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続編-ゴールデンウィーク編-
第15話『コーヒーカップ』
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お化け屋敷から出た後、サクラが「叫びまくって疲れちゃった」と言ったので、俺達は近くにあるベンチに腰を下ろした。疲れが結構あるのか、ベンチに座るとすぐにサクラは俺に体を寄せてきた。
「サクラ、大丈夫か?」
「うん。ジェットコースターとお化け屋敷で叫びまくって疲れただけだから。ごめんね」
「気にするな。疲れたときはゆっくり休もう。デートなんだから、俺達のペースで廻っていこう」
そう言ってサクラの頭を優しく撫でると、サクラは柔和な笑顔を見せてくれる。
「ありがとう。それにしても、お化け屋敷の幽霊……一紗ちゃんが特別だったんだね。一紗ちゃん以外はみんな怖かったよ……」
そうは言うけど、サクラは一紗が扮した幽霊にも正体が一紗だと知るまでは怖がっていたような。それを言ったら不機嫌になってしまうかもしれないので、心に留めておこう。
「それでも、ダイちゃんや友達とくっついて歩くのが好きだから、お化け屋敷に入るのが嫌だとは思わないんだよね」
「そうか。俺もサクラがくっついてくれて嬉しかったよ」
「そう思ってくれて良かった。頼りになったよ、ダイちゃん。ありがとう」
ちゅっ、とサクラは俺の頬にキスしてきた。不意打ちのキスだし、サクラと目が合うと凄く可愛い笑顔を見せてくれる。だから、かなりドキッとして。こちらに好奇な視線を向けてくる人もいるから、体が段々と熱くなってきた。
学校の教室ならまだしも、屋外の人の多い場所でキスするとは。サクラにとって、お化け屋敷では俺の存在がとても大きかったのだろう。嫌ではないと本人も言っているし、次からも遊園地に来たときにはお化け屋敷へ足を運びたい。
「それにしても、幽霊姿の一紗ちゃんはとても綺麗だったね」
「ああ。あれならSNSで話題になって、入口前に列ができるのも納得だよな」
「うん。あと、デート中でも友達に会うと嬉しくなるよね」
「そうだな。ここは人気の遊園地だから、もしかしたらこの後も誰か知り合いに会うかもしれないな」
「ありそうな気がする」
サクラは楽しげにそう言った。
高校ならまだしも、中学時代の知り合いと会ったら驚かれそうだ。中2の始業式の日から卒業まで、俺とサクラはわだかまりがあったままだったし。ただ、中2のあの日までは幼馴染として一緒にいることが多く、遊んだりもしていた。だから、案外『やっぱり、仲直りして付き合うことになったんだ』みたいなことを言われて納得されるかも。
「ダイちゃんに寄り添っていたら、疲れが取れてきたよ」
「良かった。今は……11時40分か。もう一つくらいアトラクションに行ってから、お昼ご飯を食べる形にするか」
「それがいいね。次はどこにしようか?」
「そうだなぁ。遊園地自体がひさしぶりだから、定番のアトラクションに行きたいって思ってる。サクラはどこへ行きたい?」
「私は定番がいいなって思ってる。……あれも遊園地の定番だよね」
サクラの指さす先にあったのはコーヒーカップ。確かに定番だ。あと、羽柴がコーヒーカップをオススメしていたな。
今はアトラクション全体が回転しており、「あははっ!」と楽しそうな声が聞こえてくる。
「コーヒーカップか。定番だな。ジェットコースターやお化け屋敷ほどじゃないけど、パークランドに来ると、コーヒーカップに乗ることが多かったよな」
「結構乗ったよね。桜井家と速水家で分かれたり、大人と子供で分かれたり」
「そうだったな。4人くらい乗れるもんね」
「そういえば、ダイちゃんと和奏ちゃんと一緒に乗ったとき、和奏ちゃんが一緒にハンドルをたくさん回したから、ダイちゃんが気分悪くなったことがあったよね」
「……リバースしたよ」
ジェットコースター失禁事件ほどではないけど、コーヒーカップリバース事件もパークランドでは指折りの負の思い出である。
俺がリバースしたときのことを思い出しているのか、サクラは苦笑いをしている。
「いやぁ、あのときはどこまで速くカップを回転させられるのか興味があって、和奏ちゃんと一緒にハンドルを回しまくったんだよね。ハンドルを回すことが楽しかったからか、和奏ちゃんと私は平気だったけど、ダイちゃんはシートの上でぐったりしていたよね」
「回転が凄く速いから、かなり気持ち悪くなってさ。昼ご飯を食べた後に乗ったからか、結構な量をリバースした記憶がある」
「近くのゴミ箱にリバースしていたね。そのときは和奏ちゃんと一緒に謝ったな。私達が悪かったのに、ダイちゃんは全然怒らなかったよね」
「まあ、ちゃんと心から謝っているのが伝わったからな」
それが一番の理由だけど、リバースするほどに気持ち悪かったから、そもそも怒る気力がなかったというのもある。
「昔のことを思い出したら、コーヒーカップに乗りたくなってきたな」
「そうだね。行こうか、ダイちゃん!」
「ああ」
俺はサクラに手を引かれる形で、近くにあるコーヒーカップへ向かう。
ジェットコースターやお化け屋敷ほどではないが、定番アトラクションだけあって何人か並んでいた。コーヒーカップの全景をスマホで撮影し、列の最後尾に並ぶ。
ただ、俺達が並んだ直後に前の番が終了。コーヒーカップの形をしたライドが複数あるため、俺達はほとんど列に並ばずに乗ることができた。もちろん、俺達2人で1つカップを使う。
「すぐに座れてラッキーだったね」
「ああ。遊園地で待つのは嫌いじゃないけど、すぐに乗れるのは嬉しいよな」
「そうだね!」
周りを見てみると、俺達のようなカップルもちらほら見受けられるけど、小さな子供連れの家族が結構多い。一度にたくさんの人が遊べ、並ぶ時間が短いからだろうか。
サクラはカップの中央に設置されているハンドルを握る。一緒に乗ると、サクラが積極的に回すことが多かったので、今のサクラを見ていると懐かしい気分になるな。
「どうしたの? 優しい笑顔になって」
「昔から、サクラはハンドルをよく握っていたなって。それに、カップのデザインとかも全然変わっていないから懐かしくてさ」
「確かに変わらないね。ダイちゃんも私も大きくなったから、昔よりもカップが小さく感じるよ」
「そうだな」
変わったのは乗っている俺達の体の大きさだけか。あとは……俺達の関係が幼馴染だけでなく、恋人でもあることくらいかな。
『それでは、スタートです!』
女性によるアナウンスが流れた後、アトラクション全体がゆっくりと回り始めた。
いよいよ始まったかと、周りから子供達のはしゃいだ声が聞こえてくる。昔はスタートすると、サクラと和奏姉さんが同じようにはしゃいでいたっけ。そんなことを思いながらサクラを見ると、サクラは楽しげな笑みを浮かべていた。
「始まったね。ダイちゃん」
「ああ」
スタートしたばかりなのか。それとも、さっきリバースした昔話をしたからなのか。サクラはハンドルを握っていても回そうとはしない。
「最初にジェットコースターに乗ったからか、結構ゆっくりと回っているように感じるな」
「あははっ、さすがにジェットコースターに比べたら穏やかだよ。ハンドルも全然回していないし」
「そうか。じゃあ、そろそろハンドル回そうぜ。高校生になった今なら結構回せるんじゃないか?」
「そうかもね。楽しそう。でも、たくさん回したら、昔みたいにリバースしちゃうんじゃない?」
心配そうに俺を見てくるサクラ。まあ、さっきあんな昔話をしたら、リバース再来を危惧するのも無理はない。
「お昼ご飯をまだ食べていないから、リバースはしないと思う。何かあったら、俺の責任ってことで。サクラは大丈夫か?」
「フラフラしたことはたまにあるけど、気持ち悪くなってリバースしたことは一度もないよ」
「そうか。じゃあ、回してみるか!」
「うんっ!」
俺もカップのハンドルを握り、サクラと一緒にハンドルを勢い良く回し始めた。それに比例するかのように、カップの回転する速度がどんどん増していく。
「結構速くなってきたな!」
「そうだねっ! 勢いもついてきたよ! スリルがあって楽しい!」
あははっ! とサクラは満面の笑みを浮かべている。その笑顔も昔と全然変わっていなくて。
楽しそうなサクラの顔を見ていると、もっとハンドルを回してしまう。気づけば、ハンドルを握っていないと、シートに倒れてしまいそうなくらいに勢いがついている。周りの景色もよく見えなくなってきた。まるで、サクラと2人きりの世界にいるようだ。
「ダイちゃん、気分はどう?」
「全然気持ち悪くなってない」
「良かった。じゃあ、まだまだハンドル回していこう!」
「おう!」
その後も、アトラクション全体の回転が終わるまで、俺はサクラと一緒にハンドルをひたすら回し続けるのであった。たくさん笑い合いながら。
「サクラ、大丈夫か?」
「うん。ジェットコースターとお化け屋敷で叫びまくって疲れただけだから。ごめんね」
「気にするな。疲れたときはゆっくり休もう。デートなんだから、俺達のペースで廻っていこう」
そう言ってサクラの頭を優しく撫でると、サクラは柔和な笑顔を見せてくれる。
「ありがとう。それにしても、お化け屋敷の幽霊……一紗ちゃんが特別だったんだね。一紗ちゃん以外はみんな怖かったよ……」
そうは言うけど、サクラは一紗が扮した幽霊にも正体が一紗だと知るまでは怖がっていたような。それを言ったら不機嫌になってしまうかもしれないので、心に留めておこう。
「それでも、ダイちゃんや友達とくっついて歩くのが好きだから、お化け屋敷に入るのが嫌だとは思わないんだよね」
「そうか。俺もサクラがくっついてくれて嬉しかったよ」
「そう思ってくれて良かった。頼りになったよ、ダイちゃん。ありがとう」
ちゅっ、とサクラは俺の頬にキスしてきた。不意打ちのキスだし、サクラと目が合うと凄く可愛い笑顔を見せてくれる。だから、かなりドキッとして。こちらに好奇な視線を向けてくる人もいるから、体が段々と熱くなってきた。
学校の教室ならまだしも、屋外の人の多い場所でキスするとは。サクラにとって、お化け屋敷では俺の存在がとても大きかったのだろう。嫌ではないと本人も言っているし、次からも遊園地に来たときにはお化け屋敷へ足を運びたい。
「それにしても、幽霊姿の一紗ちゃんはとても綺麗だったね」
「ああ。あれならSNSで話題になって、入口前に列ができるのも納得だよな」
「うん。あと、デート中でも友達に会うと嬉しくなるよね」
「そうだな。ここは人気の遊園地だから、もしかしたらこの後も誰か知り合いに会うかもしれないな」
「ありそうな気がする」
サクラは楽しげにそう言った。
高校ならまだしも、中学時代の知り合いと会ったら驚かれそうだ。中2の始業式の日から卒業まで、俺とサクラはわだかまりがあったままだったし。ただ、中2のあの日までは幼馴染として一緒にいることが多く、遊んだりもしていた。だから、案外『やっぱり、仲直りして付き合うことになったんだ』みたいなことを言われて納得されるかも。
「ダイちゃんに寄り添っていたら、疲れが取れてきたよ」
「良かった。今は……11時40分か。もう一つくらいアトラクションに行ってから、お昼ご飯を食べる形にするか」
「それがいいね。次はどこにしようか?」
「そうだなぁ。遊園地自体がひさしぶりだから、定番のアトラクションに行きたいって思ってる。サクラはどこへ行きたい?」
「私は定番がいいなって思ってる。……あれも遊園地の定番だよね」
サクラの指さす先にあったのはコーヒーカップ。確かに定番だ。あと、羽柴がコーヒーカップをオススメしていたな。
今はアトラクション全体が回転しており、「あははっ!」と楽しそうな声が聞こえてくる。
「コーヒーカップか。定番だな。ジェットコースターやお化け屋敷ほどじゃないけど、パークランドに来ると、コーヒーカップに乗ることが多かったよな」
「結構乗ったよね。桜井家と速水家で分かれたり、大人と子供で分かれたり」
「そうだったな。4人くらい乗れるもんね」
「そういえば、ダイちゃんと和奏ちゃんと一緒に乗ったとき、和奏ちゃんが一緒にハンドルをたくさん回したから、ダイちゃんが気分悪くなったことがあったよね」
「……リバースしたよ」
ジェットコースター失禁事件ほどではないけど、コーヒーカップリバース事件もパークランドでは指折りの負の思い出である。
俺がリバースしたときのことを思い出しているのか、サクラは苦笑いをしている。
「いやぁ、あのときはどこまで速くカップを回転させられるのか興味があって、和奏ちゃんと一緒にハンドルを回しまくったんだよね。ハンドルを回すことが楽しかったからか、和奏ちゃんと私は平気だったけど、ダイちゃんはシートの上でぐったりしていたよね」
「回転が凄く速いから、かなり気持ち悪くなってさ。昼ご飯を食べた後に乗ったからか、結構な量をリバースした記憶がある」
「近くのゴミ箱にリバースしていたね。そのときは和奏ちゃんと一緒に謝ったな。私達が悪かったのに、ダイちゃんは全然怒らなかったよね」
「まあ、ちゃんと心から謝っているのが伝わったからな」
それが一番の理由だけど、リバースするほどに気持ち悪かったから、そもそも怒る気力がなかったというのもある。
「昔のことを思い出したら、コーヒーカップに乗りたくなってきたな」
「そうだね。行こうか、ダイちゃん!」
「ああ」
俺はサクラに手を引かれる形で、近くにあるコーヒーカップへ向かう。
ジェットコースターやお化け屋敷ほどではないが、定番アトラクションだけあって何人か並んでいた。コーヒーカップの全景をスマホで撮影し、列の最後尾に並ぶ。
ただ、俺達が並んだ直後に前の番が終了。コーヒーカップの形をしたライドが複数あるため、俺達はほとんど列に並ばずに乗ることができた。もちろん、俺達2人で1つカップを使う。
「すぐに座れてラッキーだったね」
「ああ。遊園地で待つのは嫌いじゃないけど、すぐに乗れるのは嬉しいよな」
「そうだね!」
周りを見てみると、俺達のようなカップルもちらほら見受けられるけど、小さな子供連れの家族が結構多い。一度にたくさんの人が遊べ、並ぶ時間が短いからだろうか。
サクラはカップの中央に設置されているハンドルを握る。一緒に乗ると、サクラが積極的に回すことが多かったので、今のサクラを見ていると懐かしい気分になるな。
「どうしたの? 優しい笑顔になって」
「昔から、サクラはハンドルをよく握っていたなって。それに、カップのデザインとかも全然変わっていないから懐かしくてさ」
「確かに変わらないね。ダイちゃんも私も大きくなったから、昔よりもカップが小さく感じるよ」
「そうだな」
変わったのは乗っている俺達の体の大きさだけか。あとは……俺達の関係が幼馴染だけでなく、恋人でもあることくらいかな。
『それでは、スタートです!』
女性によるアナウンスが流れた後、アトラクション全体がゆっくりと回り始めた。
いよいよ始まったかと、周りから子供達のはしゃいだ声が聞こえてくる。昔はスタートすると、サクラと和奏姉さんが同じようにはしゃいでいたっけ。そんなことを思いながらサクラを見ると、サクラは楽しげな笑みを浮かべていた。
「始まったね。ダイちゃん」
「ああ」
スタートしたばかりなのか。それとも、さっきリバースした昔話をしたからなのか。サクラはハンドルを握っていても回そうとはしない。
「最初にジェットコースターに乗ったからか、結構ゆっくりと回っているように感じるな」
「あははっ、さすがにジェットコースターに比べたら穏やかだよ。ハンドルも全然回していないし」
「そうか。じゃあ、そろそろハンドル回そうぜ。高校生になった今なら結構回せるんじゃないか?」
「そうかもね。楽しそう。でも、たくさん回したら、昔みたいにリバースしちゃうんじゃない?」
心配そうに俺を見てくるサクラ。まあ、さっきあんな昔話をしたら、リバース再来を危惧するのも無理はない。
「お昼ご飯をまだ食べていないから、リバースはしないと思う。何かあったら、俺の責任ってことで。サクラは大丈夫か?」
「フラフラしたことはたまにあるけど、気持ち悪くなってリバースしたことは一度もないよ」
「そうか。じゃあ、回してみるか!」
「うんっ!」
俺もカップのハンドルを握り、サクラと一緒にハンドルを勢い良く回し始めた。それに比例するかのように、カップの回転する速度がどんどん増していく。
「結構速くなってきたな!」
「そうだねっ! 勢いもついてきたよ! スリルがあって楽しい!」
あははっ! とサクラは満面の笑みを浮かべている。その笑顔も昔と全然変わっていなくて。
楽しそうなサクラの顔を見ていると、もっとハンドルを回してしまう。気づけば、ハンドルを握っていないと、シートに倒れてしまいそうなくらいに勢いがついている。周りの景色もよく見えなくなってきた。まるで、サクラと2人きりの世界にいるようだ。
「ダイちゃん、気分はどう?」
「全然気持ち悪くなってない」
「良かった。じゃあ、まだまだハンドル回していこう!」
「おう!」
その後も、アトラクション全体の回転が終わるまで、俺はサクラと一緒にハンドルをひたすら回し続けるのであった。たくさん笑い合いながら。
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