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魔王討伐記念パーティー④

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「譲ってくれたのは“楽園の光ルーメンアトランティス”です。」
「「「!!!」」」

楽園の光ルーメンアトランティス、コンスタンス達のパーティーだ。SSランクパーティー最有力候補と言われており、王国の人間なら知らない者はいないだろう。

「陛下、私もコンスタンスがマリウスにそのアクアマリンを渡してマリウスが証を作っているところを見ていました。」
「な、ルキウス殿下まで…!」
「はっ、ルーメンアトランティスがなんだ、結局平民じゃないか…!」
「平民ごときがこんな高価な報酬を貰えるわけがないだろ!!」
「仮に与えたとしても分不相応にも程がある!!」

くそ野郎共がそう叫ぶと辺りは静まり返った。リアやじいさん達、そして俺達からも表情が消えていく。

「…あなた方…今、ルーメンアトランティスを馬鹿にしました?しましたね?」
春の暁ウェールアウローラにはこんな規則があるんだ。一つ、ギルドのメンバーは皆家族である。」
「一つ、家族の受けた痛みは10倍にして返せ。」
「あなた方は今、我らが大切な家族を侮辱しました。よって春の暁ウェールアウローラの規則に則り、あなた方には報復を受けていただきます。」

リアは絶対零度の視線で言い放った。

「そうだな…、それでは未来永劫、貴殿らの家門及びその子孫からの依頼を我がギルドは受けない。…如何かね、魔法省長官殿。」
「法的問題はありません、受理します。」

じいさんが尋ねると冒険者ギルドの管理もしている魔法省大臣閣下はこちらに出てきてあっさり頷いた。確かこの人は昔じいさん達に強く憧れ魔法学院に進んだが、貴族の長男という立場だったので仕方なく冒険者を諦めた、という人だったはずだ。

「はっ、その程度痛くも痒くもねぇよ!」
「平民の助けなどこっちから願い下げだ!」

馬鹿って大変だな、とつくづく思う。魔王を倒しても魔物は凶暴化しなくなるだけでいなくなるわけではないし、この先数百年も経てば魔王は再び現れるのだ。その時に自分の領地の騎士団だけでなんとかできるほど彼らの領の騎士団が優秀だとはとても思えない。俺達は鼻で笑った。会場内からもクスクス笑う声が聞こえる。

「ところでそろそろそのピアスを返していただけませんか?」
「は?お前にはもったいないからこの俺が貰ってやると言っているんだ、ありがたいと思え!」

ドヤ顔で言い放つくそ野郎に、会場のほとんどはため息を吐いた。魔法協会の会長が一歩前に足を踏み出す。

「エミリア殿、ピアスを見せてもらっても?」
「えぇ、どうぞ。」

リアがサイドの髪を退けるとアロイシウスさんはリアの耳についているピアスを腰を屈めて少し眺めた後、ありがとうと言って姿勢を正した。

「これは王国の西の方でとれるアクアマリンですな。確かルボル侯爵領で採れると記憶しております。」

流石は魔法協会会長、一瞬で産地まで割り出してしまった。

「あぁ、そう言えば先日ルボル侯爵領で魔物の群れが押し寄せて来た時、討伐協力の依頼が来たので楽園の光ルーメンアトランティスが向かいました。」
「えぇ、確かに楽園の光ルーメンアトランティスの皆様に助けていただき、報酬の1つとして我が領で採れたアクアマリンをお渡ししました。こんなに素晴らしい物を作っていただけてこちらも嬉しい限りです。」

魔法協会会長に王国一のギルド・春の暁ウェールアウローラのマスター、そしてルボル侯爵の証言まで揃えばもう詰みだろう。

「そんな…!」
「…答えは出たようだな。」

陛下が手で軽く合図すると騎士達がやって来てくそ野郎共を拘束した。

「ほら、さっさとエミリアのピアス返せよ。」
「黙れ、俺はカンケル侯爵家の親戚であるウラヌス子爵家の長男だぞ…!」
「…貴方はそんなに身分が大事ですか?」

凛風はニッコリと笑顔を貼り付けて尋ねる。

「…?」
「ならば命令です、エミリアのピアスを返しなさい。私は星河帝国の皇孫よ。」
「「「…!!」」」

権力には権力を、という事か。奴らの顔色はサッと青くなった。

「じゃあ俺も命令しよう、俺は天狼王国第4王子だ。」
「権力に頼るのはあまり好きじゃねえが、お前達がそういう態度なら俺も王弟として命じる。」
「ウィルゴ伯爵家三男は俺だ。兄上も呼んで来るか?」
「わたくしも、カンケル侯爵家長女として申し上げます。わたくしの親友の大切なものを早く放しなさい。汚い手で気安く触らないでいただけるかしら?それとウラヌス子爵家は確かに親戚ですけれどものすごく遠い親戚ですので一緒にしないで頂戴ね、エミリア。」
「あはは…、分かった、リウィア。」
「なら俺も可愛い妹の親友への無体は許さない。」
「あら、お兄様。」

次期カンケル侯爵もこちらにやって来てお嬢様の頭を撫でた。仲が良いらしい。

「わたくしはカエルム伯爵が次女、アナスタシア・カエルム。そのアクアマリンを加工したのはわたくしですの。返してくださる?」
「ルプス公爵家次男もよろしくなー。」
「俺はキグナス伯爵の…」
「私はボーテス伯爵家の…」

続々と奴らよりも爵位の高い家柄の友人や仲間、先生達が揃って来て、ギルドと学院の知り合いがこうして全員集まるとそういえば良家出身の人もかなりいるんだったなと思い出す。まぁそれもそうだ、平民の割合が多い魔法学院でも平民は半分行かないくらいだし。春の暁ウェールアウローラも魔法学院も、爵位を継がない貴族の子女が優秀な冒険者になるため門を叩く事も多い。

「くっ…!!」

更に実のところを言うと俺の親父の従兄弟は王国でも有数の財力を誇る伯爵家の当主で俺にも一応貴族の血は混ざっているし、リアの祖母に至っては元公爵令嬢だ。ものすごい大恋愛だったそうだが、結局はじいさんが国一番の冒険者ギルドのマスター一族で、しかも当時既にSランクパーティーとして国どころか大陸中に名を馳せていたためなんとか認めてもらえたそうだ。まぁばあさんは「害虫?そんなもの燃やしてしまえば一瞬よ~。」なんて笑顔で言いながら上級火魔法インフェルノで燃やすような人だし、貴族や王族に嫁いで大人しくしているなんて絶対向いていない。春の暁ウェールアウローラにいれば依頼や仲間として貴族と関わる事も多いし、跡継ぎでない子女と平民が結婚するのも割とよくある話だ。……まぁ、前は微妙に高貴な血が混じっていたために王族との婚姻も可能となってしまったのだが。

「ほら、お前達の大好きな身分だぞ?」
「もちろん喜んで従いますわよね~?」
「返してもらうぞ。」

シロウはそう言ってすっかり大人しくなったバカ息子からピアスを取り返し、俺に渡した。これだけの大物達がリアについたのだ、春の暁ウェールアウローラの恐ろしさは貴族達にもよく分かっただろう。これで殿下との婚約の事も表立っての行動はしないはずだ。

「それにしても馬鹿だよなー。それ、エミリアちゃんを思ってマリウスが作ったわけだろ?てことはつまり、エミリアちゃん以外が付けたって何の効果もないじゃん。」
「そうだな、普通のピアスだよな。」
「それも女性ものの。」
「そこだけ切り取ると中々笑える絵面だな。」

俺はリアに取られたピアスを付けてやりながら笑った。

「しかもエミリアのおばあちゃんって…。」
「うん、マリウスもあれだし…。まぁ、知らないって恐ろしいよな。」
「まぁ何にせよ、無事で良かったですわ。」
「うん、皆様助けていただきありがとうございました。…陛下をはじめとした皆様も、お騒がせしてしまい大変申し訳ございませんでした。」
「気にするな、エミリア殿の責任ではない。」
「陛下の寛大なお心に感謝いたします。」
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