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大団円……なんですかね?

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「……んん?」


どういう意味だろう?
首をひねった私に類さんは焦れったそうに言う。


「だから……気を付けろよ、あいつら会って十秒で口説いてくるからな」
「あいつらって?」
「海外の男」


このひと、なにを言っているんだろう。
世界中の男をまるまる一括りにした上に、ものすごい偏見だ。


「仕事に行くんですよ、それに同行者だっているし」
「それも大問題だ!」
「ひゃっ!」


いきなり声を荒げるから、びっくりして飛び上がってしまう。


「英輔め……あいつ……ぜったいに許さないからな」


低く唸った類さんは、憎しみあらわに拳を握りしめる。


「ちょっと、類さん?」


今回の出張は、海外の取引先への訪問も兼ねているので、英輔さんと一緒だ。
けれど業務上、私たちふたりが適任なのは紛れもない事実。
類さんも公私混同するタイプではないので、すんなりと承諾したはずなのに。


「今さら、なにが気に食わないんですか」
「……気に食わないわけではないが」
「が?」
「なんつうか、こう……モヤモヤするんだ」
「は?」
「おまえが、英輔と一緒ってのも、外国で行き摺りの男に口説かれてヘラヘラすんのも」


ん……?
英輔さんには恋人がいるし、ヘラヘラもしないと思うけど……これは、もしかして、もしかしなくても〝ヤキモチ〟ってやつじゃ……やだ、可愛い。


「ふふふふふ」
「なに笑ってんだよ」
「いいえ、べつに、ふふ」


これ以上なく不機嫌に歪んでいく端正な顔を見ながら、私がニヤニヤしていると。


「あっ、ちょっと!」


彼は踵を返して大股で歩きだした。


「待って下さいってば」


慌てて追いかけるけど、ついに彼は自宅に着くまでひとことも口をきいてくれなかった。


「ねえ、類さんってば」
「…………」
「おーい、統括部長」
「…………」
「そうだ、ビール飲みます?」
「……いらねえ」
「じゃあ、冷たいお茶――」
「いらねえ」


すっかり臍を曲げてしまったらしい。
類さんは私の呼びかけを鬱陶しそうに振り払うと、自室に戻ろうとする。


「待って下さいってば!」


彼のジャケットの裾を掴んで引き止めた。


「なんだよ」


首だけ捻って振り返った彼の顔は、完全な〝無〟だった。


うわあ、めんどくさい――。


さっきまで可愛いと思っていたけど、急激に冷めてきた。
これはもう、しばらく放置だな。
そう思って、掴んでいたジャケットから指を離したとき。


「ナース服」


ポツリと彼がつぶやいた。


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