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【番外編】 情報収集源/憂太の彼氏力が高かった理由⑤
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「あー満腹!」
腹も心もしっかり満たされ、会計をしてファミレスの外に出る。
4月といえども夜は肌寒く、アウターを持って来れば良かったと思った。
道路沿いにある桜は葉桜に変わっていて、時折降ってくる花びらが街灯の光を浴びてきらりと光っている。
ひらひらと舞っている桜を見て、きれいだなと感じているとあることを思い出した。
「あ!!俺が聞きたかったのは、憂太の彼氏力はどこで学んだのかってことだよ!あぶねー」
ファミレスでの良い雰囲気で忘れていた本題を思い出した。
「彼氏力?なにそれ、気になるの?」
「なるよ!そりゃ!なんでいつも俺をスマートにエスコートできてたんだよ」
隣を歩く憂太が首を傾げる。
「うーん、最近だったら姉ちゃんが持ってるBL本を読んでたかな」
「びーえるぼん?」
聞きなれない言葉が飛び出てきた。
「そ。BL、ボーイズラブ。知らない?」
「それは知ってる!けど、BLって……えっちな本じゃなかったっけ…?」
腕を組んで、憂太をじろりと見上げる。
これまで、存在は知っていたがBL本と呼ばれるものは手に取ったことがない。
ただ、本屋で目に入ったボーイズラブの漫画や小説は、かなり大人の雰囲気を感じ取らせる表紙で、ドキっとして目をそらしたことだけは覚えている。
「なに。ムッツリとか変態とか言おうとしてる?成人向けなのも多いけど、僕たち一応成人してるからね?」
「………なるほど…?」
普段のクールな憂太からは想像できない大人な単語が出てきて、脳内が混乱する。
「その顔、絶対わかってない顔でしょ。まあ、湊がそうなるのもわかるけどさ」
「そなの?」
「そう。だって、BLを読み始めたのも湊のこと好きになってからだし。男が男を好きになったら、どうするのが正解なんだろうって思ってさ」
憂太は葉桜を眺めて歩きながら、淡々と話を続けている。
「だから、BLからヒントを得ようかと、姉ちゃんにBL本を貸して欲しいって言ったんだよ。そしたらさ、どんな属性の子が良い?とか、カップリングがどうとか、受け攻めが…みたいな話をされてさ。最初は何かの呪文かと思って、フリーズした」
頭の中にフリーズしている憂太が浮かんで、わははと我慢できずに吹き出した。
テンションの低い憂太が右往左往している姿を想像すると可笑しくてたまらない。
「だから、湊みたいな子が彼女ポジションで出てくる感じのやつで、あんまりエロくないやつ読みたいって言ったら、結構貸してくれた」
「は!?なにそれ」
「湊が自分で彼女になるって言ってたから。男同士で彼女側になる人にはどう接するのが良いのかなって自分なりに考えて、本屋さんにも探しに行ってた」
「えぇ?本屋!?」
「うん、でもさ、なんかめっちゃ色んな女の人から見られたんだよね。なんでだろ」
「そ、そりゃ、見られるだろ…わからんけど…」
女性向けの、それも男同士の恋愛を描いた作品の棚に、180cmを超えた男前が立っていたら誰だって注目するだろう。
もう憂太は行動力が高いのか、天然なのか分からなくなってくる。
「で、BLは参考になった…?」
「色々勉強になることはあったよ。でも、途中からは単純におもしろい作品が多くて、読みたくて読んでた」
「なんだよそれ!」
漫才師のツッコミのように憂太の腕をバシッと叩いた。
「BLって結構奥深いんだよ。それにさ、色んな作品を読んでたら、男同士だからとか関係ないなって分かった。結局、人間同士だから少しずつ湊のことを知って、大切に関係を築いていこうって。それが、湊の言う彼氏力の高さに繋がっていたら光栄だなあ」
こっちを向いて柔らかく微笑んだ憂太の手が俺の頭に伸びてきた。
頭を撫でられるのかと思ったら、俺の頭に乗った桜の花びらをさりげなく取り、自分の手のひらにのせて、フゥーと吹いた。
憂太は無自覚だろうが、俺はこういう憂太のさりげない行動1つ1つにドキっとしてしまうのだ。
腹も心もしっかり満たされ、会計をしてファミレスの外に出る。
4月といえども夜は肌寒く、アウターを持って来れば良かったと思った。
道路沿いにある桜は葉桜に変わっていて、時折降ってくる花びらが街灯の光を浴びてきらりと光っている。
ひらひらと舞っている桜を見て、きれいだなと感じているとあることを思い出した。
「あ!!俺が聞きたかったのは、憂太の彼氏力はどこで学んだのかってことだよ!あぶねー」
ファミレスでの良い雰囲気で忘れていた本題を思い出した。
「彼氏力?なにそれ、気になるの?」
「なるよ!そりゃ!なんでいつも俺をスマートにエスコートできてたんだよ」
隣を歩く憂太が首を傾げる。
「うーん、最近だったら姉ちゃんが持ってるBL本を読んでたかな」
「びーえるぼん?」
聞きなれない言葉が飛び出てきた。
「そ。BL、ボーイズラブ。知らない?」
「それは知ってる!けど、BLって……えっちな本じゃなかったっけ…?」
腕を組んで、憂太をじろりと見上げる。
これまで、存在は知っていたがBL本と呼ばれるものは手に取ったことがない。
ただ、本屋で目に入ったボーイズラブの漫画や小説は、かなり大人の雰囲気を感じ取らせる表紙で、ドキっとして目をそらしたことだけは覚えている。
「なに。ムッツリとか変態とか言おうとしてる?成人向けなのも多いけど、僕たち一応成人してるからね?」
「………なるほど…?」
普段のクールな憂太からは想像できない大人な単語が出てきて、脳内が混乱する。
「その顔、絶対わかってない顔でしょ。まあ、湊がそうなるのもわかるけどさ」
「そなの?」
「そう。だって、BLを読み始めたのも湊のこと好きになってからだし。男が男を好きになったら、どうするのが正解なんだろうって思ってさ」
憂太は葉桜を眺めて歩きながら、淡々と話を続けている。
「だから、BLからヒントを得ようかと、姉ちゃんにBL本を貸して欲しいって言ったんだよ。そしたらさ、どんな属性の子が良い?とか、カップリングがどうとか、受け攻めが…みたいな話をされてさ。最初は何かの呪文かと思って、フリーズした」
頭の中にフリーズしている憂太が浮かんで、わははと我慢できずに吹き出した。
テンションの低い憂太が右往左往している姿を想像すると可笑しくてたまらない。
「だから、湊みたいな子が彼女ポジションで出てくる感じのやつで、あんまりエロくないやつ読みたいって言ったら、結構貸してくれた」
「は!?なにそれ」
「湊が自分で彼女になるって言ってたから。男同士で彼女側になる人にはどう接するのが良いのかなって自分なりに考えて、本屋さんにも探しに行ってた」
「えぇ?本屋!?」
「うん、でもさ、なんかめっちゃ色んな女の人から見られたんだよね。なんでだろ」
「そ、そりゃ、見られるだろ…わからんけど…」
女性向けの、それも男同士の恋愛を描いた作品の棚に、180cmを超えた男前が立っていたら誰だって注目するだろう。
もう憂太は行動力が高いのか、天然なのか分からなくなってくる。
「で、BLは参考になった…?」
「色々勉強になることはあったよ。でも、途中からは単純におもしろい作品が多くて、読みたくて読んでた」
「なんだよそれ!」
漫才師のツッコミのように憂太の腕をバシッと叩いた。
「BLって結構奥深いんだよ。それにさ、色んな作品を読んでたら、男同士だからとか関係ないなって分かった。結局、人間同士だから少しずつ湊のことを知って、大切に関係を築いていこうって。それが、湊の言う彼氏力の高さに繋がっていたら光栄だなあ」
こっちを向いて柔らかく微笑んだ憂太の手が俺の頭に伸びてきた。
頭を撫でられるのかと思ったら、俺の頭に乗った桜の花びらをさりげなく取り、自分の手のひらにのせて、フゥーと吹いた。
憂太は無自覚だろうが、俺はこういう憂太のさりげない行動1つ1つにドキっとしてしまうのだ。
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