180 / 194
特別編7-球技大会と夏休みの始まり編-
第1話『球技大会-中編-』
しおりを挟む
2年3組の男子ドッジボールの1回戦が勝利という形で終わり、俺と羽柴はコートを出てサクラ達のところへ行く。サクラ達が嬉しそうに手を振ってくれるので、手を振りながら。
「初戦突破おめでとう! ダイちゃんかっこよかったよ!」
「おめでとう! 大輝君素敵だったわ!」
「おめでとうございます! 先輩方、大活躍でしたね!」
「おめでとう! 3年生相手だったし、2人が次々とアウトにする姿を見て気持ち良かったよ!」
「おめでとう! 3年生相手によく勝ったね。担任として嬉しいよ。2年3組は幸先のいいスタートになったね」
サクラ達は俺と羽柴に向かって称賛の言葉を送ってくれる。クラスメイト中心に他の生徒達も「おめでとう」と言ってくれて。嬉しいな。
男子ドッジボールがうちのクラスにとって最初の試合だから、勝利を飾れて良かった。うちのクラスの他の競技に勢いがついたら何よりだ。
「ありがとうございます。みんなの応援と、サクラのおまじないが力になりました」
「応援してくれてありがとうございます。ジャンプボールの作戦とか、速水と俺中心に攻撃する作戦が上手くいきました。今年は勝利できて嬉しいです」
「そうだな」
「去年は初戦敗退だったもんね。じゃあ、高校の球技大会で初勝利だ。おめでとう!」
サクラはそう言うと、両手を広げた状態で顔の高さまで挙げてくる。そんなサクラを見て一紗や杏奈達も。
俺と羽柴はサクラ達とハイタッチした。去年の球技大会では勝利がなかったので、サクラ達とこういうことはしなかった。だから、とても嬉しい気持ちになって。
「あと……サクラにはおまじないのお礼をしないとな。ありがとう」
そう言い、俺はサクラにキスした。
蒸し暑いけど、サクラの唇から伝わる温もりは心地良くて。ボールを結構投げたのもあって疲れもあるけど、キスしたことでその疲れが和らいだ感じがした。
数秒ほどして俺から唇を離す。すると、目の前にはほんのりと赤らんだ顔にニッコリと笑みを浮かべているサクラがいた。
「素敵なお礼だね。どういたしまして」
「ふふっ、微笑ましい光景だわ」
「ですね」
一紗と杏奈が微笑みながらそう言ってくる。2人や小泉さん、羽柴以外にも俺達を見ている人は結構いて。まあ、学校でもサクラとキスすることは何度もあるから、そこまで恥ずかしい思いはない。
「2回戦以降も文香におまじないをかけてもらうといいよ」
「おっ、それはいいアイデアだな、小泉。かけてもらえよ、速水」
「そうだな」
「ふふっ、喜んでかけるね」
サクラは可愛い笑顔でそう言ってくれる。3年生相手にも勝てたし、サクラにキスのおまじないをしてもらえば、今度の試合でもチームに貢献できるかもしれない。
サクラから荷物を受け取り、水筒に入っているスポーツドリンクを飲む。試合をして体が熱くなっているから、スポーツドリンクの冷たさがたまらない。羽柴も同じようで、スポーツドリンクを飲むと爽やかな笑みを浮かべた。
それから程なくして、第3試合が始まる。
第4試合にうちのクラスの女子ドッジボールの試合が行なわれるので、俺達は女子の試合のコートの近くに移動する。
「次の試合かぁ。ドッジボールが好きだからワクワクするよ」
「青葉ちゃんらしいね。体動かすのが好きだもんね」
「運動系の部活に入っているだけあるわね。ところで、青葉さんと文香さんはドッジボールって強いのかしら?」
「青葉ちゃんは強いよ。去年は青葉ちゃんの活躍で1回戦を突破できたし」
「えへへっ。文香も相手をアウトにしたり、ボールを躱したりしてなかなか強かったよ」
「小学生の頃は、結構ドッジボールをして遊んでいたからね」
「確かに、小学生の頃のサクラは、休み時間にはドッジボールで遊ぶことが多かったもんな。俺を誘ってくることも多かったし。男女問わずボールを当ててた」
小学生の頃のサクラは活発で体を動かすことが好きだし、クラスによっては女子の中では一番強かったと思う。
「そうだったんですね。ゴールデンウィークに和奏さんが持ってきてくれたホームビデオを観ましたけど、小さい頃の文香先輩は活発な雰囲気でしたもんね。何だか納得です」
「青葉さんも文香さんも強いのね。心強いわ」
「今年もたくさん当てるよ! ところで、一紗はドッジボールってどうなの?」
「逃げるのは得意よ。攻撃は全然できないけど」
一紗は微笑みながらそう言った。
一紗は逃げるのが得意なタイプか。毎年、クラスに何人かいたなぁ。ドッジボールで逃げることが得意で、毎回最後とか終盤まで内野に残っている奴が。
「逃げるのが得意なのはいいなって思うよ。ドッジボールは内野に残っている人数で勝敗が決まるし」
「速水の言う通りだな」
「ふふっ。大輝君にそう言われて嬉しいわ。今年もボールに当たらないように頑張るわっ」
一紗はニコッと笑いながらそう言った。
それからもドッジボール絡みの雑談をする。みんなやったことのある競技だから結構盛り上がって。それもあり、気付けば第3試合が終わっていた。
「よしっ、じゃあ行ってくるよ。去年も1回戦は突破したから、今年もまずは1勝したいな」
「そうだね、青葉ちゃん。今年も勝利したいね!」
「私は去年のクラスは初戦敗退だったから勝利を体験したいわ!」
女子ドッジボールに出場する文香と一紗と小泉さんはやる気に満ちた様子だ。
「初戦を勝利できるようにここから応援するよ」
「速水達と一緒に応援してるぜ! 頑張れよ!」
「みなさん、頑張ってくださいね!」
「男子が勝利した勢いで女子も勝利できるように応援するわ!」
俺達4人がエールを送る。そのことでサクラ達3人はニッコリとした笑顔に。
サクラ達が試合に出るため、俺はサクラと一紗から、羽柴は小泉さんから荷物を受け取った。
また、さっきの男子ドッジボールの試合前のように、俺達4人はサクラ達3人とグータッチする。これが3人の力になるといいな。あと、
「サクラ。おまじないをかけていいか?」
「うんっ」
そう言うと、サクラは俺の目の前で目を瞑る。おまじない、という言葉でサクラは俺にキスしてもらうと分かったようだ。まあ、さっきサクラが俺にキスというおまじないをかけてくれたもんな。
――ちゅっ。
と、サクラにおまじないのキスをする。これでサクラがより力を発揮できたら何よりだ。
2、3秒ほどして俺から唇を離すと、目の前にはニコニコとしたサクラが。
「ありがとう。今年は去年以上に頑張れそうだよ」
「そうか。頑張れよ」
俺はサクラの頭をポンポンと優しく叩く。それが嬉しかったのか、サクラの口角がより上がって「うんっ」と首肯した。
サクラ、一紗、小泉さんなど女子ドッジボールに参加するクラスメイトが続々とコートの中に入っていく。俺はここから杏奈と羽柴と流川先生などと一緒に応援しよう。
サクラ達はコートの中に入ると、一カ所に集まって何やら話している様子だ。きっと、作戦会議をしているのだろう。
作戦会議が終わった直後、サクラ達は係と思われる女子生徒からピンク色のゼッケンが渡される。サクラ……ピンク色が好きだから嬉しそうにしているな。可愛いぜ。サクラはゼッケン2番、一紗はゼッケン1番、小泉さんはゼッケン3番か。
ちなみに、相手チームは水色のゼッケンを身につけていた。
それから程なくして、両チームの生徒がセンターラインを挟んで向かい合う形で立つ。その側には金髪の若い女性教師がおり、
「これより、2年3組対2年7組の試合を始めます」
相手チームは2年7組で同学年か。同学年なら多少は戦いやすそうだ。
両チームの生徒は内野に残ったり、外野に行ったりする。その中で、日差しが出てきた。暑い中での試合になりそうだけど、サクラ達は頑張ってほしいな。
ジャンプボールで試合を始めるので、男子ドッジボールのときと同様に、両チーム1人ずつセンターライン付近に残る。うちのチームは小泉さんだ。小泉さんはうちのチームの中では背が高い方だし、何よりも女子テニス部に入っていて運動神経がいい。小泉さんがジャンプボールをするのはいい判断だと思う。
ジャンプボールをする2人は、自分の内野の方を向いて向かい合う形で立つ。
――ピーッ!
と、審判の女性教師がホイッスルを鳴らし、ボールを真上に高く上げる。
ジャンプボールをする2人は勢い良くジャンプし、
「文香!」
小泉さんの右手がボールにしっかりと触れ、サクラの方に向けて弾き飛ばした。うちのチームのボールになったからか、杏奈と羽柴は「よしっ」と声を漏らす。
自分の方にボールが飛んでくるが、サクラは落ち着いた様子でボールをしっかりとキャッチ。センターラインに向かって走り、
「それっ!」
サクラの正面にいる相手チームのゼッケン5番の生徒に向けて投げる。
サクラが助走を付けて投げたボールは結構な速さで5番の生徒の方に向かい、
――ドンッ。
5番の生徒の右腕の二の腕に当たった! 当たった勢いでボールが浮き上がるが、誰もキャッチすることはできず、その場に落ちた。
「やったね、文香!」
「凄いわ、文香さん!」
「うんっ!」
サクラは嬉しそうな様子で小泉さんと一紗と右手でハイタッチする。
「サクラやったな!」
俺がそう言うと、サクラは満面の笑顔でこちらに向き、右手を軽く挙げた。恋人のサクラがさっそく活躍したし、サクラの嬉しそうな笑顔を見られて嬉しい。
「おおっ、桜井凄いな!」
「文香先輩凄いですね! 羽柴先輩みたいに一発目で当てましたよ!」
「女子も最高な形でスタートできたわね!」
女子も最初の攻撃で相手をアウトにできたからか、羽柴と杏奈と流川先生は嬉しそうな様子だ。他のクラスメイトも凄いと言っていて。みんなから恋人を褒められたから、嬉しい気持ちが膨らんでいく。
男子チームはジャンプボールについて作戦を立てたと話したし、もしかしたら俺達のように小泉さんがジャンプボールを制したらサクラにボールを弾くと決めていたのかもしれない。
相手チームのゼッケン4番の生徒がボールを拾い上げ、センターラインに向かって勢い良く走り、
「えいっ!」
と、ボールを投げる。
サクラが投げたボールよりも速い速度で一紗に向かっていく。一紗は逃げるのが得意だと言っていたけど、あのボールを躱せるだろうか?
一紗は自分にボールが来ていると気付いたようで、ボールから逃げようとする。そのとき、
――ボンッ!
一紗の近くにいた小泉さんが一紗の前まで移動し、ボールをしっかりと受け止めた。
「小泉さん取った!」
「ええ! 青葉先輩かっこいいですーっ!」
一紗に当たるかもしれないボールを受け止めたんだもんな。杏奈の言う通り、小泉さんはかっこいいな。
小泉さんはセンターラインまで走り、
「それっ!」
相手チームの内野に向けて勢い良く投げた。
小泉さんの投げたボールは、サクラや相手のゼッケン4番の生徒が投げたときよりもさらに速いスピードで、ゼッケン4番の生徒に向かっていく。
ゼッケン4番の生徒は逃げようとするけど、かなりのスピードがあるので、
――バンッ!
ボールが右脚の脛に当たった。ボールは4番の生徒の近くに落ちた。よって、4番の生徒もアウトだ!
「小泉さんもアウトにしたな!」
「そうだな!」
「青葉先輩も凄いですっ! とってもかっこいいですっ!」
「青葉ちゃんさすがね!」
小泉さんもアウトにしたから、3人は興奮した様子に。俺も興奮している。男子の方も最初に羽柴と俺が連続して相手をアウトにしたから、そのときのサクラ達はこういう気持ちだったのかもしれない。
それからも応援しながら、女子ドッジボールの試合を観戦する。
運動神経抜群な小泉さんが中心となって相手に攻撃していく。小泉さんはもちろん、サクラも相手をアウトにして。
一紗は俺達に逃げるのが得意だと言っていただけあって、何度か相手に狙われたけどボールを躱していく。
うちのチームの生徒がアウトになることもあるけど、小泉さんとサクラを中心に順調に相手をアウトにしていく。なので、
――ピーッ!
「そこまで! 2年3組は……残り5人。2年7組は……残り2人。よって、2年3組の勝利です!」
女子ドッジボールはうちのクラスが勝利した!
サクラ、小泉さん、一紗は嬉しそうな様子で内野に残っているうちのチームの生徒とハイタッチする。初戦を勝利で飾れてとても嬉しそうだ。
俺、羽柴、杏奈、流川先生はハイタッチして、
「みんなおめでとう!」
「女子も勝ったな! おめでとう!」
「おめでとうございまーす!」
「女子も勝って嬉しいわ!」
と、勝利した女子ドッジボールチームに祝福の言葉を送る。うちのクラスを応援してくれた他の人達も「おめでとう!」と言って。
サクラや一紗や小泉さん達は笑顔でこちらに向いて手を振ってきた。日差しがあるので、3人の汗が煌めいていて。それがとても綺麗に見えたのであった。
「初戦突破おめでとう! ダイちゃんかっこよかったよ!」
「おめでとう! 大輝君素敵だったわ!」
「おめでとうございます! 先輩方、大活躍でしたね!」
「おめでとう! 3年生相手だったし、2人が次々とアウトにする姿を見て気持ち良かったよ!」
「おめでとう! 3年生相手によく勝ったね。担任として嬉しいよ。2年3組は幸先のいいスタートになったね」
サクラ達は俺と羽柴に向かって称賛の言葉を送ってくれる。クラスメイト中心に他の生徒達も「おめでとう」と言ってくれて。嬉しいな。
男子ドッジボールがうちのクラスにとって最初の試合だから、勝利を飾れて良かった。うちのクラスの他の競技に勢いがついたら何よりだ。
「ありがとうございます。みんなの応援と、サクラのおまじないが力になりました」
「応援してくれてありがとうございます。ジャンプボールの作戦とか、速水と俺中心に攻撃する作戦が上手くいきました。今年は勝利できて嬉しいです」
「そうだな」
「去年は初戦敗退だったもんね。じゃあ、高校の球技大会で初勝利だ。おめでとう!」
サクラはそう言うと、両手を広げた状態で顔の高さまで挙げてくる。そんなサクラを見て一紗や杏奈達も。
俺と羽柴はサクラ達とハイタッチした。去年の球技大会では勝利がなかったので、サクラ達とこういうことはしなかった。だから、とても嬉しい気持ちになって。
「あと……サクラにはおまじないのお礼をしないとな。ありがとう」
そう言い、俺はサクラにキスした。
蒸し暑いけど、サクラの唇から伝わる温もりは心地良くて。ボールを結構投げたのもあって疲れもあるけど、キスしたことでその疲れが和らいだ感じがした。
数秒ほどして俺から唇を離す。すると、目の前にはほんのりと赤らんだ顔にニッコリと笑みを浮かべているサクラがいた。
「素敵なお礼だね。どういたしまして」
「ふふっ、微笑ましい光景だわ」
「ですね」
一紗と杏奈が微笑みながらそう言ってくる。2人や小泉さん、羽柴以外にも俺達を見ている人は結構いて。まあ、学校でもサクラとキスすることは何度もあるから、そこまで恥ずかしい思いはない。
「2回戦以降も文香におまじないをかけてもらうといいよ」
「おっ、それはいいアイデアだな、小泉。かけてもらえよ、速水」
「そうだな」
「ふふっ、喜んでかけるね」
サクラは可愛い笑顔でそう言ってくれる。3年生相手にも勝てたし、サクラにキスのおまじないをしてもらえば、今度の試合でもチームに貢献できるかもしれない。
サクラから荷物を受け取り、水筒に入っているスポーツドリンクを飲む。試合をして体が熱くなっているから、スポーツドリンクの冷たさがたまらない。羽柴も同じようで、スポーツドリンクを飲むと爽やかな笑みを浮かべた。
それから程なくして、第3試合が始まる。
第4試合にうちのクラスの女子ドッジボールの試合が行なわれるので、俺達は女子の試合のコートの近くに移動する。
「次の試合かぁ。ドッジボールが好きだからワクワクするよ」
「青葉ちゃんらしいね。体動かすのが好きだもんね」
「運動系の部活に入っているだけあるわね。ところで、青葉さんと文香さんはドッジボールって強いのかしら?」
「青葉ちゃんは強いよ。去年は青葉ちゃんの活躍で1回戦を突破できたし」
「えへへっ。文香も相手をアウトにしたり、ボールを躱したりしてなかなか強かったよ」
「小学生の頃は、結構ドッジボールをして遊んでいたからね」
「確かに、小学生の頃のサクラは、休み時間にはドッジボールで遊ぶことが多かったもんな。俺を誘ってくることも多かったし。男女問わずボールを当ててた」
小学生の頃のサクラは活発で体を動かすことが好きだし、クラスによっては女子の中では一番強かったと思う。
「そうだったんですね。ゴールデンウィークに和奏さんが持ってきてくれたホームビデオを観ましたけど、小さい頃の文香先輩は活発な雰囲気でしたもんね。何だか納得です」
「青葉さんも文香さんも強いのね。心強いわ」
「今年もたくさん当てるよ! ところで、一紗はドッジボールってどうなの?」
「逃げるのは得意よ。攻撃は全然できないけど」
一紗は微笑みながらそう言った。
一紗は逃げるのが得意なタイプか。毎年、クラスに何人かいたなぁ。ドッジボールで逃げることが得意で、毎回最後とか終盤まで内野に残っている奴が。
「逃げるのが得意なのはいいなって思うよ。ドッジボールは内野に残っている人数で勝敗が決まるし」
「速水の言う通りだな」
「ふふっ。大輝君にそう言われて嬉しいわ。今年もボールに当たらないように頑張るわっ」
一紗はニコッと笑いながらそう言った。
それからもドッジボール絡みの雑談をする。みんなやったことのある競技だから結構盛り上がって。それもあり、気付けば第3試合が終わっていた。
「よしっ、じゃあ行ってくるよ。去年も1回戦は突破したから、今年もまずは1勝したいな」
「そうだね、青葉ちゃん。今年も勝利したいね!」
「私は去年のクラスは初戦敗退だったから勝利を体験したいわ!」
女子ドッジボールに出場する文香と一紗と小泉さんはやる気に満ちた様子だ。
「初戦を勝利できるようにここから応援するよ」
「速水達と一緒に応援してるぜ! 頑張れよ!」
「みなさん、頑張ってくださいね!」
「男子が勝利した勢いで女子も勝利できるように応援するわ!」
俺達4人がエールを送る。そのことでサクラ達3人はニッコリとした笑顔に。
サクラ達が試合に出るため、俺はサクラと一紗から、羽柴は小泉さんから荷物を受け取った。
また、さっきの男子ドッジボールの試合前のように、俺達4人はサクラ達3人とグータッチする。これが3人の力になるといいな。あと、
「サクラ。おまじないをかけていいか?」
「うんっ」
そう言うと、サクラは俺の目の前で目を瞑る。おまじない、という言葉でサクラは俺にキスしてもらうと分かったようだ。まあ、さっきサクラが俺にキスというおまじないをかけてくれたもんな。
――ちゅっ。
と、サクラにおまじないのキスをする。これでサクラがより力を発揮できたら何よりだ。
2、3秒ほどして俺から唇を離すと、目の前にはニコニコとしたサクラが。
「ありがとう。今年は去年以上に頑張れそうだよ」
「そうか。頑張れよ」
俺はサクラの頭をポンポンと優しく叩く。それが嬉しかったのか、サクラの口角がより上がって「うんっ」と首肯した。
サクラ、一紗、小泉さんなど女子ドッジボールに参加するクラスメイトが続々とコートの中に入っていく。俺はここから杏奈と羽柴と流川先生などと一緒に応援しよう。
サクラ達はコートの中に入ると、一カ所に集まって何やら話している様子だ。きっと、作戦会議をしているのだろう。
作戦会議が終わった直後、サクラ達は係と思われる女子生徒からピンク色のゼッケンが渡される。サクラ……ピンク色が好きだから嬉しそうにしているな。可愛いぜ。サクラはゼッケン2番、一紗はゼッケン1番、小泉さんはゼッケン3番か。
ちなみに、相手チームは水色のゼッケンを身につけていた。
それから程なくして、両チームの生徒がセンターラインを挟んで向かい合う形で立つ。その側には金髪の若い女性教師がおり、
「これより、2年3組対2年7組の試合を始めます」
相手チームは2年7組で同学年か。同学年なら多少は戦いやすそうだ。
両チームの生徒は内野に残ったり、外野に行ったりする。その中で、日差しが出てきた。暑い中での試合になりそうだけど、サクラ達は頑張ってほしいな。
ジャンプボールで試合を始めるので、男子ドッジボールのときと同様に、両チーム1人ずつセンターライン付近に残る。うちのチームは小泉さんだ。小泉さんはうちのチームの中では背が高い方だし、何よりも女子テニス部に入っていて運動神経がいい。小泉さんがジャンプボールをするのはいい判断だと思う。
ジャンプボールをする2人は、自分の内野の方を向いて向かい合う形で立つ。
――ピーッ!
と、審判の女性教師がホイッスルを鳴らし、ボールを真上に高く上げる。
ジャンプボールをする2人は勢い良くジャンプし、
「文香!」
小泉さんの右手がボールにしっかりと触れ、サクラの方に向けて弾き飛ばした。うちのチームのボールになったからか、杏奈と羽柴は「よしっ」と声を漏らす。
自分の方にボールが飛んでくるが、サクラは落ち着いた様子でボールをしっかりとキャッチ。センターラインに向かって走り、
「それっ!」
サクラの正面にいる相手チームのゼッケン5番の生徒に向けて投げる。
サクラが助走を付けて投げたボールは結構な速さで5番の生徒の方に向かい、
――ドンッ。
5番の生徒の右腕の二の腕に当たった! 当たった勢いでボールが浮き上がるが、誰もキャッチすることはできず、その場に落ちた。
「やったね、文香!」
「凄いわ、文香さん!」
「うんっ!」
サクラは嬉しそうな様子で小泉さんと一紗と右手でハイタッチする。
「サクラやったな!」
俺がそう言うと、サクラは満面の笑顔でこちらに向き、右手を軽く挙げた。恋人のサクラがさっそく活躍したし、サクラの嬉しそうな笑顔を見られて嬉しい。
「おおっ、桜井凄いな!」
「文香先輩凄いですね! 羽柴先輩みたいに一発目で当てましたよ!」
「女子も最高な形でスタートできたわね!」
女子も最初の攻撃で相手をアウトにできたからか、羽柴と杏奈と流川先生は嬉しそうな様子だ。他のクラスメイトも凄いと言っていて。みんなから恋人を褒められたから、嬉しい気持ちが膨らんでいく。
男子チームはジャンプボールについて作戦を立てたと話したし、もしかしたら俺達のように小泉さんがジャンプボールを制したらサクラにボールを弾くと決めていたのかもしれない。
相手チームのゼッケン4番の生徒がボールを拾い上げ、センターラインに向かって勢い良く走り、
「えいっ!」
と、ボールを投げる。
サクラが投げたボールよりも速い速度で一紗に向かっていく。一紗は逃げるのが得意だと言っていたけど、あのボールを躱せるだろうか?
一紗は自分にボールが来ていると気付いたようで、ボールから逃げようとする。そのとき、
――ボンッ!
一紗の近くにいた小泉さんが一紗の前まで移動し、ボールをしっかりと受け止めた。
「小泉さん取った!」
「ええ! 青葉先輩かっこいいですーっ!」
一紗に当たるかもしれないボールを受け止めたんだもんな。杏奈の言う通り、小泉さんはかっこいいな。
小泉さんはセンターラインまで走り、
「それっ!」
相手チームの内野に向けて勢い良く投げた。
小泉さんの投げたボールは、サクラや相手のゼッケン4番の生徒が投げたときよりもさらに速いスピードで、ゼッケン4番の生徒に向かっていく。
ゼッケン4番の生徒は逃げようとするけど、かなりのスピードがあるので、
――バンッ!
ボールが右脚の脛に当たった。ボールは4番の生徒の近くに落ちた。よって、4番の生徒もアウトだ!
「小泉さんもアウトにしたな!」
「そうだな!」
「青葉先輩も凄いですっ! とってもかっこいいですっ!」
「青葉ちゃんさすがね!」
小泉さんもアウトにしたから、3人は興奮した様子に。俺も興奮している。男子の方も最初に羽柴と俺が連続して相手をアウトにしたから、そのときのサクラ達はこういう気持ちだったのかもしれない。
それからも応援しながら、女子ドッジボールの試合を観戦する。
運動神経抜群な小泉さんが中心となって相手に攻撃していく。小泉さんはもちろん、サクラも相手をアウトにして。
一紗は俺達に逃げるのが得意だと言っていただけあって、何度か相手に狙われたけどボールを躱していく。
うちのチームの生徒がアウトになることもあるけど、小泉さんとサクラを中心に順調に相手をアウトにしていく。なので、
――ピーッ!
「そこまで! 2年3組は……残り5人。2年7組は……残り2人。よって、2年3組の勝利です!」
女子ドッジボールはうちのクラスが勝利した!
サクラ、小泉さん、一紗は嬉しそうな様子で内野に残っているうちのチームの生徒とハイタッチする。初戦を勝利で飾れてとても嬉しそうだ。
俺、羽柴、杏奈、流川先生はハイタッチして、
「みんなおめでとう!」
「女子も勝ったな! おめでとう!」
「おめでとうございまーす!」
「女子も勝って嬉しいわ!」
と、勝利した女子ドッジボールチームに祝福の言葉を送る。うちのクラスを応援してくれた他の人達も「おめでとう!」と言って。
サクラや一紗や小泉さん達は笑顔でこちらに向いて手を振ってきた。日差しがあるので、3人の汗が煌めいていて。それがとても綺麗に見えたのであった。
0
お気に入りに追加
54
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】俺のセフレが幼なじみなんですが?
おもち
恋愛
アプリで知り合った女の子。初対面の彼女は予想より断然可愛かった。事前に取り決めていたとおり、2人は恋愛NGの都合の良い関係(セフレ)になる。何回か関係を続け、ある日、彼女の家まで送ると……、その家は、見覚えのある家だった。
『え、ここ、幼馴染の家なんだけど……?』
※他サイトでも投稿しています。2サイト計60万PV作品です。
先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…
ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。
しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。
気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
JC💋フェラ
山葵あいす
恋愛
森野 稚菜(もりの わかな)は、中学2年生になる14歳の女の子だ。家では姉夫婦が一緒に暮らしており、稚菜に甘い義兄の真雄(まさお)は、いつも彼女におねだりされるままお小遣いを渡していたのだが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる