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第52話『スイーツを作って待っていますね』
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5月27日、土曜日。
今日は午前9時から午後4時までバイトだ。
いつもの週末よりも長い時間のシフトだ。ただ、先週末以来の久しぶりのバイトなので、気合いを入れてバイトに臨もう。
中間試験も昨日で終わったし、昨日の放課後は優奈とのデートをたっぷりと楽しんだ。だから、今日は接客中心に調子良く業務ができている。
また、優奈は自宅で井上さんと一緒に過ごすとのこと。2人の好きなアニメを観たり、スイーツを作ったりするらしい。試験前や試験中は部活動が禁止なため、試験明けの週末に2人でスイーツを作ることがあるのだという。
優奈と井上さんは、今日バイトや部活のある俺、西山、佐伯さんの分のスイーツも作ってくれるそうだ。
『萌音ちゃんと一緒にスイーツを作って待っていますね』
『どんなスイーツなのかは、そのときのお楽しみに』
とのこと。なので、それを楽しみに今日のバイトを頑張った。
午後4時過ぎ。
シフト通りにバイトが終わったので、俺はマンションのエントランスの前まで向かう。西山と佐伯さんとそこで待ち合わせをすることになっているからだ。2人の部活もそれぞれ午後4時頃に終わる予定になっている。それなら3人で一緒に帰ろうという話になったのだ。
マンションのエントランス前に向かうと……まだ2人の姿はなかった。
『バイト終わった。エントランス前にいるよ』
今朝作った俺、西山、佐伯さんのグループトークにそんなメッセージを送った。とりあえずはこれで大丈夫だろう。
西山も佐伯さんも部活が終わったのだろうか。俺がメッセージを送ってからすぐに、『既読2』とマークがついた。
『分かった。俺もさっき部活終わったから』
『あたしも部活終わったよ』
やっぱり、2人とも部活が終わっていたか。
『2人ともお疲れ様』
『ありがとな。佐伯も終わったんだったら、長瀬のところに一緒に行くか?』
『うん、そうしよう!』
3人で待ち合わせしているのだから、2人で一緒にここまで来た方が確実だな。あと、文字だけど、佐伯さんの返事がとても嬉しそうに見える。
『ということで、佐伯と一緒にそっちに行くよ』
『待っててね、長瀬』
『了解』
西山も佐伯さんも部活が終わったし、学校からここまで徒歩数分ほど。遅くても、あと10分ほどで2人と落ち合えるだろう。
高野駅の北側の景色を見ながら、俺は西山と佐伯さんのことを待つ。
夕方の時間帯になったけど、日曜日だから多くの人がいる。今くらいに終わる部活が多いのか、うちの高校の制服姿の人もちらほらと。
今日も朝から晴れて暖かいから、長袖の服を着ている人だけじゃなく、半袖の人もいる。中にはノースリーブやフレンチスリーブの人もいて。こういうところからも季節の進みを感じる。来週からは6月になり、季節が夏になるからなぁ。ちなみに、今日は優奈もフレンチスリーブのブラウスを着ていた。
「おーい、長瀬」
「ながせー」
西山と佐伯さんの声が聞こえたのでそちらを向くと、駅の方からこちらに向かって歩く制服姿の2人が見えた。俺と目が合うと、2人は笑顔で手を振ってくる。そんな2人に俺も手を振った。
2人で楽しそうに喋っているし、エナメルバッグを肩に掛けているから、スポーツ系カップルに見えてくるな。2人を知らなければそう思う人もいそうだ。
「よぉ、長瀬。バイトお疲れ様」
「お疲れ、長瀬」
「ありがとう。2人も部活お疲れ様。じゃあ、さっそく行くか」
俺は西山と佐伯さんと一緒にマンションの中に入る。住み始めた頃は感動していたオートロックの扉も、今はすっかりと慣れた。
エントランス近くにあるエレベーターで、自宅のある10階へ向かうことに。今は別のフロアにあるので、俺が上向きボタンを押してエレベーターが来るのを待つ。
「優奈と萌音、どんなスイーツを作ってくれているんだろう?」
「何だろうな。有栖川が作ってくれたものならどんなものでも嬉しいけど」
「西山らしいな」
「甘いものが好きだから、あたしもどんなスイーツでも嬉しいけど。ただ、部活をやった後だし、冷たいものならより嬉しいかな」
「冷たいものかぁ。俺もそういうものだともっと嬉しいかな」
「今日は暖かかったもんな」
果たして、西山や佐伯さんが希望する冷たいスイーツが待っているのか。ちなみに、優奈と井上さんから俺達に向けて作られたスイーツが何なのかは一切メッセージが来ていない。もうすぐ分かるし、食べるときのお楽しみにしておこう。
それからすぐにエレベーターが到着し、俺達は自宅のある10階へ上がる。
10階に到着し、自宅である1001号室へ向かった。
「ただいま」
「お邪魔しまーすっ!」
「お邪魔します」
俺が挨拶した後、佐伯さん、西山の順番でそう言った。
俺達の声が聞こえたのだろうか。リビングの方から『おかえりなさーい』という女性達の声が。その直後、リビングの扉が開き、優奈とスラックスに半袖のパーカー姿の井上さんが姿を現した。2人とも明るい笑顔でこちらにやってくる。
「和真君、おかえりなさい。バイトお疲れ様でした。千尋ちゃんと西山君、いらっしゃい。部活お疲れ様でした」
「みんなおつかれー」
「優奈、ただいま。井上さん、いらっしゃい」
「2人ともこんにちは」
「こんにちは! 2人の作ってくれたスイーツを食べたくて今日の部活を頑張ったよ!」
「俺もな」
「俺もバイト頑張れたよ」
「ふふっ、そうでしたか。みなさんリビングにどうぞ」
俺達はリビングに向かう。
優奈と井上さんがスイーツを作っていたからだろうか。リビングに入ると、甘い匂いが香ってきて。そのことで自然と期待が高まる。
勉強会をしたときと同様に、リビングのローテーブルと優奈の部屋にあるローテーブルをくっつけ、その周りにそれぞれの部屋から持ってきたクッションが置く。俺、西山、佐伯さんは勉強会のときと同じ場所に腰を下ろした。
キッチンの方を見ると、優奈が冷蔵庫を開けて何かを取り出しているのが見えた。どうやら、2人が作ったのは冷たい系のスイーツのようだ。俺と同じことを考えたのか、西山と佐伯さんはニッコリと笑う。
「これでOKね」
「完成ですね。みなさん、お待たせしました」
優奈はトレーを持ってこちらにやってくる。
「抹茶プリンです」
そう言い、優奈は俺達の前に抹茶プリンが入った透明な器を置いた。その直後、井上さんがスプーンを渡してくれる。
優奈と井上さんが作ってくれたのは抹茶プリンだったか。抹茶色のプリンの上には抹茶の粉がかかっていて。とても美味しそうだ。スマホで抹茶プリンを撮影する。
「抹茶のプリンだ! 美味しそう!」
「美味そうだな!」
井上さんと西山はテンション高めに言う。そんな2人に「ふふっ」と笑いながら、優奈と井上さんはクッションに腰を下ろした。
「本当に美味しそうだな、このプリン」
「ありがとうございます」
「みんなにもスイーツを作ろうって話になってね。暖かくなってきたし、冷たいスイーツにしようってことになって」
「それに加えて、今の時期らしいスイーツにしようと思って抹茶プリンを作ったんです」
「そうだったんだ」
今の時期らしいのはもちろんだし、優奈は抹茶系のスイーツが好きだからな。以前のデートで、そういうものを作りたいとも言っていた。井上さんもそれが分かっていて、この抹茶プリンを作ったんじゃないかと思う。
「午前中に作って、冷蔵庫で冷やしました。なので、きっと固まっていると思います」
「抹茶味だし、仕上げに抹茶の粉をかけたから、さっぱりとした甘さのプリンになっていると思うわ」
「そうなんだ。じゃあ、みんなで食べようか」
「おう!」
「そうだね! いただきまーす!」
『いただきます!』
佐伯さんの号令で俺達は抹茶プリンを食べ始めることに。
スプーンで抹茶プリンを一口分掬い、口の中に入れる。
抹茶の粉がかけられているからだろうか。プリンを口の中に入れた瞬間、抹茶の香りが冷たさと一緒にふんわりと広がっていって。噛んでいくとミルクの優しい甘味が感じられる。プリン自体にも抹茶が入っているので、甘ったるくなくさっぱりとした味わいだ。
「とても美味しいよ、優奈、井上さん」
「冷たくて美味いな、この抹茶プリン! 部活帰りに有栖川の作ったスイーツが食える日が来るとはな……!」
「美味しいよね! 抹茶の粉がかかっているからさっぱりとした甘さだし、冷たいから、部活の疲れが取れていくよ!」
西山と佐伯さんは絶賛の感想を言うと、抹茶プリンをパクパクと食べ進める。気持ちいいと思えるほどの食べっぷりだなぁ。
俺達3人の感想を受けてか、優奈と井上さんは嬉しそうな笑顔を見せる。
「美味しく食べてもらえて嬉しいです。ありがとうございます」
「嬉しいね、優奈」
そう言って、優奈と井上さんは抹茶プリンを一口食べる。2人にとっても美味しいと思える味なのか、ニッコリとした笑顔で食べている。可愛くて、微笑ましい気持ちになる。
優奈を見ながら、俺は抹茶プリンをもう一口食べる。佐伯さんの言うように、甘いし冷たいから、バイトの疲れが取れていく。
「優奈、井上さん。抹茶プリン以外にもスイーツは作ったのか?」
「ええ。私達2人分ですが、ストロベリーパイを作りました」
「あとはお昼に、食事系のサラダパンケーキも作ったわ。キッチンからもそのテレビがよく見えるから、好きなアニメを流しながら優奈と一緒にスイーツや食事を作れてとても幸せだったわ……」
そのときのことを思い出しているのか、井上さんは幸せそうな様子に。優奈にとってもいい時間だったのか、優奈は柔和な笑顔になる。
うちはダイニングキッチンだし、キッチンからでもリビングの大画面のテレビがよく見える。好きなアニメを観ながら、親友と一緒にスイーツや食事を作ることができたら、とても幸せだと言うのも納得かな。
「とても楽しかったですよね、萌音ちゃん」
「ええ。アニメを観ながら食べるのも楽しかったし。優奈の胸も楽しめたから、とてもいい時間を過ごせたわ」
そう言うと、井上さんは俺に向かって左手でサムズアップする。優奈の胸も楽しめたからと言うところが井上さんらしい。
「そっか。2人が楽しい時間を過ごせたようで良かったよ。あと、俺達に美味しい抹茶プリンを作ってくれてありがとう。バイトの疲れが取れたよ」
「俺も部活の疲れが取れていくぜ。有栖川、井上、ありがとな」
「2人ともありがとう!」
「いえいえ」
「美味しく食べてくれて嬉しいわ。作った甲斐があるわ」
優奈と井上さんはニッコリとした笑顔でそう言った。
その後は、抹茶プリンを食べながら優奈と井上さんの作ったスイーツや昼食の写真を見せてもらったり、5人とも好きな日常系アニメを観たりした。その中で優奈と俺は、
「和真君。一口食べさせてあげます。あ~ん」
「じゃあ、俺もお礼に一口。あーん」
抹茶プリンを食べさせ合って。この抹茶プリンはさっぱりとしているけど、優奈から食べさせてもらうプリンは結構甘く感じられた。
優奈と井上さんが作った抹茶プリンはとても美味しくて、難なく完食できた。もちろん、みんなも。ごちそうさまでした。
今日は午前9時から午後4時までバイトだ。
いつもの週末よりも長い時間のシフトだ。ただ、先週末以来の久しぶりのバイトなので、気合いを入れてバイトに臨もう。
中間試験も昨日で終わったし、昨日の放課後は優奈とのデートをたっぷりと楽しんだ。だから、今日は接客中心に調子良く業務ができている。
また、優奈は自宅で井上さんと一緒に過ごすとのこと。2人の好きなアニメを観たり、スイーツを作ったりするらしい。試験前や試験中は部活動が禁止なため、試験明けの週末に2人でスイーツを作ることがあるのだという。
優奈と井上さんは、今日バイトや部活のある俺、西山、佐伯さんの分のスイーツも作ってくれるそうだ。
『萌音ちゃんと一緒にスイーツを作って待っていますね』
『どんなスイーツなのかは、そのときのお楽しみに』
とのこと。なので、それを楽しみに今日のバイトを頑張った。
午後4時過ぎ。
シフト通りにバイトが終わったので、俺はマンションのエントランスの前まで向かう。西山と佐伯さんとそこで待ち合わせをすることになっているからだ。2人の部活もそれぞれ午後4時頃に終わる予定になっている。それなら3人で一緒に帰ろうという話になったのだ。
マンションのエントランス前に向かうと……まだ2人の姿はなかった。
『バイト終わった。エントランス前にいるよ』
今朝作った俺、西山、佐伯さんのグループトークにそんなメッセージを送った。とりあえずはこれで大丈夫だろう。
西山も佐伯さんも部活が終わったのだろうか。俺がメッセージを送ってからすぐに、『既読2』とマークがついた。
『分かった。俺もさっき部活終わったから』
『あたしも部活終わったよ』
やっぱり、2人とも部活が終わっていたか。
『2人ともお疲れ様』
『ありがとな。佐伯も終わったんだったら、長瀬のところに一緒に行くか?』
『うん、そうしよう!』
3人で待ち合わせしているのだから、2人で一緒にここまで来た方が確実だな。あと、文字だけど、佐伯さんの返事がとても嬉しそうに見える。
『ということで、佐伯と一緒にそっちに行くよ』
『待っててね、長瀬』
『了解』
西山も佐伯さんも部活が終わったし、学校からここまで徒歩数分ほど。遅くても、あと10分ほどで2人と落ち合えるだろう。
高野駅の北側の景色を見ながら、俺は西山と佐伯さんのことを待つ。
夕方の時間帯になったけど、日曜日だから多くの人がいる。今くらいに終わる部活が多いのか、うちの高校の制服姿の人もちらほらと。
今日も朝から晴れて暖かいから、長袖の服を着ている人だけじゃなく、半袖の人もいる。中にはノースリーブやフレンチスリーブの人もいて。こういうところからも季節の進みを感じる。来週からは6月になり、季節が夏になるからなぁ。ちなみに、今日は優奈もフレンチスリーブのブラウスを着ていた。
「おーい、長瀬」
「ながせー」
西山と佐伯さんの声が聞こえたのでそちらを向くと、駅の方からこちらに向かって歩く制服姿の2人が見えた。俺と目が合うと、2人は笑顔で手を振ってくる。そんな2人に俺も手を振った。
2人で楽しそうに喋っているし、エナメルバッグを肩に掛けているから、スポーツ系カップルに見えてくるな。2人を知らなければそう思う人もいそうだ。
「よぉ、長瀬。バイトお疲れ様」
「お疲れ、長瀬」
「ありがとう。2人も部活お疲れ様。じゃあ、さっそく行くか」
俺は西山と佐伯さんと一緒にマンションの中に入る。住み始めた頃は感動していたオートロックの扉も、今はすっかりと慣れた。
エントランス近くにあるエレベーターで、自宅のある10階へ向かうことに。今は別のフロアにあるので、俺が上向きボタンを押してエレベーターが来るのを待つ。
「優奈と萌音、どんなスイーツを作ってくれているんだろう?」
「何だろうな。有栖川が作ってくれたものならどんなものでも嬉しいけど」
「西山らしいな」
「甘いものが好きだから、あたしもどんなスイーツでも嬉しいけど。ただ、部活をやった後だし、冷たいものならより嬉しいかな」
「冷たいものかぁ。俺もそういうものだともっと嬉しいかな」
「今日は暖かかったもんな」
果たして、西山や佐伯さんが希望する冷たいスイーツが待っているのか。ちなみに、優奈と井上さんから俺達に向けて作られたスイーツが何なのかは一切メッセージが来ていない。もうすぐ分かるし、食べるときのお楽しみにしておこう。
それからすぐにエレベーターが到着し、俺達は自宅のある10階へ上がる。
10階に到着し、自宅である1001号室へ向かった。
「ただいま」
「お邪魔しまーすっ!」
「お邪魔します」
俺が挨拶した後、佐伯さん、西山の順番でそう言った。
俺達の声が聞こえたのだろうか。リビングの方から『おかえりなさーい』という女性達の声が。その直後、リビングの扉が開き、優奈とスラックスに半袖のパーカー姿の井上さんが姿を現した。2人とも明るい笑顔でこちらにやってくる。
「和真君、おかえりなさい。バイトお疲れ様でした。千尋ちゃんと西山君、いらっしゃい。部活お疲れ様でした」
「みんなおつかれー」
「優奈、ただいま。井上さん、いらっしゃい」
「2人ともこんにちは」
「こんにちは! 2人の作ってくれたスイーツを食べたくて今日の部活を頑張ったよ!」
「俺もな」
「俺もバイト頑張れたよ」
「ふふっ、そうでしたか。みなさんリビングにどうぞ」
俺達はリビングに向かう。
優奈と井上さんがスイーツを作っていたからだろうか。リビングに入ると、甘い匂いが香ってきて。そのことで自然と期待が高まる。
勉強会をしたときと同様に、リビングのローテーブルと優奈の部屋にあるローテーブルをくっつけ、その周りにそれぞれの部屋から持ってきたクッションが置く。俺、西山、佐伯さんは勉強会のときと同じ場所に腰を下ろした。
キッチンの方を見ると、優奈が冷蔵庫を開けて何かを取り出しているのが見えた。どうやら、2人が作ったのは冷たい系のスイーツのようだ。俺と同じことを考えたのか、西山と佐伯さんはニッコリと笑う。
「これでOKね」
「完成ですね。みなさん、お待たせしました」
優奈はトレーを持ってこちらにやってくる。
「抹茶プリンです」
そう言い、優奈は俺達の前に抹茶プリンが入った透明な器を置いた。その直後、井上さんがスプーンを渡してくれる。
優奈と井上さんが作ってくれたのは抹茶プリンだったか。抹茶色のプリンの上には抹茶の粉がかかっていて。とても美味しそうだ。スマホで抹茶プリンを撮影する。
「抹茶のプリンだ! 美味しそう!」
「美味そうだな!」
井上さんと西山はテンション高めに言う。そんな2人に「ふふっ」と笑いながら、優奈と井上さんはクッションに腰を下ろした。
「本当に美味しそうだな、このプリン」
「ありがとうございます」
「みんなにもスイーツを作ろうって話になってね。暖かくなってきたし、冷たいスイーツにしようってことになって」
「それに加えて、今の時期らしいスイーツにしようと思って抹茶プリンを作ったんです」
「そうだったんだ」
今の時期らしいのはもちろんだし、優奈は抹茶系のスイーツが好きだからな。以前のデートで、そういうものを作りたいとも言っていた。井上さんもそれが分かっていて、この抹茶プリンを作ったんじゃないかと思う。
「午前中に作って、冷蔵庫で冷やしました。なので、きっと固まっていると思います」
「抹茶味だし、仕上げに抹茶の粉をかけたから、さっぱりとした甘さのプリンになっていると思うわ」
「そうなんだ。じゃあ、みんなで食べようか」
「おう!」
「そうだね! いただきまーす!」
『いただきます!』
佐伯さんの号令で俺達は抹茶プリンを食べ始めることに。
スプーンで抹茶プリンを一口分掬い、口の中に入れる。
抹茶の粉がかけられているからだろうか。プリンを口の中に入れた瞬間、抹茶の香りが冷たさと一緒にふんわりと広がっていって。噛んでいくとミルクの優しい甘味が感じられる。プリン自体にも抹茶が入っているので、甘ったるくなくさっぱりとした味わいだ。
「とても美味しいよ、優奈、井上さん」
「冷たくて美味いな、この抹茶プリン! 部活帰りに有栖川の作ったスイーツが食える日が来るとはな……!」
「美味しいよね! 抹茶の粉がかかっているからさっぱりとした甘さだし、冷たいから、部活の疲れが取れていくよ!」
西山と佐伯さんは絶賛の感想を言うと、抹茶プリンをパクパクと食べ進める。気持ちいいと思えるほどの食べっぷりだなぁ。
俺達3人の感想を受けてか、優奈と井上さんは嬉しそうな笑顔を見せる。
「美味しく食べてもらえて嬉しいです。ありがとうございます」
「嬉しいね、優奈」
そう言って、優奈と井上さんは抹茶プリンを一口食べる。2人にとっても美味しいと思える味なのか、ニッコリとした笑顔で食べている。可愛くて、微笑ましい気持ちになる。
優奈を見ながら、俺は抹茶プリンをもう一口食べる。佐伯さんの言うように、甘いし冷たいから、バイトの疲れが取れていく。
「優奈、井上さん。抹茶プリン以外にもスイーツは作ったのか?」
「ええ。私達2人分ですが、ストロベリーパイを作りました」
「あとはお昼に、食事系のサラダパンケーキも作ったわ。キッチンからもそのテレビがよく見えるから、好きなアニメを流しながら優奈と一緒にスイーツや食事を作れてとても幸せだったわ……」
そのときのことを思い出しているのか、井上さんは幸せそうな様子に。優奈にとってもいい時間だったのか、優奈は柔和な笑顔になる。
うちはダイニングキッチンだし、キッチンからでもリビングの大画面のテレビがよく見える。好きなアニメを観ながら、親友と一緒にスイーツや食事を作ることができたら、とても幸せだと言うのも納得かな。
「とても楽しかったですよね、萌音ちゃん」
「ええ。アニメを観ながら食べるのも楽しかったし。優奈の胸も楽しめたから、とてもいい時間を過ごせたわ」
そう言うと、井上さんは俺に向かって左手でサムズアップする。優奈の胸も楽しめたからと言うところが井上さんらしい。
「そっか。2人が楽しい時間を過ごせたようで良かったよ。あと、俺達に美味しい抹茶プリンを作ってくれてありがとう。バイトの疲れが取れたよ」
「俺も部活の疲れが取れていくぜ。有栖川、井上、ありがとな」
「2人ともありがとう!」
「いえいえ」
「美味しく食べてくれて嬉しいわ。作った甲斐があるわ」
優奈と井上さんはニッコリとした笑顔でそう言った。
その後は、抹茶プリンを食べながら優奈と井上さんの作ったスイーツや昼食の写真を見せてもらったり、5人とも好きな日常系アニメを観たりした。その中で優奈と俺は、
「和真君。一口食べさせてあげます。あ~ん」
「じゃあ、俺もお礼に一口。あーん」
抹茶プリンを食べさせ合って。この抹茶プリンはさっぱりとしているけど、優奈から食べさせてもらうプリンは結構甘く感じられた。
優奈と井上さんが作った抹茶プリンはとても美味しくて、難なく完食できた。もちろん、みんなも。ごちそうさまでした。
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