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溢れる愛におちる~部長の甘くて過保護な溺愛~

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二週間ぶりの和臣さんの部屋。
いつもは綺麗なのに、今日は昨日のシャツやら少し散らかってる。

「あぁ、ごめん。すぐ片付ける。ここに座っててくれ、お茶入れてくるから」

シャツを持ちキッチンに行った和臣さん。
この部屋は動線が良く出来ていて、キッチンから洗面所にも繋がっているのだ。

そうして程なくして和臣さんが今度はお茶を持ってこちらに戻って来た。
そのトレーにはコーヒーでも紅茶でもなくほうじ茶だった。
珍しいので少し首をかしげたものの、今私はコーヒーも、紅茶も避けているのでそのままありがたく飲む。
温かな飲み物に一息つく。
すると、和臣さんが話し出した。

「千波…。俺は千波に何かしたか?電話したくない、会うのを避けるような何かを…。ならそれが何か教えてくれないか?」

そう切り出した和臣さんは、眉間に少し皺を寄せて気落ちしたような感じで聞いてきた。
私も答えるために、小さく深呼吸すると話し始めた。

「えっと……。昨日和臣さんが出張から戻って来た姿を見つけて声をかけようとしたの……。そしたら、秘書課の村山さんと親しげに話してて。会社で見た事のなかった穏やかで優しい顔して話す和臣さんにビックリして。並んでる二人がお似合いに見えてきて……。そしたらなんだか凄いショックで頭が真っ白になっちゃって……」

そうたどたどしく話す私を見つめて、根気よく先を待つ和臣さん。

少し止まった私の話を促すように、優しく私の手を握ってくれる。

「それで?」

聞いてくれる、その声が優しいことにホッとして私は続きを話し始める。

「それで、和臣さんに会って話したい事があったんだけど、どう話していいのか分からなくなって。このままの私の状態では話せないと思って……。少し落ち着きたくて、気付いたら急いで帰って少しの荷物を纏めて美咲の所に行ったの」

そう、話をして和臣さんを見ると少し申し訳なさそうな顔をしている。
それにまた、私はズキっと胸が痛んだ。

「ごめんなさい……。和臣さんも何か話があったんですよね?」

そう顔を伺えば、ハッとした顔をして私を見つめると、ぎゅっと引き寄せて抱きしめてきた。

「千波を不安にさせたのは悪かった。あの時村山とは千波の話をしていた」

それに驚いて和臣さんの胸元から顔を上げて和臣さんを見ると、苦笑いをしていて、話してくれた話に驚きを隠せなかった。

「村山と従兄弟で専務の小池が結婚しているのは知ってるか?」
「昨日、美咲に聞いて。ビックリしたのと、それを聞いて少し落ち着いたんです……」

すると、髪を撫でながら話してくれる。

「そうか、それで村山とは同期でもあるし、専務とは元々仲が良い。お互い一人っ子なんだが、歳もそう離れてないから従兄弟であっても兄のようなものだ」

そう言う和臣さんの表情は柔らかく穏やかで、二人の関係もそんな感じなのだろうと思わせた。
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