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02.鬼上司と歪な関係
04.不機嫌な後輩
しおりを挟むまた生産性のない時間を過ごしてしまった。
もうこんなことはやめよう。
次の日の会社で居心地が悪いのは
私だけなんだから。
「相良くん、今月の役員会の資料なんだけど、
私のパート終わったから、あとよろしくね」
作業中の相良くんに声をかけると、
私の方をチラ見して画面に向いたまま
ぶっきらぼうに「わかりました」と
返事してくる。
私の悩みの種はここにもあった。
仮にも先輩なんだけど、なんだその態度は、
と少し癪に触るが、何か仕事で
イラついているんだろうと踵をかえす。
「相良くん、納会の日梨沙が久野くんに
絡まれてて迷惑そうにしてたから
助けたのに、余計なお世話みたいな
態度取られたのがムカついてるんだって」
「なんすかそれ」
カフェのランチでアイスコーヒーを飲みながら
加藤さんに相良くんの話を聞くと、
予想外にも原因は私にあったことを知らされる。
加藤さんはなんでも知ってる。
一体どこからそんな話聞いてくるんだ
っていう情報も網羅してるから本当に凄い。
「相良くん、梨沙のことめっちゃ好きじゃん」
そんな、まさか。
「そうなんすか」
「あら、一緒にお昼もサシ飲みも行ってるのに
鈍すぎでしょ」
相良くんはコミュニケーション能力が高いので
彼にとっては2人でお昼に行くのも飲みに行くのも
普通なんだなと思ってた。
「いや、あれは相良くんと年近い人が
私しかいないからかと……」
「……相良くん可哀想」
だってそんな、何も言われていないのに
相良くんは私のことが好きなんだって思うとか
セクハラだし痛いババアでは?
と思いながら、私をじっとり見つめてくる
加藤さんを見つめ返す。
「みんな、相良くんは絶対
梨沙のこと好きだと思ってるよ」
「やだやりづらいんですけど……
てか、納会の日のことって謝った方が
いいんですかね」
「そんなの自分で考えなさいよ」
「飲み誘って謝るか~……」
定時後、ススッと相良くんの席に近づく。
「相良くんあのさあ、久しぶりに
今日のみでも行かない?予定あれば…」
「加藤さんと久野さんと飲みです」
なんと言うタイミングだ
「えっ、私も行きたいな~なんて」
不機嫌そうな相良くんにたじたじになりながら
負けじと食い下がる。
「梨沙、飲み行くよ」
加藤さんに後ろから声をかけられる。
「えっ!」
「もう上がれる?
相良くん、私たち先行ってるよ」
「10分くらい遅れて行きます、すみません」
「加藤さんこれは」
パタパタと加藤さんの後ろを追いかけて聞く。
「今日早速飲み誘って行くんじゃないかと思って
先回りしたんだよ、
1人じゃ悪化しかねないと思って」
「ええ~加藤さん神!」
「でも元凶の久野さんいるのは良くないんじゃ」
「元凶はあんたでしょ」
加藤さんと久野さんは楽しそうに良く喋る。
相良くんはぶすっとしたままで機嫌が良くならない。
2時間も飲んだところで加藤さんが
私と相良くんに向かって口を開く。
「実はさあ、久野くんと私、
納会の一週間後くらいから付き合ってんだよね!」
あはは、と大きく口を開けて
楽しそうに笑う加藤さん。
「え?!」「え、嘘?!」
「よく稼いで、よく遊んで、適齢期になった男
最高でしょ!可愛いし!イケメンだし!」
「加藤さんやめてよ~」
意外な組み合わせだったので驚いたが、
久野さんみたいなチャラい男には加藤さんみたいな
美人で、心が広くて、度胸があって、
いざとなったら久野さんを捨てられるような
良い女が薬になるような気がする。
「だからあんたたちも仲良くしなさい、
みんなやりづらいでしょ、全く」
「だって、梨沙さんが先に俺に冷たくするから」
「いつまで根に持ってんだよ」
「久野さんも悪いっすからね」
3人ともだいぶ酔っ払って変なことを
言い出さないかヒヤヒヤする。
まあもっとも、加藤さんは久野さんと私が
納会の日何をしていたか、
知ってたりするんだろうけど……
外に出ると、蒸し蒸しした暑苦しい空気が身を包む。
東京の夏は長い。特にここ数年10月まで
平気で半袖で過ごせるし本当、嫌になる。
「相良くんさあ、ほんとは
シラフの時に言うべきなんだけど
勇気なくて、あの時はごめんね」
「良いっすよ、俺もすみません、嫌な態度とって」
加藤さんと久野さんはもうすっかりできあがって、
前の方を肩を組みながら歩いてる。
「梨沙さんのこと好きって話……
気にしないでください、
俺は不釣り合いだってわかってるから」
そんなことないよ、とフォローしたら
余計に相良くんを傷つけそうだと
酔いながらも冷静になった。
「何それ、私のこと好きなの?ありがと~」
「うぜえ」
「先輩に失礼だぞいつもいつも」
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