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特別編

第4話『タピオカドリンク』

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 今週も学校生活が始まる。
 先週のロングホームルームの時間に席替えを行ない、俺の席は窓側最後尾になった。また、俺の右隣の席は優奈の席だ。だから、授業中にたまに優奈と目が合ったり、窓から高野駅方面の景色を眺めたりして。放課後デートという楽しみもあるから、頑張って授業を受けられる。
 また、昼休みになると、優奈は井上さんと佐伯さんと一緒に教室を出て、俺と最後までしたり、キスマークを付け合ったりしたことを佐伯さんに話した。胸のことから気付かれた形だけど井上さんに知られたので、同じく親友の佐伯さんには話そうと考えたのだそうだ。その相談を受けた俺は佐伯さんならいいだろうと考え、話すことを優奈に許可した。
 優奈から話を聞いた佐伯さんから、

『優奈と萌音から聞いたよ。優奈を大切にするんだよ。あと……夫婦だけど高校生でもあるから、できちゃわないようにね。万が一のときはサポートするけどさ』

 とメッセージが送られた。佐伯さんらしい親友想いのとても優しい内容だ。
 朝礼前に受け取った井上さんのメッセージにも書いてあったけど、優奈のことを今まで以上に大切にしないと。夫婦になって一緒に生活しているけど、高校生という身分でもある。子供ができてしまわないように気をつけないと。そういった上で、優奈との愛情を育んでいこう。そう胸に誓い、佐伯さんに『分かった』と返信した。



 放課後。
 今週は俺と西山のいる班が掃除当番なので、優奈には廊下で待ってもらった。西山も一緒だし、この後は優奈とデートをすることになっているから、教室を掃除することは特に苦とは感じなかった。
 無事に掃除も終わり、これからサッカー部の活動がある西山も一緒に教室を後にする。彼とは1階の昇降口の近くまで一緒に行った。

「じゃあ、デート楽しんでこいよ。また明日な」
「ああ、また明日。西山も部活頑張れよ」
「頑張ってくださいね。また明日です」
「おう! 2人ともありがとな!」

 西山は爽やかな笑顔でそう言うと、俺達に手を振ってサッカー部の部室がある方へ向かっていった。今日も怪我なく練習を頑張ってほしい。
 昇降口でローファーに履き替え、俺達は校舎を後にする。教室の掃除をして、終礼が終わって15分ほど経っているからか、終礼直後に下校しているときよりも生徒の数は少ない。
 これから放課後デートなのもあり、とりあえずは高野駅方面に向かって歩く。
 夕方に差し掛かる時間帯だけど、晴れていて日差しが当たっているから結構暑い。

「暑いな……」
「暑いですねぇ。今日はずっと晴れていますもんね」
「ああ。こういう日は冷たいものを飲んだり、食べたりしたくなるな」
「そうですね。きっと美味しいでしょうね」
「そうだろうなぁ。……優奈。まずは高野カクイのフードコートに行って、何か冷たいものでも楽しまないか?」
「いいですね! そうしましょう!」

 優奈は可愛い笑顔で快諾してくれる。それがとても嬉しい。
 ちなみに、高野カクイとは高野駅の南口のすぐ近くにあるショッピングセンターのことだ。飲食店はもちろんのこと、書店や音楽ショップ、アパレルショップ、真央まお姉さんがバイトをしている生活雑貨店・Laftラフトなど、様々なジャンルのお店が入っている。

「フードコートで冷たいものを楽しむなら……アイスとかタピオカドリンクとかかな。優奈は何がいい?」
「タピオカドリンクがいいですね。アイスはお家で食べることがありますけど、タピオカドリンクは一緒に飲んだことがないので……」
「確かにそうだな」

 最近は暖かい日も増えてきたので、食後のデザートやおやつにアイスを食べることがある。食べながらアニメを観ることもあって。ただ、タピオカドリンクを一緒に飲んだことはないな。

「じゃあ、タピオカドリンクを飲みに行こうか」
「はいっ」

 ニコッとした笑顔で返事をしてくれる優奈。楽しそうにも見えて。これから初めて一緒にタピオカドリンクを飲むからかな。優奈の笑顔を見ていると、暑い中歩くのも頑張れそうだ。

「優奈は他に行きたいお店や場所ってある?」
「はい。にゃかのに行きたいです」
「にゃかの……猫カフェか」
「そうです。ゴールデンウィークの琴宿デートで猫カフェに行ったとき、いつかにゃかのに行こうと約束しましたから」
「約束したな」
「覚えていてくれて嬉しいです。琴宿のデートから1ヶ月くらい経ちましたから、和真君と一緒にまた猫ちゃんと戯れたくて」
「なるほどな。……俺も猫と戯れたくなってきた。じゃあ、タピオカドリンクを飲んで、その後に猫カフェに行く流れにしようか」
「はい、そうしましょう!」

 優奈はさっき以上にニッコリとした笑顔になって。本当に可愛いな。2度目の猫カフェに行くことになったからだろう。今日の放課後デートでも、優奈がたくさん笑顔になってくれると嬉しいな。
 今日の学校のことや猫のことを話しながら歩き、高野カクイに到着した。
 エアコンがかかっているのか、カクイの中は涼しくて快適だ。優奈もお店に入ると柔らかな笑顔で「あぁっ」と可愛い声を漏らしていた。
 タピオカドリンクのお店がある1階のフードコートに向かう。平日の夕方なので、うちの高校を含め制服を着た人の姿が結構見受けられる。
 フードコートに入ってすぐ、タピオカドリンク店が見えた。お店に向かって列ができている。15人くらい並んでいる。今日は晴れて暑いから、俺達のように冷たいタピオカドリンクを飲もうと考える人が多いのかな。
 俺達は列の最後尾に並んだ。1列に並ぶので、俺、優奈の順番に並んでいる。

「少し列ができていて良かったです。ここのお店は美味しいタピオカドリンクがいくつもあるので、選ぶのに迷いそうで」
「ははっ、そうか。優奈らしいな」

 美味しいものがいくつもあるお店では、優奈は何を買おうか悩むことが多い。俺のバイト先のマスタードーナッツでもそうだ。

「今の話し方からして、優奈はこのお店に何度も来たことがあるんだな」
「ええ。萌音ちゃんや千尋ちゃんとはもちろん、友達や部活の子達とも来たことがあります。今日みたいに暑い日を中心に。放課後だけでなく休日にも」
「そっか。美味しいし、駅から近いから学校帰りとかにちょうどいいもんな」
「はい。和真君はどうですか?」
「俺も何度も来たことあるよ。西山とか友達と一緒に。昔は家族でカクイで買い物したり、このフードコートで食事したりしたときに買ってもらったこともあったな」
「そうなんですね」

 このタピオカドリンク店は家族や友達と何度も来たことがあるから、親しみのあるお店だ。そんなお店にお嫁さんと一緒に訪れる日が来るなんて。最後にこのお店に来たときには想像もしなかったな。
 お店の前にある立て看板のメニュー表を見ながら、何を頼むか考える。
 コーヒー系、紅茶系、ジュース系、炭酸系と色々とあるけど……俺は一番好きなカフェオレにした。それを優奈に伝えると、絶賛迷い中だった優奈は、

「一番好きなものですか。いいですね! 私も一番好きなタピオカミルクティーにしましょう」

 と、飲むものを決められたようだ。決断の一助になったようで嬉しい。タピオカミルクティー……王道で美味しいよね。
 飲むものを決めてから数分後。俺達の番となり、俺はタピオカカフェオレ、優奈はタピオカミルクティーを購入した。
 フードコート内の座席は結構埋まっていたけど、幸いにもお店の近くにある2人用のテーブル席が空席だった。俺達はそこを陣取ることに。

「あの、和真君。初めて一緒にタピオカドリンクを飲むので、写真を撮りませんか?」
「そうだな。写真をLIMEで送ってくれ」
「分かりました!」

 スクールバッグを置き、優奈のスマホでタピオカドリンクの入ったコップを持った俺達を自撮りする。約束通り、その写真はLIMEで送ってもらった。
 写真を撮り終え、俺達は向かい合う形で椅子に座る。

「じゃあ、飲むか」
「そうですね。タピオカミルクティーいただきます!」
「カフェオレいただきます」

 俺はタピオカカフェオレを一口飲む。
 カフェオレだけど、コーヒーの苦味がしっかりしており、タピオカの甘味とミルクのコクと合っていてとても美味しい。やっぱり、このお店のドリンクで一番好きだなと思う。あと、学校から暑い中歩いてきたので、カフェオレの冷たさがたまらない。

「うん、美味しい!」
「ミルクティーも美味しいですっ! 冷たくていいですね!」
「そうだな! 暑い中歩いたし、掃除当番の後だから本当に美味しいよ」
「ふふっ、そうですか」

 楽しそうに笑うと、優奈はタピオカミルクティーをもう一口飲む。両手でカップを持ち、ちゅーっ、とミルクティーを飲む姿は本当に可愛らしい。可愛い優奈を見ながらカフェオレを飲むと、さっきよりも美味しく感じられた。

「優奈。カフェオレも一口飲んでみるか? 優奈はコーヒーも好きだし」
「ありがとうございます! では、お礼の私のミルクティーも一口どうぞ」
「ありがとう」

 俺達は自分のドリンクが入ったカップを相手の前まで差し出す。

「じゃあ、ミルクティーいただくね」
「はい。カフェオレいただきます」

 俺は優奈のタピオカミルクティーを一口飲む。
 タピオカミルクティーも飲んだことがあるけど、これまでと変わらず紅茶の味がしっかりとしていて美味しい。さすがはタピオカドリンクの王道って感じだ。ただ、今まで飲んだときよりも甘味が強く感じるのは気のせいだろうか。

「カフェオレも美味しいですね。これまでにも飲んだことがあって、結構好きな方です」
「そうなんだ。ミルクティーは何度も飲んだことがあるけど、美味しいな」
「美味しいですよね!」

 優奈は嬉しそうに笑う。自分が一番好きなドリンクを美味しいって言ってもらえたからだろう。俺もカフェオレが美味しくて好きだと言われて嬉しいし。

「カフェオレありがとうございました」
「いえいえ。ミルクティーありがとな」
「いえいえ」

 俺達は相手のドリンクが入っているカップを目の前まで戻した。
 カフェオレを一口飲むと……ミルクティーを飲んだ後だから、コーヒーの苦味を強く感じる。ただ、ミルクティーに負けないくらいに甘くて。優奈が口をつけたからだろうか。

「……あっ、そういえば」
「どうした?」
「以前、萌音ちゃんと千尋ちゃんとここのタピオカドリンクを飲んだときに、タピオカチャレンジというものをしたことを思い出して」
「タピオカチャレンジ?」
「はい。胸の上にカップを乗せて、手を使わずにタピオカドリンクを飲めるかどうか挑戦することです」
「ああ、それか。漫画やイラストで見たことある」
「そうですか。優奈ならできそう、と萌音ちゃんが勧めてきたので」
「井上さんらしいな」

 そのときの井上さんの様子が容易に頭に浮かんでくるよ。
 胸のことが話題になったので、視線が自然と優奈の胸の方に向いてしまう。優奈くらいに胸が大きかったら、タピオカチャレンジが成功しそうだ。

「ふふっ、和真君ったら。私の胸をじっと見て」
「ご、ごめん。胸の話題になったからつい」
「いえいえ、いいんですよ。和真君に見られるのはドキドキしますが嬉しいですし」

 そう言う優奈の顔は依然として笑みが浮かんでいるけど、頬を中心にほんのりと赤らんでいた。嫌だと思っていなくて良かった。

「それで、タピオカチャレンジは成功したのか?」
「……それは自分の目で確かめてみてください」

 ということは……今からチャレンジするんだな。笑顔で言うところからして成功しそうな気がする。

「分かった」
「では、やってみますね」

 優奈はタピオカミルクティーの入ったカップを持ち、胸の上に置く。
 カップを持つ右手をそっと離すと……カップはピクッと動くことなく、優奈の胸の上で安定している。
 優奈は可愛い笑顔でストローを咥えて、タピオカミルクティーを飲んだ。その際もカップは微動だにしなかった。さすがはFカップの胸である。

「おおっ、成功した!」
「成功しました。萌音ちゃんと千尋ちゃんの前でチャレンジしたときも成功しました」
「そうなんだ。さすがは優奈」
「ありがとうございます!」

 優奈は嬉しそうにお礼を言った。きっと、井上さんや佐伯さんの前で成功したときも、今のような笑顔だったんじゃないだろうか。あと、井上さんはチャレンジを成功した優奈を見て興奮していたんじゃないだろうか。

「優奈。今の勇姿を写真に収めたいのですが」
「いいですよ」
「ありがとう」

 俺はタピオカチャレンジを成功させた優奈をスマホで撮影した。
 優奈はストローを咥えたり、両手でピースサインしたりと様々なポーズで撮影させてくれた。胸にカップが乗っているし、特にストローを咥えている姿は艶っぽく感じられた。
 それからも、優奈と一緒にタピオカドリンクを楽しみながらゆっくりするのであった。
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