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特別編6-星空に願う夏の夜編-
第3話『浴衣女子』
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7月5日、日曜日。
みんなで行くと約束した七夕祭りの当日になった。
まだ梅雨の時期だけど、今日は朝から曇っており、雨は降っていない。たまに、雲の切れ間から青空が見える時間があるほどだ。
天気予報によると、今日の天気は曇りで降水確率は10%。雨が降る心配はないという。今日はサクラ達と一緒に七夕祭りに行くし、浴衣を着ていく人もいる。この予報がちゃんと当たるように祈ろう。短冊に書いて、笹に飾ることはしていないけど。
午後5時半頃。
俺は今、サクラの部屋でサクラが浴衣に着替える様子を眺めている。
一紗や杏奈達とは、午後6時に四鷹駅の改札前で待ち合わせすることになっている。そのため、この時間にサクラが浴衣に着替えることにしたのだ。また、着替える様子を見ていてもいいとサクラが言ってくれたので、お言葉に甘えてここにいる。
ゴールデンウィーク頃から、入浴のときなどサクラが着替える姿をよく見ている。それでも、浴衣を着ている姿を見るのは初めてだから、何だかドキッとする。
「お風呂のときとか、ダイちゃんの前で着替えることはいっぱいあるけど、浴衣に着替えるのは初めてだからちょっとドキドキする」
「俺も同じようなことを思っていたよ」
「ふふっ、そうだったんだ」
サクラは頬をほんのりと紅潮させながら微笑んだ。それが可愛くて、またドキッとする。
サクラの着る浴衣は赤い生地に、ピンクの桜の花びらがたくさんあしらわれたデザイン。サクラは暖色系の色が好きだし、桜の花も好きだから、サクラらしい浴衣だと思う。
浴衣を着て、淡いピンク色の帯を巻き終わると、サクラは髪をお団子の形に纏めていく。普段からお風呂で髪を洗った後はお団子のように髪を纏めているのもあってか、鮮やかな手つきだ。
お団子の形で髪を纏めると、サクラは赤いかんざしを挿した。
「はい、お祭りコスチューム完成!」
「おおっ」
お祭りコスチュームの美しさはもちろん、特に苦戦することなく浴衣を着たり、髪を纏めたりしたのもあり、思わず声が漏れる。
「その浴衣、よく似合っているよ。綺麗だし、可愛らしさもあるし」
「ありがとう! お気に入りの浴衣だから嬉しいな。背が伸びて、今みたいな体格になった中3の七夕祭りから着ているの」
「そうなのか」
「だから、この浴衣を着て、これからダイちゃんと一緒に七夕祭りに行けるのが嬉しいよ」
「……そう言ってくれて俺も嬉しいよ」
俺がそう言うと、サクラは「えへへっ」と声に出して笑う。その笑顔も相まって、浴衣姿がより魅力的に見えて。こんなに魅力的な姿のサクラを一昨年、去年の七夕祭りで多くの人が見ていたのか。羨ましいぜ。俺も行っておけば良かったよ。
「サクラ。凄く可愛いし、スマホで写真を撮ってもいいか?」
「うん、いいよ!」
「ありがとう」
その後、俺はスマホで浴衣姿のサクラの写真を何枚も撮影する。また、サクラの希望で俺とのツーショットの自撮り写真も撮って。浴衣姿の可愛いサクラを見られたし、写真もいっぱい撮ったからこの時点で満足感がある。
ツーショットの自撮り写真を中心にLIMEでサクラに送った。それを確認するサクラはニコッと笑っていた。
「ありがとう、ダイちゃん」
お礼を言うと、サクラは俺にキスしてきた。これまでたくさんキスしてきたけど、浴衣姿なのもあって特別な感じがした。
「いえいえ。今は5時40分過ぎか。待ち合わせは6時だし、出発するか」
「うんっ!」
俺はサクラと一緒にサクラの部屋を後にする。
リビングにいる父さんと母さんに七夕祭りに行ってくると伝えると、2人ともサクラの浴衣姿を凄く褒めていた。サクラの母親の美紀さんに送るからと、母さんがスマホで俺達のことを撮影していた。
母さんによる写真撮影会が終わり、俺達は家を出発する。
夕方の5時半も過ぎて、雲の切れ間から青空がちょっと見える程度。なので、暑さはそこまで感じない。これから夜になっていくし、お祭りを楽しむにはちょうどいい気候だと思う。
付き合っているのもあり、サクラと手を繋いでいる。ただ、サクラが浴衣姿であったり、サクラが履いている下駄による「カタ、カタ……」という足音が聞こえたりと、夏の風情が感じられる。
「ダイちゃんとまた七夕祭りに行けて嬉しいよ」
「俺も嬉しいよ。4年ぶりか」
「そうだね。ダイちゃんは昔と変わらず普段着だよね」
「小学校の3、4年の頃から、お祭りに行くときも普段着になったな」
それ以前は浴衣を着ていたけど。ただ、浴衣だと動きづらいし、普段着の方が気楽でいいと考えて、小学校の3、4年くらいからはずっと普段着でお祭りに行っている。ちなみに、今はスラックスに半袖のVネックシャツである。
「みんなはどんな服装だろう。一紗ちゃんはダイちゃんに浴衣姿を見せたいから浴衣は確定で、青葉ちゃんは去年浴衣を着ていたから、たぶん今年も浴衣だと思う」
「そうか。杏奈と羽柴は……分からないな。2人とも一緒にお祭りに行ったことがないし。みんなの服装も楽しみだな」
「そうだねっ」
サクラは笑顔でそう答えた。
サクラと話しながら歩いているので、気付けば四鷹駅が見えていた。俺達と行き先が同じなのか、浴衣や甚平姿の人が四鷹駅に向かう姿がちらほらと見受けられる。
バイト先のマスバーガーの前を通り過ぎ、俺達は四鷹駅南口のエスカレーターを上がっていく。今は……5時50分過ぎか。約束の時間まで10分弱だけど、待ち合わせ場所の改札前にはもう4人はいるだろうか。
エスカレーターを上がって、改札の方へ向かうと、
「あっ、文香と速水君が来た! おーい!」
待ち合わせの改札前には、既に4人全員が揃っていた。小泉さんがこちらに向かって元気良く呼びかけ、笑顔で右手を大きく振っている。一紗も杏奈も羽柴も小泉さんほどではないがしっかりと手を振る。そんな4人に俺達も手を振った。
一紗と杏奈と小泉さんは浴衣姿で、羽柴は七分袖のジャケット姿の普段着だ。みんな似合っているな。あと、美男美女ばかりだから、男女問わず彼らに視線を向ける人が多い。
「みんな、こんばんは!」
「こんばんは。俺達が最後だったんだな」
「そうだな。俺が10分以上前に最初に着いて。そのすぐ後に小鳥遊が来て。小鳥遊が来てから5分後くらいに、小泉と麻生が一緒に改札から出てきたんだ」
「四鷹駅まで一緒に行こうって一紗と約束していたの」
「直接電車で待ち合わせしてね。電車で青葉さんと会えて、ここでみんなと会えて良かったわ。……ところで、私の浴衣姿はどうかしら、大輝君」
ワクワクとした様子でそう言うと、一紗は一歩前に出てくる。
一紗の浴衣は黒い生地に白い百合の花模様があしらわれたもの。カチューシャを付けたロングヘアの髪型はいつもと変わらないけど、カチューシャの柄は青と黒の市松模様と和風だ。おそらく、着ている浴衣に合わせたのだろう。
「黒い浴衣なのもあって、凄く大人っぽい雰囲気で素敵な浴衣姿だと思うよ。綺麗だ。市松模様のカチューシャもいいね。似合ってるよ」
「凄く素敵だと思うよ! いつも以上に大人っぽい雰囲気になっているよ、一紗ちゃん!」
「2人にも似合っていると言ってもらえて嬉しいわ。ありがとう」
一紗はとても嬉しそうな笑顔でそう言う。その笑顔もあって、綺麗なだけじゃなくて可愛らしさも感じられる。魅力的な女の子だ。
杏奈の着る浴衣は、白い生地に青や水色、青紫のあじさいの花模様がたくさんあしらわれたデザイン。髪型はいつもと変わらぬショートボブだ。
「杏奈も浴衣がよく似合っているね。白い浴衣だし、あじさいの色が青系だから、爽やかな雰囲気がしていいなって思う」
「爽やかでいいよね。あじさいは夏の花だから今の季節にピッタリで。似合っているよ、杏奈ちゃん」
「ありがとうございますっ」
えへへっ、と杏奈も嬉しそうに笑う。そのことで杏奈が元々持っている可愛い雰囲気がさらに増した気がする。
小泉さんの着る浴衣は、青い生地に大小様々な大きさの水玉模様のデザイン。髪型はいつものハーフアップとは違って、今のサクラと似たお団子の髪型になっている。髪型も違うから、普段と違った雰囲気だ。
「小泉さんも爽やかな雰囲気の浴衣でいいな。似合ってる」
「似合ってるよ、青葉ちゃん! 今年もその浴衣姿を見られて嬉しいよ」
「ありがとう。気に入っているから嬉しいよ」
と、小泉さんは嬉しそうに言った。去年も着たお気に入りの浴衣か。そういう意味ではサクラとお揃いだ。気に入っている浴衣なら何年も着たくなるものか。
「羽柴は俺と一緒で普段着か。ジャケット姿なのが羽柴らしいけど」
「これから夜になるし、七分袖だからちょうどいいかなって。小さい頃から、お祭りにはいつも着ているような服で行くんだ」
「そうなのか。俺も小3小4くらいから普段着で行ってるよ」
「そうなんだな。普段着だから、いつもの速水って感じだ」
「ですね。いつもの休日の大輝先輩って感じです」
「そうだね、杏奈ちゃん。休みの日に会う速水君って感じね」
「浴衣姿や甚平姿も興味があるけど、普段着の大輝君も素敵よ!」
「ははっ、そうか。ありがとう」
いつも着ているような服装だけど、何だか嬉しい気持ちになる。
「文香は今年も桜の赤い浴衣だね! あたしもまた見られて嬉しいよ!」
「とても可愛らしい雰囲気だわ。よく似合っているわ」
「桜の花びら模様が似合っていますね! お団子の形に纏めた髪型も似合ってます!」
「名字に桜が入っているし、桜井らしい感じがしていいな」
「みんなありがとう!」
みんなに浴衣姿を褒められて、サクラはとても嬉しそうだ。恋人が褒められているから、俺も嬉しい気持ちになるよ。
「みんな集まったし、女子はみんな浴衣姿だから写真を撮りたいわ」
「あたしもそう思っていたよ」
一紗と小泉さんがそう言ってくる。可愛い浴衣姿の女子もいるから、写真撮りたくなるよな。さっきの俺がそうだったもん。
一紗と小泉さんの要望に俺、サクラ、杏奈、羽柴は快諾し、それから少しの間は写真撮影会になった。
みんなで行くと約束した七夕祭りの当日になった。
まだ梅雨の時期だけど、今日は朝から曇っており、雨は降っていない。たまに、雲の切れ間から青空が見える時間があるほどだ。
天気予報によると、今日の天気は曇りで降水確率は10%。雨が降る心配はないという。今日はサクラ達と一緒に七夕祭りに行くし、浴衣を着ていく人もいる。この予報がちゃんと当たるように祈ろう。短冊に書いて、笹に飾ることはしていないけど。
午後5時半頃。
俺は今、サクラの部屋でサクラが浴衣に着替える様子を眺めている。
一紗や杏奈達とは、午後6時に四鷹駅の改札前で待ち合わせすることになっている。そのため、この時間にサクラが浴衣に着替えることにしたのだ。また、着替える様子を見ていてもいいとサクラが言ってくれたので、お言葉に甘えてここにいる。
ゴールデンウィーク頃から、入浴のときなどサクラが着替える姿をよく見ている。それでも、浴衣を着ている姿を見るのは初めてだから、何だかドキッとする。
「お風呂のときとか、ダイちゃんの前で着替えることはいっぱいあるけど、浴衣に着替えるのは初めてだからちょっとドキドキする」
「俺も同じようなことを思っていたよ」
「ふふっ、そうだったんだ」
サクラは頬をほんのりと紅潮させながら微笑んだ。それが可愛くて、またドキッとする。
サクラの着る浴衣は赤い生地に、ピンクの桜の花びらがたくさんあしらわれたデザイン。サクラは暖色系の色が好きだし、桜の花も好きだから、サクラらしい浴衣だと思う。
浴衣を着て、淡いピンク色の帯を巻き終わると、サクラは髪をお団子の形に纏めていく。普段からお風呂で髪を洗った後はお団子のように髪を纏めているのもあってか、鮮やかな手つきだ。
お団子の形で髪を纏めると、サクラは赤いかんざしを挿した。
「はい、お祭りコスチューム完成!」
「おおっ」
お祭りコスチュームの美しさはもちろん、特に苦戦することなく浴衣を着たり、髪を纏めたりしたのもあり、思わず声が漏れる。
「その浴衣、よく似合っているよ。綺麗だし、可愛らしさもあるし」
「ありがとう! お気に入りの浴衣だから嬉しいな。背が伸びて、今みたいな体格になった中3の七夕祭りから着ているの」
「そうなのか」
「だから、この浴衣を着て、これからダイちゃんと一緒に七夕祭りに行けるのが嬉しいよ」
「……そう言ってくれて俺も嬉しいよ」
俺がそう言うと、サクラは「えへへっ」と声に出して笑う。その笑顔も相まって、浴衣姿がより魅力的に見えて。こんなに魅力的な姿のサクラを一昨年、去年の七夕祭りで多くの人が見ていたのか。羨ましいぜ。俺も行っておけば良かったよ。
「サクラ。凄く可愛いし、スマホで写真を撮ってもいいか?」
「うん、いいよ!」
「ありがとう」
その後、俺はスマホで浴衣姿のサクラの写真を何枚も撮影する。また、サクラの希望で俺とのツーショットの自撮り写真も撮って。浴衣姿の可愛いサクラを見られたし、写真もいっぱい撮ったからこの時点で満足感がある。
ツーショットの自撮り写真を中心にLIMEでサクラに送った。それを確認するサクラはニコッと笑っていた。
「ありがとう、ダイちゃん」
お礼を言うと、サクラは俺にキスしてきた。これまでたくさんキスしてきたけど、浴衣姿なのもあって特別な感じがした。
「いえいえ。今は5時40分過ぎか。待ち合わせは6時だし、出発するか」
「うんっ!」
俺はサクラと一緒にサクラの部屋を後にする。
リビングにいる父さんと母さんに七夕祭りに行ってくると伝えると、2人ともサクラの浴衣姿を凄く褒めていた。サクラの母親の美紀さんに送るからと、母さんがスマホで俺達のことを撮影していた。
母さんによる写真撮影会が終わり、俺達は家を出発する。
夕方の5時半も過ぎて、雲の切れ間から青空がちょっと見える程度。なので、暑さはそこまで感じない。これから夜になっていくし、お祭りを楽しむにはちょうどいい気候だと思う。
付き合っているのもあり、サクラと手を繋いでいる。ただ、サクラが浴衣姿であったり、サクラが履いている下駄による「カタ、カタ……」という足音が聞こえたりと、夏の風情が感じられる。
「ダイちゃんとまた七夕祭りに行けて嬉しいよ」
「俺も嬉しいよ。4年ぶりか」
「そうだね。ダイちゃんは昔と変わらず普段着だよね」
「小学校の3、4年の頃から、お祭りに行くときも普段着になったな」
それ以前は浴衣を着ていたけど。ただ、浴衣だと動きづらいし、普段着の方が気楽でいいと考えて、小学校の3、4年くらいからはずっと普段着でお祭りに行っている。ちなみに、今はスラックスに半袖のVネックシャツである。
「みんなはどんな服装だろう。一紗ちゃんはダイちゃんに浴衣姿を見せたいから浴衣は確定で、青葉ちゃんは去年浴衣を着ていたから、たぶん今年も浴衣だと思う」
「そうか。杏奈と羽柴は……分からないな。2人とも一緒にお祭りに行ったことがないし。みんなの服装も楽しみだな」
「そうだねっ」
サクラは笑顔でそう答えた。
サクラと話しながら歩いているので、気付けば四鷹駅が見えていた。俺達と行き先が同じなのか、浴衣や甚平姿の人が四鷹駅に向かう姿がちらほらと見受けられる。
バイト先のマスバーガーの前を通り過ぎ、俺達は四鷹駅南口のエスカレーターを上がっていく。今は……5時50分過ぎか。約束の時間まで10分弱だけど、待ち合わせ場所の改札前にはもう4人はいるだろうか。
エスカレーターを上がって、改札の方へ向かうと、
「あっ、文香と速水君が来た! おーい!」
待ち合わせの改札前には、既に4人全員が揃っていた。小泉さんがこちらに向かって元気良く呼びかけ、笑顔で右手を大きく振っている。一紗も杏奈も羽柴も小泉さんほどではないがしっかりと手を振る。そんな4人に俺達も手を振った。
一紗と杏奈と小泉さんは浴衣姿で、羽柴は七分袖のジャケット姿の普段着だ。みんな似合っているな。あと、美男美女ばかりだから、男女問わず彼らに視線を向ける人が多い。
「みんな、こんばんは!」
「こんばんは。俺達が最後だったんだな」
「そうだな。俺が10分以上前に最初に着いて。そのすぐ後に小鳥遊が来て。小鳥遊が来てから5分後くらいに、小泉と麻生が一緒に改札から出てきたんだ」
「四鷹駅まで一緒に行こうって一紗と約束していたの」
「直接電車で待ち合わせしてね。電車で青葉さんと会えて、ここでみんなと会えて良かったわ。……ところで、私の浴衣姿はどうかしら、大輝君」
ワクワクとした様子でそう言うと、一紗は一歩前に出てくる。
一紗の浴衣は黒い生地に白い百合の花模様があしらわれたもの。カチューシャを付けたロングヘアの髪型はいつもと変わらないけど、カチューシャの柄は青と黒の市松模様と和風だ。おそらく、着ている浴衣に合わせたのだろう。
「黒い浴衣なのもあって、凄く大人っぽい雰囲気で素敵な浴衣姿だと思うよ。綺麗だ。市松模様のカチューシャもいいね。似合ってるよ」
「凄く素敵だと思うよ! いつも以上に大人っぽい雰囲気になっているよ、一紗ちゃん!」
「2人にも似合っていると言ってもらえて嬉しいわ。ありがとう」
一紗はとても嬉しそうな笑顔でそう言う。その笑顔もあって、綺麗なだけじゃなくて可愛らしさも感じられる。魅力的な女の子だ。
杏奈の着る浴衣は、白い生地に青や水色、青紫のあじさいの花模様がたくさんあしらわれたデザイン。髪型はいつもと変わらぬショートボブだ。
「杏奈も浴衣がよく似合っているね。白い浴衣だし、あじさいの色が青系だから、爽やかな雰囲気がしていいなって思う」
「爽やかでいいよね。あじさいは夏の花だから今の季節にピッタリで。似合っているよ、杏奈ちゃん」
「ありがとうございますっ」
えへへっ、と杏奈も嬉しそうに笑う。そのことで杏奈が元々持っている可愛い雰囲気がさらに増した気がする。
小泉さんの着る浴衣は、青い生地に大小様々な大きさの水玉模様のデザイン。髪型はいつものハーフアップとは違って、今のサクラと似たお団子の髪型になっている。髪型も違うから、普段と違った雰囲気だ。
「小泉さんも爽やかな雰囲気の浴衣でいいな。似合ってる」
「似合ってるよ、青葉ちゃん! 今年もその浴衣姿を見られて嬉しいよ」
「ありがとう。気に入っているから嬉しいよ」
と、小泉さんは嬉しそうに言った。去年も着たお気に入りの浴衣か。そういう意味ではサクラとお揃いだ。気に入っている浴衣なら何年も着たくなるものか。
「羽柴は俺と一緒で普段着か。ジャケット姿なのが羽柴らしいけど」
「これから夜になるし、七分袖だからちょうどいいかなって。小さい頃から、お祭りにはいつも着ているような服で行くんだ」
「そうなのか。俺も小3小4くらいから普段着で行ってるよ」
「そうなんだな。普段着だから、いつもの速水って感じだ」
「ですね。いつもの休日の大輝先輩って感じです」
「そうだね、杏奈ちゃん。休みの日に会う速水君って感じね」
「浴衣姿や甚平姿も興味があるけど、普段着の大輝君も素敵よ!」
「ははっ、そうか。ありがとう」
いつも着ているような服装だけど、何だか嬉しい気持ちになる。
「文香は今年も桜の赤い浴衣だね! あたしもまた見られて嬉しいよ!」
「とても可愛らしい雰囲気だわ。よく似合っているわ」
「桜の花びら模様が似合っていますね! お団子の形に纏めた髪型も似合ってます!」
「名字に桜が入っているし、桜井らしい感じがしていいな」
「みんなありがとう!」
みんなに浴衣姿を褒められて、サクラはとても嬉しそうだ。恋人が褒められているから、俺も嬉しい気持ちになるよ。
「みんな集まったし、女子はみんな浴衣姿だから写真を撮りたいわ」
「あたしもそう思っていたよ」
一紗と小泉さんがそう言ってくる。可愛い浴衣姿の女子もいるから、写真撮りたくなるよな。さっきの俺がそうだったもん。
一紗と小泉さんの要望に俺、サクラ、杏奈、羽柴は快諾し、それから少しの間は写真撮影会になった。
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