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  一週間が経ち、祖母の葬儀関係も落ち着いた私は、今日から働くデイサービスふくふくの前で深呼吸していた。

  そんな私の後ろから声をかけてこられて、ビクッと肩を跳ねさせた。

「なに? 緊張してるのかい? 大丈夫だよ。おはよう、佳菜恵ちゃん」

振り返ると、声をかけてきたのは中野さんだった。

「おはようございます!今日からよろしくお願いします」

頭を下げて挨拶すると、中野さんはニコニコしつつ事務所を開けてくれた。

「さぁ、中の入ろう」

そして、事務所に入るとデイサービスの責任者の清水さんがいた。


「おはようございます。清水です。こちらにいるのが、社員の緒方と小山だよ」

「おはようございます。緒方です。よろしくね」

「おはようございます。 小山です」

緒方さんはうちの母親と同世代の女性で、小山さんは私より十歳は上だろうか。
三十代に見える男性だった。

「おはようございます。今日からこちらでお世話になります。笹倉佳菜恵です。よろしくお願いします」

頭を下げると、皆さんがにこやかによろしくねと返してくれた。
職場の雰囲気は、明るく感じられて悪くなさそう。

「今日は、基本的な流れは私が教えるからね。若い子が入って嬉しわ」

そう楽しそうに笑って言ってくれた緒方さんが、お仕事の指導をしてくれるらしい。
明るい雰囲気の緒方さんに、私はとにかくお仕事を頑張って覚えようと、ひとり気合いを入れたのだった。


利用者さんをお迎えに、清水さんと小山さんが出かけたあと、私は緒方さんに朝の準備を教えてもらう。

ここのデイサービスの基本は入浴にある。
ここに来てお風呂に入ってもらうのだ。
しっかりしているようでも、認知症の症状のある利用者さんを、家族が家のお風呂に入れるというのは大変なこと。

私も、祖母がなかなかお風呂から上がらず様子を見に行ってみれば、浴槽に入らずひたすら体を洗い続けているというのを体験して思った。

入浴も簡単ではなくなるのが、認知症という病なのである。

なので、見守りの環境が整っていて、必要な介助を受けながら入浴させて貰えるというのは、大変有難いサービスなのである。

ここでもそのための設備があり、午前中は順番に入浴してもらうのだという。

また、運動も出来るし、指先を動かしてもらう目的で、季節に合わせた工作なども行っているという。
それも、入浴や昼食までの時間や、昼食後の午後に時間が取られているのだと、一日の流れを
教えてもらった。

昼食は、中には食事介助の必要な利用者さんには介助をして食べていただくが、基本は利用者さん本人で召し上がるのだそう。

それも、体の具合等を考慮して個別に柔らかめだったり、刻んで食べやすくしているんだという。
スプーンも使いやすいものや、取っ手付きの食器などもあった。

ここはお料理も手作りで提供される。
調理のパートさんが、鮮やかな手つきで二十人分を作り上げるのだ。
広めのキッチンとはいえ、一般住宅の台所で作るのだから凄いという言葉に尽きる。
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