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01.

13.好きなだけ

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仕事が終わったら、まっすぐ
家に帰るようにしているが
別にそうしろと言われているわけではなく、
オフの時間は比較的
自由にしていいことになっている。

「なに、賢也くんと別れたの?」
「で今別の男の家にいるわけ?」
「おっほっほぉ~涼香やるねえ」

なので、こうして友人とも飲みにこられるわけだ。

「別れたとき良くしてくれて、そのままね…」
「付き合ってないわけ?」
「んー…」

今日の話題は私で持ちきり。
それもそのはず、みんなはちゃんと
長く付き合ってる彼氏がいて、一人は既婚、
ほかも当然結婚するようなテンションのメンバーで、
こんな面白い話が出てくるのは私くらいのものだ。

「涼香は悪い男に引っかかりやすそうだから
 心配だよ~」
「写真ないの?」

名前を検索すればいくらでも見られるが
付き合ってもいない龍之介さんを話題に出すのは
気が引ける。

「無いよ~…」
「なーんだよつまんないなあ!もっと飲んだら?!」
「久々男漁り行く?!」



この感じ、久しぶりだ。
みんな別れたての私を、
元気づけようとしてくれてる。

「人多いな~」
「金曜だからね」
満員電車くらいごちゃごちゃした店内。
人との間隔を近づけるうるさい音楽、話し声。
「今日の男は涼香が全部選んでいいからね!」

憂さ晴らしにはぴったりの場所だ。
顔が整った友人と一緒にちやほやしてもらえて、
気が合う男がいれば連絡先を交換したり、
ここを抜けたりできる。

まあ、そうは言っても、私の目的は
「これ飲みたいなー」
飲み放題のバーカウンター出でてくるものではなく
VIP席、当然の権利のように課金して
シャンパンのボトルを開ける。
「かんぱーい!」

もちろん男の金で。
男なんかクソだ。ここにいる奴らも、賢也も。
あと…



「たらいま~」

無意識で鼻歌を歌いながら、
シャワーを浴びて、髪を雑に乾かして、
歯磨きをして。

「涼香、飲み過ぎ」
「んえ~」

間接照明の明かりで本を読んでいた
龍之介さんに向かってダイブする。

「…今何時やと思ってんの」
「わかんない」

もぞもぞとベッドに潜る。
あったかい。

「…どこいってたん」

本を置いて横になる。
少し眠そうな顔、困った顔。
無防備な唇にキス。

やっぱり好き。

「涼香…ッ」

何度も重ねる唇、
私の帰りを待ちくたびれたような、急に襲われて
動揺してるような目。

「待って…」

もっと困ればいい。

「好きじゃなくてもいいよ」

「中途半端なことして、涼香のこと、
 傷つけたないねん…」

私はもう既に十分傷ついてる。

「もう寝よな?ん?」
そう言って、私の肩を掴んで引き離されて
宥められるように擦る。



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