賀と佐藤さんには、チケットのお礼の意味も込めてお土産を買わないと。
『……ということで、氷室。旅行のチケットを渡すために、これから君と美来さんの新居に行こうと思う。住所は以前に教えてもらったので大丈夫だ』
「ああ、分かった」
『雑務が残っているから……たぶん、7時半くらいになる。マンションの前に到着したらもう一度連絡する』
「ああ。じゃあ、家で美来と待ってるよ」
そう言って、僕の方から通話を切った。
まさか、2泊3日の旅行に行くことになるとは。そういえば、佐藤さんが行こうとしていたホテルの名前や場所を聞くのを忘れたけど……それは、チケットをもらうまでのお楽しみにしておくか。
「羽賀が旅行のチケットを家まで持ってきてくれるって。7時半くらいに着くらしい」
「そうですか。ちなみに、旅行はいつから行くのですか?」
「水曜日から金曜日までだから……明後日から2泊3日になるね」
「分かりました。では、明日は旅行の準備をしましょうか」
「そうだね」
「では、まずは3人分の夕食の準備をした方がいいですね。お礼も兼ねて、羽賀さんの分も夕ご飯を作りましょう!」
旅行に行くことになったからか、美来、張り切っているな。張り切りすぎて、旅行に行くときに疲れていなければいいけど。
どうやら、今年の夏は忘れることのできない思い出はいくつもできそうだ。それはとても嬉しく、有り難いなと思うのであった。
8月15日、月曜日。
美来と同棲するため、新居に引っ越してから3日目。
月曜日ということもあり、今日は引越しをしたことにより必要な手続きをするため、美来と一緒に市役所や警察署などに行った。午前中から動き回っていたけど、気付いたらもう午後6時過ぎになっていた。
「これで必要な手続きは終わりましたか?」
「うん、一通り終わったよ」
これで、公的にも美来と一緒に住んでいることになる。美来とは恋人であり、婚約者であり、同居人であり、保護者のようでもあり……色々と言えてしまうので、逆によく分からなくなってきたぞ。
「どうかしました? もしかして、どこかで忘れ物でも?」
「いや、そんなことはないよ。ただ、これからは美来と一緒に住むんだなぁと思って」
「ふふっ、そうですね」
美来は嬉しそうな笑みを見せてくれる。住民票の住所変更で、僕と美来が一緒に住んでいることの申請が終わってから、美来はずっと笑顔だ。
「まさか、あの日から10年経って、智也さんと一緒に同棲できるとは思いませんでした」
「……僕のことを8年近くも陰から見ていたし、こうなることはほぼ確実だったんじゃない?」
昨日、この10年間の美来の思い出話を聞いたけど、8年近く僕のことを見守ってくれていた。有紗さんは例外として、僕が他の女性と付き合いそうになったら、美来は上手くやり過ごしたんじゃないだろうか。
「そ、それはその……やり過ぎな部分があったことは認めますが、智也さんへの愛情の深さ故にしてしまったことです。今後は気を付けます。なので、智也さんも色々と気を付けてくださいね。あなたは素敵な人ですから。でも、信じていますよ」
「……もちろんだよ」
美来の笑顔、色々な意味で恐いな。もちろん、浮気や不倫なんてするつもりはないけど。勘違いされるようなことにならないよう気を付けないと。
「美来も気を付けなよ。美来はとても可愛いし、魅力的な女の子だから」
「……もぅ、智也さんったら。私は浮気や不倫なんてしませんよ! 智也さんは愛おしく大切な私の婚約者ですから。それに、智也さんはそんな私達の関係を形にしてくれたじゃないですか」
美来は右手の薬指にはめている指輪を見せてくれる。僕がプレゼントした婚約指輪、はめてくれているんだ。嬉しいな。もちろん、僕も今、右手の薬指に美来と同じ指輪をはめている。
あと、僕は美来が浮気や不倫をしないと信じている。むしろ、美来の場合は周りの人間から言い寄られるような気がして。
――プルルッ。
うん? 僕のスマートフォンが鳴っているな。
「……羽賀から電話だ」
「何かあったのでしょうか」
親友であっても警察官なので、電話が来るとドキッとするな。僕が逮捕された例の事件については、随分前に一段落したって言われたんだけど。
「もしもし」
『羽賀だ、今、大丈夫だろうか?』
「ああ。美来と一緒に外にいるけど、大丈夫だよ」
『そうか。夏休みと引越しの特別休暇で、君は休みなのか。満喫できているだろうか』
「できてるよ。今日一日で、引越ししたことで必要な手続きは一通り終わったから、これで来週の日曜日まではゆっくりできるよ」
有休を使わずに1週間以上も休むことができるので有り難いよ。去年も夏期休暇はあったけれど、有休はまだもらえていなかったのでこんなに長く休めなかった。
『なるほど、それは良かった。美来さんも夏休みだろう?』
「ああ。今はお盆の時期だから、部活の方もないよ」
『了解した。では、本題に入ろう。君に電話をしたのは、君と美来さんに旅行をプレゼントしようと思ったからだ』
「旅行をプレゼント?」
僕がそう言ったからか、美来は目を輝かせているぞ。以前から、引越しに関する用事が早く終わったら、どこかに行きたいと話してはいた。僕の夏休みも残り6日間もあるし、どこかに旅行してもいいかな。
『今週、同僚が奥様と2人で旅行に行く予定だったのだが、どうしても外せない用事が今日になって入ってしまったそうだ。元々、キャンペーンで当たったペアチケットで行くことになっているから、誰かに譲渡して代わりに楽しんでほしいと言っているのだ』
「そうなんだ。でも、その同僚さんは羽賀が誰かと行ってほしくて、その話をしたんじゃないのか? タダで泊まれるのは有り難い話だけど、それが僕と美来でいいのかな」
『大丈夫だ。親友とその恋人の引越しと同棲祝いにどうかと話したら、同僚もそれが一番いいと了承してくれた』
「……なるほどな」
そういうことを事前にしっかりと話しているところが、さすがは羽賀と言うべきか。
「僕はかまわないけど、美来に行きたいかどうか訊いてみてもいい?」
『ああ』
確認する必要もない気がするけれど、念のために美来に訊いてみるか。
「美来、今週、旅行に行けるかもしれないんだけど、行きたい?」
「行きたいです! 引越しと同棲記念に!」
外なのに大きな声で言っちゃって。本当に可愛いな。
「……分かった」
引越し記念に旅行に行くというのも不思議な感じではあるけど、せっかくの夏休みだ。行けるなら美来と一緒に旅行に行きたい。
「美来も行きたいそうだ、羽賀」
『大きな声だったので私にも聞こえていた』
「今、譲ってくれる人が側にいるならお礼が言いたいんだけど」
『分かった。……佐藤さん、氷室がお礼を言いたいそうです』
旅行のチケットを譲ってくれる人、佐藤さんって言うんだ。
『初めまして、佐藤です』
「氷室と申します。初めまして」
佐藤さん、とても渋くてかっこいい声をしている。僕や羽賀よりも年上のように思えるけれど、果たして羽賀の同僚なのか?
いや、羽賀はキャリア組で階級も警部なので、佐藤さんが同じ階級でノンキャリア組の方なら一回りや二回り上の可能性もあるか。
『妻と2人で水曜から2泊3日で旅行へ行こうと思ったのですが、どうしても外せない急用が入ってしまいまして。このままキャンセルするよりは、別の方に行っていただいた方がいいかと思いまして』
2泊3日の旅行か。ちょうどいいな。水曜日から金曜日という曜日もいいじゃないか。
「そうですか。譲っていただいてありがとうございます。付き合っている彼女と一緒に楽しみたいと思います」
『羽賀君からは引越祝いと聞いておりますが、氷室さんの場合は……日は経ちましたが釈放祝いということで』
「ああ、そうですか。ありがとうございます」
警察関係者だから、僕が誤認逮捕された件も知っているのか。以前ほどではないけど、逮捕されたときに大々的に報道された影響で、今でも僕のことを変な目つきで見てくる人がいるんだよなぁ。
『羽賀君にホテルの宿泊チケットを渡しておきますので、彼から受け取ってください』
「分かりました。ありがとうございます。楽しんできます」
羽賀と佐藤さんには、チケットのお礼の意味も込めてお土産を買わないと。
『……ということで、氷室。旅行のチケットを渡すために、これから君と美来さんの新居に行こうと思う。住所は以前に教えてもらったので大丈夫だ』
「ああ、分かった」
『雑務が残っているから……たぶん、7時半くらいになる。マンションの前に到着したらもう一度連絡する』
「ああ。じゃあ、家で美来と待ってるよ」
そう言って、僕の方から通話を切った。
まさか、2泊3日の旅行に行くことになるとは。そういえば、佐藤さんが行こうとしていたホテルの名前や場所を聞くのを忘れたけど……それは、チケットをもらうまでのお楽しみにしておくか。
「羽賀が旅行のチケットを家まで持ってきてくれるって。7時半くらいに着くらしい」
「そうですか。ちなみに、旅行はいつから行くのですか?」
「水曜日から金曜日までだから……明後日から2泊3日になるね」
「分かりました。では、明日は旅行の準備をしましょうか」
「そうだね」
「では、まずは3人分の夕食の準備をした方がいいですね。お礼も兼ねて、羽賀さんの分も夕ご飯を作りましょう!」
旅行に行くことになったからか、美来、張り切っているな。張り切りすぎて、旅行に行くときに疲れていなければいいけど。
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