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特別編4-胸膨らむ夏の始まり編-
エピローグ『4年ぶりに水遊びした。』
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やがて、チャイムが鳴り、2時間目の授業が始まる。
体育の担当教師によって、水泳の授業内容やプールでの諸注意などの説明を受ける。去年も同じようなことを言われたなぁ、と思いながら聞く。
「先生からの話はこれで終わりだ。今日は初回の授業だから、これ以降は自由時間とする。あと、女子の方も自由時間になるが、決して変なことはしないように」
『はーい!』
男子生徒達の野太くて元気な返事がプールサイドに響く。その返事に俺の声も含まれている。だって、女子も自由時間ってことはサクラ達と一緒に過ごせるってことじゃないか! 凄く嬉しいぜ!
「まったく。今年度一番の元気な返事だな」
ははっ、と体育教師は乾いた笑い声を出す。
『はーい』
反対側のプールサイドから、女子達の可愛い返事が聞こえてきた。おそらく、女子の方も今日は自由時間であると伝えられたのだろう。
「倉庫にあるビート板を使ってもいいぞ。あと、着替えとかもあるから、授業が終わる5分くらい前からはプールから出て行ってよし。じゃあ、これより自由時間とする」
体育教師がそう言うと、男子生徒達は少しずつ散らばり始める。
「速水。俺達はどうしようか」
「女子達も自由時間になるから、サクラ達が動き始めるまではここにいよう」
「そうだな。じゃあ、軽くストレッチしようぜ」
「ああ。そうしよう」
他の生徒の邪魔にならないよう端の方へ行き、羽柴と一緒にストレッチする。
ストレッチをする中、女子達の集団が散らばっていく様子が見える。きっと、向こうも自由時間になったのだろう。
女子達の集団からいち早く抜け、こちらに向かって早歩きする女子が見えた。その女子をよく見ると……スタイル抜群のロングヘア。一紗か。それが分かって、俺達はストレッチを止めた。
「大輝君! その黒い水着、よく似合っているわ! かっこいいわね! さすがは文香さん」
俺の目の前に立つと、一紗は興奮した様子でそう言った。そんな一紗の視線は俺の顔より下の方に向いている。いったい、君はどこを見ているのかな?
「ありがとう、一紗」
「羽柴君もなかなか似合っているじゃない」
「サンキュー。小泉も水着に合っているじゃないか。速水もそう思うだろ?」
「ああ。とても似合っていて素敵だよ、一紗」
「2人ともありがとう。特に大輝君に褒めてもらえて嬉しい。去年よりも胸が大きくなったから、スクール水着を新調したの。大輝君に似合っていると言われたくて選んだのよ」
「そうだったんだね」
そう言われると、一紗のスクール水着姿をじっくりと見てしまう。色は王道の紺色だけど、一紗が着ているととてもセクシーに感じられる。水着の上からでもはっきりと体のラインが分かって。あと、さっき男子が言っていたように胸の存在感が凄い。
「そんなにじっくりと私の水着姿を見てくれるなんて。ドキドキして体が熱くなってきたわ」
「ご、ごめん一紗」
「大輝君だからいいのよ」
「一紗ちゃん。ダイちゃんに水着姿は褒めてもらえた?」
気づけば、サクラと小泉さんがやってきていた。
「ええ、大輝君はもちろん、羽柴君も似合っているって言ってくれたわ」
「良かったね、一紗ちゃん」
「良かったじゃん、一紗」
サクラと小泉さんは爽やかな笑みを浮かべる。サクラは俺の方を見てニコッと笑う。どうやら、一紗のスクール水着姿をじっくり見ていたことを嫌だと思っていないようだ。
「小泉さんは去年と同じ水着だけど、変わらず似合ってるね」
「ありがとう」
「サクラは……その黒いスクール水着を買って良かったよ。去年よりも大人っぽくなっているって改めて思う。あと、晴れたプールサイドにいるからかな。試着したときよりも素敵に見える。誰よりも可愛いよ」
素直に水着姿の感想を言うと、サクラの笑顔がとても嬉しそうなものに変わる。その際、強い赤みを帯びて。そんなサクラは俺のことをじっと見つめる。
「ありがとう。凄く嬉しい。ダイちゃんも、試着したときよりも素敵だよ。このプールにいる男子の中で一番かっこいいよ」
「ありがとう」
サクラにかっこいいって言ってもらえて凄く嬉しい。気づけば、サクラの頭を撫でていた。あと、頬が緩んでいるのが分かる。ドキドキもして、顔中心に全身が熱くなってきた。きっと、サクラのように顔が赤くなっているんだろうな。
「やれやれ。プールサイドでもイチャイチャしちゃって。お熱いこと。一紗、羽柴君、さっそくプールに入ろうよ。そうしないと熱中症になるかも」
「それは名案ね、青葉さん。大輝君に水着姿を見られていたから、私はもう体がかなり熱くなっているわ」
「プールが凄く気持ちいいだろうな!」
小泉さんと一紗、羽柴は笑いながら俺達のことを見ている。サクラと水着のことで褒め合っていたから、親しい友人でも何だか恥ずかしい。サクラも同じだろうか。サクラの顔の赤みがより強くなった。
「み、みんなでプールに入ろうか! その前に、ダイちゃんと羽柴君みたいに準備運動しないとね!」
大きな声で言うと、サクラは準備運動を始める。俺や羽柴とは違ってきびきびとした動きだ。そんなサクラを見習ってか、一紗と小泉さんも準備運動を始める。
俺は羽柴と一緒に準備運動をするサクラ達を見守る。3人とも美人でスクール水着姿が似合っているから、準備運動でも絵になるなぁ。また、遠くの方から3人を見ている男子達がちらほら見受けられた。
「よし、このくらいでいいかな」
「いいと思うわ、文香さん」
「十分だと思うよ、文香」
「うん! じゃあ、プールに入ろうか」
サクラのその言葉に、俺を含めてみんな頷いた。
俺達は近くから、ゆっくりとプールへ入る。
プールの水は冷たくて気持ちいい。プールサイドに来てから、ずっと直射日光を浴びているから凄く快感だ。
「冷たくて気持ちいいね、ダイちゃん!」
「そうだな」
リラックスした表情になっているサクラがとても可愛らしい。スマホを持ってきて、今のサクラを写真に撮りたいほどだ。
「あぁ、気持ちいいぜ!」
「火照った体が冷やされていくわ」
「気持ちいいよね、一紗、羽柴君! 晴れている日に入るプールは最高だね!」
一紗と小泉さん、羽柴も冷たいプールに入って癒されているようだ。
周りを見渡してみると、水をかけ合ったり、ビート板を使って遊んだり、泳ぎの競走をしたり、足だけ入れてプールサイドに座って話していたりと、それぞれが思い思いの時間を過ごしている。
「あぁ、大輝君と一緒にプールに入られて幸せだわ。私、入学してから一番、四鷹高校に進学して良かったって思っているわ!」
水着姿を褒めたとき以上にテンションが上がっている一紗。こういうことでも幸せを感じられるのは一紗らしい。
「大輝君と一緒にプールに入っているってことは……私達、混浴しているのね!」
「混浴って。温泉じゃないんだからさ、一紗」
小泉さんのツッコミに俺とサクラ、羽柴は声に出して笑う。プールでも混浴気分になれるところも一紗らしさを感じる。
あと、混浴という言葉を聞いて、一緒にお風呂に入っているときのサクラの姿を次々と思い浮かべてしまう。
「どうしたの? ダイちゃん。顔がちょっと赤いけど」
「ううん、何でもない。ただ、日差しが暑いってだけ」
「そっか。……そういえば、こうして一緒にプールに入るのは4年ぶりだね」
「……そうだな」
中学2年の4月から、今年の3月の終わり頃まで、サクラとはずっとわだかまりがあったからな。中2、中3、高1と同じクラスだったけど、こうした水泳の授業の自由時間で一緒に過ごすことはなかった。もちろん、この期間にプライベートでプールや海へ遊びに行くこともなくて。
「最後に入ったのは、中1の9月にあった水泳の授業の自由時間だったか」
「うん。中1のときは別々のクラスだったけど、隣同士だから体育は一緒だったもんね。一紗ちゃんと同じで、4年ぶりにダイちゃんと一緒に入れて幸せだよ。プールのある高校で良かった」
「……俺も」
「ふふっ、私の言葉に共感してくれる人がいて嬉しいわ」
嬉しそうにそう言うと、一紗はサクラの頭を撫でる。
「良かったね、文香。去年は授業前とか自由時間に速水君のことを見ていたから」
「そういえば、速水も桜井のことを見ることが多かったな」
「あのときもサクラのことが好きだからな。水着姿も良かったし」
「私も同じ感じ。あぁ、顔が熱くなってきた」
サクラの顔は見る見るうちに赤くなっていく。そして、サクラは両手を使って自分の顔にプールの水をかけた。
「冷たくて気持ちいい! みんなにもかけてあげるよ!」
そーれっ! とサクラは両手で大きくプールの水を掻いて、俺達に水をかけた。それが予想外の行動だったので、冷たい水が顔にかかった瞬間、「うわっ!」と大きめの声が出てしまった。ほぼ同じタイミングで、一紗と小泉さんの「きゃっ!」という声や羽柴の「おっ」という声が聞こえた。
俺は右手で顔にかかった水を拭う。
「気持ちよかったでしょ?」
そんなサクラの声が聞こえたので、そちらを向くと……サクラは悪戯な笑みを見せていた。何だか小さい頃のサクラを思い出すなぁ。
そういえば、昔は海やプールに遊びに行くと、サクラは今のようにいきなり水をかけてきたことが何度もあったな。時には和奏姉さんと結託していたことも。
「気持ちよかったよ、サクラ。昔みたいにいきなり水かけてきたな」
「4年ぶりに一緒に入ったからね。小さい頃みたいなことをしたくなっちゃって」
「ははっ」
いきなり冷たさを感じるのは懐かしい感覚だった。ただ、俺は小さい頃のサクラを知っているからまだしも、一紗達は大丈夫だろうか。
一紗達を見てみると……みんな、笑いながら顔についたプールの水を手で拭っていた。
「いきなりでビックリしたよ~」
「俺もビックリしたぜ。でも、冷たい水が気持ちいいな」
「羽柴君に同じよ」
どうやら、みんなサクラがいきなり水をかけたことを嫌に思っていないようだ。そんな3人を見て、サクラもほっとしているようだ。サクラもこんなことをして、一紗達がどう思うか不安だったのかもしれない。
「ただ、やられたからにはやり返さないとね~」
ニヤニヤしながらそう言うと、小泉さんは俺と一紗、羽柴のことを見る。
サクラ以外の4人は頷き合い。
『それっ!』
ほとんど同じタイミングで、サクラにめがけてプールの水をかけた!
「きゃっ!」
4人でかけた水がサクラの顔に直撃し、サクラは可愛らしい声を上げた。まるで犬のように、首を小刻みに横に振り、両手で顔に掛かった水を拭う。
「4人分だと凄いね。でも、冷たくて気持ちいい!」
そう言いサクラは両手を顔から離す。すると、サクラの楽しげな笑顔のお出まし。毎日お風呂に入っているから、濡れたサクラの顔は見慣れている。でも、日差しに照らされた今のサクラの顔は輝いていて。そのことに艶やかさを感じ、ドキッとした。
それからは5人でプールの水をかけ合う。サクラ達4人のはしゃぐ声や笑顔もあって、水をかけ合うだけでも凄く楽しい。
「楽しいね、ダイちゃん!」
「そうだな。サクラと4年ぶりにプールで遊べて楽しいよ」
「私も! プールで遊んでいると夏が来たって感じがするね」
「ああ」
「あと、週末や夏休みに、杏奈ちゃんや二乃ちゃんとかを誘って、みんなで海やプールで遊びたいね」
「遊びたいよな。杏奈と二乃ちゃんは学年が違うから、こういう形で遊べないし。できれば、夏休みまでに一度くらいは遊びたいな」
「うんっ!」
とびきりの笑顔で返事をすると、サクラはしっかりと首肯した。
サクラが引っ越してきてから中1までは、夏休みになるとサクラと一緒に海やプールへ遊びに行っていた。家族ぐるみの旅行中に海水浴をしたり、ホテルのプールで遊んだりする年もあって。今年の夏休みは、4年ぶりにサクラと一緒に海やプールで遊びたいな。もちろん、一紗や杏奈達と一緒に。
それからも、みんなで水をかけ合ったり、ビート板を使って遊んだり、小泉さんとクロールの速さを競ったりするなどして自由時間を楽しく過ごす。
サクラ達の笑顔を見ていると、今年の夏は今までで一番楽しくて思い出深くなりそうだと思うのであった。
特別編4-胸膨らむ夏の始まり編- おわり
次の話から特別編5-再会と出会いと三者面談編-になります。
体育の担当教師によって、水泳の授業内容やプールでの諸注意などの説明を受ける。去年も同じようなことを言われたなぁ、と思いながら聞く。
「先生からの話はこれで終わりだ。今日は初回の授業だから、これ以降は自由時間とする。あと、女子の方も自由時間になるが、決して変なことはしないように」
『はーい!』
男子生徒達の野太くて元気な返事がプールサイドに響く。その返事に俺の声も含まれている。だって、女子も自由時間ってことはサクラ達と一緒に過ごせるってことじゃないか! 凄く嬉しいぜ!
「まったく。今年度一番の元気な返事だな」
ははっ、と体育教師は乾いた笑い声を出す。
『はーい』
反対側のプールサイドから、女子達の可愛い返事が聞こえてきた。おそらく、女子の方も今日は自由時間であると伝えられたのだろう。
「倉庫にあるビート板を使ってもいいぞ。あと、着替えとかもあるから、授業が終わる5分くらい前からはプールから出て行ってよし。じゃあ、これより自由時間とする」
体育教師がそう言うと、男子生徒達は少しずつ散らばり始める。
「速水。俺達はどうしようか」
「女子達も自由時間になるから、サクラ達が動き始めるまではここにいよう」
「そうだな。じゃあ、軽くストレッチしようぜ」
「ああ。そうしよう」
他の生徒の邪魔にならないよう端の方へ行き、羽柴と一緒にストレッチする。
ストレッチをする中、女子達の集団が散らばっていく様子が見える。きっと、向こうも自由時間になったのだろう。
女子達の集団からいち早く抜け、こちらに向かって早歩きする女子が見えた。その女子をよく見ると……スタイル抜群のロングヘア。一紗か。それが分かって、俺達はストレッチを止めた。
「大輝君! その黒い水着、よく似合っているわ! かっこいいわね! さすがは文香さん」
俺の目の前に立つと、一紗は興奮した様子でそう言った。そんな一紗の視線は俺の顔より下の方に向いている。いったい、君はどこを見ているのかな?
「ありがとう、一紗」
「羽柴君もなかなか似合っているじゃない」
「サンキュー。小泉も水着に合っているじゃないか。速水もそう思うだろ?」
「ああ。とても似合っていて素敵だよ、一紗」
「2人ともありがとう。特に大輝君に褒めてもらえて嬉しい。去年よりも胸が大きくなったから、スクール水着を新調したの。大輝君に似合っていると言われたくて選んだのよ」
「そうだったんだね」
そう言われると、一紗のスクール水着姿をじっくりと見てしまう。色は王道の紺色だけど、一紗が着ているととてもセクシーに感じられる。水着の上からでもはっきりと体のラインが分かって。あと、さっき男子が言っていたように胸の存在感が凄い。
「そんなにじっくりと私の水着姿を見てくれるなんて。ドキドキして体が熱くなってきたわ」
「ご、ごめん一紗」
「大輝君だからいいのよ」
「一紗ちゃん。ダイちゃんに水着姿は褒めてもらえた?」
気づけば、サクラと小泉さんがやってきていた。
「ええ、大輝君はもちろん、羽柴君も似合っているって言ってくれたわ」
「良かったね、一紗ちゃん」
「良かったじゃん、一紗」
サクラと小泉さんは爽やかな笑みを浮かべる。サクラは俺の方を見てニコッと笑う。どうやら、一紗のスクール水着姿をじっくり見ていたことを嫌だと思っていないようだ。
「小泉さんは去年と同じ水着だけど、変わらず似合ってるね」
「ありがとう」
「サクラは……その黒いスクール水着を買って良かったよ。去年よりも大人っぽくなっているって改めて思う。あと、晴れたプールサイドにいるからかな。試着したときよりも素敵に見える。誰よりも可愛いよ」
素直に水着姿の感想を言うと、サクラの笑顔がとても嬉しそうなものに変わる。その際、強い赤みを帯びて。そんなサクラは俺のことをじっと見つめる。
「ありがとう。凄く嬉しい。ダイちゃんも、試着したときよりも素敵だよ。このプールにいる男子の中で一番かっこいいよ」
「ありがとう」
サクラにかっこいいって言ってもらえて凄く嬉しい。気づけば、サクラの頭を撫でていた。あと、頬が緩んでいるのが分かる。ドキドキもして、顔中心に全身が熱くなってきた。きっと、サクラのように顔が赤くなっているんだろうな。
「やれやれ。プールサイドでもイチャイチャしちゃって。お熱いこと。一紗、羽柴君、さっそくプールに入ろうよ。そうしないと熱中症になるかも」
「それは名案ね、青葉さん。大輝君に水着姿を見られていたから、私はもう体がかなり熱くなっているわ」
「プールが凄く気持ちいいだろうな!」
小泉さんと一紗、羽柴は笑いながら俺達のことを見ている。サクラと水着のことで褒め合っていたから、親しい友人でも何だか恥ずかしい。サクラも同じだろうか。サクラの顔の赤みがより強くなった。
「み、みんなでプールに入ろうか! その前に、ダイちゃんと羽柴君みたいに準備運動しないとね!」
大きな声で言うと、サクラは準備運動を始める。俺や羽柴とは違ってきびきびとした動きだ。そんなサクラを見習ってか、一紗と小泉さんも準備運動を始める。
俺は羽柴と一緒に準備運動をするサクラ達を見守る。3人とも美人でスクール水着姿が似合っているから、準備運動でも絵になるなぁ。また、遠くの方から3人を見ている男子達がちらほら見受けられた。
「よし、このくらいでいいかな」
「いいと思うわ、文香さん」
「十分だと思うよ、文香」
「うん! じゃあ、プールに入ろうか」
サクラのその言葉に、俺を含めてみんな頷いた。
俺達は近くから、ゆっくりとプールへ入る。
プールの水は冷たくて気持ちいい。プールサイドに来てから、ずっと直射日光を浴びているから凄く快感だ。
「冷たくて気持ちいいね、ダイちゃん!」
「そうだな」
リラックスした表情になっているサクラがとても可愛らしい。スマホを持ってきて、今のサクラを写真に撮りたいほどだ。
「あぁ、気持ちいいぜ!」
「火照った体が冷やされていくわ」
「気持ちいいよね、一紗、羽柴君! 晴れている日に入るプールは最高だね!」
一紗と小泉さん、羽柴も冷たいプールに入って癒されているようだ。
周りを見渡してみると、水をかけ合ったり、ビート板を使って遊んだり、泳ぎの競走をしたり、足だけ入れてプールサイドに座って話していたりと、それぞれが思い思いの時間を過ごしている。
「あぁ、大輝君と一緒にプールに入られて幸せだわ。私、入学してから一番、四鷹高校に進学して良かったって思っているわ!」
水着姿を褒めたとき以上にテンションが上がっている一紗。こういうことでも幸せを感じられるのは一紗らしい。
「大輝君と一緒にプールに入っているってことは……私達、混浴しているのね!」
「混浴って。温泉じゃないんだからさ、一紗」
小泉さんのツッコミに俺とサクラ、羽柴は声に出して笑う。プールでも混浴気分になれるところも一紗らしさを感じる。
あと、混浴という言葉を聞いて、一緒にお風呂に入っているときのサクラの姿を次々と思い浮かべてしまう。
「どうしたの? ダイちゃん。顔がちょっと赤いけど」
「ううん、何でもない。ただ、日差しが暑いってだけ」
「そっか。……そういえば、こうして一緒にプールに入るのは4年ぶりだね」
「……そうだな」
中学2年の4月から、今年の3月の終わり頃まで、サクラとはずっとわだかまりがあったからな。中2、中3、高1と同じクラスだったけど、こうした水泳の授業の自由時間で一緒に過ごすことはなかった。もちろん、この期間にプライベートでプールや海へ遊びに行くこともなくて。
「最後に入ったのは、中1の9月にあった水泳の授業の自由時間だったか」
「うん。中1のときは別々のクラスだったけど、隣同士だから体育は一緒だったもんね。一紗ちゃんと同じで、4年ぶりにダイちゃんと一緒に入れて幸せだよ。プールのある高校で良かった」
「……俺も」
「ふふっ、私の言葉に共感してくれる人がいて嬉しいわ」
嬉しそうにそう言うと、一紗はサクラの頭を撫でる。
「良かったね、文香。去年は授業前とか自由時間に速水君のことを見ていたから」
「そういえば、速水も桜井のことを見ることが多かったな」
「あのときもサクラのことが好きだからな。水着姿も良かったし」
「私も同じ感じ。あぁ、顔が熱くなってきた」
サクラの顔は見る見るうちに赤くなっていく。そして、サクラは両手を使って自分の顔にプールの水をかけた。
「冷たくて気持ちいい! みんなにもかけてあげるよ!」
そーれっ! とサクラは両手で大きくプールの水を掻いて、俺達に水をかけた。それが予想外の行動だったので、冷たい水が顔にかかった瞬間、「うわっ!」と大きめの声が出てしまった。ほぼ同じタイミングで、一紗と小泉さんの「きゃっ!」という声や羽柴の「おっ」という声が聞こえた。
俺は右手で顔にかかった水を拭う。
「気持ちよかったでしょ?」
そんなサクラの声が聞こえたので、そちらを向くと……サクラは悪戯な笑みを見せていた。何だか小さい頃のサクラを思い出すなぁ。
そういえば、昔は海やプールに遊びに行くと、サクラは今のようにいきなり水をかけてきたことが何度もあったな。時には和奏姉さんと結託していたことも。
「気持ちよかったよ、サクラ。昔みたいにいきなり水かけてきたな」
「4年ぶりに一緒に入ったからね。小さい頃みたいなことをしたくなっちゃって」
「ははっ」
いきなり冷たさを感じるのは懐かしい感覚だった。ただ、俺は小さい頃のサクラを知っているからまだしも、一紗達は大丈夫だろうか。
一紗達を見てみると……みんな、笑いながら顔についたプールの水を手で拭っていた。
「いきなりでビックリしたよ~」
「俺もビックリしたぜ。でも、冷たい水が気持ちいいな」
「羽柴君に同じよ」
どうやら、みんなサクラがいきなり水をかけたことを嫌に思っていないようだ。そんな3人を見て、サクラもほっとしているようだ。サクラもこんなことをして、一紗達がどう思うか不安だったのかもしれない。
「ただ、やられたからにはやり返さないとね~」
ニヤニヤしながらそう言うと、小泉さんは俺と一紗、羽柴のことを見る。
サクラ以外の4人は頷き合い。
『それっ!』
ほとんど同じタイミングで、サクラにめがけてプールの水をかけた!
「きゃっ!」
4人でかけた水がサクラの顔に直撃し、サクラは可愛らしい声を上げた。まるで犬のように、首を小刻みに横に振り、両手で顔に掛かった水を拭う。
「4人分だと凄いね。でも、冷たくて気持ちいい!」
そう言いサクラは両手を顔から離す。すると、サクラの楽しげな笑顔のお出まし。毎日お風呂に入っているから、濡れたサクラの顔は見慣れている。でも、日差しに照らされた今のサクラの顔は輝いていて。そのことに艶やかさを感じ、ドキッとした。
それからは5人でプールの水をかけ合う。サクラ達4人のはしゃぐ声や笑顔もあって、水をかけ合うだけでも凄く楽しい。
「楽しいね、ダイちゃん!」
「そうだな。サクラと4年ぶりにプールで遊べて楽しいよ」
「私も! プールで遊んでいると夏が来たって感じがするね」
「ああ」
「あと、週末や夏休みに、杏奈ちゃんや二乃ちゃんとかを誘って、みんなで海やプールで遊びたいね」
「遊びたいよな。杏奈と二乃ちゃんは学年が違うから、こういう形で遊べないし。できれば、夏休みまでに一度くらいは遊びたいな」
「うんっ!」
とびきりの笑顔で返事をすると、サクラはしっかりと首肯した。
サクラが引っ越してきてから中1までは、夏休みになるとサクラと一緒に海やプールへ遊びに行っていた。家族ぐるみの旅行中に海水浴をしたり、ホテルのプールで遊んだりする年もあって。今年の夏休みは、4年ぶりにサクラと一緒に海やプールで遊びたいな。もちろん、一紗や杏奈達と一緒に。
それからも、みんなで水をかけ合ったり、ビート板を使って遊んだり、小泉さんとクロールの速さを競ったりするなどして自由時間を楽しく過ごす。
サクラ達の笑顔を見ていると、今年の夏は今までで一番楽しくて思い出深くなりそうだと思うのであった。
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