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第17話『距離』
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6月25日、火曜日。
咲夜のこともあってか、昨日はあまり眠ることができなかった。それもあってかなり眠い。周りの悲鳴が、意識を保つ助けになるほどに。
約束もしなかったし、そもそも今の状況もあってか校門の前で咲夜が待っていることはなかった。
「今日はいつも以上に恐いなぁ」
「近寄っちゃダメだぞ、触れたら噛み殺される」
「昨日、帰りに彼が正門の近くでうちの女子生徒に恫喝しているのを見たよ。喧嘩している感じだった。相手は先週、噂で広まっていた女の子かなぁ」
「それで普段よりも更に恐いんだ。さっさと仲直りしてよ、もう……」
今日も色々なことを周りから言われてしまう。いつもより多いかもしれない。昨日、正門の近くで咲夜に色々と言ってしまったからな。その様子を見ていた生徒達が話を広めたのかもしれない。
周りの言葉には気にかけないように心掛け、俺は校舎の中に入り、昇降口へと向かう。そこにも咲夜の姿はない。既に登校しているといいんだけれど。
今日は1人で1年4組の教室まで向かう。
前の扉から教室に入ると、今日も教室の中の空気が一瞬固まる。そんなことはどうでも良く、咲夜がいるかどうかを確認する。
咲夜の席である廊下側の前から2番目の席を見ると……咲夜は不機嫌そうな様子でスマホを眺めていた。だからなのか、彼女の周りには誰もいなかった。咲夜が登校してきていることに安心すると同時に緊張もする。
「咲夜」
声をかけると、咲夜は俺のことをチラッと見るけれど、露骨に怒った様子になりそっぽを向く。
俺はゆっくりと咲夜の目の前まで行き、
「おはよう」
「……ふん!」
そう言うだけで、咲夜はスマホを眺めてしまった。
直接謝ろうかと思ったけれど、今は何を言ってもダメかもしれない。そう思って、俺は何も言わずに自分の席へと向かった。そのときに、
「何があった?」
「友人というのも実は嘘だったんじゃないか」
などと周りの生徒が話しているのが聞こえた。
友人になったときの咲夜の笑顔を知っているから、友人なのが嘘だというのはすぐに否定したかった。でも、ここで俺が声を上げても信じてもらえる可能性は低そうだし、咲夜に迷惑がかかってしまいそうで言えなかった。
誰かと関わること。特に友達という繋がりを持ち続けることは難しいんだなと思い席に着くと、ため息が出てしまうのであった。
昼休み。
咲夜はお弁当のバッグを持ってすぐに教室を出て行ってしまった。
今日は紗衣と2人で食事を取ることになるのか。そう思って数分ほど待ってみるけれど、紗衣が教室にやってくることはなかった。なので、
『もう他の人と食べているのか?』
紗衣にそんなメッセージを送った。
すぐに俺のメッセージに『既読』マークが付いて、彼女から、
『そうだよ。先約があって。ごめん、伝えるのを忘れてた』
という返信が届いた。昼休みになってすぐに、普段と違って咲夜が教室を出ていったし、紗衣の言う先約の相手は咲夜である可能性が高いだろう。紗衣のいる3組の教室か、別の場所で食べているのかは不明だけれど、それについては詮索しないでおこう。
こうなってはしょうがない。今日は1人で昼食を食べるか。
「いただきます」
好きな音楽を聴きながら1人で昼食を食べる。咲夜と関わるまではこれが普通だったのに。今日の昼食は普段よりも味気ない感じがした。それだけ、誰かと一緒に食べることがいいなと思えるようになったのだろうか。
放課後。
咲夜に話しかけようと思ったけれど、彼女は終礼が終わるとすぐに俺から逃げるようにして帰ってしまった。
「神楽君、どうかしたの? 月原さんの様子からして、彼女と何かあったんじゃないかと思うけれど」
気付けば、深津先生が俺の席までやってきていた。先生に気付かれるほど、咲夜と俺は普段と様子が違うのか。それとも、昨日の放課後のことが先生達の間にも話題になっているのか。
「その……昨日の放課後に喧嘩をしてしまいまして。それで、距離ができてしまって。俺から挨拶はするんですけど、露骨に不機嫌な態度を取られてしまって。昨日の夜に謝罪のメッセージを送っても既読無視されて。俺、友達っていう友達は彼女が初めてなので、こういうときどう接すればいいのかよく分からないんです」
正直に告白すると、深津先生は真剣な様子で俺のことを見てくる。
「……なるほどね。人それぞれ性格や考え方は違うから、確実な解決法は分からない。ただ、無理に接しようとはせずに、一旦、距離を置くのも大切じゃないかなって思う」
「距離を置く……ですか」
「うん。気持ちを落ち着かせるためかな。ただ、すぐじゃなくていいから、ちゃんと謝ること。神楽君と咲夜ちゃんの関係なら、きっとそれで大丈夫じゃないかなって思ってる」
深津先生はいつもの優しげな笑みを俺に向けてくれる。そのことで少しだけだけれど、心が軽くなった気がする。
「俺なりに考えてみます。ありがとうございます。……今日は帰ります。さようなら」
「またいつでも相談してね。さようなら」
俺は深津先生に軽く頭を下げて、1年4組の教室を後にする。今日はこの後どうするか。期末試験も近いし、試験対策の勉強でもしようかな。
「颯人、一緒に帰ってもいい? 今日はバイトないし。それに、今日出た古文の宿題、難しそうだからさ」
教室を出ると、そこには紗衣の姿が。彼女はいつもの落ち着いた笑みを浮かべながら俺のことを見ている。そのことに安心感を覚える。
「……ああ、いいぞ。ただ、いいのか? その……今日も母さんはパートがあるし、小雪は友達の家で試験勉強するみたいだから、6時過ぎまでは俺と2人きりになっちまうけど」
咲夜と関わるようになってからか、紗衣への意識が変わってきていて。いくら従妹とはいえ女子高生だから、今みたいに訊かないとダメな気がして。
すると、紗衣は「ふふっ」と笑って、
「これまで数え切れないほどに颯人の部屋に行ってるじゃない。2人きりでかまわないよ。だって、その相手が颯人だからね」
俺の目を見ながらはっきりとそう言ってくれた。その言葉から温かさを感じて、嬉しくなった。咲夜と喧嘩してしまっているからか、より心に染み渡る。
「じゃあ、一緒に帰るか」
「……うん」
俺は紗衣と一緒に学校を後にして、自宅に向かって歩き始める。
つい先日まで1人で登下校することが当たり前だったが、咲夜のおかげかこうして誰かと一緒に歩くのはいいなと今は思えるようになった。
本当に咲夜の影響を受けているんだな、俺って。咲夜がいなくても彼女のことを考えるなんて。友達だからなのだろうか。
「ねえ、颯人。気付いていると思うけれど、今日の昼休みにメッセージで送ったお昼ご飯の先約。あれって、咲夜だったんだ。午前中に昼休みは3組の教室で2人きりで食べたいってメッセージが来てさ」
「……まあ、そうじゃないかと思ってた」
紗衣と3組の教室でお昼ご飯を食べるから、昼休みになった途端に教室を出て行ったんだな。
「お昼ご飯を食べているときに、昨日の放課後のことを咲夜から話されたよ。颯人、中学時代の皇会長との話を訊かれたから、咲夜に話したくないって怒ったんだよね。だからか、咲夜……いつもの元気さがあんまりなかった」
「……あのときは言い過ぎたって思ってる。ただ、3年前のことは……俺がこれまで経験した中でも一番っていいほど辛くて苦しいことだったから。咲夜に訊かれたとき、当時のことを思い出して。体が凄く熱くなって、嫌な臭いもしたような気がしてさ」
「……そっか」
「……もしかして、例のことを咲夜に話したのか?」
紗衣には俺が3年前に経験したことについて話したことがある。
咲夜も、紗衣なら俺が話したくないことについて知っているかもしれないと考えて、今日は2人きりで3組の教室でお昼ご飯を食べたいと誘ったのだと思う。
「皇会長とのことを訊かれたけれど、話していないよ。だって、颯人が話したくないって言ったんだから。私からは……話せないよ」
「……そうか。ありがとう」
紗衣が話していないと分かってほっとする。
「ただ、咲夜なら3年前のことを話しても、ちゃんと受け止めてくれるって私は思うよ」
「……そうかな。ただ、俺と同じ中学出身の生徒は夕立高校に何人もいるし、咲夜は友達が多いから、そういった人間から知る可能性はありそうだ」
「その可能性はありそうだね。ただ、従妹の私だから訊いてみただけで、颯人が話したくないって強く拒んだことを、探偵みたいに調査するなんてことはしない気もするな」
「……その可能性もありそうだ」
ただ、咲夜が中学時代に俺と皇会長の間に何があったのかを知りたがっているのは確かだ。咲夜と仲直りするには、謝るだけじゃなくて、彼女が知りたがっていることを自分でしっかりと話さないといけないんじゃないかと思い始めている。
「ただ、3年前のことを話したくない颯人の気持ちも分かるよ。話しても大丈夫そうって思えたら話せばいいんだよ。どうしても話したくないなら、私も咲夜に説得する。ただ、言い過ぎたことを謝るのは、すぐにでなくても必ずやらないとね」
「……深津先生にも同じことを言われたな」
「深津先生……ああ、英語の先生か。確か、颯人と咲夜のクラスの担任だよね」
「ああ。深津先生が咲夜と俺の様子を気にかけてくれて。帰りに俺に話しかけてくれたんだよ」
「そうだったんだ。……ゆっくり考えればいいよ。咲夜だからそれで大丈夫だと思う。咲夜のように、私に相談してくれていいから」
「……ありがとう」
こんな俺でも、ちゃんと気にかけてくれて、相談に乗ってくれる人が近くにいるんだな。咲夜のおかげで知ることができた気がする。
それから、俺は紗衣と一緒に家に帰り、課題を一緒にやった。
その中で、紗衣の古文の課題を教えたり、期末試験のことや彼女のバイトのことについて話したりはしたけれど、咲夜との喧嘩については一切話すことはなかったのであった。
咲夜のこともあってか、昨日はあまり眠ることができなかった。それもあってかなり眠い。周りの悲鳴が、意識を保つ助けになるほどに。
約束もしなかったし、そもそも今の状況もあってか校門の前で咲夜が待っていることはなかった。
「今日はいつも以上に恐いなぁ」
「近寄っちゃダメだぞ、触れたら噛み殺される」
「昨日、帰りに彼が正門の近くでうちの女子生徒に恫喝しているのを見たよ。喧嘩している感じだった。相手は先週、噂で広まっていた女の子かなぁ」
「それで普段よりも更に恐いんだ。さっさと仲直りしてよ、もう……」
今日も色々なことを周りから言われてしまう。いつもより多いかもしれない。昨日、正門の近くで咲夜に色々と言ってしまったからな。その様子を見ていた生徒達が話を広めたのかもしれない。
周りの言葉には気にかけないように心掛け、俺は校舎の中に入り、昇降口へと向かう。そこにも咲夜の姿はない。既に登校しているといいんだけれど。
今日は1人で1年4組の教室まで向かう。
前の扉から教室に入ると、今日も教室の中の空気が一瞬固まる。そんなことはどうでも良く、咲夜がいるかどうかを確認する。
咲夜の席である廊下側の前から2番目の席を見ると……咲夜は不機嫌そうな様子でスマホを眺めていた。だからなのか、彼女の周りには誰もいなかった。咲夜が登校してきていることに安心すると同時に緊張もする。
「咲夜」
声をかけると、咲夜は俺のことをチラッと見るけれど、露骨に怒った様子になりそっぽを向く。
俺はゆっくりと咲夜の目の前まで行き、
「おはよう」
「……ふん!」
そう言うだけで、咲夜はスマホを眺めてしまった。
直接謝ろうかと思ったけれど、今は何を言ってもダメかもしれない。そう思って、俺は何も言わずに自分の席へと向かった。そのときに、
「何があった?」
「友人というのも実は嘘だったんじゃないか」
などと周りの生徒が話しているのが聞こえた。
友人になったときの咲夜の笑顔を知っているから、友人なのが嘘だというのはすぐに否定したかった。でも、ここで俺が声を上げても信じてもらえる可能性は低そうだし、咲夜に迷惑がかかってしまいそうで言えなかった。
誰かと関わること。特に友達という繋がりを持ち続けることは難しいんだなと思い席に着くと、ため息が出てしまうのであった。
昼休み。
咲夜はお弁当のバッグを持ってすぐに教室を出て行ってしまった。
今日は紗衣と2人で食事を取ることになるのか。そう思って数分ほど待ってみるけれど、紗衣が教室にやってくることはなかった。なので、
『もう他の人と食べているのか?』
紗衣にそんなメッセージを送った。
すぐに俺のメッセージに『既読』マークが付いて、彼女から、
『そうだよ。先約があって。ごめん、伝えるのを忘れてた』
という返信が届いた。昼休みになってすぐに、普段と違って咲夜が教室を出ていったし、紗衣の言う先約の相手は咲夜である可能性が高いだろう。紗衣のいる3組の教室か、別の場所で食べているのかは不明だけれど、それについては詮索しないでおこう。
こうなってはしょうがない。今日は1人で昼食を食べるか。
「いただきます」
好きな音楽を聴きながら1人で昼食を食べる。咲夜と関わるまではこれが普通だったのに。今日の昼食は普段よりも味気ない感じがした。それだけ、誰かと一緒に食べることがいいなと思えるようになったのだろうか。
放課後。
咲夜に話しかけようと思ったけれど、彼女は終礼が終わるとすぐに俺から逃げるようにして帰ってしまった。
「神楽君、どうかしたの? 月原さんの様子からして、彼女と何かあったんじゃないかと思うけれど」
気付けば、深津先生が俺の席までやってきていた。先生に気付かれるほど、咲夜と俺は普段と様子が違うのか。それとも、昨日の放課後のことが先生達の間にも話題になっているのか。
「その……昨日の放課後に喧嘩をしてしまいまして。それで、距離ができてしまって。俺から挨拶はするんですけど、露骨に不機嫌な態度を取られてしまって。昨日の夜に謝罪のメッセージを送っても既読無視されて。俺、友達っていう友達は彼女が初めてなので、こういうときどう接すればいいのかよく分からないんです」
正直に告白すると、深津先生は真剣な様子で俺のことを見てくる。
「……なるほどね。人それぞれ性格や考え方は違うから、確実な解決法は分からない。ただ、無理に接しようとはせずに、一旦、距離を置くのも大切じゃないかなって思う」
「距離を置く……ですか」
「うん。気持ちを落ち着かせるためかな。ただ、すぐじゃなくていいから、ちゃんと謝ること。神楽君と咲夜ちゃんの関係なら、きっとそれで大丈夫じゃないかなって思ってる」
深津先生はいつもの優しげな笑みを俺に向けてくれる。そのことで少しだけだけれど、心が軽くなった気がする。
「俺なりに考えてみます。ありがとうございます。……今日は帰ります。さようなら」
「またいつでも相談してね。さようなら」
俺は深津先生に軽く頭を下げて、1年4組の教室を後にする。今日はこの後どうするか。期末試験も近いし、試験対策の勉強でもしようかな。
「颯人、一緒に帰ってもいい? 今日はバイトないし。それに、今日出た古文の宿題、難しそうだからさ」
教室を出ると、そこには紗衣の姿が。彼女はいつもの落ち着いた笑みを浮かべながら俺のことを見ている。そのことに安心感を覚える。
「……ああ、いいぞ。ただ、いいのか? その……今日も母さんはパートがあるし、小雪は友達の家で試験勉強するみたいだから、6時過ぎまでは俺と2人きりになっちまうけど」
咲夜と関わるようになってからか、紗衣への意識が変わってきていて。いくら従妹とはいえ女子高生だから、今みたいに訊かないとダメな気がして。
すると、紗衣は「ふふっ」と笑って、
「これまで数え切れないほどに颯人の部屋に行ってるじゃない。2人きりでかまわないよ。だって、その相手が颯人だからね」
俺の目を見ながらはっきりとそう言ってくれた。その言葉から温かさを感じて、嬉しくなった。咲夜と喧嘩してしまっているからか、より心に染み渡る。
「じゃあ、一緒に帰るか」
「……うん」
俺は紗衣と一緒に学校を後にして、自宅に向かって歩き始める。
つい先日まで1人で登下校することが当たり前だったが、咲夜のおかげかこうして誰かと一緒に歩くのはいいなと今は思えるようになった。
本当に咲夜の影響を受けているんだな、俺って。咲夜がいなくても彼女のことを考えるなんて。友達だからなのだろうか。
「ねえ、颯人。気付いていると思うけれど、今日の昼休みにメッセージで送ったお昼ご飯の先約。あれって、咲夜だったんだ。午前中に昼休みは3組の教室で2人きりで食べたいってメッセージが来てさ」
「……まあ、そうじゃないかと思ってた」
紗衣と3組の教室でお昼ご飯を食べるから、昼休みになった途端に教室を出て行ったんだな。
「お昼ご飯を食べているときに、昨日の放課後のことを咲夜から話されたよ。颯人、中学時代の皇会長との話を訊かれたから、咲夜に話したくないって怒ったんだよね。だからか、咲夜……いつもの元気さがあんまりなかった」
「……あのときは言い過ぎたって思ってる。ただ、3年前のことは……俺がこれまで経験した中でも一番っていいほど辛くて苦しいことだったから。咲夜に訊かれたとき、当時のことを思い出して。体が凄く熱くなって、嫌な臭いもしたような気がしてさ」
「……そっか」
「……もしかして、例のことを咲夜に話したのか?」
紗衣には俺が3年前に経験したことについて話したことがある。
咲夜も、紗衣なら俺が話したくないことについて知っているかもしれないと考えて、今日は2人きりで3組の教室でお昼ご飯を食べたいと誘ったのだと思う。
「皇会長とのことを訊かれたけれど、話していないよ。だって、颯人が話したくないって言ったんだから。私からは……話せないよ」
「……そうか。ありがとう」
紗衣が話していないと分かってほっとする。
「ただ、咲夜なら3年前のことを話しても、ちゃんと受け止めてくれるって私は思うよ」
「……そうかな。ただ、俺と同じ中学出身の生徒は夕立高校に何人もいるし、咲夜は友達が多いから、そういった人間から知る可能性はありそうだ」
「その可能性はありそうだね。ただ、従妹の私だから訊いてみただけで、颯人が話したくないって強く拒んだことを、探偵みたいに調査するなんてことはしない気もするな」
「……その可能性もありそうだ」
ただ、咲夜が中学時代に俺と皇会長の間に何があったのかを知りたがっているのは確かだ。咲夜と仲直りするには、謝るだけじゃなくて、彼女が知りたがっていることを自分でしっかりと話さないといけないんじゃないかと思い始めている。
「ただ、3年前のことを話したくない颯人の気持ちも分かるよ。話しても大丈夫そうって思えたら話せばいいんだよ。どうしても話したくないなら、私も咲夜に説得する。ただ、言い過ぎたことを謝るのは、すぐにでなくても必ずやらないとね」
「……深津先生にも同じことを言われたな」
「深津先生……ああ、英語の先生か。確か、颯人と咲夜のクラスの担任だよね」
「ああ。深津先生が咲夜と俺の様子を気にかけてくれて。帰りに俺に話しかけてくれたんだよ」
「そうだったんだ。……ゆっくり考えればいいよ。咲夜だからそれで大丈夫だと思う。咲夜のように、私に相談してくれていいから」
「……ありがとう」
こんな俺でも、ちゃんと気にかけてくれて、相談に乗ってくれる人が近くにいるんだな。咲夜のおかげで知ることができた気がする。
それから、俺は紗衣と一緒に家に帰り、課題を一緒にやった。
その中で、紗衣の古文の課題を教えたり、期末試験のことや彼女のバイトのことについて話したりはしたけれど、咲夜との喧嘩については一切話すことはなかったのであった。
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