上 下
23 / 34
溢れる愛におちる~部長の甘くて過保護な溺愛~

3

しおりを挟む
「そんな俺と専務だから、その奥さんになった村山ともちょこちょこ話したりするんだ。会社で無表情と言われる表情をしていても、長い事付き合いのある二人にはその表情でも読まれてな……」

そう言った時の和臣さんはちょっと不服そう。
拗ねてる弟みたいだ。

「それで、千波を良く見ていた俺に気付いた二人にはよくからかわれていた。告白しないのか?とかまだ片想いのままなのか?とかな……」

クスッと漏れた苦笑い。

「そんな二人だから最近の俺にも気付いてな。お付き合いするようになったなら、従兄弟夫妻にも紹介してくれって言われてな。まだ付き合ってはいないがそろそろだと思うと言っていた時だろうな、千波が見たのは」

そうだったのか。

「じゃあ、和臣さんが微笑んで話してたのって……」

「間違いなく千波の事を考えて話してる時だ。俺の表情が会社で変わるのなんて千波の事以外ではそうある事じゃない」

そう断言する言葉に、自然と顔に熱が集まってきて私は和臣さんの胸元に顔を埋めた。
恥ずかしすぎる。
勘違いして、落ち込んで逃げるなんて……。
私どれだけ痛い程に想ってるんだろう。

こんなのもう完璧に落ちてる。
彼に恋してるも同然。
恋してるなんてもんじゃなくて、愛してるの方が近い。
いや、足りないかも。
あの勘違いで起きた絶望感と悲しみのショックはとても強かったんだから……。

「それで、千波が、話したかった事はなんだ?」

そう、問われて意を決して話すことにした。

「あの、びっくりすると思うんだけれど……」

そう、前置きをすると

「うん?」

優しい笑みとその瞳に私はグッと手を握ったあと、しっかりと和臣さんを見つめて告げた。

「妊娠したの……。和臣さんとの赤ちゃんが居るの……。私、産みたい!」

そう、思いの丈を込めて告げる。
すると、抱きしめてくれていた腕にギュッと力がこもり、私の肩に和臣さんの頭が乗っかる。

「千波、嬉しい。産みたいって思ってくれて、そう伝えてくれてありがとう……」

そう言うと顔を上げて、私の頬にも手を添えて目線を合わせる。

「千波、ありがとう。ごめんな、妊娠に気づいた時びっくりしたんじゃないか?でも、俺どうしても千波が欲しくてあの時避妊しなかった。どうなるか分からなくても、こうなって欲しいって想いがあった。卑怯で千波の意思を聞かなかった事は謝る。でも、俺は望んでたんだ。俺と千波を繋ぐ生命が宿る奇跡を……」

そう言う和臣さんの顔は真剣で、それは和臣さんの本心である事が窺えた。

「同意の上での事で和臣さんだけのせいじゃないでしょ?私、病院でこの子の心音を聞いた時にすんなり決められたの、絶対に産むって。たとえ一人でも産むって。でも、出来れば和臣さんと一緒がいいし、喜んでくれたら良いなとは思ってた……」

そう、私も感じた事を素直に伝えた。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

本物の恋、見つけましたⅡ ~今の私は地味だけど素敵な彼に夢中です~

日之影ソラ
恋愛
本物の恋を見つけたエミリアは、ゆっくり時間をかけユートと心を通わていく。 そうして念願が叶い、ユートと相思相愛になることが出来た。 ユートからプロポーズされ浮かれるエミリアだったが、二人にはまだまだ超えなくてはならない壁がたくさんある。 身分の違い、生きてきた環境の違い、価値観の違い。 様々な違いを抱えながら、一歩ずつ幸せに向かって前進していく。 何があっても関係ありません! 私とユートの恋は本物だってことを証明してみせます! 『本物の恋、見つけました』の続編です。 二章から読んでも楽しめるようになっています。

【完結】10引き裂かれた公爵令息への愛は永遠に、、、

華蓮
恋愛
ムールナイト公爵家のカンナとカウジライト公爵家のマロンは愛し合ってた。 小さい頃から気が合い、早いうちに婚約者になった。

ただいま冷徹上司を調・教・中!

伊吹美香
恋愛
同期から男を寝取られ棄てられた崖っぷちOL 久瀬千尋(くぜちひろ)28歳    × 容姿端麗で仕事もでき一目置かれる恋愛下手課長 平嶋凱莉(ひらしまかいり)35歳 二人はひょんなことから(仮)恋人になることに。 今まで知らなかった素顔を知るたびに、二人の関係は近くなる。 意地と恥から始まった(仮)恋人は(本)恋人になれるのか?

かりそめ婚のはずなのに、旦那様が甘すぎて困ります ~せっかちな社長は、最短ルートで最愛を囲う~

入海月子
恋愛
セレブの街のブティックG.rowで働く西原望晴(にしはらみはる)は、IT企業社長の由井拓斗(ゆいたくと)の私服のコーディネートをしている。彼のファッションセンスが壊滅的だからだ。 ただの客だったはずなのに、彼といきなりの同居。そして、親を安心させるために入籍することに。 拓斗のほうも結婚圧力がわずらわしかったから、ちょうどいいと言う。 書類上の夫婦と思ったのに、なぜか拓斗は甘々で――。

異世界ゆるり紀行 ~子育てしながら冒険者します~

水無月 静琉
ファンタジー
神様のミスによって命を落とし、転生した茅野巧。様々なスキルを授かり異世界に送られると、そこは魔物が蠢く危険な森の中だった。タクミはその森で双子と思しき幼い男女の子供を発見し、アレン、エレナと名づけて保護する。格闘術で魔物を楽々倒す二人に驚きながらも、街に辿り着いたタクミは生計を立てるために冒険者ギルドに登録。アレンとエレナの成長を見守りながらの、のんびり冒険者生活がスタート! ***この度アルファポリス様から書籍化しました! 詳しくは近況ボードにて!

貴方にとって、私は2番目だった。ただ、それだけの話。

天災
恋愛
 ただ、それだけの話。

吸血鬼公爵に嫁いだ私は血を吸われることもなく、もふもふ堪能しながら溺愛されまくってます

リオール
恋愛
吸血鬼公爵に嫁ぐこととなったフィーリアラはとても嬉しかった。 金を食い潰すだけの両親に妹。売り飛ばすような形で自分を嫁に出そうとする家族にウンザリ! おまけに婚約者と妹の裏切りも発覚。こんな連中はこっちから捨ててやる!と家を出たのはいいけれど。 逃げるつもりが逃げれなくて恐る恐る吸血鬼の元へと嫁ぐのだった。 結果、血なんて吸われることもなく、吸血鬼公爵にひたすら愛されて愛されて溺愛されてイチャイチャしちゃって。 いつの間にか実家にざまぁしてました。 そんなイチャラブざまぁコメディ?なお話しです。R15は保険です。 ===== 2020/12月某日 第二部を執筆中でしたが、続きが書けそうにないので、一旦非公開にして第一部で完結と致しました。 楽しみにしていただいてた方、申し訳ありません。 また何かの形で公開出来たらいいのですが…完全に未定です。 お読みいただきありがとうございました。

【完結】聖女が世界を呪う時

リオール
恋愛
【聖女が世界を呪う時】 国にいいように使われている聖女が、突如いわれなき罪で処刑を言い渡される その時聖女は終わりを与える神に感謝し、自分に冷たい世界を呪う ※約一万文字のショートショートです ※他サイトでも掲載中

処理中です...