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新たな人物との出逢い
しおりを挟む後宮に来てあっという間に季節が一つ過ぎてしまった。
その間に私はせっせと季節を先取りした生地を織ってはお針子さんたちと連携して、季節の装いものを仕上げていった。
側妃さまがたからも概ね好評らしく、私は今は既に秋と冬に向けた生地を織り始めていた。
なので、染色と機織りに大忙しなのは相変らずで、日々工場に籠ることが多い。
私は自分に与えられた部屋と工場の往復が日常だった。
そこに今日は思わぬ申し出があって私は下っ端だというのに、本日側妃さまのお一人である流鶯(リュウオウ)さまにお茶に招かれていた。
「そろそろだわ!」
私は工場に置かれた時間の分かる置物を見て、手を止めて身だしなみを整えて工場をあとにする。
そうして来たのは第二側妃の流鶯さまの室。
部屋の入口には、流鶯さまの侍女が待ち構えており私は頭を下げて名乗った。
「こちら、流鶯さまの室で間違いないでしょうか? 私は本日恐れ多くもお招き頂きました、春麗です」
そう名乗ると、侍女は一つ頷くと笑顔で扉を開いてくれた。
「さぁ、流鶯さまがお待ちですよ」
そうして招かれた流鶯さまの室は淡いグリーンで敷布やらが統一されており、爽やかで落ち着いた雰囲気の空間だった。
室にある卓と椅子、そこにお茶の香りと美味しそうな甘い匂いがした。
そこに掛ける黒髪の美しい貴人が流鶯さまだと気づいた。
彼女は朗らかに微笑むと、私に声をかけてきた。
「良く来てくれましたね、春麗。さぁ、おかけなさい」
誘われて、私は恐れ多くも流鶯さまと同じ卓に着く。
本来会うことも、話すこともないほどの高貴なる夫人である。
私は庶民だし、この場では女中なのだから。
しかし、流鶯さまは身分差など気にした素振りもなく、微笑んで柔らかく招いてくださった。
出来た人なのだなと、感じた。
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