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特別編-入れ替わりの夏-
第1話『プレ・ハネムーン』
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8月24日、土曜日。
今日から27日までの4日間、俺は彩花と一緒にリゾートホテルへと旅行に行く。
2週間ほど前、俺は彩花と付き合うことを決断し、彩花の荷物運びを兼ねて彼女の実家へと訪ねた。そのときに彩花のお父様である浩樹さんと会い、宮原家からも俺と彩花が付き合うことを了承してもらった。
ただ、浩樹さんは春に彩花が俺の部屋で住み始めた段階で、彩花を俺と結婚させる気満々であり、先日の実家訪問でそれが決定的になったと喜んでいた。
結婚を前提として付き合い始めたことを理由に、浩樹さんから俺と彩花に3泊4日の旅行をプレゼントしてくれたのだ。浩樹さん曰く、探していたらたまたま今日から4日間という日程で部屋が空いているのを見つけたとのこと。
旅行の話を初めて聞いたときは戸惑ったけど、せっかくのご厚意を無駄にはしたくないし、何よりも彩花との楽しい夏の思い出を作りたいと思って、有り難く旅行に行くことにした。
今日の天気は快晴。とても暑いけれど、泊まる予定のリゾートホテルには海とプールがあるそうだし、絶好の旅行日和だと思う。
月原駅からはリゾートホテルの最寄り駅までは、在来線と特急列車に乗って3時間ちょっと。往復の交通費まで浩樹さんが出してくれるなんて有り難い限り。
正午過ぎ。俺と彩花はリゾートホテルの最寄り駅に向かう特急列車に乗る。これで最寄り駅までゆったりとしたまま行くことができる。
彩花は窓側、俺は通路側に座る。
「直人先輩、今日という日を楽しみにしていました。直人先輩との……ハネムーン」
「ハネムーン、って俺達はまだ結婚してないよ」
「先輩と私の仲なんですから、ハネムーンも同然じゃないですか。それとも……私と結婚する気、ないんですか?」
彩花は潤ませた眼で俺のことを見つめてくる。
「そんなわけないよ。ただ、その……ハネムーンはちゃんとハネムーンとして行きたいなと思って」
「なるほど。では、今回の旅行はプレ・ハネムーンということで!」
笑顔で彩花はそう言うけど、プレ・ハネムーンって何なんだろう。普通に夏休みの旅行でいい気がするけど。
でも、彩花は俺と付き合うことになってとても嬉しいんだろう。しかも、結婚を視野に入れて。ちょっとしたハネムーン気分ということで、プレ・ハネムーンと言っているのかもしれない。
「しっかし、お盆過ぎとはいえ夏休み中だ。リゾートホテルを予約することができたよな。しかも、4日間」
調べてみたら、結構人気があるリゾートホテルのようだし。ホテルの近くには観光スポットがあるそうなので、4日間でも飽きずに楽しめるだろう。
「たまたま空いていたそうです。お父さん、昔からそういう運がありますからね」
「そうなんだ」
「今日から4日間、直人先輩と2人で海やプールで遊んで、美味しい食事を楽しんで、お部屋ではゆっくりとえっちなことをして……」
きゃっ、と彩花は1人で盛り上がっている。プレ・ハネムーンだから、そういうことも考えてしまうんだろうな。
「しかし、海やプールで遊んでしまったら、夜に体力が持ちますかね。特に直人先輩は大丈夫ですか? 病み上がりですけど」
「大丈夫だとは思うけれど、無理しないようにするよ」
これまで色々とあって、2度入院していたからなぁ。2回目の入院を終えてから1ヶ月ほど経ったから、体力の方も大分戻ってきたけど。
「直人先輩。今日のために新しい水着を買ってきたので楽しみにしていてくださいね」
「……きっと、可愛いんだろうな」
彩花は可愛いからどんな水着を着ても似合いそうだ。新しい水着か。どんな水着なのか楽しみになってきた。
「もう、先輩ったら。先輩の要望であれば、何も着なくてもいいのですが……」
「……それは部屋の中で俺だけに見せてくれればいいよ。というか、他の人間には絶対に見せるんじゃない」
俺がそう言うと、彩花は嬉しそうに笑ってくる。
「ふふっ、直人先輩。私と付き合ってから独占欲が強くなってませんか?」
「手錠を掛けるような子に言われたくないよ」
俺がいなくなると不安で仕方なかった、という事情を知っている今なら可愛いと思えるけれど、何も知らなかったあの当時は恐怖でしかなかったんだぞ。
というか、人前で裸なんて見せちゃダメでしょう。女湯以外では。きっと、彩花は冗談で言ったんだと思うけど。
「……あのときは直人先輩に側にいてほしかったからです。でも、先輩さえ私を束縛したいなら、お部屋で私のことを縛ってもいいんですよ?」
彩花に耳元でそう囁かれたので、全身に震えが。
「お前、まさか手錠を持ってきているのか?」
逆に、海やプールでの俺の様子によっては、俺を部屋で束縛しようとしているんじゃないだろうか。海やプールには水着姿の女性も多いから。
「嘘ですよ。手錠はもう捨てました。それに、他の女性に少しは視線が移っても、最後はきちんと私の所に帰ってきてくれると信じていますから」
「そっか」
「いや、でも直人先輩はかっこいいですから、周りの女性が直人先輩に惹かれて近寄ってくるかもしれません。それなら……」
と、出会った頃に何度か見た恐ろしい笑みを彩花は見せる。それなら、手錠を捨てずに持ってくれば良かった、って言いたそうだな。
「大丈夫だよ。俺は彩花の彼氏なんだし。それに、こうして彩花がずっと一緒にいればいいと思う。プレでもハネムーンなんだろう?」
彩花の右手をぎゅっと掴む。彼女の手はとても温かい。
すると、彩花は嬉しそうな表情をして、
「そうですよね。直人先輩は私の彼氏なんですもんね。心配する必要なんてないんですよね」
ちゅっ、とキスしてきた。車両の中には結構人がいるし、誰かに見られちゃったんじゃないかな。
「でも、旅行中もできるだけ私のことを見てほしい」
「……もちろんだよ」
こんなにも可愛い彼女のことを見ないわけがないだろう。
そういえば、彩花と旅行をするのは初めてじゃないけど、2人きりというのは初めてなんだよな。この4日間、大いに楽しむことにしよう。
今日から27日までの4日間、俺は彩花と一緒にリゾートホテルへと旅行に行く。
2週間ほど前、俺は彩花と付き合うことを決断し、彩花の荷物運びを兼ねて彼女の実家へと訪ねた。そのときに彩花のお父様である浩樹さんと会い、宮原家からも俺と彩花が付き合うことを了承してもらった。
ただ、浩樹さんは春に彩花が俺の部屋で住み始めた段階で、彩花を俺と結婚させる気満々であり、先日の実家訪問でそれが決定的になったと喜んでいた。
結婚を前提として付き合い始めたことを理由に、浩樹さんから俺と彩花に3泊4日の旅行をプレゼントしてくれたのだ。浩樹さん曰く、探していたらたまたま今日から4日間という日程で部屋が空いているのを見つけたとのこと。
旅行の話を初めて聞いたときは戸惑ったけど、せっかくのご厚意を無駄にはしたくないし、何よりも彩花との楽しい夏の思い出を作りたいと思って、有り難く旅行に行くことにした。
今日の天気は快晴。とても暑いけれど、泊まる予定のリゾートホテルには海とプールがあるそうだし、絶好の旅行日和だと思う。
月原駅からはリゾートホテルの最寄り駅までは、在来線と特急列車に乗って3時間ちょっと。往復の交通費まで浩樹さんが出してくれるなんて有り難い限り。
正午過ぎ。俺と彩花はリゾートホテルの最寄り駅に向かう特急列車に乗る。これで最寄り駅までゆったりとしたまま行くことができる。
彩花は窓側、俺は通路側に座る。
「直人先輩、今日という日を楽しみにしていました。直人先輩との……ハネムーン」
「ハネムーン、って俺達はまだ結婚してないよ」
「先輩と私の仲なんですから、ハネムーンも同然じゃないですか。それとも……私と結婚する気、ないんですか?」
彩花は潤ませた眼で俺のことを見つめてくる。
「そんなわけないよ。ただ、その……ハネムーンはちゃんとハネムーンとして行きたいなと思って」
「なるほど。では、今回の旅行はプレ・ハネムーンということで!」
笑顔で彩花はそう言うけど、プレ・ハネムーンって何なんだろう。普通に夏休みの旅行でいい気がするけど。
でも、彩花は俺と付き合うことになってとても嬉しいんだろう。しかも、結婚を視野に入れて。ちょっとしたハネムーン気分ということで、プレ・ハネムーンと言っているのかもしれない。
「しっかし、お盆過ぎとはいえ夏休み中だ。リゾートホテルを予約することができたよな。しかも、4日間」
調べてみたら、結構人気があるリゾートホテルのようだし。ホテルの近くには観光スポットがあるそうなので、4日間でも飽きずに楽しめるだろう。
「たまたま空いていたそうです。お父さん、昔からそういう運がありますからね」
「そうなんだ」
「今日から4日間、直人先輩と2人で海やプールで遊んで、美味しい食事を楽しんで、お部屋ではゆっくりとえっちなことをして……」
きゃっ、と彩花は1人で盛り上がっている。プレ・ハネムーンだから、そういうことも考えてしまうんだろうな。
「しかし、海やプールで遊んでしまったら、夜に体力が持ちますかね。特に直人先輩は大丈夫ですか? 病み上がりですけど」
「大丈夫だとは思うけれど、無理しないようにするよ」
これまで色々とあって、2度入院していたからなぁ。2回目の入院を終えてから1ヶ月ほど経ったから、体力の方も大分戻ってきたけど。
「直人先輩。今日のために新しい水着を買ってきたので楽しみにしていてくださいね」
「……きっと、可愛いんだろうな」
彩花は可愛いからどんな水着を着ても似合いそうだ。新しい水着か。どんな水着なのか楽しみになってきた。
「もう、先輩ったら。先輩の要望であれば、何も着なくてもいいのですが……」
「……それは部屋の中で俺だけに見せてくれればいいよ。というか、他の人間には絶対に見せるんじゃない」
俺がそう言うと、彩花は嬉しそうに笑ってくる。
「ふふっ、直人先輩。私と付き合ってから独占欲が強くなってませんか?」
「手錠を掛けるような子に言われたくないよ」
俺がいなくなると不安で仕方なかった、という事情を知っている今なら可愛いと思えるけれど、何も知らなかったあの当時は恐怖でしかなかったんだぞ。
というか、人前で裸なんて見せちゃダメでしょう。女湯以外では。きっと、彩花は冗談で言ったんだと思うけど。
「……あのときは直人先輩に側にいてほしかったからです。でも、先輩さえ私を束縛したいなら、お部屋で私のことを縛ってもいいんですよ?」
彩花に耳元でそう囁かれたので、全身に震えが。
「お前、まさか手錠を持ってきているのか?」
逆に、海やプールでの俺の様子によっては、俺を部屋で束縛しようとしているんじゃないだろうか。海やプールには水着姿の女性も多いから。
「嘘ですよ。手錠はもう捨てました。それに、他の女性に少しは視線が移っても、最後はきちんと私の所に帰ってきてくれると信じていますから」
「そっか」
「いや、でも直人先輩はかっこいいですから、周りの女性が直人先輩に惹かれて近寄ってくるかもしれません。それなら……」
と、出会った頃に何度か見た恐ろしい笑みを彩花は見せる。それなら、手錠を捨てずに持ってくれば良かった、って言いたそうだな。
「大丈夫だよ。俺は彩花の彼氏なんだし。それに、こうして彩花がずっと一緒にいればいいと思う。プレでもハネムーンなんだろう?」
彩花の右手をぎゅっと掴む。彼女の手はとても温かい。
すると、彩花は嬉しそうな表情をして、
「そうですよね。直人先輩は私の彼氏なんですもんね。心配する必要なんてないんですよね」
ちゅっ、とキスしてきた。車両の中には結構人がいるし、誰かに見られちゃったんじゃないかな。
「でも、旅行中もできるだけ私のことを見てほしい」
「……もちろんだよ」
こんなにも可愛い彼女のことを見ないわけがないだろう。
そういえば、彩花と旅行をするのは初めてじゃないけど、2人きりというのは初めてなんだよな。この4日間、大いに楽しむことにしよう。
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