32 / 35
待望の模擬戦出場
しおりを挟む
「今年も模擬戦を行います。出場希望者は今週中に参加票を提出してください。」
もうそろそろ夏休みというある日、先生がホームルームでそんな連絡事項を告げると周囲はざわついた。ついに私達も4年になり模擬戦に出場できるようになったため、みんなソワソワしているようだ。
「ミリー!ミリーも当然出るんだろ?やっぱマリウスとか?」
休み時間、前の席に座るテオはくるりとこちらを振り返ってそう尋ねてきた。うん、と私は頷く。
「マリウスと出れるのは今年だけだからね。」
「そうよね。はぁ、今年の優勝はマリウス先輩とエミリアで決まったようなものね…。」
「ヘレナとアレクさんで出れば?」
「無理だよ、お互い癖も知り尽くしているから速攻では絶対片付けられないでしょ?となるとあとは単純な持久戦…、エミリアはもちろんだけどマリウスも相当の魔力量の持ち主だから勝ち目は薄い。」
ヘレナは冷静に分析してそう言った。ヘレナとアレクは割と攻撃特化タイプなので治癒魔法の使えるマリウスと結界魔法も得意な私相手に速攻というのは2人同時に全力の一撃を与えるくらいでないと難しいだろう。
「それもそうだな、どんなにアレク先輩が剣の達人でヘレナが爆弾ぶん投げても防御がガチガチで通らなきゃ意味ないもんな。」
「そういう事。それにアレクは剣術の方に出たいみたいだから私もソロの方に出てみようかなって思って。」
「あぁそっか、アレク先輩まだ剣術部門には出てないのか。」
「ヘレナも頑張ってね、私達ノウムアルゴーで各部門の優勝掻っ攫ってやろう!」
「もっちろん!エミリアとマリウスは会場ぶっ壊さないように気をつけてね。」
あはは、とみんなで笑って1週間後。校内で予選が行われ、私達は皆無事に校内選抜を通過した。
その後期末試験を終え、夏休みはギルドの依頼をこなしまくって過ごし、秋。建国祭の時期がやって来た。模擬戦の予選と本戦では基本マリウスの氷魔法で攻撃し、私は時々補助魔法などを使う程度でそれ以外は魔法は使わず素手で戦って突破した。学院に入学する少し前くらいからギルドのみんなに武道の鍛錬をしてもらっていたのだが、その成果がちゃんと出せたようで嬉しい。手の内は隠せるなら隠しておかないとね。アレクとヘレナも良い調子で本戦まで勝ち抜き、決勝。アレクは普段剣に魔法を纏わせたりして剣と魔法の両方を使って戦うのだが、模擬戦の剣術部門は魔法の使用は禁止なので実戦とは少し勝手が違ったのだろう。王立学院の騎士科の首席だという6年の生徒ととても良い試合をしていたのだが惜しくも敗れてしまい、アレクは第2位という結果で終わった。次はヘレナの番だ。
『さぁ、剣術部門の熱気も冷めやらない中ですが次へと進んで参りましょう!魔法個人部門決勝戦、実況はわたくし、王立学院騎士科4年、シリウス・カエルムと!』
『魔法学院4年、エミリア・デーフェクトでお送りします。皆様、どうぞ宜しくお願い致します!』
私は実況席に着いてそう挨拶する。何故私がここに座っているのかと言うと今年はニゲルが学院祭の実行委員をやっていて、実況をやらないかと誘われたのだ。今回一緒にやる事になった彼はアナスタシアの弟で“前”の時もクラスは違えど教養授業の時などを通して仲良くなり、会えば気さくに話しかけたりしてくれた仲なのだ。今回では先日の打ち合わせの時に初対面だったはずなのだが、
「久しぶりエミリアちゃん、元気だった?…助けられず、すまなかった。」
と声をかけられた。どうやら彼も前の事を覚えているらしい。不思議だ。
「…ええ、おかげ様で。シリウスくんもお変わりないようで安心したよ。…今回は宜しくね。」
「あぁ、宜しく!」
『さて、ではまずは1戦目。勇者パーティーにも在籍する召喚魔法の天才!王立学院魔法科6年、アルシノエ・アダリス選手!』
シリウスくんの紹介と共にアルシノエさんが入場する。ワッと歓声が上がる。
『対しますは昨年はまさかの体調不良により欠場!今日はお腹の調子は平気ですか、魔法学院6年、アニキウス・クラーテル選手!』
アニキウスは春の暁のメンバーで、かなりの実力者だ。だがなんと言うか不運体質というか、割といつも運が悪い。歓声の中アニキウスも登場する。
「今日はニゲルに用意できるだけの治療薬用意してもらって来たから大丈夫ー!!」
『それは良かった!!』
『それは安心ですね、春の暁専属薬師の方の薬はよく効くと有名ですからね!アルシノエさん、今日は暴風対策を強化しておいたそうなので観客の皆様が飛ばされる心配はしなくて大丈夫ですよ。』
「よーし、なら全力で頑張ろう!」
『あっ、すみませんやっぱり少し心配になって来ました、これ大丈夫ですかね?』
『ん~、まぁ、大丈夫じゃなさそうだったら私が結界張りますね。』
『やだかっこいい、さっすがエミリア嬢!という事で皆様どうぞご安心ください、では両者構え!』
ピリ、と急に空気が張り詰める。
『それでは──始め!』
もうそろそろ夏休みというある日、先生がホームルームでそんな連絡事項を告げると周囲はざわついた。ついに私達も4年になり模擬戦に出場できるようになったため、みんなソワソワしているようだ。
「ミリー!ミリーも当然出るんだろ?やっぱマリウスとか?」
休み時間、前の席に座るテオはくるりとこちらを振り返ってそう尋ねてきた。うん、と私は頷く。
「マリウスと出れるのは今年だけだからね。」
「そうよね。はぁ、今年の優勝はマリウス先輩とエミリアで決まったようなものね…。」
「ヘレナとアレクさんで出れば?」
「無理だよ、お互い癖も知り尽くしているから速攻では絶対片付けられないでしょ?となるとあとは単純な持久戦…、エミリアはもちろんだけどマリウスも相当の魔力量の持ち主だから勝ち目は薄い。」
ヘレナは冷静に分析してそう言った。ヘレナとアレクは割と攻撃特化タイプなので治癒魔法の使えるマリウスと結界魔法も得意な私相手に速攻というのは2人同時に全力の一撃を与えるくらいでないと難しいだろう。
「それもそうだな、どんなにアレク先輩が剣の達人でヘレナが爆弾ぶん投げても防御がガチガチで通らなきゃ意味ないもんな。」
「そういう事。それにアレクは剣術の方に出たいみたいだから私もソロの方に出てみようかなって思って。」
「あぁそっか、アレク先輩まだ剣術部門には出てないのか。」
「ヘレナも頑張ってね、私達ノウムアルゴーで各部門の優勝掻っ攫ってやろう!」
「もっちろん!エミリアとマリウスは会場ぶっ壊さないように気をつけてね。」
あはは、とみんなで笑って1週間後。校内で予選が行われ、私達は皆無事に校内選抜を通過した。
その後期末試験を終え、夏休みはギルドの依頼をこなしまくって過ごし、秋。建国祭の時期がやって来た。模擬戦の予選と本戦では基本マリウスの氷魔法で攻撃し、私は時々補助魔法などを使う程度でそれ以外は魔法は使わず素手で戦って突破した。学院に入学する少し前くらいからギルドのみんなに武道の鍛錬をしてもらっていたのだが、その成果がちゃんと出せたようで嬉しい。手の内は隠せるなら隠しておかないとね。アレクとヘレナも良い調子で本戦まで勝ち抜き、決勝。アレクは普段剣に魔法を纏わせたりして剣と魔法の両方を使って戦うのだが、模擬戦の剣術部門は魔法の使用は禁止なので実戦とは少し勝手が違ったのだろう。王立学院の騎士科の首席だという6年の生徒ととても良い試合をしていたのだが惜しくも敗れてしまい、アレクは第2位という結果で終わった。次はヘレナの番だ。
『さぁ、剣術部門の熱気も冷めやらない中ですが次へと進んで参りましょう!魔法個人部門決勝戦、実況はわたくし、王立学院騎士科4年、シリウス・カエルムと!』
『魔法学院4年、エミリア・デーフェクトでお送りします。皆様、どうぞ宜しくお願い致します!』
私は実況席に着いてそう挨拶する。何故私がここに座っているのかと言うと今年はニゲルが学院祭の実行委員をやっていて、実況をやらないかと誘われたのだ。今回一緒にやる事になった彼はアナスタシアの弟で“前”の時もクラスは違えど教養授業の時などを通して仲良くなり、会えば気さくに話しかけたりしてくれた仲なのだ。今回では先日の打ち合わせの時に初対面だったはずなのだが、
「久しぶりエミリアちゃん、元気だった?…助けられず、すまなかった。」
と声をかけられた。どうやら彼も前の事を覚えているらしい。不思議だ。
「…ええ、おかげ様で。シリウスくんもお変わりないようで安心したよ。…今回は宜しくね。」
「あぁ、宜しく!」
『さて、ではまずは1戦目。勇者パーティーにも在籍する召喚魔法の天才!王立学院魔法科6年、アルシノエ・アダリス選手!』
シリウスくんの紹介と共にアルシノエさんが入場する。ワッと歓声が上がる。
『対しますは昨年はまさかの体調不良により欠場!今日はお腹の調子は平気ですか、魔法学院6年、アニキウス・クラーテル選手!』
アニキウスは春の暁のメンバーで、かなりの実力者だ。だがなんと言うか不運体質というか、割といつも運が悪い。歓声の中アニキウスも登場する。
「今日はニゲルに用意できるだけの治療薬用意してもらって来たから大丈夫ー!!」
『それは良かった!!』
『それは安心ですね、春の暁専属薬師の方の薬はよく効くと有名ですからね!アルシノエさん、今日は暴風対策を強化しておいたそうなので観客の皆様が飛ばされる心配はしなくて大丈夫ですよ。』
「よーし、なら全力で頑張ろう!」
『あっ、すみませんやっぱり少し心配になって来ました、これ大丈夫ですかね?』
『ん~、まぁ、大丈夫じゃなさそうだったら私が結界張りますね。』
『やだかっこいい、さっすがエミリア嬢!という事で皆様どうぞご安心ください、では両者構え!』
ピリ、と急に空気が張り詰める。
『それでは──始め!』
0
お気に入りに追加
60
あなたにおすすめの小説
側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。
とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」
成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。
「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」
********************************************
ATTENTION
********************************************
*世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。
*いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。
*R-15は保険です。
訳ありヒロインは、前世が悪役令嬢だった。王妃教育を終了していた私は皆に認められる存在に。でも復讐はするわよ?
naturalsoft
恋愛
私の前世は公爵令嬢であり、王太子殿下の婚約者だった。しかし、光魔法の使える男爵令嬢に汚名を着せられて、婚約破棄された挙げ句、処刑された。
私は最後の瞬間に一族の秘術を使い過去に戻る事に成功した。
しかし、イレギュラーが起きた。
何故か宿敵である男爵令嬢として過去に戻ってしまっていたのだ。
【完結24万pt感謝】子息の廃嫡? そんなことは家でやれ! 国には関係ないぞ!
宇水涼麻
ファンタジー
貴族達が会する場で、四人の青年が高らかに婚約解消を宣った。
そこに国王陛下が登場し、有無を言わさずそれを認めた。
慌てて否定した青年たちの親に、国王陛下は騒ぎを起こした責任として罰金を課した。その金額があまりに高額で、親たちは青年たちの廃嫡することで免れようとする。
貴族家として、これまで後継者として育ててきた者を廃嫡するのは大変な決断である。
しかし、国王陛下はそれを意味なしと袖にした。それは今回の集会に理由がある。
〰️ 〰️ 〰️
中世ヨーロッパ風の婚約破棄物語です。
完結しました。いつもありがとうございます!
今夜、元婚約者の結婚式をぶち壊しに行きます
結城芙由奈
恋愛
【今夜は元婚約者と友人のめでたい結婚式なので、盛大に祝ってあげましょう】
交際期間5年を経て、半年後にゴールインするはずだった私と彼。それなのに遠距離恋愛になった途端彼は私の友人と浮気をし、友人は妊娠。結果捨てられた私の元へ、図々しくも結婚式の招待状が届けられた。面白い…そんなに私に祝ってもらいたいのなら、盛大に祝ってやろうじゃないの。そして私は結婚式場へと向かった。
※他サイトでも投稿中
※苦手な短編ですがお読みいただけると幸いです
(完結)お姉様を選んだことを今更後悔しても遅いです!
青空一夏
恋愛
私はブロッサム・ビアス。ビアス候爵家の次女で、私の婚約者はフロイド・ターナー伯爵令息だった。結婚式を一ヶ月後に控え、私は仕上がってきたドレスをお父様達に見せていた。
すると、お母様達は思いがけない言葉を口にする。
「まぁ、素敵! そのドレスはお腹周りをカバーできて良いわね。コーデリアにぴったりよ」
「まだ、コーデリアのお腹は目立たないが、それなら大丈夫だろう」
なぜ、お姉様の名前がでてくるの?
なんと、お姉様は私の婚約者の子供を妊娠していると言い出して、フロイドは私に婚約破棄をつきつけたのだった。
※タグの追加や変更あるかもしれません。
※因果応報的ざまぁのはず。
※作者独自の世界のゆるふわ設定。
※過去作のリメイク版です。過去作品は非公開にしました。
※表紙は作者作成AIイラスト。ブロッサムのイメージイラストです。
「不吉な子」と罵られたので娘を連れて家を出ましたが、どうやら「幸運を呼ぶ子」だったようです。
荒瀬ヤヒロ
恋愛
マリッサの額にはうっすらと痣がある。
その痣のせいで姑に嫌われ、生まれた娘にも同じ痣があったことで「気味が悪い!不吉な子に違いない」と言われてしまう。
自分のことは我慢できるが娘を傷つけるのは許せない。そう思ったマリッサは離婚して家を出て、新たな出会いを得て幸せになるが……
【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った
五色ひわ
恋愛
辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。真実を確かめるため、アメリアは3年ぶりに王都へと旅立った。
※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話
【完結】結婚してから三年…私は使用人扱いされました。
仰木 あん
恋愛
子爵令嬢のジュリエッタ。
彼女には兄弟がおらず、伯爵家の次男、アルフレッドと結婚して幸せに暮らしていた。
しかし、結婚から二年して、ジュリエッタの父、オリビエが亡くなると、アルフレッドは段々と本性を表して、浮気を繰り返すようになる……
そんなところから始まるお話。
フィクションです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる