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01.
03.軟禁
しおりを挟む月曜、気分は最悪、身体もボロボロだ。
土日中、この男のいいようにされていた。
「この様子じゃ行けなそうだね、会社」
また私を見て満面の笑み。
「…会社に電話させてください」
「いいよ、掛けてあげる」
別の所に掛けないよう、ご丁寧に
私の上司の登録番号をタップされた状態で
携帯を渡される。
「もしもし」
「あっ、高瀬です…すみません、
今朝から体調が悪くて、今日休ませてください」
「え、珍しいじゃん、どうしたの?熱は」
「少し、熱っぽいかもです…」
いつもは厳しくて細かくて、嫌いなのに、
今日は上司と話せて嬉しい。
「ちゃんと医者行けよ、お大事に」
「はい、すみません、ありがとうございます…」
流石に、これだけでは何も気付かれずに
無情にも通話は終わる。
「じゃあ僕は仕事行ってくるから
……逃げちゃダメだからね」
勝手に動いたら怒られる気がして、
朝ごはんから何も食べず、電気もつけずに
寝るという目的を達成するためのもの以外
何も無い部屋で、檜垣さんの帰りを待った。
定時は18時、営業職なので、接待がない日は
何かしら残業があるはずだ。
両手は離れないままだが、
自由に動き回れるようにはしてもらった。
逃げようと思えばいくらでも逃げられるが、
家はすぐ近くだし、檜垣さんの家を
無施錠で出ることが躊躇われた。
監禁されているのに
犯人に悪いことをできないなんておかしな話だ。
これまでの行いが良かったあの人を恨む。
早くともあ19時半、遅かったら23時頃まで
帰ってこないだろう。
毎日3食しっかり食べるタイプなので
流石にお腹が空いてくる。
悔しいが、事実私は檜垣さんの帰りを
心から待っていた。
ドアが開く音がする。
パチパチと電気のスイッチを入れる音。
私のいる部屋に真っ直ぐに向かってくる。
「…ただいま」
私がいてホッとしているのか、
気の抜けた顔をしている。
「電気くらいつけなよ」
まるで拗ねて真っ暗な部屋にいる奥さんに
言うように、溜息混じりで言う。
自分もどこかホッとしているのに、驚く。
「ご飯作るから待ってて」
ご丁寧に夕食まで用意してくれるとは。
気の利いた監禁だ。
温かくて美味しい食事に絆されて涙が出そうになる。
閉じ込められて頭がおかしくなりそうな時に
これは堪えた。
「お風呂一緒に入ろっか」
食事を終えて、後片付けもしてもらって、
檜垣さんが仕事の連絡を返し終えた頃に
声を掛けられる。
「…いいですよ」
私の素直な反応を見て一瞬動きが止まるが、
すぐ満面の笑みを浮かべる。不気味なくらいに。
嫌がったらもっと喜んで無理強いされるに違いない。私は全て素直に従うことにした。
これからどうなってしまうのだろうという不安には
蓋をして。
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