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02.
03.復帰
しおりを挟む「石橋くん、来週から復帰できるって」
私は週定例で上司からその報告を受けた時、
人生で一番ホッとした。
「うちのチームじゃなくて
ソリューションの方に異動になるけど」
やはり元通り、激務のチームに復帰するのは難しく、
彼の希望で別のチームへの異動となった。
「やっぱ若手には厳しかったかな~、うちの仕事」
「まあでも無事復帰できるってことで
普通に接してやってもらえればいいと思うんで」
そう言われるのが、本当に癪だ。
きっと檜垣さんと接する機会が無くはない部署なので
それを避けるための異動だろうから
私が代わりに異動しても何の意味もないのだろうが
こんなことならいっそ、あの男も道連れにして
業界から身を引きたいくらいだ。
それも、あの男がこの業界を去らないと
意味が無いわけなので、
私はせめて石橋くんにこれ以上迷惑がかからないよう
配慮することしか出来ない。
週明け。
予定通り石橋くんは復帰してきた。
「今日から石橋さんが復職になります、
企画から仲介チームに異動になります。
何か一言あれば」
「みなさんご心配おかけして、また
ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした、
ソリューションでまた元気に頑張りますので
よろしくお願いします」
本当は私のせいなのに、みんなにきっと
根性なしとか思われているに違いない。
目を合わせられない。
「本日はありがとうございました、
次回はそちらに伺いますね」
「こちらこそお時間ありがとうございました、
失礼します」
今日のルート訪問はこれで終わり。
事務所にもどって資料作成だ。
電車を降りてメールチェックをしながら
歩いていると、前方を歩く誰かに
ぶつかってしまった。
「あっ、すみませ…」
「あ、緋莉さん…」
石橋くんだ。
「今戻りですか」
「あ、そうそう……」
少々気まずいまま、事務所に向かって再び歩き出す。
「あの、石橋くん、私のせいでこんなことになって
ほんとにごめんね……」
「いや、なんで謝るんすか、
緋莉さんのせいやないですよ?
僕は全然…むしろ心配かけてごめんなさい」
ヘラッと笑って、後ろ頭をかく。
ああ、その笑顔が苦しい。
「…あいつから、何かされてたんでしょ」
私が問うと、顔色が変わる。
「……何でそれ」
事の経緯を正直に話した。
噂を聞いたこと、
家に行った時に隣の女の子に教えてもらったこと。
「緋莉さんに話すことやないんで、
気にしないでほしいんですけど」
そう言いながら、足を止める。
「やからそれで、一時追い詰められてて……
緋莉さんいつか殺されてまうんやないかと思って
ずっと心配してたんです…生きててよかった~…」
私をぎゅっと抱き締める。
石橋くんに心配される資格なんかない、私は。
「あ、ごめんなさいセクハラや」
相変わらず、
石橋くんのストレートな感情表現に揺さぶられる。
優しくて、思いやりがあって、利他主義。
もう全て忘れて、他所で幸せになってほしい。
「それより…私と関わったらまた迷惑かけちゃうから
もうあんまり話しかけないようにするね…
ごめんね、引き止めちゃって」
同じ経験をしたら、私の顔を見るだけで嫌なはずだ。
「そんなこと言わないでくださいよ、
緋莉さんも元気そうで安心しましたよ僕は
また今度飲み行きましょうよ、ね?」
言えない、言えないよ。
あいつと結婚しましたなんて。
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