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待望の模擬戦出場

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「今年も模擬戦を行います。出場希望者は今週中に参加票を提出してください。」

もうそろそろ夏休みというある日、先生がホームルームでそんな連絡事項を告げると周囲はざわついた。ついに私達も4年になり模擬戦に出場できるようになったため、みんなソワソワしているようだ。

「ミリー!ミリーも当然出るんだろ?やっぱマリウスとか?」

休み時間、前の席に座るテオはくるりとこちらを振り返ってそう尋ねてきた。うん、と私は頷く。

「マリウスと出れるのは今年だけだからね。」
「そうよね。はぁ、今年の優勝はマリウス先輩とエミリアで決まったようなものね…。」
「ヘレナとアレクさんで出れば?」
「無理だよ、お互い癖も知り尽くしているから速攻では絶対片付けられないでしょ?となるとあとは単純な持久戦…、エミリアはもちろんだけどマリウスも相当の魔力量の持ち主だから勝ち目は薄い。」

ヘレナは冷静に分析してそう言った。ヘレナとアレクは割と攻撃特化タイプなので治癒魔法の使えるマリウスと結界魔法も得意な私相手に速攻というのは2人同時に全力の一撃を与えるくらいでないと難しいだろう。

「それもそうだな、どんなにアレク先輩が剣の達人でヘレナが爆弾ぶん投げても防御がガチガチで通らなきゃ意味ないもんな。」
「そういう事。それにアレクは剣術の方に出たいみたいだから私もソロの方に出てみようかなって思って。」
「あぁそっか、アレク先輩まだ剣術部門には出てないのか。」
「ヘレナも頑張ってね、私達ノウムアルゴーで各部門の優勝掻っ攫ってやろう!」
「もっちろん!エミリアとマリウスは会場ぶっ壊さないように気をつけてね。」

あはは、とみんなで笑って1週間後。校内で予選が行われ、私達は皆無事に校内選抜を通過した。


 その後期末試験を終え、夏休みはギルドの依頼をこなしまくって過ごし、秋。建国祭の時期がやって来た。模擬戦の予選と本戦では基本マリウスの氷魔法で攻撃し、私は時々補助魔法などを使う程度でそれ以外は魔法は使わず素手で戦って突破した。学院に入学する少し前くらいからギルドのみんなに武道の鍛錬をしてもらっていたのだが、その成果がちゃんと出せたようで嬉しい。手の内は隠せるなら隠しておかないとね。アレクとヘレナも良い調子で本戦まで勝ち抜き、決勝。アレクは普段剣に魔法を纏わせたりして剣と魔法の両方を使って戦うのだが、模擬戦の剣術部門は魔法の使用は禁止なので実戦とは少し勝手が違ったのだろう。王立学院の騎士科の首席だという6年の生徒ととても良い試合をしていたのだが惜しくも敗れてしまい、アレクは第2位という結果で終わった。次はヘレナの番だ。

『さぁ、剣術部門の熱気も冷めやらない中ですが次へと進んで参りましょう!魔法個人部門決勝戦、実況はわたくし、王立学院騎士科4年、シリウス・カエルムと!』
『魔法学院4年、エミリア・デーフェクトでお送りします。皆様、どうぞ宜しくお願い致します!』

私は実況席に着いてそう挨拶する。何故私がここに座っているのかと言うと今年はニゲルが学院祭の実行委員をやっていて、実況をやらないかと誘われたのだ。今回一緒にやる事になった彼はアナスタシアの弟で“前”の時もクラスは違えど教養授業の時などを通して仲良くなり、会えば気さくに話しかけたりしてくれた仲なのだ。今回では先日の打ち合わせの時に初対面だったはずなのだが、

エミリアちゃん、元気だった?…助けられず、すまなかった。」

と声をかけられた。どうやら彼も前の事を覚えているらしい。不思議だ。

「…ええ、おかげ様で。シリウスくんもお変わりないようで安心したよ。…今回は宜しくね。」
「あぁ、宜しく!」


『さて、ではまずは1戦目。勇者パーティーにも在籍する召喚魔法の天才!王立学院魔法科6年、アルシノエ・アダリス選手!』

シリウスくんの紹介と共にアルシノエさんが入場する。ワッと歓声が上がる。

『対しますは昨年はまさかの体調不良により欠場!今日はお腹の調子は平気ですか、魔法学院6年、アニキウス・クラーテル選手!』

アニキウスは春の暁ウェールアウローラのメンバーで、かなりの実力者だ。だがなんと言うか不運体質というか、割といつも運が悪い。歓声の中アニキウスも登場する。

「今日はニゲルに用意できるだけの治療薬用意してもらって来たから大丈夫ー!!」
『それは良かった!!』
『それは安心ですね、春の暁ウェールアウローラ専属薬師の方の薬はよく効くと有名ですからね!アルシノエさん、今日は暴風対策を強化しておいたそうなので観客の皆様が飛ばされる心配はしなくて大丈夫ですよ。』
「よーし、なら全力で頑張ろう!」
『あっ、すみませんやっぱり少し心配になって来ました、これ大丈夫ですかね?』
『ん~、まぁ、大丈夫じゃなさそうだったら私が結界張りますね。』
『やだかっこいい、さっすがエミリア嬢!という事で皆様どうぞご安心ください、では両者構え!』
ピリ、と急に空気が張り詰める。
『それでは──始め!』
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