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01.
09.エゴ
しおりを挟む目が覚めると、水が沸かされている音がする。
コーヒーのいい香り。
今日も穏やかな朝だ。
昨日見た夢が
『こんな点数でいいと思ってんのか』
『でも1位だったよ…』
『ピアノは辞めさせる約束だったな、
あんなに金使って、無駄だったな』
『やだ!次は頑張るから!!』
『黙れ!!!ゴミが!!!!出来損ない!!!
死ね!!!!消えろ!!!!死ね!!!!!』
嘘みたいだ。
「…おはようございます」
「おはよ」
私が身体を起こすと
サイドテーブルにコーヒーを置いてくれる。
「昨日はごめんな無理矢理付き合わせて」
「え?」
「嫌やったらりょかちゃんに別の部屋あげるし、
何なら別の物件借りたるから、てかそうしよな、
何言ってんねん俺…はは」
起きたばっかりで働かない頭が追いつかない。
「ごめん」
「なんで謝るんですか?」
伏せた視線を上げて、私の方を見る。
「私のこと褒めてくれて、認めてくれて、
優しくしてくれるし、
龍之介さんといると安心するし
今はしがないOLで、だめだめですけど、
私、変われるんじゃないかなって思えるんです
だから、全然嫌じゃないです」
まだ少しの間しか一緒に過ごしてないけど、
私のこと考えてくれて、
居心地良く生きられる気がする。
「ありがとう」
「それに、
龍之介さんがいてくれると、よく眠れます」
昨日私のこと好きって言ったのは、
覚えてるのかな。
「好きって言ったら、困りますか…」
彼は少し驚いた顔をして、ベッドの縁に座る。
「困るわけないやんか」
そう言う顔は、言葉とは裏腹に動揺している。
「でもごめん、今誰とも付き合われへんねん」
唐突な否定の言葉に、胸が痛む。
「あっ、大丈夫です、付き合って欲しいって
意味ではないので……朝ごはんの準備しますね」
少し期待していたのかもしれない。
それでもいいと思った。この人の隣が心地良いから。
私も、これが憧れなのか、
自分を肯定してくれる人間に対しての好感なのか、
それが何なのかよく分からないうちは
このままでいよう。
そう思って、彼を残してドアをそっと閉める。
「……何してんねん俺」
夜。
仕事はないが、同い年の二人と
わざわざ休日だが飲みに出かけた。
二人の仕事が無事片付き、漸く飲みに行けた。
「私ねー、仕事辞めることにした!」
「え?!」「なんで?!」
突然の宣言に驚きを隠せない二人。
「つまんないなーと思って、
色々やってみることにした」
「涼香いないとか無理なんだけどー!」
「次なんの仕事すんの?決まった?」
「まあ、アテはあるかな」
辞めて少し時間が経てば、どうせ忘れるのに。
「もう今日は飲もー!壮行会もするんだからね!!」
・
・
・
すっかり遅くなって、龍之介さんの家が
都心にあるのをいいことに、終電がなくなるまで
飲んでしまった。
シャワーを浴びてそっと寝室に入ると、
シーツが擦れる音がする。
「遅い」
「ごめんなさい、へへ」
今朝言われたことが地味にショックで
ついつい深酒をしてしまった。
「涼香がおらんと寝られへん」
「えー、なんでー」
フワフワとした足取りでベッドに入ると
私を抱きしめる。
「なんですか~」
「帰ってこーへんかと思った」
そう言って、私を強く抱きしめる。
「苦しい~」
「心配した、ちゃんと連絡して」
どうせただの遊び相手なんだから、
帰ってこなくてもいいでしょ。
酔いすぎて、曖昧な記憶の中、
言ったか言ってないかももう分からないまま
目を閉じた。
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