徒然なるままに

空を見上げて

　祖父母は煙草が大好きだった。


  とりわけ祖父などは今際のきわ、枯れ木のような指に挟んだそれをうまそうに味わい、吸い殻をもみ消してから亡くなったほどだ。


　女だてらに愛煙家だった私も昨今の禁煙ブームにおされて禁煙した。けれども墓参りの日だけはニコチンとの再会を噛みしめる。


  百円ライターで着火した煙草をいっぷく。あたまの部分がチリリと赤く燃えるのを確認してから墓前に供える。


「じいちゃん、ばあちゃん。来たったで」


　両切り煙草の先から、白い糸がゆるゆると立ちのぼっていくのを追って空を見上げた。


　青い……あまりに青い。


　祖父母が他界して3年。私がここに来る日は、きまって雲ひとつない青空だ。


　ちっとは、お休みせんといかんよ――。


　日々の忙しさに空を見上げる暇もない――そんな私に祖父母が語りかけているような気がした。


　お墓参り日和。
　ありがとう、また来るね。