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01.

08.確認 #

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家に戻ってくると、
図面訂正があったので先に寝るように言われ、
一人でベッドに入った。

美味しい食事、快適なお風呂、肌触りの良い寝床。
目を閉じるとすぐに眠りに落ちてしまう。




不意に、ベッドが沈んで目が覚める。

「月村さんどしたんですか……」
目の前の腕を、目線でなぞって見上げる。

「月村さん…ッ」
一気に目が覚めてしまった。
綺麗な顔が、近い。

「りょかちゃんは俺のことどう思ってるん」

「近いです…」
「…なぁ」

耳元の後ろの方に指先を滑らせられて、
ゾクゾクする。

「隣で寝ててなんとも思わんかったわけ?
 傷つくねんけど」

「や……その」

首筋に、触れるか触れないかの距離。

遠い存在で、美しくて、触れられなかった。

「涼香」
手をすりすりっと触られて、指が絡まる。
擽ったい。
「嫌なら、止めへんと……止まらへんよ」

視線を上げると月村さんと目が合う。
吸い込まれそうな黒。
一瞬触れるキス。

「…嫌?」
胸が苦しいくらい、心臓がバクバクいってる。

首を振ると、また重なって、
唇の隙間からぬるっと舌が入ってくる。
頭がふわふわしてきて、気持ちい……

「名前で呼んでよ、俺のこと」
指先を絡められて、じわじわと責められる。
「知っとるやろ?」
月村さんがしてくれることしかもう考えられない。

「…龍之介、さん……」
口元を手で覆いながら絞り出すと、彼の口元が緩む。
「……可愛すぎ」




一週間手を出されなかったのは何だったのか、
この人がわからない。
一週間泊めてもらって、
職まで提供してもらった見返りとしては
こんなの安すぎる。

「なんでこんな良くしてくれるんですか、
 知り合ったばっかりなのに」

私が尋ねると、彼は私の頭を撫でて優しく微笑む。

「…涼香のこと、好きやから」

連日の疲れが溜まっているのか、
今にも目が閉じてしまいそうだ。

私の背中に腕を回して、そっと擦る。

誰かに優しくされるのに弱い。
優しくされ慣れていない私には分からない。

「涼香のことは……俺が守ったるからな」

この人の考えていることが。



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