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続編-ゴールデンウィーク編-
第19話『デートからの帰り』
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観覧車を降りた俺達は、帰るために出口のゲートに向かって歩いていく。
ゲートの近くにお土産屋さんがあったので、パークランドを出る前に寄ることにした。そういえば、小さい頃に家族で行ったときにはこのお店に寄って、クッキーやキャンディーとかを買ってもらったなぁ。
「おっ、今でもクッキーとキャンディーって売っているんだ」
「そうだね。昔は親達に買ってもらったよね」
「そうだったな」
サクラも当時のことを覚えていたか。
クッキーの箱とキャンディーの袋を手に取る。パッケージのデザインは昔とは違うけど、中身も変わっているのだろうか。ちょっと気になる。
「俺、自分達へのお土産にクッキーとキャンディーを買うよ」
「分かった。……青葉ちゃんや羽柴君達に何かお土産を買っていく? あとは和奏ちゃんにも。これは旅行じゃなくてデートだし、一紗ちゃんと杏奈ちゃんはここにいたけどさ」
確かに、一緒にいることの多い4人のうちの2人がパークランドにいたからな。
あと、バイトをするために来た一紗は分からないけど、友達と一緒に遊びに来た杏奈はこのお土産屋さんで何か買っている可能性は高そうだ。
「そうだなぁ。朝からずっとパークランドにいたから、日帰り旅行的な感じもするよな。4人はオススメのアトラクションを教えてくれたし、そのお礼にクッキーとかキャンディーを買うのがいいかも」
「じゃあ、この6枚入りのパークランドクッキーを買おうか。それで、明日のお昼休みにみんなで1枚ずつ食べようよ」
「おっ、それはいいな。和奏姉さんにはキャンディーがいいか。姉さんはこのキャンディーが大好きだから」
「それいいね。あと、徹さんと優子さんにもクッキーを買おう。徹さんは招待券チケットをくれたし。あと、日々の感謝を込めて」
そう言うと、サクラは6枚入りのクッキーを2箱手に取る。
父さんが一日招待券チケットを渡してくれたことが全ての始まりだったし、母さんにも……こういうことを機に日々の感謝を伝えるのもいいだろう。
「分かった。2人からのお土産だから、俺の両親とみんなへのお土産は半分ずつ出すか」
「うん、そうしよう! でも、自分達のお土産は? 私も食べるから、それも半分ずつ出していいんだよ?」
「それは……俺に出させてほしい。ひさしぶりにサクラとパークランドで遊べて楽しかったから、そのお礼がしたい」
「……お礼がしたいのは私も一緒なんだけどな。でも、今回はダイちゃんの気持ちを受け入れることにするよ。ありがとう。家に帰ったら、一緒に食べようね」
「分かった」
サクラが納得してくれて良かった。
両親とみんなへのお土産代半分については、家に帰ってからサクラに払ってもらうことにしよう。俺がクッキーとキャンディーを購入した。
俺達はお土産屋さんを後にする。日の入りの時間も近いからか暗くなり始めていた。
「空も暗くなり始めてるね。……もう6時過ぎなんだ」
「そんな時間なんだ。1日ずっとここにいたんだな。パークランドにこんなに長くいたのは初めてじゃないか?」
「そうだね。……じゃあ、最後にゲートを出たところで写真を撮ろうか」
「それいいな」
ゲートを出て少し歩いたところで、サクラのスマホでパークランド最後の自撮り写真を撮った。
そして、俺達は帰路に就く。
パークランドに来る際にロープウェイの往復券を買っていたので、最寄りの清王パークランド駅まではロープウェイで向かうことに。
暗くなり始めたのもあって、周辺地域のビルや商業施設、マンションや住宅などの明かりがとても綺麗に見える。サクラも「綺麗だなぁ……」と呟きながら、午前中とは違う景色を楽しんでいるようだった。来たときにも思ったけど、路線バスでなく、ロープウェイにして正解だったな。
清王パークランド駅に到着し、俺達は都心方面に向かう電車が到着するホームに立つ。パークランドからの帰りの人が多いのか、ホームに着いたときには既に多くの人が立っていた。
電車が来るまでの間に両親に『7時半頃に帰る』というメッセージを送った。了解の旨の返事が届いたのでこれで大丈夫だろう。
ホームに到着してから数分ほどで電車に到着。
降車する人もいるけど、それよりも乗車する人の方が遥かに多い。そのため、座席に座ることはできなかった。俺達は乗った扉とは反対側の扉の近くに立つ。
「ホームにたくさん人がいたから覚悟していたけど、座れなかったな」
「しょうがないね。混んでいるわけじゃないし、全然大丈夫だよ。この電車は特急だから、乗り換える駅までスムーズに行けるしね」
「そうだな。……座れなくても、混んでいなければ通学や通勤に電車を使ってもいいと思えるな」
「そうだね。まあ、満員電車でも、ダイちゃんとくっつけるならいいって思えそう」
「……確かにそれは言えてる」
サクラと一緒なら満員電車での通学や通勤も頑張れそう。
理系なら東都科学大学、美術系なら日本美術大学が四鷹にあるけど、文系学部のある大学はないんだよな。だから、実家から大学の文系学部に通う場合は、電車通学は避けられない。和奏姉さんのように遠くにある大学に合格して、大学の近くに一人暮らしをするのもありか。
「ダイちゃん、どうしたの? 真剣な表情になって黙っちゃって」
「……少し先の未来予想図を頭に思い描いていた」
「電車通学とか通勤の話をしたから?」
「ああ。和奏姉さんみたいに遠くの大学に合格して、進学を機に一人暮らしをするのもありかなって思った。……いや、サクラと2人暮らしが正しいか」
今、一緒に暮らしているから、居住地が変わってもサクラと一緒に暮らしたいなと思う。
サクラは「ふふっ」と楽しそうに笑う。
「遠いところにある同じ大学ならね。もしくは、東都科学大学と日本美術大学みたいに徒歩で行けるほどに近い大学に合格できたら、進学を機に2人で暮らそうか。……そのときじゃなくても、いつかは2人で暮らしたいね」
「……そうだな」
サクラの今の言葉が甘美に響く。
サクラと2人での生活か。……想像しただけで凄く楽しそう。実際にそんな生活を送るのはいつになるのやら。
「話は変わるけど、今日は一日ずっとパークランドで遊んでいたから、こうして帰りの電車に乗っていると寂しい気分になるなぁ」
「そうだな。……この前、みんな映画に行ったときの帰りの電車でも、同じようなことを言っていたな」
「うん。楽しい場所や時間から離れる感じがして。特に小学生くらいまでは結構寂しくなっていたなぁ。家族でのお出かけや旅行でもそうだし、学校の遠足や修学旅行でも」
「小学生のときは特に、俺や友達と一緒に、遠足とか修学旅行を楽しんでいたもんな」
「うん。でも、修学旅行は家に帰れる安心感もちょっとあった」
「それ分かるな」
いつも寝ているベッドで寝るから、修学旅行から帰ってきた日の夜はよく眠れたっけ。
「寂しさはあるけど、ダイちゃんと帰る場所が同じなのが嬉しいな」
「俺もだよ。外で『またね』とか『バイバイ』って言って別れることがないのがいいなって思う。家に帰ったら、お出かけの時間はもちろん終わるけど、サクラとの時間は続くからさ。恋人になってからは、同じ場所に帰れる幸せさをより強く感じるようになった」
「私も付き合い始めてから強く思うようになったな。これが当たり前だとは思わずに、幸せや有り難さを感じられるようでありたいね」
「そうだな」
サクラの頭を優しく撫でると、サクラは柔らかな笑みを浮かべた。こんなに可愛らしい恋人と帰ってからも一緒にいられるなんて。本当に幸せ者だと思う。
それからはパークランドにいるときの撮影した写真を見ながら、電車の中の時間を過ごした。
電車の遅延や見合わせなどのトラブルもなく、無事に四鷹駅まで戻ることができた。その頃には真っ暗になっていて、弱く吹く風も肌寒い。だからか、駅からはサクラと腕を組んで歩いた。
デートが終わることの寂しさはあるけど、自宅が見えると凄く安心する。俺が玄関の扉を開けた。
「ただいま」
「ただいまです!」
「おかえり、大輝、文香ちゃん」
「2人ともおかえり~」
こうして、思い出がいっぱいできた遊園地デートは穏やかに幕を下ろした。それでも、サクラと一緒にいる時間は続いていく。
ゲートの近くにお土産屋さんがあったので、パークランドを出る前に寄ることにした。そういえば、小さい頃に家族で行ったときにはこのお店に寄って、クッキーやキャンディーとかを買ってもらったなぁ。
「おっ、今でもクッキーとキャンディーって売っているんだ」
「そうだね。昔は親達に買ってもらったよね」
「そうだったな」
サクラも当時のことを覚えていたか。
クッキーの箱とキャンディーの袋を手に取る。パッケージのデザインは昔とは違うけど、中身も変わっているのだろうか。ちょっと気になる。
「俺、自分達へのお土産にクッキーとキャンディーを買うよ」
「分かった。……青葉ちゃんや羽柴君達に何かお土産を買っていく? あとは和奏ちゃんにも。これは旅行じゃなくてデートだし、一紗ちゃんと杏奈ちゃんはここにいたけどさ」
確かに、一緒にいることの多い4人のうちの2人がパークランドにいたからな。
あと、バイトをするために来た一紗は分からないけど、友達と一緒に遊びに来た杏奈はこのお土産屋さんで何か買っている可能性は高そうだ。
「そうだなぁ。朝からずっとパークランドにいたから、日帰り旅行的な感じもするよな。4人はオススメのアトラクションを教えてくれたし、そのお礼にクッキーとかキャンディーを買うのがいいかも」
「じゃあ、この6枚入りのパークランドクッキーを買おうか。それで、明日のお昼休みにみんなで1枚ずつ食べようよ」
「おっ、それはいいな。和奏姉さんにはキャンディーがいいか。姉さんはこのキャンディーが大好きだから」
「それいいね。あと、徹さんと優子さんにもクッキーを買おう。徹さんは招待券チケットをくれたし。あと、日々の感謝を込めて」
そう言うと、サクラは6枚入りのクッキーを2箱手に取る。
父さんが一日招待券チケットを渡してくれたことが全ての始まりだったし、母さんにも……こういうことを機に日々の感謝を伝えるのもいいだろう。
「分かった。2人からのお土産だから、俺の両親とみんなへのお土産は半分ずつ出すか」
「うん、そうしよう! でも、自分達のお土産は? 私も食べるから、それも半分ずつ出していいんだよ?」
「それは……俺に出させてほしい。ひさしぶりにサクラとパークランドで遊べて楽しかったから、そのお礼がしたい」
「……お礼がしたいのは私も一緒なんだけどな。でも、今回はダイちゃんの気持ちを受け入れることにするよ。ありがとう。家に帰ったら、一緒に食べようね」
「分かった」
サクラが納得してくれて良かった。
両親とみんなへのお土産代半分については、家に帰ってからサクラに払ってもらうことにしよう。俺がクッキーとキャンディーを購入した。
俺達はお土産屋さんを後にする。日の入りの時間も近いからか暗くなり始めていた。
「空も暗くなり始めてるね。……もう6時過ぎなんだ」
「そんな時間なんだ。1日ずっとここにいたんだな。パークランドにこんなに長くいたのは初めてじゃないか?」
「そうだね。……じゃあ、最後にゲートを出たところで写真を撮ろうか」
「それいいな」
ゲートを出て少し歩いたところで、サクラのスマホでパークランド最後の自撮り写真を撮った。
そして、俺達は帰路に就く。
パークランドに来る際にロープウェイの往復券を買っていたので、最寄りの清王パークランド駅まではロープウェイで向かうことに。
暗くなり始めたのもあって、周辺地域のビルや商業施設、マンションや住宅などの明かりがとても綺麗に見える。サクラも「綺麗だなぁ……」と呟きながら、午前中とは違う景色を楽しんでいるようだった。来たときにも思ったけど、路線バスでなく、ロープウェイにして正解だったな。
清王パークランド駅に到着し、俺達は都心方面に向かう電車が到着するホームに立つ。パークランドからの帰りの人が多いのか、ホームに着いたときには既に多くの人が立っていた。
電車が来るまでの間に両親に『7時半頃に帰る』というメッセージを送った。了解の旨の返事が届いたのでこれで大丈夫だろう。
ホームに到着してから数分ほどで電車に到着。
降車する人もいるけど、それよりも乗車する人の方が遥かに多い。そのため、座席に座ることはできなかった。俺達は乗った扉とは反対側の扉の近くに立つ。
「ホームにたくさん人がいたから覚悟していたけど、座れなかったな」
「しょうがないね。混んでいるわけじゃないし、全然大丈夫だよ。この電車は特急だから、乗り換える駅までスムーズに行けるしね」
「そうだな。……座れなくても、混んでいなければ通学や通勤に電車を使ってもいいと思えるな」
「そうだね。まあ、満員電車でも、ダイちゃんとくっつけるならいいって思えそう」
「……確かにそれは言えてる」
サクラと一緒なら満員電車での通学や通勤も頑張れそう。
理系なら東都科学大学、美術系なら日本美術大学が四鷹にあるけど、文系学部のある大学はないんだよな。だから、実家から大学の文系学部に通う場合は、電車通学は避けられない。和奏姉さんのように遠くにある大学に合格して、大学の近くに一人暮らしをするのもありか。
「ダイちゃん、どうしたの? 真剣な表情になって黙っちゃって」
「……少し先の未来予想図を頭に思い描いていた」
「電車通学とか通勤の話をしたから?」
「ああ。和奏姉さんみたいに遠くの大学に合格して、進学を機に一人暮らしをするのもありかなって思った。……いや、サクラと2人暮らしが正しいか」
今、一緒に暮らしているから、居住地が変わってもサクラと一緒に暮らしたいなと思う。
サクラは「ふふっ」と楽しそうに笑う。
「遠いところにある同じ大学ならね。もしくは、東都科学大学と日本美術大学みたいに徒歩で行けるほどに近い大学に合格できたら、進学を機に2人で暮らそうか。……そのときじゃなくても、いつかは2人で暮らしたいね」
「……そうだな」
サクラの今の言葉が甘美に響く。
サクラと2人での生活か。……想像しただけで凄く楽しそう。実際にそんな生活を送るのはいつになるのやら。
「話は変わるけど、今日は一日ずっとパークランドで遊んでいたから、こうして帰りの電車に乗っていると寂しい気分になるなぁ」
「そうだな。……この前、みんな映画に行ったときの帰りの電車でも、同じようなことを言っていたな」
「うん。楽しい場所や時間から離れる感じがして。特に小学生くらいまでは結構寂しくなっていたなぁ。家族でのお出かけや旅行でもそうだし、学校の遠足や修学旅行でも」
「小学生のときは特に、俺や友達と一緒に、遠足とか修学旅行を楽しんでいたもんな」
「うん。でも、修学旅行は家に帰れる安心感もちょっとあった」
「それ分かるな」
いつも寝ているベッドで寝るから、修学旅行から帰ってきた日の夜はよく眠れたっけ。
「寂しさはあるけど、ダイちゃんと帰る場所が同じなのが嬉しいな」
「俺もだよ。外で『またね』とか『バイバイ』って言って別れることがないのがいいなって思う。家に帰ったら、お出かけの時間はもちろん終わるけど、サクラとの時間は続くからさ。恋人になってからは、同じ場所に帰れる幸せさをより強く感じるようになった」
「私も付き合い始めてから強く思うようになったな。これが当たり前だとは思わずに、幸せや有り難さを感じられるようでありたいね」
「そうだな」
サクラの頭を優しく撫でると、サクラは柔らかな笑みを浮かべた。こんなに可愛らしい恋人と帰ってからも一緒にいられるなんて。本当に幸せ者だと思う。
それからはパークランドにいるときの撮影した写真を見ながら、電車の中の時間を過ごした。
電車の遅延や見合わせなどのトラブルもなく、無事に四鷹駅まで戻ることができた。その頃には真っ暗になっていて、弱く吹く風も肌寒い。だからか、駅からはサクラと腕を組んで歩いた。
デートが終わることの寂しさはあるけど、自宅が見えると凄く安心する。俺が玄関の扉を開けた。
「ただいま」
「ただいまです!」
「おかえり、大輝、文香ちゃん」
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