サクラブストーリー

桜庭かなめ

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続編-ゴールデンウィーク編-

第30話『お風呂上がりのマッサージ』

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 お風呂から出たサクラと俺は、サクラの部屋にいる和奏姉さん達にお風呂が空いたことを伝える。
 いよいよ入浴できるからか、和奏姉さんと一紗はとても楽しそうな様子。杏奈も夕食直後とは違って不安そうな感じは一切ない。3人は1階へ降りていった。楽しい時間になれば何よりだ。
 サクラは俺の部屋でお風呂上がりのスキンケアを行なう。昔は見なかった光景なので、サクラも大人になったんだな……と自分の髪をドライヤーで乾かしながら思う。
 スキンケアを行なった後、俺はサクラの髪をドライヤーで乾かしてあげることに。昔よりも髪が長くなったけど、毛先までケアが行き届いている。サラサラで柔らかい髪が傷まないように丁寧に乾かしていった。

「これで大丈夫かな?」

 髪を乾かし終わったので確認を求めると、サクラは自分の髪を触る。すると、すぐにサクラは優しい笑顔になって。

「うん、大丈夫だよ。ありがとう。ダイちゃんは髪を乾かすのが本当に上手だよね」
「そう言ってもらえて嬉しいよ。和奏姉さんがここに住んでいた頃は、姉さんの髪を定期的に乾かしていたからかな」
「それはありそうだね」

 サクラは持ち前の可愛い笑顔でそう言った。
 互いの姿を見せ合ったこともあり、浴室では普段よりも緊張感があったけど、いつも通りの空気感に戻ったかな。

「ねえ、ダイちゃん。和奏ちゃん達がお風呂に出るまでの間……何をしようか? 昨日の夕方から、2人きりの時間ってあまりなかったし」
「そうだなぁ。……急に言われると思いつかないな。こうして2人きりでいられるだけで幸せっていうか」
「ダイちゃんらしいね。じゃあ、とりあえずは何もせずにのんびりしようか」
「そうだな」

 俺とサクラはベッドに寄りかかり、身を寄り添い合って座る。サクラは俺の左肩に頭を乗せて。
 お風呂から出てあまり時間が経っていないこともあり、寝間着を着ていてもサクラの温もりがはっきり伝わってくる。あと、少しの間でも体を見せ合ったからなのか、いつも以上に柔らかさも感じて。

「やっぱりいいなぁ。ダイちゃんとのんびりするの。もちろん、みんなと楽しく過ごすのも好きだけど」
「俺もだよ。和奏姉さん達のおかげで、サクラと2人きりの時間の良さを再確認できてる」
「そうだね」

 いずれは和奏姉さん達が戻ってくる。限られた時間だからこそ、サクラとの2人きりの時間を堪能したい。
 サクラの顔を見ると、柔和な笑顔をしているサクラと目が合う。そんなサクラに吸い込まれるようにして、俺からキスした。サクラの唇はいつも以上に温かくて柔らかい。
 唇と離すと、サクラは顔を赤くした状態で俺を見つめている。

「……2人きりのキスはダイちゃんに集中できるからいいね」
「ああ。それに、誰かに見られている恥ずかしさがないもんな」
「そうだね。……ところで、ダイちゃん。頼みたいことがあるんだけど……いいかな?」
「もちろん。どんなことだろう?」

 俺がそう問いかけると、サクラの顔の赤みがさらに強くなる。……どんなことを俺に頼もうとしているんだ?

「……マ、マッサージをしてほしいの」
「マッサージか。サクラが肩凝るなんて珍しいな。それとも脚とか?」
「う、ううん。肩とか脚じゃなくて……む、胸です。バストアップのマッサージです」
「……ば、ばすとあっぷまっさーじ?」
「訳が分からないって感じの反応だね」
「……肩や脚ならともかく、胸のマッサージをしてほしいって言われるとは思わなかったからさ」

 一瞬、夢じゃないかと思ったほどだ。バストアップマッサージを頼みたいから、さっき顔の赤みが強くなっていたのか。

「でも、どうして?」
「……ダイちゃん、前に大きい胸が好きだって言っていたでしょ? 私も今よりも大きな胸にしたいし。それで、昨日、和奏ちゃんと青葉ちゃんと一緒にお風呂に入ったとき、どうすれば胸が大きくなるか相談したの」

 昨日のお風呂の時間にそんなことを話していたのか。和奏姉さんは確定だけど、小泉さんもサクラよりは胸が大きそうだもんな。

「そうしたら、恋人のダイちゃんに揉んでもらうのがいいって言われて。マッサージの時間帯もお風呂上がりや寝る前がいいらしいの。だから、さっそく試したくて……」
「だから、俺に……バ、バストアップマッサージをしてほしいって頼んだと」
「そういうこと。……協力してくれる?」

 そう言って、上目遣いで俺を見てくるサクラ。こういう風に頼まれたら断るわけにはいかない。

「分かった。協力するよ」
「ありがとう、ダイちゃん」
「でも、俺は胸の方のマッサージの知識や経験はないぞ」
「そこは大丈夫。日課でマッサージをやっているから、ポイントは教えるよ」
「そ、そうか」

 もしかしたら、サクラが今の胸の大きさになれたのは成長期だけでなく、マッサージなど日頃の行いの賜物でもあるのかもしれない。
 サクラはゆっくりと立ち上がると、上の寝間着を脱いで下着姿となる。桃色の下着をつけているのか。とてもよく似合っているな。
 マッサージしやすいように、俺達は向かい合う形でクッションに座った。

「さっき全て見せたけど、触られるのは恥ずかしいから下着姿で」
「了解」

 その方が俺も理性が保ちやすそうで助かる。
 その後、サクラにマッサージのやり方について教えてもらう。実際に自分の手を使って動きを教えてくれるので分かりやすい。

「こんな感じ。どうかな?」
「分かりやすかったよ。こういうことは初めてだから、実際にやってみたら上手にできないかもしれないけど」
「最初から上手くできる人はそうそういないと思うよ。だから、その……よろしくお願いします」
「……こちらこそよろしくお願いします。じゃあ……触るよ」
「う、うん!」

 一度、深呼吸をして、俺は両手をサクラの胸部にそっと触れる。その瞬間にサクラは「んっ」と可愛らしく声を漏らして、体をビクつかせる。

「だ、大丈夫か?」
「大丈夫だよ。こういう感じで触られるのは初めてだから、変な声が出ちゃった」
「そうか。じゃあ……さっき教えてもらった通りにやってみる」
「……うん」

 俺はサクラに教えてもらった通りに両手を動かす。
 サクラの肌はスベスベしていて、結構温かくて。ボディーソープの甘い匂いもして。胸だから柔らかさも感じられて。たまにサクラの甘い声も聞こえるから、かなりドキドキしてしまう。ただ、今はサクラにお願いされたマッサージをしているだけだ。俺はサクラのマッサージ師なんだ。そんな自己暗示をかけながら、何とか理性を保たせる。

「サクラ。痛かったり、変な感じがしたりしたら遠慮なく言ってくれよ」
「ありがとう。とりあえず、今のところは大丈夫だよ。むしろ気持ちがいいくらい。これなら効果ありそう。ダイちゃん、初めてって言っていたけど結構上手だよ。本当にこれが初めてなの?」
「初めてに決まってるだろ。それに、これからもこんなことはサクラにしかしない」

 和奏姉さんが頼んでくる可能性はありそうだけど。
 サクラは優しい笑みを浮かべ、俺のことを見てくる。

「……嬉しい。これからも定期的にしてもらおうかな?」
「そのときは言ってくれ。俺は……一緒に住んでいる恋人なんだから。サクラの願いを叶えることに協力したいし」
「ありがとう。……それにしても、本当に上手だよ。勇気を出してダイちゃんに言ってみて正解だった」

 えへへっ、とサクラは赤くなった顔に嬉しそうな笑みを浮かべてくれる。初めてだし上手くできるか不安だったけど、満足そうで良かった。これでサクラのバストアップに少しでも役に立つのなら嬉しい。

『なかなかいい感じにしているのね』
『そ、そんなに大きな声で話したら、先輩方にバレてしまいますって』
『杏奈ちゃんも声大きいけどね。この時間だし、あたし達もいるから違うことをしていると思うけどなぁ』

 扉の向こうから一紗達の声が聞こえてくる。お風呂から上がったのか。時計を見ると俺達が部屋に戻ってから30分以上経っていた。

「いつの間にか時間が経っていたんだね」
「スキンケアや髪を乾かすこともしていたからなぁ」
「それじゃ時間の進みも早いわけだ。じゃあ、今回はこのくらいで。普段よりも短い時間だけど、ちゃんと効果が出そうな気がする」
「そう思えるようにできて良かったよ」

 俺が両手を離すと、サクラはすぐに上の寝間着を着る。
 よし、これで扉を開けても大丈夫そうだな。そう思ってゆっくり立ち上がり、部屋の扉を開けると……そこには寝間着を着た一紗達の姿が。姉さんは昨日と変わりないけど、一紗と杏奈の顔はお風呂上がりにしてはやけに赤い気がする。長く湯船に浸かったのかな。それとも、2人にはお湯が熱かったとか?

「3人ともおかえり。一紗と杏奈は顔が赤いけど、2人にはうちのお湯は熱かったか?」
「本当だ。2人とも顔赤い」

 気づけば、俺のすぐ横にサクラが立っている。

「あっ、いえ……とてもいい湯加減でしたよ。この顔の赤さは何と言いますか……」
「お取り込み中のところ、申し訳なか――」
「ちょ、ちょっと一紗先輩」

 杏奈は慌てた様子で一紗の口を右手で塞ぐ。

「お取り込み中? 何のことだ?」

 俺がそう言うと、一紗も杏奈もきょとんとした様子になる。
 一紗は自分の口を塞いでいる杏奈の右手を離す。

「だって、その……2人の会話を聞いていたら……キ、キスよりも先的な行為をおっぱじめているんじゃないかと思って」
「し、してないよそんなこと!」

 サクラは一紗と杏奈よりも顔を赤くして反論する。
 さっきまでのサクラとの会話を思い出すと……ああ、なるほど。

「声だけ聞いていたら、その……俺とサクラがそういうことをしていたんじゃないかと勘違いしても仕方ないか」
「……恥ずかしながら、あたしも一紗先輩のようなことを考えてしまいました」

 だから、扉を開けたとき、一紗と杏奈は顔がかなり赤くなっていたのか。和奏姉さんは違うことをしていたんじゃないかと思っていたようだけど。

「それで、実際は大輝とフミちゃんは何をしていたの?」
「……ダ、ダイちゃんに胸のマッサージをしてもらっていたんです」

 サクラがそう言うと、和奏姉さんは落ち着いた笑みを見せる。

「やっぱり。昨日のお風呂であたしと青葉ちゃんがアドバイスしたものね。胸を大きくするなら、恋人の大輝にマッサージしてもらうといいじゃないかって」
「はい。バストアップマッサージはお風呂上がりに効果があるといいますし、ダイちゃんと2人きりの時間を作れたので、さっそく試したいと思いまして」
「……そういうことだったのね」
「バストアップのマッサージでしたか……」

 一紗と杏奈の顔の赤みが薄れてゆく。
 サクラがしっかりと説明したことや、マッサージしようとしたきっかけが前日の和奏姉さんと小泉さんのアドバイスなのもあってか、一紗と杏奈は信じてくれたようだ。

「あたしから見れば、文香先輩の胸はそれなりにあっていいなと思えますが。目標にするのにいいと思いまして」
「そう言ってくれるのは嬉しいな。ただ、個人的には……もっと大きくなりたくて」
「そうですか。目標の大きさが自分から遠くなるかもしれないのは寂しいですが、応援します。……ちなみに、さっき一紗先輩と和奏さんの胸を見たんですけど……凄かったです。ご立派で」
「ありがとう。ただ、一紗ちゃんは本当に大きいよね。あたしよりあるもん」
「杏奈さんとお姉様にそう言われると嬉しいですね。お姉様は美しくて、杏奈さんは可愛い胸だったわ」
「……どうもです」

 杏奈は照れくさそうにそう言うと、右手を自分の胸に当てていた。
 それからは、俺は寝る直前まで、サクラ達と自分の部屋でアニメを観たりしながら過ごすのであった。
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