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しおりを挟む会話の感じから、どうやら探しているのは私らしい。
陛下の花って言い方がよく分からないけれど……。
ただ、ここはまずいので見つからないところに移動せねばならない。
私は、ここに来ている間にもしものためにと教えられていた流鶯さまの居室から陛下の寝所への、脱出ルートへと静かに進んだ。
こんな所で、田舎で子どもの頃に培った隠れんぼのスキルが役に立つとは思わなかった……。
昔っから気配を消しての移動だったり、上手く見つからないように移動したりというのが得意だった。
私はそんな今まで地味だった気付かぬ特技を遺憾無く発揮して、無事に通路を進み陛下以外では本当に許された者のみが入れる寝所にたどり着いた。
シンプルで落ち着いた雰囲気の寝所は、昼間なのもあって現在人の気配はない。
さすがに、あの武官や文官もここまでは踏み込まないだろうと思いたいが、念には念をと私はこの部屋で一番見つかりにくいであろう場所に身を隠して息を潜めた。
そうしてどれくらいの時間がたっただろう。
気を張っていたので長く感じたけれど、そこまで時間は経っていなかったかもしれない。
寝所の外がにわかに騒がしくなり、私は気配を殺しつつ外の音に意識を向け続けた。
「クッ!気づかれるのが早くないか?!」
「まだ娘が見つかっていないのに!」
「このままじゃ、俺達もダメになる。諦めよう」
そんな会話が聞こえてじっと身を隠し耐えていると、こんな後宮の最奥である陛下の寝所にまで入り込んだ不届き者に、鼻で笑うように声をかける主が現れた。
「馬鹿が、とっくにお前らの動きなんざ読まれてるよ。陛下はもうお気づきさ」
その声は私にも聞きなれた声。
尊大ながら力強く、逞しい。
陛下の側近武官の飛龍さまの声だった。
「全く、画策なさるならもっと上手いことやればよろしいのに。こんなに分かりやすく大胆に動くとは、やはり馬鹿ですね」
ため息とともに辛辣に告げるのは中性的美声の泰然さま。
姿こそ見えないものの冷たい視線とため息つきで言われているのが目に浮かぶ。
泰然さまも、結構辛辣よね……。
文官だし、頭脳戦担当って感じだしね……。
まったく、今回の相手はなんでこんな分が悪い相手に喧嘩を売ったんだろう。
そう考えても自身に不利にしかならないことなのに……。
「ま、あなた達は元宰相さまから甘い恩恵を受けてましたからね……。実力もないのに高位に着いてたのが間違いです」
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