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特別編2
プロローグ『久しぶりと初めまして』
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特別編2
6月11日、日曜日。
ゆっくりと目を覚ますと、薄暗い中で見慣れた天井が見える。
すぅ……すぅ……と、可愛らしい寝息が定期的に聞こえるのでそちらの方を向くと、俺・長瀬和真のお嫁さんの長瀬優奈が、俺の左腕を抱きしめながらぐっすりと寝ている。
起きた直後から、大好きなお嫁さんの可愛い寝顔を見られて幸せだ。優奈の優しい温もりや柔らかい感触、甘い匂いを感じられるから癒やされて。ここは優奈の部屋のベッドだから、優奈に包まれている感じもして。だから、幸せな気持ちがどんどん膨らんでいって。だから、気付けば、
――ちゅっ。
と、優奈の左頬にキスしていた。頬から伝わる感触や温もりもまたいいな。
部屋が明るくなってきているけど、今は何時だろう? そう思って、時計のある方に視線を向けると……今は午前7時半過ぎか。
今日は休日だし、バイトのシフトも入っていない。優奈の妹であり、俺の義妹の陽葵ちゃん、友達の西山颯太、井上萌音さん、佐伯千尋さんがうちに遊びに来る予定になっているけど、それもお昼過ぎのこと。だから、もう少し寝てもいいかな。そう思って目を瞑ろうとした瞬間、
「んっ……」
可愛い声を漏らしながら、優奈はそっと目を開けた。優奈は俺と目が合うと、とろんとした笑顔になり、
「和真君。おはようございます」
と、優しい声色で朝の挨拶をしてくれた。それがとても可愛くて、キュンとなる。
「おはよう、優奈。起こしちゃったかな。頬にキスしたから」
タイミング的にそう考えてしまう。気持ち良さそうに寝ていたし、快眠を邪魔してしまったのかと。
ただ、優奈はゆっくりとかぶりを振ると、俺にニッコリとした笑顔を見せてくれる。
「いいえ、そんなことありませんよ。気持ち良く起きられましたから」
「それなら良かった」
ほっとした。
「私が寝ている間に頬にキスするなんて。和真君、可愛いですね」
「……優奈の寝顔が可愛かったから」
「ふふっ、そうですか」
優奈は楽しそうに笑う。男だし、お嫁さんの優奈からはかっこいいと言われたい気持ちがある。だけど、優奈の笑顔を見ていると、可愛いと言われるのもいいなと思える自分がいる。
「和真君。今度は唇にキスしてくれますか? おはようのキスをしたいです」
「ああ、いいぞ」
「ありがとうございますっ」
嬉しそうにお礼を言うと、優奈はそっと目を閉じる。キスを待っている顔もまた可愛くて。ほんと、俺の大好きなお嫁さんは可愛いでいっぱいだ。
「おはよう、優奈」
優奈にそう言って、俺は優奈におはようのキスをする。
優奈の唇からは、頬とはまた違った柔らかさが感じられて。ただ、優しい温もりなのは変わらなくて。とても気持ちがいい。個人的に、優奈にキスをして一番いいのは唇だなぁって思う。
10秒ほどして、俺から唇を離す。すると、優奈の顔には恍惚とした笑みが浮かんでいて。その笑顔を見ると幸せな気持ちが膨らんでいって。
「とてもいいキスでした」
「そうだな。今日もいい一日になりそうだ」
「そうですね。今日は午後に陽葵達が遊びに来ますし」
「ああ」
今日はずっと優奈と一緒にいられるし、午後には陽葵ちゃん達が遊びに来る。だから、楽しくていい一日になるだろう。そう思いつつ、俺は優奈と一緒にベッドから出た。
リビングにあるテレビでアニメを観たり、セールをやっている近所のスーパーに食料品を買いに行ったりするなどして、優奈との休日を過ごしていく。優奈と好き合う夫婦になったのはもちろん、最近は俺が体調を崩したのもあって、こういった時間を過ごせることに幸せを感じる。優奈と一緒に過ごすのがとても楽しいから、あっという間に時間が過ぎていく。
ちなみに、陽葵ちゃん達は午後2時頃にうちに来る約束になっている。
約束の時間が近づく中、井上さんと佐伯さん、西山がうちにやってきた。午後1時50分の時点で、まだ来ていないのは陽葵ちゃんだけだ。
「陽葵ちゃんと会えるのが楽しみだわ」
「楽しみだよね、萌音。電話やメッセージはしてるけど。陽葵ちゃんと会うのってゴールデンウィーク以来?」
「そうね」
「俺も楽しみだぜ。1年と2年の文化祭で、有栖川達と一緒にいるところは見たことがあるけど、話したことは一度もないからな」
3人とも陽葵ちゃんと会えるのを楽しみにしているようだ。義理の妹なので嬉しい気持ちになる。
あと、西山は陽葵ちゃんと会ったことはないんだな。思い返せば、ゴールデンウィークに陽葵ちゃん達がうちに遊びに来たとき、西山を誘ったけど、友達と遊ぶ先約があるからと来なかったんだっけ。
それから程なくして、
――ピンポーン。
と、エントランスにあるインターホンからの呼び出し音が鳴る。時刻からして、呼び出したのは陽葵ちゃんかな。
優奈は扉の近くにあるインターホンのモニターに行く。
「はい。……あっ、陽葵」
『お姉ちゃん、来たよ!』
モニターのスピーカーから陽葵ちゃんの声が聞こえる。声だけだけど、陽葵ちゃんがマンションのエントランスまで来られたと分かって安心する。
「今、開けますね」
『……うん、開いた! じゃあ、また後でね』
「はい。……陽葵でした。無事に来られて安心です」
「俺も同じような気持ちだよ」
「ふふっ、そうですか」
優奈は穏やかに笑う。陽葵ちゃんがここに来るのは初めてではないけど、電車に乗って一人で来るから姉として心配な気持ちがあったのかもしれない。
――ピンポーン。
今度は玄関前のインターホンのメロディが鳴る。モニターの前に立っていた優奈が再び応対する。
「はい。……陽葵、玄関前まで来ましたね」
『うん!』
「すぐに行きますね。……陽葵が来ました。ちょっと出迎えてますね」
「俺も行くよ」
義理ではあるけど、陽葵ちゃんは俺の妹でもあるので、優奈と一緒に出迎えたいのだ。
優奈と一緒にリビングを出て、玄関まで向かう。
優奈が玄関の鍵を解錠して、玄関をゆっくりと開けると、そこには膝丈のスカートにノースリーブのブラウス姿の陽葵ちゃんが。ショルダーバッグを肩に掛けているのを含めてとても可愛らしい姿だ。
「いらっしゃい、陽葵」
「いらっしゃい、陽葵ちゃん」
「お姉ちゃん、和真さん、こんにちは! 会えて嬉しいです!」
元気良く挨拶すると、陽葵ちゃんは優奈のことを抱きしめる。
優奈は嬉しそうな笑顔になって陽葵ちゃんの頭を撫でる。それが嬉しいのか、陽葵ちゃんは「えへへっ」と可愛い声を漏らして。お互いに大好きなのが分かるとてもいい光景だ。心が温まっていく。
「私も会えて嬉しいですよ」
「俺もだよ。最後に会ったのは……結婚指輪を見せて、彩さんに母の日を渡したときかな」
「そうですね。1ヶ月近くもお姉ちゃんの顔を見ないことはなかったから、凄く久しぶりに感じるよ」
「陽葵の言うこと分かりますね」
「ここに引っ越してくるまでは一緒に住んでいたんだもんな」
1ヶ月近くも会っていなかったら、久しぶりだって思うのは当然なのかもしれない。俺も両親とは1ヶ月近く会っていないから、今の2人のような感覚になるかもしれないな。
「萌音さん達はもう来てる?」
「ええ。3人とも来ていますよ。みんな、陽葵と会うのを楽しみにしています」
「そうなんだ! 嬉しいな」
ニコニコ顔でそう言う陽葵ちゃん。
最初、陽葵ちゃんが今日遊びに来ると約束した。陽葵ちゃんが来るから、陽葵ちゃんと仲のいい井上さんと佐伯さん、俺達と学校中心によく一緒にいる西山も呼ぶのはどうかと陽葵ちゃんに提案した。陽葵ちゃんが「会いたい」と言ったので3人を誘ったのだ。
また、ゴールデンウィークに陽葵ちゃんと会った真央姉さんと担任の渡辺夏実先生も誘った。ただ、姉さんは一日中バイトがあり、渡辺先生は学生時代の友人と遊ぶ先約があったので、今回はパスした。
「3人はリビングにいますよ」
「さあ、上がって。陽葵ちゃん」
「うん、お邪魔します」
陽葵ちゃんはうちに上がり、俺が用意したスリッパを履いた。
陽葵ちゃんも一緒にリビングに戻ると、西山達は明るい笑顔でこちらを見てくる。
「みなさん、こんにちは!」
陽葵ちゃんが元気良く挨拶すると、井上さんと佐伯さんが陽葵ちゃんのところまでやってくる。
「こんにちは、陽葵ちゃん。久しぶり」
「陽葵ちゃんこんにちは! 久しぶりだね。ゴールデンウィーク以来だから、1ヶ月ぶりくらいか。ちょっと背が高くなったように見えるよ」
「そうだと嬉しいですっ、千尋さん」
「……胸はどうかな」
そう言うと、井上さんは陽葵ちゃんのことを抱きしめて、陽葵ちゃんの胸に顔を埋める。女性の胸が大好きな井上さんらしい行動だ。もしかして、これまでも、会う度に今のように陽葵ちゃんの胸の成長具合を確かめていたのだろうか。
「……うん。この前よりちょっと大きくなった感じがする。さすがは中2。成長期。優奈の妹だけのことはあるわ」
井上さんはとってもいい笑顔で陽葵ちゃんの胸を評価した。
「そうですかっ。お姉ちゃんのように大きくなりたいですから、そう言ってもらえて嬉しいです」
「ふふっ。応援しているわ」
笑顔でそう言い、井上さんは陽葵ちゃんに向けてサムズアップ。優奈の胸のことを別格だと評し、殿堂入りしていると言うほどだ。優奈のように陽葵ちゃんの胸が大きくなることを楽しみにしているのだろう。
バストチェックが終わったのか、井上さんは陽葵ちゃんへの抱擁を解いた。
「そちらにいる金髪の男の人が西山さんですよね。前に、お姉ちゃん達から送られた写真を見たので覚えています」
「そうだよ、陽葵ちゃん。俺の親友でクラスメイトの西山颯太だ」
俺が紹介すると、陽葵ちゃんは西山の近くまで向かう。陽葵ちゃんと西山は向かい合う体勢に。
「初めまして。有栖川陽葵といいます。中学2年生です」
「西山颯太だ。初めまして。みんなとは同じクラスの友達で、サッカー部に入ってる」
「サッカーですか! 雰囲気ピッタリです。あたしはテニス部に入っています」
「そうなんだな。元気な雰囲気だし、やっぱり運動系の部活に入っていたか。……これからよろしくな、陽葵ちゃん」
「よろしくお願いします、西山さん!」
「ああ」
とても穏やかに自己紹介が済んだ。西山にとって、陽葵ちゃんは推しである優奈の妹だけど……中学生だからなのか特に緊張してなかったな。
「さすがに有栖川の妹だけあって可愛いな」
「ありがとうございます! 西山さんかっこいいですよ!」
「ありがとう。……推しの妹にかっこいいって言ってもらえるなんて。感激だぜ……!」
西山はとても嬉しそうに言った。ここまで嬉しそうにしている西山はなかなか見ないぞ。かなり嬉しいことが窺える。そんな西山を見て、陽葵ちゃんは「ふふっ」と楽しそうに笑っていた。
「良かったな、西山」
「おう!」
爽やかな笑顔でそう言ってくる。この時点で、今日は西山を誘って良かったと思えた。
6月11日、日曜日。
ゆっくりと目を覚ますと、薄暗い中で見慣れた天井が見える。
すぅ……すぅ……と、可愛らしい寝息が定期的に聞こえるのでそちらの方を向くと、俺・長瀬和真のお嫁さんの長瀬優奈が、俺の左腕を抱きしめながらぐっすりと寝ている。
起きた直後から、大好きなお嫁さんの可愛い寝顔を見られて幸せだ。優奈の優しい温もりや柔らかい感触、甘い匂いを感じられるから癒やされて。ここは優奈の部屋のベッドだから、優奈に包まれている感じもして。だから、幸せな気持ちがどんどん膨らんでいって。だから、気付けば、
――ちゅっ。
と、優奈の左頬にキスしていた。頬から伝わる感触や温もりもまたいいな。
部屋が明るくなってきているけど、今は何時だろう? そう思って、時計のある方に視線を向けると……今は午前7時半過ぎか。
今日は休日だし、バイトのシフトも入っていない。優奈の妹であり、俺の義妹の陽葵ちゃん、友達の西山颯太、井上萌音さん、佐伯千尋さんがうちに遊びに来る予定になっているけど、それもお昼過ぎのこと。だから、もう少し寝てもいいかな。そう思って目を瞑ろうとした瞬間、
「んっ……」
可愛い声を漏らしながら、優奈はそっと目を開けた。優奈は俺と目が合うと、とろんとした笑顔になり、
「和真君。おはようございます」
と、優しい声色で朝の挨拶をしてくれた。それがとても可愛くて、キュンとなる。
「おはよう、優奈。起こしちゃったかな。頬にキスしたから」
タイミング的にそう考えてしまう。気持ち良さそうに寝ていたし、快眠を邪魔してしまったのかと。
ただ、優奈はゆっくりとかぶりを振ると、俺にニッコリとした笑顔を見せてくれる。
「いいえ、そんなことありませんよ。気持ち良く起きられましたから」
「それなら良かった」
ほっとした。
「私が寝ている間に頬にキスするなんて。和真君、可愛いですね」
「……優奈の寝顔が可愛かったから」
「ふふっ、そうですか」
優奈は楽しそうに笑う。男だし、お嫁さんの優奈からはかっこいいと言われたい気持ちがある。だけど、優奈の笑顔を見ていると、可愛いと言われるのもいいなと思える自分がいる。
「和真君。今度は唇にキスしてくれますか? おはようのキスをしたいです」
「ああ、いいぞ」
「ありがとうございますっ」
嬉しそうにお礼を言うと、優奈はそっと目を閉じる。キスを待っている顔もまた可愛くて。ほんと、俺の大好きなお嫁さんは可愛いでいっぱいだ。
「おはよう、優奈」
優奈にそう言って、俺は優奈におはようのキスをする。
優奈の唇からは、頬とはまた違った柔らかさが感じられて。ただ、優しい温もりなのは変わらなくて。とても気持ちがいい。個人的に、優奈にキスをして一番いいのは唇だなぁって思う。
10秒ほどして、俺から唇を離す。すると、優奈の顔には恍惚とした笑みが浮かんでいて。その笑顔を見ると幸せな気持ちが膨らんでいって。
「とてもいいキスでした」
「そうだな。今日もいい一日になりそうだ」
「そうですね。今日は午後に陽葵達が遊びに来ますし」
「ああ」
今日はずっと優奈と一緒にいられるし、午後には陽葵ちゃん達が遊びに来る。だから、楽しくていい一日になるだろう。そう思いつつ、俺は優奈と一緒にベッドから出た。
リビングにあるテレビでアニメを観たり、セールをやっている近所のスーパーに食料品を買いに行ったりするなどして、優奈との休日を過ごしていく。優奈と好き合う夫婦になったのはもちろん、最近は俺が体調を崩したのもあって、こういった時間を過ごせることに幸せを感じる。優奈と一緒に過ごすのがとても楽しいから、あっという間に時間が過ぎていく。
ちなみに、陽葵ちゃん達は午後2時頃にうちに来る約束になっている。
約束の時間が近づく中、井上さんと佐伯さん、西山がうちにやってきた。午後1時50分の時点で、まだ来ていないのは陽葵ちゃんだけだ。
「陽葵ちゃんと会えるのが楽しみだわ」
「楽しみだよね、萌音。電話やメッセージはしてるけど。陽葵ちゃんと会うのってゴールデンウィーク以来?」
「そうね」
「俺も楽しみだぜ。1年と2年の文化祭で、有栖川達と一緒にいるところは見たことがあるけど、話したことは一度もないからな」
3人とも陽葵ちゃんと会えるのを楽しみにしているようだ。義理の妹なので嬉しい気持ちになる。
あと、西山は陽葵ちゃんと会ったことはないんだな。思い返せば、ゴールデンウィークに陽葵ちゃん達がうちに遊びに来たとき、西山を誘ったけど、友達と遊ぶ先約があるからと来なかったんだっけ。
それから程なくして、
――ピンポーン。
と、エントランスにあるインターホンからの呼び出し音が鳴る。時刻からして、呼び出したのは陽葵ちゃんかな。
優奈は扉の近くにあるインターホンのモニターに行く。
「はい。……あっ、陽葵」
『お姉ちゃん、来たよ!』
モニターのスピーカーから陽葵ちゃんの声が聞こえる。声だけだけど、陽葵ちゃんがマンションのエントランスまで来られたと分かって安心する。
「今、開けますね」
『……うん、開いた! じゃあ、また後でね』
「はい。……陽葵でした。無事に来られて安心です」
「俺も同じような気持ちだよ」
「ふふっ、そうですか」
優奈は穏やかに笑う。陽葵ちゃんがここに来るのは初めてではないけど、電車に乗って一人で来るから姉として心配な気持ちがあったのかもしれない。
――ピンポーン。
今度は玄関前のインターホンのメロディが鳴る。モニターの前に立っていた優奈が再び応対する。
「はい。……陽葵、玄関前まで来ましたね」
『うん!』
「すぐに行きますね。……陽葵が来ました。ちょっと出迎えてますね」
「俺も行くよ」
義理ではあるけど、陽葵ちゃんは俺の妹でもあるので、優奈と一緒に出迎えたいのだ。
優奈と一緒にリビングを出て、玄関まで向かう。
優奈が玄関の鍵を解錠して、玄関をゆっくりと開けると、そこには膝丈のスカートにノースリーブのブラウス姿の陽葵ちゃんが。ショルダーバッグを肩に掛けているのを含めてとても可愛らしい姿だ。
「いらっしゃい、陽葵」
「いらっしゃい、陽葵ちゃん」
「お姉ちゃん、和真さん、こんにちは! 会えて嬉しいです!」
元気良く挨拶すると、陽葵ちゃんは優奈のことを抱きしめる。
優奈は嬉しそうな笑顔になって陽葵ちゃんの頭を撫でる。それが嬉しいのか、陽葵ちゃんは「えへへっ」と可愛い声を漏らして。お互いに大好きなのが分かるとてもいい光景だ。心が温まっていく。
「私も会えて嬉しいですよ」
「俺もだよ。最後に会ったのは……結婚指輪を見せて、彩さんに母の日を渡したときかな」
「そうですね。1ヶ月近くもお姉ちゃんの顔を見ないことはなかったから、凄く久しぶりに感じるよ」
「陽葵の言うこと分かりますね」
「ここに引っ越してくるまでは一緒に住んでいたんだもんな」
1ヶ月近くも会っていなかったら、久しぶりだって思うのは当然なのかもしれない。俺も両親とは1ヶ月近く会っていないから、今の2人のような感覚になるかもしれないな。
「萌音さん達はもう来てる?」
「ええ。3人とも来ていますよ。みんな、陽葵と会うのを楽しみにしています」
「そうなんだ! 嬉しいな」
ニコニコ顔でそう言う陽葵ちゃん。
最初、陽葵ちゃんが今日遊びに来ると約束した。陽葵ちゃんが来るから、陽葵ちゃんと仲のいい井上さんと佐伯さん、俺達と学校中心によく一緒にいる西山も呼ぶのはどうかと陽葵ちゃんに提案した。陽葵ちゃんが「会いたい」と言ったので3人を誘ったのだ。
また、ゴールデンウィークに陽葵ちゃんと会った真央姉さんと担任の渡辺夏実先生も誘った。ただ、姉さんは一日中バイトがあり、渡辺先生は学生時代の友人と遊ぶ先約があったので、今回はパスした。
「3人はリビングにいますよ」
「さあ、上がって。陽葵ちゃん」
「うん、お邪魔します」
陽葵ちゃんはうちに上がり、俺が用意したスリッパを履いた。
陽葵ちゃんも一緒にリビングに戻ると、西山達は明るい笑顔でこちらを見てくる。
「みなさん、こんにちは!」
陽葵ちゃんが元気良く挨拶すると、井上さんと佐伯さんが陽葵ちゃんのところまでやってくる。
「こんにちは、陽葵ちゃん。久しぶり」
「陽葵ちゃんこんにちは! 久しぶりだね。ゴールデンウィーク以来だから、1ヶ月ぶりくらいか。ちょっと背が高くなったように見えるよ」
「そうだと嬉しいですっ、千尋さん」
「……胸はどうかな」
そう言うと、井上さんは陽葵ちゃんのことを抱きしめて、陽葵ちゃんの胸に顔を埋める。女性の胸が大好きな井上さんらしい行動だ。もしかして、これまでも、会う度に今のように陽葵ちゃんの胸の成長具合を確かめていたのだろうか。
「……うん。この前よりちょっと大きくなった感じがする。さすがは中2。成長期。優奈の妹だけのことはあるわ」
井上さんはとってもいい笑顔で陽葵ちゃんの胸を評価した。
「そうですかっ。お姉ちゃんのように大きくなりたいですから、そう言ってもらえて嬉しいです」
「ふふっ。応援しているわ」
笑顔でそう言い、井上さんは陽葵ちゃんに向けてサムズアップ。優奈の胸のことを別格だと評し、殿堂入りしていると言うほどだ。優奈のように陽葵ちゃんの胸が大きくなることを楽しみにしているのだろう。
バストチェックが終わったのか、井上さんは陽葵ちゃんへの抱擁を解いた。
「そちらにいる金髪の男の人が西山さんですよね。前に、お姉ちゃん達から送られた写真を見たので覚えています」
「そうだよ、陽葵ちゃん。俺の親友でクラスメイトの西山颯太だ」
俺が紹介すると、陽葵ちゃんは西山の近くまで向かう。陽葵ちゃんと西山は向かい合う体勢に。
「初めまして。有栖川陽葵といいます。中学2年生です」
「西山颯太だ。初めまして。みんなとは同じクラスの友達で、サッカー部に入ってる」
「サッカーですか! 雰囲気ピッタリです。あたしはテニス部に入っています」
「そうなんだな。元気な雰囲気だし、やっぱり運動系の部活に入っていたか。……これからよろしくな、陽葵ちゃん」
「よろしくお願いします、西山さん!」
「ああ」
とても穏やかに自己紹介が済んだ。西山にとって、陽葵ちゃんは推しである優奈の妹だけど……中学生だからなのか特に緊張してなかったな。
「さすがに有栖川の妹だけあって可愛いな」
「ありがとうございます! 西山さんかっこいいですよ!」
「ありがとう。……推しの妹にかっこいいって言ってもらえるなんて。感激だぜ……!」
西山はとても嬉しそうに言った。ここまで嬉しそうにしている西山はなかなか見ないぞ。かなり嬉しいことが窺える。そんな西山を見て、陽葵ちゃんは「ふふっ」と楽しそうに笑っていた。
「良かったな、西山」
「おう!」
爽やかな笑顔でそう言ってくる。この時点で、今日は西山を誘って良かったと思えた。
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