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特別編5-再会と出会いと三者面談編-
第5話『親子水入らずの時間-前編-』
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お母さんやダイちゃん達9人でお喋りするのはとても楽しかったな。だから、あっという間に時間が過ぎていった。
仁実さんと純子さん、香苗さんがそれぞれの旦那さんとの馴れ初めや付き合っている頃の話を聞いたときにはキュンとして。中には「ダイちゃんとそうしてみたい!」って思える話もあった。
お母さんのお土産のういろうと小倉トーストクッキーも美味しかったな。ダイちゃんに食べさせてもらうとより美味しかった。
夕ご飯は優子さんと一緒に作ったお母さんの大好物のハンバーグ。お母さんもダイちゃんも徹さんも「美味しい」って言ってくれて嬉しかったな。
お母さんとお父さんの名古屋での夫婦生活や、お母さんと優子さんと徹さんの高校時代の話に花が咲いて、とても楽しい夕食の時間になった。
「サクラと母さんが夕食を作っている間にお風呂の準備をしたので、もう入れますよ」
夕食を食べ終わったとき、ダイちゃんがそう言ってくれた。
「そうなんだね。じゃあ、お母さん。一番風呂どうぞ。名古屋から来たお客さんでもあるんだし」
新幹線に乗ったから、四鷹まで快適に来られたと言っていたけど。それでも2時間半以上かかっているし、多少の疲れはあると思うから。ゆっくりとお風呂に入って体を癒やしてほしいな。
「分かった。じゃあ、ご厚意に甘えさせてもらうわ」
お母さんは明るい笑顔でそう言ってくれた。それがとても嬉しい。
「文香。お母さんと一緒に入る? 髪とか洗ってあげるわよ?」
明るい笑顔のまま、お母さんはそう問いかけてくる。
付き合い始めてから、ダイちゃんとの入浴が日常になっている。だけど、今日はお母さんと一緒に入りたいかな。お母さんと少しでも長く一緒にいたいから。ダイちゃんの方を見ると、ダイちゃんは優しい笑顔で頷いてくれた。
「うんっ、一緒に入ろう!」
「分かったわ。大輝君も一緒に入る?」
『えっ?』
まさか、お母さんがダイちゃんにお風呂を誘ってくるなんて。思わず声を漏らしてしまった。その声がダイちゃんと見事にシンクロする。
「お、お母さんっ! 何言ってるのっ!」
「だって、文香とは付き合い始めてからよく入っているみたいだし。昔、お泊まりに来たときはあたしとも一緒に入っていたから。ひさしぶりにいいかなぁって」
「それは幼稚園の頃の話でしょ! あの頃ならまだしも、今は高校生なんだからまずいって。ダイちゃんもそう思うよね!」
「ああ。さすがに高校生だからな。それに、サクラと美紀さんには親子水入らずの時間を過ごしてほしいですから。なので、お気持ちだけ受け取っておきますね」
落ち着いた笑顔でそう言うダイちゃん。お母さんの誘いに断るだけじゃなくて、親子水入らずの時間を過ごしてほしいって言ってくれるなんて。ダイちゃんのそういう優しいところも好きっ!
「大輝君がそう言うなら仕方ないね。分かったわ。じゃあ、文香と2人で入ろうか」
「うんっ! 2人で入ろう! 2人で!」
「サクラと一緒にゆっくり入ってきてください」
そう言うダイちゃんはほっとしているように見えた。
その後、私とお母さんは寝間着や替えの下着など、必要なものを準備して浴室に行ける1階の洗面所に。
私は洗面所の扉の鍵を閉め、お母さんの隣で服を脱ぎ始める。既に服を脱ぎ始めているお母さんの姿を見て、なぜか懐かしさと同時に新鮮な気持ちも抱く。
「最後に文香と一緒にお風呂に入ったのっていつだったっけ? 文香がここに引っ越す直前だった気がするけど」
「引っ越す数日前だよ。あの家のお風呂に入るのも数えるほどしかなかったし、お母さんとも離ればなれになるから一緒に入りたくて。それで、お母さんを誘ったの」
「あのとき、誘ってくれて嬉しかったわ。文香が小さい頃は一緒に入っていたけど、大きくなってからは少なくなったから」
嬉しそうに話すお母さん。そんなお母さんの顔を見て、引っ越す直前にお風呂に入ろうって誘ったとき、お母さんがとても嬉しそうに「いいよ!」って言ってくれたことを思い出した。
「そういえば、この家のお風呂に文香と一緒に入ったことってあった?」
「う~ん……記憶にないなぁ。お泊まりするときも私だけだったし。初めてだと思う」
「だよね。お母さんも記憶ないもん。お母さんの場合は単なる物忘れかもしれないけど」
あははっ、とお母さんは朗らかに笑う。
さっき、服を脱ぎ始めるお母さんを見て懐かしさと同時に新鮮な気持ちを抱いたのは、小さい頃はよく一緒にお風呂に入っていたから。そして、ここのお風呂に一緒に入ることがなかったからだったんだ。
私は服を全て脱ぎ終えて、洗濯カゴに入れた。
「そういうカゴに自然と服を入れるところを見ると、文香はここで生活しているんだなって思うわ」
「まあ、2ヶ月以上住んでいるからね。ここでの生活ルールに慣れたよ」
「ふふっ、そっか。あと……この前カップが大きくなったから下着を買うって言っていただけあって、引っ越す前よりも胸が大きくなったわね」
「ひゃんっ」
お母さんは私の胸を見つめながら胸の感想を言い、右手の人差し指で私の右胸をつん、と押してくる。突然のことだったから、思わず変な声が出て、体がビクついてしまった。
「おおっ、柔らかい」
「もう、お母さんったら。突然押さないでよ」
「ごめんごめん。前から胸を大きくしたいって言っていたもんね。バストアップのマッサージもしていたよね。その効果が出たのかしら。それとも、大輝君のおかげかなぁ?」
ニヤニヤしてそう言うと、お母さんは右手の人差し指で私の胸を何度もつんつんしてくる。図星だし、ダイちゃんにバストアップマッサージをしてもらったり、肌を重ねたときに胸に色々されたりしたことを思い出したので顔中心に全身が熱くなってきた。きっと、顔が赤くなっているんだろうな。ごまかすことはできなさそうだ。
「……まあ、好きな人にマッサージしてもらったり、スキンシップしたりすると胸が大きくなりやすいそうだし? ダイちゃんとそういうことをして、Dカップになれたと思ってる。ダイちゃんが育ての親だと言っても過言じゃないよ」
「ふふっ、育ての親かぁ」
「もちろん、生みの親はお母さんね。いつかはお母さんと同じかそれ以上に大きくなりたいと思ってるよ」
「その可能性は十分にあると思っているわ」
お母さんにそう言われると、何だか自信が出てくる。
それにしても、お母さん……変わらずスタイルがいいなぁ。肌のツヤもいいし。40代半ばとは思えぬ美貌。娘ながら見惚れてしまう。何歳になっても、お母さんのようにいいスタイルを維持できるようになりたい。あと、ダイちゃんが一緒に入る展開にならなくて良かったと思う。
「どうしたの、私の体をじっくり見て」
「スタイルいいなぁって思って。あと、心なしか前よりも肌のツヤが良くなったような……」
「日々の運動を続けているからね。あとは……名古屋に住むようになってから、てっちゃんとする回数も増えたからかしら……」
うっとりとした様子でお母さんはそう言い、左右に身をよじっている。何か可愛い。
まあ、2人きりなら、他の人のことは気にしなくていいもんね。だから、お父さんと……たくさんイチャイチャできちゃうと。お昼に再会したとき、新婚気分を味わえていると言っていたけど、その理由の一つはこれなのかもしれない。
「えっと、その……お父さんと仲が良くて、美貌を保てているのはいいことだね……」
両親の営み事情を知ってしまい、どうコメントすればいいのか迷ってしまったけど、何とか言葉を捻り出してみた。果たして、このコメントで良かったのかどうか。
お母さんは私を見て笑顔で「うんっ」と頷く。どうやら、今のコメントで良かったようだ。
「さあ、お母さん。お風呂に入ろう? 髪を洗ったり、背中を流したりしてあげるよ」
「ありがとう。入りましょう」
お母さんと一緒に浴室に入る。小さな頃からたくさん泊まりに来て、3月下旬からここに住んでいるからこの浴室にも慣れてきたけど、今はお母さんと一緒だから新鮮さがある。
お母さんにはバスチェアに座ってもらい、私はお母さんの後ろに膝立ちする。
「お母さん。髪と背中、どっちから洗う?」
「まずは髪からお願いします」
「はーい」
シャワーのお湯でお母さんの髪を濡らし、私も使っているリンスインシャンプーを使って髪を洗い始める。お母さんはショートボブで私の髪よりも量が少ないから洗いやすいな。
「お母さん、こんな感じの洗い方でいい?」
「うん。気持ちいいから今の感じで」
「はーい」
お母さんの気に入る洗い方ができていて良かった。
あと、このお風呂で私のシャンプーを使って髪を洗ってあげると、春休みやゴールデンウィークに和奏ちゃんが帰省したときや、青葉ちゃんが泊まりに来たことを思い出す。あのときは和奏ちゃんや青葉ちゃんと互いの髪を洗ったっけ。
「文香。髪が洗うのが前よりも上手くなったわね。大輝君の髪も洗ってあげているの?」
「うん。一緒に入ると、お互いの髪を洗うことが多いんだ」
「そうなの。髪を洗う手から優しさを感じるのも納得ね」
鏡に映るお母さんは優しい笑顔を浮かべていて。鏡越しに私と目が合うとニッコリ笑った。今のお母さんみたいに、ダイちゃんも鏡越しで目が合うと笑ってくれることが多い。気付けば頬が緩んでいて、お母さんと同じような顔になっていた。
シャワーでお母さんの髪に付いているシャンプーの泡を洗い流す。タオルで拭くと、お母さんの髪のツヤが洗う前よりも良くなった。
「これで髪は終わり。次は背中を流すね」
「うん、お願いします。お母さん、持ってきたボディータオルで泡立てるから」
「分かった」
お母さんはボディーソープをオレンジ色のボディータオルに出し、泡立てていく。そのことで、ボディーソープのピーチの香りが広がっていく。この浴室でこの香りを感じるのは慣れているのに、目の前にお母さんがいると不思議な気分。
あと、お母さんの後ろ姿を間近にして思ったけど、お母さんの背中綺麗だなぁ。くびれもはっきりしているし。テニスをやっている青葉ちゃんや、高校時代はバドミントン部だった和奏ちゃんに負けないくらい。私よりははっきりしていそう。これもお父さんのおかげ?
「文香、お願い」
「う、うん」
お母さんから泡が付いたボディータオルを受け取り、お母さんの背中を流し始める。その際にお母さんの肩や背中に触れるけど、スベスベとした肌だなぁ。
「あぁ、気持ちいい……」
洗う強さはどうか訊こうとしたら、お母さんがそんな言葉を漏らす。鏡に映るお母さんを見ると、お母さんはまったりとした笑みを浮かべていて。どうやら、いい感じの強さで背中を流すことができているらしい。でも、一応訊いておこうかな。
「お母さん、今みたいな感じで洗えばいい?」
「うん。これでよろしく~」
「分かった」
「背中の洗い方も前より上手になってるね。これも大輝君のおかげかな?」
「そうだね。背中を流し合うこともあるから」
「ふふっ、そっか」
髪だけじゃなくて、背中を洗うも上手になっているんだ。これも付き合ってからはほぼ毎日ダイちゃんと一緒にお風呂に入って、髪と背中を洗っているからなんだろうなぁ。ダイちゃんも気持ちいいってよく言ってくれるし。
ただ、ダイちゃんの広い背中を洗うのに慣れているからかな。あっという間にお母さんの背中を洗い終えてしまった。そのことに少し寂しさを感じて。
「……お母さん、背中洗い終わったよ」
「ありがとう。あとはお母さんが自分で洗うから」
「分かった」
はいっ、とボディータオルをお母さんに返した。
それから、お母さんが体を洗い終えるまで、体を洗うお母さんの後ろ姿を見続けた。綺麗で大人の雰囲気も感じられて素敵だなぁ、と思いながら。
仁実さんと純子さん、香苗さんがそれぞれの旦那さんとの馴れ初めや付き合っている頃の話を聞いたときにはキュンとして。中には「ダイちゃんとそうしてみたい!」って思える話もあった。
お母さんのお土産のういろうと小倉トーストクッキーも美味しかったな。ダイちゃんに食べさせてもらうとより美味しかった。
夕ご飯は優子さんと一緒に作ったお母さんの大好物のハンバーグ。お母さんもダイちゃんも徹さんも「美味しい」って言ってくれて嬉しかったな。
お母さんとお父さんの名古屋での夫婦生活や、お母さんと優子さんと徹さんの高校時代の話に花が咲いて、とても楽しい夕食の時間になった。
「サクラと母さんが夕食を作っている間にお風呂の準備をしたので、もう入れますよ」
夕食を食べ終わったとき、ダイちゃんがそう言ってくれた。
「そうなんだね。じゃあ、お母さん。一番風呂どうぞ。名古屋から来たお客さんでもあるんだし」
新幹線に乗ったから、四鷹まで快適に来られたと言っていたけど。それでも2時間半以上かかっているし、多少の疲れはあると思うから。ゆっくりとお風呂に入って体を癒やしてほしいな。
「分かった。じゃあ、ご厚意に甘えさせてもらうわ」
お母さんは明るい笑顔でそう言ってくれた。それがとても嬉しい。
「文香。お母さんと一緒に入る? 髪とか洗ってあげるわよ?」
明るい笑顔のまま、お母さんはそう問いかけてくる。
付き合い始めてから、ダイちゃんとの入浴が日常になっている。だけど、今日はお母さんと一緒に入りたいかな。お母さんと少しでも長く一緒にいたいから。ダイちゃんの方を見ると、ダイちゃんは優しい笑顔で頷いてくれた。
「うんっ、一緒に入ろう!」
「分かったわ。大輝君も一緒に入る?」
『えっ?』
まさか、お母さんがダイちゃんにお風呂を誘ってくるなんて。思わず声を漏らしてしまった。その声がダイちゃんと見事にシンクロする。
「お、お母さんっ! 何言ってるのっ!」
「だって、文香とは付き合い始めてからよく入っているみたいだし。昔、お泊まりに来たときはあたしとも一緒に入っていたから。ひさしぶりにいいかなぁって」
「それは幼稚園の頃の話でしょ! あの頃ならまだしも、今は高校生なんだからまずいって。ダイちゃんもそう思うよね!」
「ああ。さすがに高校生だからな。それに、サクラと美紀さんには親子水入らずの時間を過ごしてほしいですから。なので、お気持ちだけ受け取っておきますね」
落ち着いた笑顔でそう言うダイちゃん。お母さんの誘いに断るだけじゃなくて、親子水入らずの時間を過ごしてほしいって言ってくれるなんて。ダイちゃんのそういう優しいところも好きっ!
「大輝君がそう言うなら仕方ないね。分かったわ。じゃあ、文香と2人で入ろうか」
「うんっ! 2人で入ろう! 2人で!」
「サクラと一緒にゆっくり入ってきてください」
そう言うダイちゃんはほっとしているように見えた。
その後、私とお母さんは寝間着や替えの下着など、必要なものを準備して浴室に行ける1階の洗面所に。
私は洗面所の扉の鍵を閉め、お母さんの隣で服を脱ぎ始める。既に服を脱ぎ始めているお母さんの姿を見て、なぜか懐かしさと同時に新鮮な気持ちも抱く。
「最後に文香と一緒にお風呂に入ったのっていつだったっけ? 文香がここに引っ越す直前だった気がするけど」
「引っ越す数日前だよ。あの家のお風呂に入るのも数えるほどしかなかったし、お母さんとも離ればなれになるから一緒に入りたくて。それで、お母さんを誘ったの」
「あのとき、誘ってくれて嬉しかったわ。文香が小さい頃は一緒に入っていたけど、大きくなってからは少なくなったから」
嬉しそうに話すお母さん。そんなお母さんの顔を見て、引っ越す直前にお風呂に入ろうって誘ったとき、お母さんがとても嬉しそうに「いいよ!」って言ってくれたことを思い出した。
「そういえば、この家のお風呂に文香と一緒に入ったことってあった?」
「う~ん……記憶にないなぁ。お泊まりするときも私だけだったし。初めてだと思う」
「だよね。お母さんも記憶ないもん。お母さんの場合は単なる物忘れかもしれないけど」
あははっ、とお母さんは朗らかに笑う。
さっき、服を脱ぎ始めるお母さんを見て懐かしさと同時に新鮮な気持ちを抱いたのは、小さい頃はよく一緒にお風呂に入っていたから。そして、ここのお風呂に一緒に入ることがなかったからだったんだ。
私は服を全て脱ぎ終えて、洗濯カゴに入れた。
「そういうカゴに自然と服を入れるところを見ると、文香はここで生活しているんだなって思うわ」
「まあ、2ヶ月以上住んでいるからね。ここでの生活ルールに慣れたよ」
「ふふっ、そっか。あと……この前カップが大きくなったから下着を買うって言っていただけあって、引っ越す前よりも胸が大きくなったわね」
「ひゃんっ」
お母さんは私の胸を見つめながら胸の感想を言い、右手の人差し指で私の右胸をつん、と押してくる。突然のことだったから、思わず変な声が出て、体がビクついてしまった。
「おおっ、柔らかい」
「もう、お母さんったら。突然押さないでよ」
「ごめんごめん。前から胸を大きくしたいって言っていたもんね。バストアップのマッサージもしていたよね。その効果が出たのかしら。それとも、大輝君のおかげかなぁ?」
ニヤニヤしてそう言うと、お母さんは右手の人差し指で私の胸を何度もつんつんしてくる。図星だし、ダイちゃんにバストアップマッサージをしてもらったり、肌を重ねたときに胸に色々されたりしたことを思い出したので顔中心に全身が熱くなってきた。きっと、顔が赤くなっているんだろうな。ごまかすことはできなさそうだ。
「……まあ、好きな人にマッサージしてもらったり、スキンシップしたりすると胸が大きくなりやすいそうだし? ダイちゃんとそういうことをして、Dカップになれたと思ってる。ダイちゃんが育ての親だと言っても過言じゃないよ」
「ふふっ、育ての親かぁ」
「もちろん、生みの親はお母さんね。いつかはお母さんと同じかそれ以上に大きくなりたいと思ってるよ」
「その可能性は十分にあると思っているわ」
お母さんにそう言われると、何だか自信が出てくる。
それにしても、お母さん……変わらずスタイルがいいなぁ。肌のツヤもいいし。40代半ばとは思えぬ美貌。娘ながら見惚れてしまう。何歳になっても、お母さんのようにいいスタイルを維持できるようになりたい。あと、ダイちゃんが一緒に入る展開にならなくて良かったと思う。
「どうしたの、私の体をじっくり見て」
「スタイルいいなぁって思って。あと、心なしか前よりも肌のツヤが良くなったような……」
「日々の運動を続けているからね。あとは……名古屋に住むようになってから、てっちゃんとする回数も増えたからかしら……」
うっとりとした様子でお母さんはそう言い、左右に身をよじっている。何か可愛い。
まあ、2人きりなら、他の人のことは気にしなくていいもんね。だから、お父さんと……たくさんイチャイチャできちゃうと。お昼に再会したとき、新婚気分を味わえていると言っていたけど、その理由の一つはこれなのかもしれない。
「えっと、その……お父さんと仲が良くて、美貌を保てているのはいいことだね……」
両親の営み事情を知ってしまい、どうコメントすればいいのか迷ってしまったけど、何とか言葉を捻り出してみた。果たして、このコメントで良かったのかどうか。
お母さんは私を見て笑顔で「うんっ」と頷く。どうやら、今のコメントで良かったようだ。
「さあ、お母さん。お風呂に入ろう? 髪を洗ったり、背中を流したりしてあげるよ」
「ありがとう。入りましょう」
お母さんと一緒に浴室に入る。小さな頃からたくさん泊まりに来て、3月下旬からここに住んでいるからこの浴室にも慣れてきたけど、今はお母さんと一緒だから新鮮さがある。
お母さんにはバスチェアに座ってもらい、私はお母さんの後ろに膝立ちする。
「お母さん。髪と背中、どっちから洗う?」
「まずは髪からお願いします」
「はーい」
シャワーのお湯でお母さんの髪を濡らし、私も使っているリンスインシャンプーを使って髪を洗い始める。お母さんはショートボブで私の髪よりも量が少ないから洗いやすいな。
「お母さん、こんな感じの洗い方でいい?」
「うん。気持ちいいから今の感じで」
「はーい」
お母さんの気に入る洗い方ができていて良かった。
あと、このお風呂で私のシャンプーを使って髪を洗ってあげると、春休みやゴールデンウィークに和奏ちゃんが帰省したときや、青葉ちゃんが泊まりに来たことを思い出す。あのときは和奏ちゃんや青葉ちゃんと互いの髪を洗ったっけ。
「文香。髪が洗うのが前よりも上手くなったわね。大輝君の髪も洗ってあげているの?」
「うん。一緒に入ると、お互いの髪を洗うことが多いんだ」
「そうなの。髪を洗う手から優しさを感じるのも納得ね」
鏡に映るお母さんは優しい笑顔を浮かべていて。鏡越しに私と目が合うとニッコリ笑った。今のお母さんみたいに、ダイちゃんも鏡越しで目が合うと笑ってくれることが多い。気付けば頬が緩んでいて、お母さんと同じような顔になっていた。
シャワーでお母さんの髪に付いているシャンプーの泡を洗い流す。タオルで拭くと、お母さんの髪のツヤが洗う前よりも良くなった。
「これで髪は終わり。次は背中を流すね」
「うん、お願いします。お母さん、持ってきたボディータオルで泡立てるから」
「分かった」
お母さんはボディーソープをオレンジ色のボディータオルに出し、泡立てていく。そのことで、ボディーソープのピーチの香りが広がっていく。この浴室でこの香りを感じるのは慣れているのに、目の前にお母さんがいると不思議な気分。
あと、お母さんの後ろ姿を間近にして思ったけど、お母さんの背中綺麗だなぁ。くびれもはっきりしているし。テニスをやっている青葉ちゃんや、高校時代はバドミントン部だった和奏ちゃんに負けないくらい。私よりははっきりしていそう。これもお父さんのおかげ?
「文香、お願い」
「う、うん」
お母さんから泡が付いたボディータオルを受け取り、お母さんの背中を流し始める。その際にお母さんの肩や背中に触れるけど、スベスベとした肌だなぁ。
「あぁ、気持ちいい……」
洗う強さはどうか訊こうとしたら、お母さんがそんな言葉を漏らす。鏡に映るお母さんを見ると、お母さんはまったりとした笑みを浮かべていて。どうやら、いい感じの強さで背中を流すことができているらしい。でも、一応訊いておこうかな。
「お母さん、今みたいな感じで洗えばいい?」
「うん。これでよろしく~」
「分かった」
「背中の洗い方も前より上手になってるね。これも大輝君のおかげかな?」
「そうだね。背中を流し合うこともあるから」
「ふふっ、そっか」
髪だけじゃなくて、背中を洗うも上手になっているんだ。これも付き合ってからはほぼ毎日ダイちゃんと一緒にお風呂に入って、髪と背中を洗っているからなんだろうなぁ。ダイちゃんも気持ちいいってよく言ってくれるし。
ただ、ダイちゃんの広い背中を洗うのに慣れているからかな。あっという間にお母さんの背中を洗い終えてしまった。そのことに少し寂しさを感じて。
「……お母さん、背中洗い終わったよ」
「ありがとう。あとはお母さんが自分で洗うから」
「分かった」
はいっ、とボディータオルをお母さんに返した。
それから、お母さんが体を洗い終えるまで、体を洗うお母さんの後ろ姿を見続けた。綺麗で大人の雰囲気も感じられて素敵だなぁ、と思いながら。
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