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反撃です、なりふり構っていられません
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* * *
この一大事に、私はいったい何をしているのだろう。
悶々としながら料理を並べていると、類さんがキッチンに入ってきた。
「おっ、美味そう、さすが七海ちゃんだな」
上機嫌でから揚げを摘まみ、口の中に放り込む。
「あとは冷蔵庫にあん肝があるので、もう少し寝かせたら出来上がりです」
実はこのあん肝ポン酢が、かなり厄介だった。
まず最初につまずいたのは、あん肝の見た目だ。ひかえめに言ってかなりエグい。そりゃあ、アンコウの肝臓なんだから、当然といえば当然なんだけど….…。
さらに魚屋のおじさんに、アニサキスという寄生虫に注意するよう脅された。
おじさんはアニサキスの写真を取り出し、下処理の方法を教えてくれたのだけど、これがもう、恐ろしいのなんのって!
そもそも私は、スプラッター映画は絶対に見ない。もっといえば理科室にあった人体模型を視界に入れることすら嫌な、グロテスク耐性ゼロ人間なのだ。
あん肝の見た目だけでも膝が震えるのに、その中に寄生虫がいるかもしれないなんて、想像しただけで気絶しそうだった。
出来合いの物で誤魔化そうかとも思った。
だけど類さんが手作りに拘るからには、深い訳があるのだろう。
これでもし「俺が食いだけ」なんて言ったら、抹殺してやろうと思いながら、なんとか完成させた。
私が身振り手振りを交えながら、それを伝えると類さんは楽しそうに笑う。
「そりゃあ大変だったなあ、お疲れさん」
「はい、本当に疲れましたので、いい加減に理由を教えてください」
「理由?」
私の質問に、不思議そうに首を傾げる類さん。
まさか本当に自分が食べたかっただけなんじゃ……。
怒りの鉄拳を繰り出そうと、拳を握りしめたときだった。
ピンポン――と、来客を告げるベルが鳴る。
「おっ、来たな」
「え、誰か呼んだんですか?」
「そりゃそうだろ、何のための料理だよ」
類さんは「ほら、お出迎えに行くぞ」と、私の腕を取って歩きだす。
「ちょっ、待ってください」
状況が読めないまま扉を開けると、年齢も服装もバラバラな男が三人、満面の笑顔で立っていた。
「やあ類くん、いい所に住んでるねえ」
「あー、ここ英輔の家なんですよ」
「にしてもルイルイが頼ってくれるなんて、嬉しいなあ」
「あれ、カレーのいい匂いがするっ」
会話や雰囲気から察するに、随分と親しそうだ。
「君が七海ちゃん?」
声をかけてきたのは、五十代半ばだろうか、落ち着いた雰囲気の紳士。
「はい、谷川七海です」
私が頭を下げると彼は小さく頷き、ゆったりと微笑む。
「僕は大文字栄。今回は大変だったね、だけど、もう安心していいからね」
「へ? あの……すみません、どういうことですか?」
名前からして只者ではなさそうだけど、いったいこの人は何者で、なにをしに来たのだろう。
混乱のまま振り返って、類さんを見つめる。
すると彼は、しまったという顔で肩を竦めて、こう言った。
「あれ、まだ説明してなかったっけ?」
この一大事に、私はいったい何をしているのだろう。
悶々としながら料理を並べていると、類さんがキッチンに入ってきた。
「おっ、美味そう、さすが七海ちゃんだな」
上機嫌でから揚げを摘まみ、口の中に放り込む。
「あとは冷蔵庫にあん肝があるので、もう少し寝かせたら出来上がりです」
実はこのあん肝ポン酢が、かなり厄介だった。
まず最初につまずいたのは、あん肝の見た目だ。ひかえめに言ってかなりエグい。そりゃあ、アンコウの肝臓なんだから、当然といえば当然なんだけど….…。
さらに魚屋のおじさんに、アニサキスという寄生虫に注意するよう脅された。
おじさんはアニサキスの写真を取り出し、下処理の方法を教えてくれたのだけど、これがもう、恐ろしいのなんのって!
そもそも私は、スプラッター映画は絶対に見ない。もっといえば理科室にあった人体模型を視界に入れることすら嫌な、グロテスク耐性ゼロ人間なのだ。
あん肝の見た目だけでも膝が震えるのに、その中に寄生虫がいるかもしれないなんて、想像しただけで気絶しそうだった。
出来合いの物で誤魔化そうかとも思った。
だけど類さんが手作りに拘るからには、深い訳があるのだろう。
これでもし「俺が食いだけ」なんて言ったら、抹殺してやろうと思いながら、なんとか完成させた。
私が身振り手振りを交えながら、それを伝えると類さんは楽しそうに笑う。
「そりゃあ大変だったなあ、お疲れさん」
「はい、本当に疲れましたので、いい加減に理由を教えてください」
「理由?」
私の質問に、不思議そうに首を傾げる類さん。
まさか本当に自分が食べたかっただけなんじゃ……。
怒りの鉄拳を繰り出そうと、拳を握りしめたときだった。
ピンポン――と、来客を告げるベルが鳴る。
「おっ、来たな」
「え、誰か呼んだんですか?」
「そりゃそうだろ、何のための料理だよ」
類さんは「ほら、お出迎えに行くぞ」と、私の腕を取って歩きだす。
「ちょっ、待ってください」
状況が読めないまま扉を開けると、年齢も服装もバラバラな男が三人、満面の笑顔で立っていた。
「やあ類くん、いい所に住んでるねえ」
「あー、ここ英輔の家なんですよ」
「にしてもルイルイが頼ってくれるなんて、嬉しいなあ」
「あれ、カレーのいい匂いがするっ」
会話や雰囲気から察するに、随分と親しそうだ。
「君が七海ちゃん?」
声をかけてきたのは、五十代半ばだろうか、落ち着いた雰囲気の紳士。
「はい、谷川七海です」
私が頭を下げると彼は小さく頷き、ゆったりと微笑む。
「僕は大文字栄。今回は大変だったね、だけど、もう安心していいからね」
「へ? あの……すみません、どういうことですか?」
名前からして只者ではなさそうだけど、いったいこの人は何者で、なにをしに来たのだろう。
混乱のまま振り返って、類さんを見つめる。
すると彼は、しまったという顔で肩を竦めて、こう言った。
「あれ、まだ説明してなかったっけ?」
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